大公開!過去授業レポート

第4回
デザインmeets戦略 ウジトモコが紐解くデザインのトリセツ
「戦略的デザイン」とは何か
3分
「戦略的デザイン」とは何か
ウジトモコ 先生
アートディレクター
実施日
2012年2月9日(木) 20:30〜21:00
タグ
  • デザイン
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授業レポート

そのデザインは「資産になるデザイン」になっていますか

ビジュアル・コミュニケーション領域における「戦略的デザイン」とは何か、ということについてお話ししたいと思います。ここでお話しする「戦略的デザイン」とは即ち、デザインを資産にすること。「計画的戦略」と「創発的戦略」の二つの戦略を同時に持つ事から実現できます。

私の知る限りではありますが、いまだに多くのデザインの現場では戦略的にデザインする、ということについてあまりいいメージが持たれていないように感じます。これは戦略という言葉にさまざまな意味(※戦略の5Pなど)があって、「策略(Ploy)的」な、あるいは「型(Pattern)」にはまったデザインが「戦略的」と捉えられてしまうからではないかと思います。つまり、創造性に溢れた、威力あるデザインというイメージにはなかなかなりづらい人々もいるのでしょう。

▲ 経営学者のヘンリー・ミンツバーグが掲げる「戦略の5P」
Plan、Ploy、Pattern、Position、Perspective

ブランディング、マーケティングとしてのデザインでより高い効果をあげたければ、ミンツバーグが掲げるこの5つの戦略のうち、Perspective(目的/未来想定)とPosition(顧客の意識下における位置/認識)を組み合せる事をおすすめしています。この二つを組み合わせることで、常にある一定の軸を持ちながら商品やビジネスとそのデザイン戦略を拡大しつづける事が可能になります。つまり、デザインそのものがブランド戦略の一部になることができるのです。

一方で、宣伝やプロモーションなど、早く効果が欲しい戦略を考える際には「策略(Ploy)」「Plan(計画)」などがより効果を発揮します。Pattern(型)については、その双方で戦略性は有効になりますが、例外も多く含むのでここでは割愛します。

では、ブランド戦略の一部となりうる「戦略的デザイン」とはいったいどうしたら実現できるのでしょうか。手順を追って説明していきます。

デザインの仕事(の全体像)をよくチェスゲームに例えてお話をするのですが、人から依頼されて仕事として問題解決をおこなうためのデザインには、じつは「四手」しかありません。

1.まず、お客さんの要望を聞くこと(一手目)
2.それに対して提案すること(二手目)
3.それをその通りに実行すること(三手目)
4.期日どおりにきちんと納品すること(四手目)

当たり前の話なのですが、1番と2番が結果を出す為のデザインの為にとても重要になってきます。

4手目あたり、つまり納品日近くになってから「表現はやっぱりこれじゃないほうが…」と言われてしまっても、できる事は既に限られています。ここでどんなにがんばっても結果に反映されていくかどうかは、何か(予算や納期など)を犠牲にしていかない限り微妙になっていきます。

そうならないためにも、最初のタイミングで「こういうゴール設定して、そこに向かっていきましょう」という決まり事や合意形成をしておくことはとても大切です。

デザインを戦略にするための3つのポイント

では次にその「デザインのゴール設定」とはなにか、デザインを戦略にするためにクライアントと制作チームが共有しておかなければならない大切なポイントを3つに絞ってお話していきます。

1.そのデザインは何をメッセージすればいいのか

同じ素材でもメッセージが違うと見え方(見せ方)が変わります。ですから、最初に自分は何をメッセージしたいのかというゴールを決めておかなければなりません。「強いです」と伝えたいのか「優しいです」なのか、「伝統的です」と伝えたいのか、というメッセージが即ちゴールです。メッセージが最初にあれば、あとは伝える方法を考えるだけです。

2.価値(クラスとタイプ)

デザインを専門的に学んだ人でなくても、もっというとデザインに興味が無い誰にでも必ず分かることがあります。「これは高そうだ」「なんとなく親しみやすい感じ」「スッキリしてカッコイイ感じ」などがそうです。そのように「◯◯らしい」という世界観(トーン・アンド・マナー)をどう作っていくか、先行他社や市場に向けてどう発信していくのかということもとても大切です。このトーン・アンド・マナーがはっきりしていないと顧客にとっての存在感があいまいになり、ポジショニングの混乱を招く事にもつながります。デザインは顧客にとっての「価値」についてもその設計や表現から定義をしなければなりません。

3.スタートとゴール

ここまでお話してきたように戦略的なデザインをするには「現状の把握とどの問題を解決していくのか」ということを分析して判断しなければなりません。現状やビジネスの背景が異なるのに、どこかの企業の成功事例を挙げて「こんな感じに」では戦略デザインとしてのゴール設定にはなりません。

自分たちが今どこにいるのか。自分たちはどこへ向かいたいのか。ずっと続けていくことができるアイデンティティとはなにか。ミッションとしてしなければならないことは何か。誰のために何のためにそれをするのか。こういったスタート地点の把握からゴールをはっきりさせることが戦略的デザインを行うためには重要です。

デザインを資産運用するためには「何をやらないか」を決めることが重要

今まで話してきたことを、ツイッターのアイコンからはじめる戦略デザインに落としこんでみましょう。明日からできる戦略的デザインとして、参加者のみなさんご自身でまずは実感して頂きたいと思います。

アイコンはアイデンティティを可視化・表現する媒体として格好の教材と私は考えています。今日のように数多くのアプリケーションがあって、様々な表現が可能になっているからこそ重要なことはむしろ「何を表現するのか」ということ。つまり「主題(存在)」のためにどういう表現したらいいのかを考える絶好の機会になります。ここまで使ってきたキーワードで言うところの「ゴール」の設定ですね。

「自分はどこに行きたいのか」「何を見せたいのか」というアイデンティティを可視化する事、すなわち(方向性として)どちらの方向を選んで見せるのかがとても重要になります。(マーケティング領域でいうとこれもアートディレクターの大切な仕事です。)

印象は人の目によって勝手に作られてしまうものです。ですから、ブランドやアイデンティティにおいて「これは見せない」「こう見せたい」と意識しなければ、勝手に印象が作られてしまいます。ブランドを望むべき方向に育てたければ、逆に管理をして規制をかけなくてはならないのです。(これを「マーケティングの自己規制」といいます。)

私の本業は、ロゴ作成などのコーポレートアイデンティティ(CI)やビジュアルアイデンティティ(VI)ですが、ブランドを育てて保っていくために、「これはやる」「これはやらない」というレギュレーションを守ることがとても大切だと考えています。

ブランディングやアイデンティティと言うと、派手にPRしたりたくさん露出をしたり目立つ広告をたくさん売ったり…、認知度を上げていくことを優先してつい考えがちですが、露出が減ったとたんに存在自体が忘れられてしまったり、ブームが終わったら価値半減してしまうような認知では、戦略的なブランドの成功とは言いがたいですよね。

正しく認識され、正しい価値が伝わらなければ、関係もつながりも共感も何も生まれないのです。

「一億総表現者時代」における表現することとは

見せたい自分を作るということは、きちんと自分のポリシー、メッセージや立ち位置、将来を考えて、見せない自分を決めるということでもあります。私の近著、『デザインセンスを身につける』という本のカバーには「一億総表現時代の到来」とありますが、多くの人は自己表現とは何かについてあまりつきつめて考えた事はないと思います。

確かに誰でもツイッターでもつぶやく、ブログを書く、Ustreamに出る、Facebookでコメントを書ける時代です。ですが、ただ出しているだけの状態というものは、「表現」にはなりません。ただ、出しているだけです。

(絵画や小説やデザインもそうですが)なにかを「表現する」ということは、なにかを「表現しない」ということであります。より創発的なクリエイティブというものは「制限」から、より多くの力を得る事が可能です。

私自身、デザイナーは幸せを作る仕事をする人だと考えています。あらゆる課題に対して、デザインで答えを出していく。デザインというのはきちんとゴールを決めて課題を宝に変えていくことだと考えています。デザインという知性をより多くの人に知ってもらい、富んで幸多き未来になって欲しい、心からそう願っています。

<第4回:「戦略的デザイン」とは何か レポートおわり>
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先生プロフィール

ウジトモコ
アートディレクター

デザインを経営戦略として捉え、採用、販促、ブランディング等で飛躍的な効果を上げる視覚マーケティングの提唱者。ノンデザイナー向けデザインセミナーも多数開催。現在、かごしまデザインアカデミー「デザインクリエィティブ総合講座」講師。「銀座立田野グローバルチャレンジプロジェクト」専属アートディレター。日本の良いものを世界に打ち出すブランディング案件にも積極的に取り組み中

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