大公開!過去授業レポート

第7回
時代×身体×テクノロジー
現代編集とは何か
5分
現代編集とは何か
米田 智彦 先生
編集者
実施日
2012年2月23日(木) 20:30〜21:00
タグ
  • アイデア
  • 編集
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授業レポート

私たちは編集しながら生きている

現代編集者と自分で名付けたからには、「現代編集とは何か」についてしっかり答えなければならないなと思って、僕はこの授業に臨みました。僕たちがどういう編集行為をしているのかについて考えてみました。私に限らず、一般的な編集者の作業フローは以下のとおりです。

1、発想から企画を練って、リサーチをする
2、リサーチして得た情報や写真などの素材を集めて、取材をする
3、それをデザインし、構成を考える
4、最終的にはアウトプットがどういう仕上がりになるかを見る

もちろん、例外的な作業が発生することもありますが、だいたいこんな感じです。しかし、このフローは編集者にかぎらず、実は誰もが生活の中でやっている普遍的な表現行為なのではないかと思っています。「現代の編集」とは、僕らが一つしかない身体で情報=外部からの刺激や、マスメディアやインターネットから得られる情報を受け取り、それを生活の場にフィードバックして何かを表現する一連の流れの中に普遍的に存在しています。アマチュア・プロフェッショナルに関係なく、TwitterやUstream・ライブチャット・ブログなど様々な表現ツールによって、私達は編集しながら生きていると思います。その点に注目して、皆さんがどのように「現代編集者的思考」に取り組むことが出来るのかについて考えてみたいと思います。

発想から編集行為・編集表現をするまでの過程には、どんなプロセスがあるのかを紐解いてみたいと思います。こういう企画でいけばいいんじゃないかという発想からスタートします。皆さんもそうだと思うのですが、発想が生まれたら、人に話してみたり、ブログで発表してみたり、その前にノートに書いたり、パソコンでメモしたりして、自分の考えをまとめます。今は意見を発表することが簡単になったので、アイデアが浮かんだらすぐ人に話したり、SNSやブログですぐに発表したりして、そのアイデアに対して世の中がどのような反応をするのかを試すことができます。もちろん、発表する回数が増えれば、アイデアが受け入れられず、凹んだり、めげたりする状況も同じように増えてくると思います。けれども、そうやって人に叩かれることで、現代編集に必要な「客観性」を得られるのではないかと思います。あきらめずに、誰も助けてくれない中で何度も企画を練り直すといった作業が、現代編集には必要ではないかと考えます。そして何よりも重要なのは、「もうやるしかない」という状況を自ら作ってしまうことです。あらゆる手段と方法を使って、事を起こしていくというやり方が、現代編集における1つの在り方なんじゃないかなと思います。

「直感」と「アウトプット」

そこで、私は現代編集表現の肝について2つ考えました。1つは、「直感や勘」です。たとえば、もやもやしていたり、どきどきしていたりといった明文化できないような感覚が浮かんだときのことを指します。そこで、その自分のモードを流してしまうか、「この感覚は何だろう?」と考えるかによって結果は全く違ってきます。また、「うっかり手が出る」とか、「何となく足が向く」ということについて、「なぜなんだろう?」と内向的に考えることが重要だと思います。そういった理由がないもの、謎が多いものを掘り下げる時に、他者や社会の無意識と自分が接続する瞬間があるんじゃないかと僕は考えています。

2つめは「アウトプットをすること」だと思います。僕は“東京を旅するように暮らす”をテーマにした「NOMAD TOKYO」という生活実験プロジェクトを、2011年の1月11日から始めました。NOMAD TOKYOで自身をアウトプットするために、まずはTwitterでの一方的な宣言から始まり、オフィシャルウェブサイトは2月にオープンしました。また、「Googleプレイス」のウェブ CMに出演するというありがたいお仕事をいただいて、ムービーを作っていただきました。では、なぜ東京をトランクひとつで遊動しながら仕事と生活をしていく、「NOMAD TOKYO」をやっているかということについて考えてみます。僕は2010年からUstreamについての本を3冊編集して出版しました。ソーシャルメディアやライブメディアが意識の中でつながっているという実感があったので、そのことを前提にして、実際に人と人が出会うことが容易になると思いました。そして、実際に人と人が出会ったら、住むこと・働くことなどのリアルな話題がメディアのコンテンツになっていくんじゃないかと考えました。僕は、出会うこと以上のエンターテイメントはないと思います。そして、ここからは急な話になりますが、そう思った以上、やるしかないというのが、僕なりの現代編集のやり方です。そのときは論拠がないことこそ、行動して取材する価値があり、自分自身で論拠を立てるチャンスなのです。ここから先は、「アウトプット」することについての発想のタネをどんどん蒔いていこうと思います。

使えるものはなんでも使って発信する

現代編集のあり方としては、やはり、「使えるものは何でも使って編集して発信していこう」ということになるのではないでしょうか。今はもう便利なツールは沢山あって、皆さんも持っていますよね。何より無料なことがいいですね。ブログ、SNS、ウェブマガジン、そしてフリーペーパーとか、ZINE(ジン)と言われる小冊子ですね、誰もが簡単に出版できます。そして、Ustreamやニコニコ生放送などを使えば、誰もが配信出来る時代です。あとは、イベント、ワークショップなどのリアルの場所でプロジェクトを展開していくこと。こういう自己発信というのはどんどん出来る時代になっていて、もうそのためのツール、道具、デバイスというのはそろってますよね。iPhone一台あれば出来るとも言える時代です。さらに、道具以外のプラスアルファとして、センスを共有できる仲間というのが重要になってくるのではないかと思います。つまり、これはやっぱりソーシャルネットワークというのを使って繋がっていく縁というものが大事なんじゃないかなと思います。「どういう仲間を選ぶか。」それがプロジェクトの成功の可否を握っていると言っても過言ではありません。

話は、少し戻りますが、僕の「NOMAD TOKYO」を始めた時のように、誰にも頼まれずに事を初めてしまうようなことが凄く重要なんじゃないかと思っています。僕はそれを「自作自演力」と呼んでいます。そして、さらに重要なことは、自作自演に照れない事ですね。僕も40歳を前にして、自分で思い切って色んな事をやってみて他の人には散々「何やってんの?」と言われましたが、自分の人生に照れないでやってみようというスタンスでやってきました。

私たちは大量の情報を毎日浴びている中で、情報の善し悪しを「ろ過」し、キュレーションして受け取る、もしくは、スルーするという力は備わってきましたが、一方で、一方的に教わることに慣れてしまっていて、自分で考え抜くということを忘れがちなのではないでしょうか。自分と対話する、自分と向き合うような時間、それは言葉にすると大したことがない言葉ですが、凄く大切な時代だと考えています。僕がインタビューウェブマガジン「TOKYO SOURCE」で取材してきた表現者たちは、自分の活動や仕事に対して、徹底的に突き詰めて考えている方ばかりなので、「自分の言葉」を獲得していました。僕は、彼らが特別なのではなく、突き詰めて考えていくことで、誰でも自分の言葉を獲得することが出来る能力は備わっていると思います。

「人生に接続」せよ

僕が「無名力と失敗力」と呼んでいるものがあります。「無名である」というのは恥ずかしいことでもなんでもなくて、すごく自由な事なんです。まず、失敗が出来ます。これに年齢は関係なく、実験を繰り返さないと新しい事は何も生まれません。100回トライして1回成功するくらいで考えておいた方がいいと思います。打席に立たないとホームランが出ないというのとまったく同じだと思います。僕の仕事でも、アイデアが実際に通るというのはその程度なんです。

移動と思考の往復運動という風にも言いましたけども、僕はNOMAD TOKYOという移動生活の中で、自分の目のカメラの解像度を物凄く上げたり物凄く下げたりということを試してきました。その中で、東京全体が巨大な生き物だという感覚を覚えた事があって、自分がミクロの世界、まるでアリンコになったような感覚に陥ることがあったんです。IBMの支援を受けて、イームズ夫妻が脚本を書いて制作された「Powers of Ten」という有名なショートムーヴィーがありますが、あの作品のように自分の意識が昇降するような感覚があったのです。自分の中のカメラの解像度を上げたり下げたりしてマクロとミクロの間を行ったり来たりする。僕は自分の肉体を使って移動を続けましたが、こういった意識の有り様もある意味「移動」ですね。これも自分の思考をリフレッシュさせるという意味で価値のある事かなと思います。そして、移動するというのは、自分の無意識を発見する可能性が高いのです。

▲ 「Powers of Ten」

本当に価値のある情報を得る為には膨大な手間暇とコストがかかります。ネットで流れて行く情報というのは一瞬でリツイートや「いいね!」されて、共有はされますが、同時に一瞬で忘れ去られるものでもあります。それは自分の人生の中ではほんの5秒くらいの事なのです。でも、そのアイデアを放った人というのは、一生をかけてそのアイデアを発見したのかもしれません。僕らはその様に、アイデアを消費してしまっているのではないでしょうか。情報化社会の中で自分の人生や身体性をどうやって取り戻すのかということを僕も常に興味がありますし、皆さんにも是非考えてもらいたいテーマだと思います。

「人生に接続する」という言葉は僕のブログやSNSでよく使っているフレーズですが、情報化社会の中であっても、「一回きりの人生の中で一回だけしか目の前に立ち上がらない圧倒的な経験」、それでしか人は変わらないと思います。いろんな情報を摂取して分析して学んでリサーチしても、人生は変わらないし、僕が伝える意味はない。ですから、「二次情報のリツイート」では無くて、やっぱり一次情報にアクセスするということをこの情報化社会の中でなるべくやりたいと思っています。

努力は人を裏切るが、夢中は人を裏切らない

最近「欲望の在処」というフレーズを僕はよく使います。自分は何が好きで、何が嫌いなのかを、やっぱりとことん追求したほうがいいのではないかと凄く思うんです。自分の好きなものとか嫌いなものとか、そこにその人の「由縁」があると思うからです。なるべく揉めない方がいいという世の中になっていますが、自分がこういうものが好きでこういうものが嫌いだということを自分が認識しておくというのは非常に大切なことで、そうでないと自分が何を表現して、何を編集して、何が自分の中でジャッジメントの基準になるかということを分からなくなるんです。アメリカの映画監督、マーティン・スコセッシ氏に取材をした際に、不遜にも、ある大学生が「スコセッシ監督を超えるためにはどうしたらいいですか?」というめちゃくちゃな質問を投げかけました。スコセッシは大爆笑していましたが、最後に真面目な顔をして言ったのが「何が出来るとか夢を追うとかではない。これしか出来ないとか、これしかやりたくないって言う風にクレイジーなまでに自分自身で決めることなんじゃないか」というセリフでした。僕は「なるほど!」と思いました。彼はイタリア系の移民の子供で、男臭いマフィア映画や暴力映画にこだわり続けて、オスカー受賞まで上り詰めた映画監督ですけど、クレイジーなまでに自分を追い詰めたからこそ「タクシードライバー」のような傑作が生まれたのではないかと思いました。

本当に何かを創りたいなら、口当たりのいい夢とか希望とかそういうものを信じちゃ駄目だと思います。自分の欲望とか直感だけを信じて欲しい。だから、米田の言うことなんて信じなくていいです。あと、これは重要な視点だと思うのですが、憧れている時点でその誰かにはなれません。僕もいろんな人に憧れてきましたが全く誰にもなれませんでした(笑)。そこで、はたと膝を打ちました。「こういう自分なんだ、こういう私なんだ」と開き直るしか無いんだと思いました。夢は夢見た時点で現実ではないので叶いませんし、努力は人を裏切ります。現実的にどれだけ前進したかより、努力している自分に酔ってしまうからです。でも、「夢中」は人を裏切りません。夢中は自己肯定、自己承認に最も近いものです。まずは「俺は俺なんだ力」を高めて欲しい。ここからしか始まらないということを、ある種の定款だと考えて下さい。水木しげる先生は、漫画家になりたいという人に対して「野垂れ死ぬ覚悟ができてから漫画家の始まり」だと言っていたらしいです。

誰もあなただけの「ノウハウ」を作ってはくれません。年収10倍になる方法とか、1億円を稼いだ人のなんとか本とかありますけど、それを書いた人しか年収10倍になりません(笑)。自分の年収を10倍にしたいんだったら、ノウハウやハウツーなんてものを頼らないで、文章になっていない情報に自分の直感と行動で接近することです。そして、今の時代は、あらゆる個人に開かれた可能性がある時代です。iPhoneがあれば何でも出来ます。写真家でなければ写真を撮れない、ライターでなければ文章が書けない、そんな時代ではありません。ウェブマガジンだって作っていい。ブログだっていい。自分の行動の規範を自分で決めて、法律に抵触しない限りで現代編集をやっていきましょう。「あなたはあなたなんだ力」、もうそれしかありません(笑)。それはどのブログにもSNSにもまだ書かれていないことなのですから。「面白いことがない」と嘆くのではなく、あなたが面白いことを身の回りから見つけるのです。自分に嘘をつかず、心底夢中になれるものなら、きっと誰かが共感してくれるはずです。

<第7回:現代編集とは何か レポートおわり>
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先生プロフィール

米田 智彦
編集者

1973年、福岡市生まれ。

青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、イベント企画まで多岐に亘る企画・編集・執筆・プロデュースを行う。

2005年より「東京発、未来を面白くする100人」をコンセプトしたウェブマガジン「TOKYO SOURCE」を有志とともに運営。数々の次世代をクリエイトする異才へのインタビューを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を行い、約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキングなどの最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方を実践する100人以上の「ライフデザイナー」と出会い、その現場を実体験する。

共著に『これからを面白くしそうな31人に会いに行った。』(ピエブックス)、『USTREAMビジネス応用ハンドブック』(アスキー・メディアワークス)

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