大公開!過去授業レポート

第1回
アイデアをビジネスに落とし込んでいくために
「ビジネスアイデア」とは何か
6分
「ビジネスアイデア」とは何か
古川 健介 先生
株式会社ロケットスタート 代表取締役
実施日
2012年1月12日(木) 20:30〜21:00
タグ
  • アイデア
  • スタートアップ
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授業レポート

“アイディア”は各論であって、そこから考え始めてはいけない

「ビジネスアイデア」というと身構えてしまいそうな大きなテーマですが、何か新しいことを始めたいという時に、こうやって考えると良いですよ、というような話をしたいと思います。

僕は、これまでに『アイデアに価値はない』と言ってきました。何かを始めようというときに、みなさんも「こういうアイデアがあるんです」とか「こういう企画をやってみたいです」と人に伝えようとすると思いますが、僕はこれに価値ないと思っています。ただ、『アイデアに価値はない』とは言っても、「結局アイデアがないと何も始まらないじゃないか」と思われるでしょうから、詳しくお話していこうと思います。

最初に結論を言いますと、「必ず“WHY”→“HOW”→“WHAT”の順番で思考を整理しましょう」ということです。これは、僕が発見したことではなくて、サイモン・シネックさんというアメリカの有名な作家が提唱して広く知られるようになりました。

▲ 参考『サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか』

この意見は僕もすごく賛成しています。それぞれを説明してみます。"WHY"は「なぜそれをやるのか?」、"HOW"が「どのようにするのか」、「何をするのか」が"WHAT"です。何かを成し遂げたり、人を動かしたりするときにはこの順番で考えて伝えなければなりません。

▲ Why→How→Whatで考える(サイモン・シネックの「ゴールデン・サークル」より)

僕が「アイデアに価値はない」というときの「アイデア」とは、"WHAT"に過ぎないんですね。「WHY→HOW→WHAT」とはの逆の順番でビジネスアイデアを考えてしまうと、途端に行き詰まってしまいます。"WHAT"から考えてしまっているダメなビジネスアイデアの例を挙げてみましょう。

[ダメな例]

「イラストの投稿SNSを立ち上げたいです。(WHAT)どういうサイトかと言うと、投稿や閲覧ができ、コミュニティを中心とした、イラストレーターさんのためのサイトです。(HOW)このサイトによってイラストを楽しくしていきます」

これが、"WHAT"が先に来てしまっている例です。この順番では、ほとんどの場合うまくいきません。例えば、pixivというイラスト投稿型SNSサイトがありますが、当然、彼らはこの順番では考えていません。

[良い例(pixivの例)]

「pixivは、お絵描きをもっと楽しくしたいと思っています。(WHY)
インターネットを通じてイラスト共有が出来るようにします。(HOW)
それが出来るサイトがイラスト共有SNSサイトのpixivです(WHAT)」

スッと頭に入ってくると思いませんか?全てのビジネスアイデアはこの様に考えなければならないと考えています。

最もわかり易い例としてGoogleはどうでしょうか?彼らが大学生でGoogleを立ち上げた時、「世界中の情報は整理された方が良いと思います。そのために、データをデータベースに入れて、ページランクという概念を使って、その検索順位を1位から決めて提供します。それが可能なのがGoogleという検索サイトです」というようなことをベンチャーキャピタルに話したところ、感動されて資金調達に繋がりました。これが「イケてる検索サイトを作ります。そのためには……」という伝え方だったら、Googleのこれほどまでの繁栄はなかったのではないでしょうか。

でも、「なぜそれをやるか」から考え始めてくださいと言われても、なかなか難しい。こういう話をすると、「人を幸せにしたいからやります」みたいなことを言い始める人が出てきます。これでは、あまりにも対象が大きすぎて結局ピンとこない。そうならないために、次は具体的な思考のステップを簡単に説明したいと思います。

アイディアは、”WHY”と”HOW"を設定した後に考えるもの

「WHY→HOW→WHAT」の順番に落としこむ前に、"WILL" "CAN" "MUST"について考えるのをオススメします。

例えば、僕のやっているnanapiというHOW TOサイトの場合、「いろいろな人の"出来ること"を増やしたい」がWILL。言い換えると、「意思」ですね。次に、「僕はインターネットのサービスを作るのが得意だな」というのがCAN、これは「出来ること」です。更にMUSTとして「そういうHOW TOのサイトを提供した時に誰でも分かりやすいコンテンツにしないと見てもらえない」という3つを考えました。

こんな感じで自分のやりたいこと、やらなきゃいけないことをまず洗い出します。そして、そこから出てきたものからWHYとHOWを導き出すというのが、良い方法かなと思います。

例えば、僕は色々なビジネス書を読むで得た知識のおかげで出来るようになったことが多いので、自分でも、そういうサイトを作りたいなと思いました。

「やり方を知ることによって出来ることが増えると、みんながどんどん幸せになるだろう」という思いから、「色々な分野について出来ることを増やしたい」という様に"WHY"を決めました。自分の得意分野と照らしあわせて、「インターネットを通じて最高の情報と指針を提供する」という風に"HOW"を決めました。そこから"WHAT"を考えています。それがnanapiという「HOW TOの共有サイトを作ろう」というようになったわけです。これがビジネスアイデアです。

アイデアというのは、"WHY"と"HOW"を設定して初めて考えはじめるべきものだと思っています。最初の二つ「WHYとHOW」が決まっていると、"WHAT"がいくら変わっても問題ありません。例えば、今はインターネット上でHOW TOを提供していますが、5年後にほとんどの人がiPhoneのアプリしか使わなくなったとして、HOW TOを提供するアプリを作ってそこで動画を配信しましょうということになっても、全く問題ない。他にそれを電子書籍にしたり、海外にあるたくさんのHOW TOサイトを翻訳して提供しても同じ価値が生み出せるんじゃないか、というアイデアがたくさん出てきます。

だから、アイデアに本当に価値がないと言いたいわけではなくて、ここで言う、"WHY"と"HOW"を抜きにして、アイデアの話をしてしまうと、そのアイデアは単なる思いつきに過ぎない。だから、価値がないと言っているわけです。

結論を言うと、アイデアから考えるのではなくて、まず「なぜそうするのか」という"WHY"が何よりも重要で、その次に、「どのようにやるのか」という"HOW"を考えてから"WHAT"としてアイデアを考えましょう、と思っています。

これが僕の考えるビジネスアイデアの出し方、「ビジネスアイデアとは何か」の答えです。

アイディアを形にしていくための5つの質問

Q1:先ほどのプレゼンテーションの中にはpixivやGoogleなどの事例が挙げられていましたが、他にどのような事例がありますか?

古川先生(以下:古):例えばfacebookは、「透明でオープンな社会は人類にとって良いことだ」と考え、自分の近況やプロフィールを共有出来るサービスを提供しています。facebookの表面的な部分だけを真似てSNSを作ってしまうと、「こういう機能があった方がかっこいい」とか、「チェックイン機能があったほうがイケてるよね」とかブレてしまって、上手くいきません。マーク・ザッカーバーグは、「完全にアイデンティティは一つであるべきだし、隠し事はしない透明な世界が良い」というように割と過激なことを唱えています。その強い"WHY"があるから強烈に事業が進んでいるのではないでしょうか。

起業をしたいというという方とお話をしていると、「写真アプリを作りたいです」とか「ロケーション機能を使って交流出来るアプリを作りたいです」というような話になってしまうことが多いです。それだと、作っていくうちにトレンドに惑わされてよく分からない物になってしまうのではと思いますね。

Q2:「WHY→HOW→WHAT」という思考のフレームワークに行き着くまでのプロセスついて、もう少し詳しく教えて下さい。

古:ここまで偉そうにお話ししてきましたが、僕も最初にnanapiというHOW TOサイトを作った時に「WHY→HOW→WHAT」の順番で考えられていたかというと、全くそのようなことはありませんでした。当時から、「アイデアに価値はない」とは思っていましたが、"WHAT"に価値がなくて、どうやるか、という"HOW"が重要だと思っていました。自分はインターネットが得意で、流行らせる仕組みや、ユーザーさんに投稿してもらう仕組みなどの"HOW"を知っているので、どんな事業でもやってやろうと思っていました。ですが、nanapiを運営していくうちに、"HOW"にこだわってしまうと、方向性が定まらず上手くいかないと感じはじめたのですが、その試行錯誤の中で、この思考フレームに至りました。

この考え方を元に、いろいろな事例を当てはめていくうちに、いままでの思考プロセスの中には、今日お話してきた"WHY"が抜けていたことを知りました。自分もnanapiを立ち上げるときに「何らかの思いがあったはずだ」と振り返って、そこをどんどん掘り下げていった感じですね。

Q3:古川さんは、様々な試行錯誤の中で、他の企業や、サービス、書籍などをベンチマークしていますか?

古:そうですね。何についても勉強して、実践するという流れをこだわりとしているかもしれません。今回お話したようなフレームワークを使わなくても、「こんなことがやりたいんだ」っていうところからスタート出来てしまう人もいます。だけど、僕は上手くいかなくなった時に迷ってしまうので、そういう時のために書籍やサービスをチェックしていますね。だいたいの人がそうではないでしょうか。

Q4:企業に所属していて、人から依頼されて仕事をする場合に、「こんな仕事をして欲しい」とか、「アプリを作りましょう」とか、今日の話でいう"WHAT"からスタートしてしまうことがあると思います。その場合は「WHY→HOW→WHAT」の順序を実践するのが難しいと思うのですが?

古:僕も大企業に3年ほどいたので、仕事の依頼主に、「どうしてそれをやりたいのか」というものがないと、事業が上手くいかないことが多いと思っていました。だから、"WHY"が自分の中から出てこないとしても、必ず明確にしなければいけないかなと思っています。一方で、依頼主が目指しているものが明確であれば、「どうやるか」、「何をやるか」というのがおのずと決まってきます。社会では一般的に"WHY"のことをビジョンだとか経営理念といった言葉で言いますが、そこがないと上手くいかないという印象がありますね。

Q5:古川さんがnanapiという「暮らしと生活のティップス」を発信し続けるということは、今回のお話を聞いて、すごく筋が通っているように感じます。人間性とアイデアは不可分な関係にあるという気がするのですが、いかがでしょうか。

古:おっしゃる通りです。10年以上前ですが、僕が浪人生の時には受験情報がほとんどありませんでした。なぜ情報がないのだろうという思いから、受験情報サイトを作りました。当時インターネットの黎明期でしたが、そのサイトが数か月に1000万PVを集める様になり、非常に多くの人が受験情報を交換するようになりました。さらに自分も、当初偏差値30台だったのにこのサイトの情報で第一志望に受かることが出来ました。この経験から、生まれつきの才能や能力ではなくて、上手なやり方(HOW TO)がきちんとあれば、ほとんどのことが解決するということに気づいたのだと思います。原体験と結びついているからモチベーションも上がるし、熱い思いになれるのかなという風に思っています。

最後に:この先nanapiはどうありたいと考えていますか?

古:世の中に出来ることを増やしたいということを強烈に意識しています。よく話す例なのですが、大昔、ハンドアックスといって石を削った手斧がありました。そのハンドアックスの形が変わらなかった時期がだいたい100万年くらいあったそうです。つまり、ハンドアックスについて言えば、人類はその100万年は全く進化していないのです。恐らく、その後、効率の良い制作方法が共有されることで、一気に進化したんだと思います。nanapiを利用すると、出来ることが増える。それによって、最終的に人類を進化させるくらいのサービスを作りたいです。

補修授業

現地教室で授業に参加したschoo学生のみなさまから寄せられた質問を、古川先生に回答して頂きました。その中で、授業の内容をより深く知るための質問と回答をピックアップしました。

Q:「WHY→HOW→WHAT」というゴールデン・サークルを使う時、どういう事に気をつければ良いですか?

古:WHATから入ってしまうと、"WHAT"に固執してしまうことが多いです。自分は何がしたいんだろう、という点を深めたほうがうまくいくことが多いと思います。それに、"WHAT"って死ぬほど出てくる。その前に"WHY"とか"HOW"をしっかり考えたほうが良いですね。

Q:例えば海外などで、まだ市場がない状態では「WHAT」から始めても良いのではないでしょうか?

古:どこをゴールにするかという所ですね。今流行りそうなものを作るというのもひとつの手段としてはアリです。数億円稼いで売り抜く、みたいな。ただ、上手くいかなくなった時に行き詰まってしまうと思います。事業がずっと上手くいくことはあり得ません。

Q:機能の減らし方について考えをお聞かせ下さい。

古:何も足せなくなった状態がゴールではなく、何も引けなくなった状態がゴールだと思います。ここは結構気を使っています。新しいことをやりたいと思った時に、その機能の中でひとつだけしか残しちゃいけないとして、何を残すかってのを何度も繰り返し考えたりします。たとえばnanapiだったら、記事を読めれば成り立つよね、というようなところです。

Q:"WHY"をチームで共有するにはどうすれば良いでしょうか。

これは結構難しいです。会議に出ると発言する人と、しない人の差が出ます。だから、この事業に参加する理由みたいなものを全員に箇条書にしてもらってから会議をする、というような工夫をしています。

Q:アイデア実現のために気をつける事は?

古:アイデアをアイデアで終わらせない為に。イケてる人と組むということかもしれません。イケてない人と組んで上手く行かなかった例はたくさんあります。結局サービスは人なのかもしれないですね。

Q:ブログで書かれていた「ソフトウェア化」についてお聞かせ下さい。

古:「ソフトウェア化」というのは、僕のブログに書いたことですね。これからの世界はソフトウェア化されることが増えていくので人間らしい世界が増えていきます、という趣旨のものです。機械的にこなしていた仕事がどんどんソフトウェアで置き換えられて、人間的な仕事の方が重視されるかなと思っています。
様々な領域でソフトウェア化が始まっていて、次にくるのが教育と医療かなと思っています。

Q:アイデアの考え方や方法について教えて下さい。

古:1日中考えてるという感じですね。一番重視してるのが人と話してる時間です。なるべく制限なしにアイデアを出し合います。そういう時に色々生まれたりしますね。

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<第1回:「ビジネスアイデア」とは何か レポートおわり>
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先生プロフィール

古川 健介
株式会社ロケットスタート 代表取締役

1981年6月2日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万pvの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。

翌年、株式会社ライブドアにしたらばJBBSを事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社ロケットスタート(現・株式会社nanapi)代表取締役に就任、現在に至る。

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