1916(大正5)年に能美商会(当時)として大阪で創立した能美防災様の起源は、鋼材、機械、雑貨、雑穀の輸出入業でした。転機が訪れたのは1923(大正12)年の関東大震災。創業者である能美輝一様は、震災による火事で亡くなった方々の亡骸の山を前に、「火事を防ぐこと」の必要性を感じ、防災領域へと足を踏み入れていったそうです。翌1924(大正13)年には自動火災報知機による防災事業を創業。その後京都にある国宝三十三間堂をはじめ、関門海底トンネルや三井霞ヶ関超高層ビルといった重要・大規模施設への設置を拡大し、1979(昭和54)年には家庭用火災感知器「まもるくん」を開発、販売をスタートされました。 現在は火事を「見つける」報知器、火事を「消す」スプリンクラーなどが主軸の事業となっており、国内ではNo.1のシェアを誇ります。 そんな創立100年以上の歴史を持つ能美防災様がいま、「オンライン学習」を全社で導入されるに至った理由はなんだったのでしょうか。導入を決めた人材開発室の篠原宏一郎さんと、実際にサービスを利用したメヌマ工場製造1課の岡田直之さんに、話を聞きました。
・DX人材教育・育成の強化
・「学びの文化」を作るために、使いやすさと講座の種類の豊富さが魅力だった
・導入から3カ月は全社員1,800名にIDを発行し、Schoo DX講座を推奨
・4カ月目からは利用を継続したい社員の公募制とし、自発的な学びを促進
・社員の学ぶこと自体への関心度の上昇
・社員自身が抱えている課題の可視化と、社員の関心から人事施策への活用が可能に
篠原さん:「私は、『新入社員研修から管理職研修まで、『全社教育』に特化した部署で働いています。 能美防災は創立から105年、おかげさまで安定的に、右肩上がりで成長してきました。これまで消防法によって日本の防災関連商品の基準は非常に厳しく、海外製品の参入が困難だったため、私たちは長期にわたって国内シェア1位を守り続けることができました。しかし、ここ数年は特に時代の変化が激しくなってきたと感じます。グローバル化が加速するなかで、現状を維持するだけではダメだという意識が社内にも漂うようになりました。
我々の業界は、GDPの増加に比例して需要が伸びる ——つまり、日本の景気が良ければ建設される施設が増え、防災設備の需要も高まり、必然的にビジネスも大きくなると言われています。とはいえ、そもそも火災報知器やスプリンクラーは毎年交換するようなものではなく、ドラスティックに変化が起きるような市場でもありません。外的要因による飛躍的な成長が難しいからこそ、何がいちばんのドライブになるかと考えたとき、“人材力”なのではないか、というところに至りました。
そもそも我々は人材不足など多くの課題を抱える建設業界と密接な位置にありますので、今後どのように企業競争力を向上させるのかが大きな課題です。会社として中期経営計画のなかで人材育成を最初に掲げている理由は、そうした背景があってのことなんです。 では、人材開発室として新たにできることは何かと考えたとき、いきなりガラッと研修制度などを変えるのではなく、まずは『学びの文化』を作りたかった。とはいえ、そういった文化を作るということは、ごく一部の社員に対して実施しても意味がありません。かといって、全社でとなると現場では夜勤をするメンバーもいたり、部署や世代などによっても必要としているレベルもスキルも変わります。時間帯、場所、学ぶ内容を問わず一斉に導入できる制度となると、オンライン学習なのではないか、というところに行きつきました」
篠原さん:「人材育成のなかでも、特に『デジタルスキルを向上させなければいけない』という経営メッセージが出て、いままでまったく取り組んでこなかった領域に戸惑いました。正直、オンライン学習のサービス自体は山ほどありましたし、デジタルスキルに特化したものは特に多かったんです。
じゃあ、手っ取り早くそこを集中的に学べるものを導入すればいいか、というとそうもいかない。初めての導入ですから、自分たちにとっても受ける社員たちにとってもとっつきやすいものが最低条件でしたし、かつ、興味のあるものならデジタルスキル以外のものを見てもらってもいいんじゃないかと思ったんです。まずは、『学ぶ』という習慣をつけてもらうことが重要だと考えていました。 いろいろなサービスを見比べたなかで、その2点をクリアしていたのがSchooだったんです」
篠原さん:「導入から3カ月は、社員1,800名全員にアカウントを配布しました。会社からの“強制”感を出せば受講率はもっと上がっていたのかもしれませんが、学びに対して嫌な気持ちを持ってもらいたくはなかったので、受講を“推奨”という呼びかけにしました。
とはいえ、やはりまずは見てもらいたかったので、『オススメの講座がありますよ』といったリマインドを送るなどのアプローチは積極的に行いました。 ただアカウントを配布していても徐々に受講率は下がっていきます。そこで、4カ月目以降は3カ月毎に期間を区切って『継続希望者』を募るかたちにして、『先着100名限定』など少し煽るように募集をかけました。実際には、100名を超えても希望者全員に付与しているのですが、枠に限りがあったほうが応募の後押しになるんじゃないかと考えたんです。 また、よく学んでいる人のランキングなども公開するようにしました。上司や同期のあの人がこんなに頑張ってるんだとか、部下がこんなに勉強しているのかといったことが可視化することで、やる気や競争心を引き出そうという狙いです。
実は、このランキングは弊社としてはかなりのチャレンジでした。もともと穏やかなメンバーが集まっていて、競い合うような風土があまりない会社です。なので、誰が上で誰が下かというのを数値化するのは抵抗があったんです。それでも、『積極的に学んでいる皆さんを、我々は応援している』というメッセージを伝えたかったし、実際に頑張っている人がたくさんいたので、それを知ることが学ぶ風土づくりには重要だと考えました。 ほかにも、Schooさんに協力してもらいながら社内報のような記事を作成し、募集時に案内するなど、さまざまなきっかけづくりを行ってきました」
篠原さん:「学ぶこと自体への関心度が高まったのではないかと思います。同時に、仕掛けていた人材開発室にとっても、気づきがありました。正直なところ、ランキングを出すとこの部署、この職種の人たちはよく見てるけど、そのほかはあまり多くないなど、偏りが見えてきてしまうのではないかと心配していました。ところが、蓋を開けてみると部署や職種に関係なく、いろんなポジションの方々が積極的に利用してくれていたことがわかったんです。
例えば施工管理の人は現場まわりが多くて忙しいから見ないんじゃないかと思っていたところ、ケタ違いに勉強していた方がいたり、『この部署、この職種の人たちはデジタルスキルなんて興味ないかもな』と思っていたら、本当に必要な部署の人たちよりも見ている人が多かったり……。最初から決めつけてかかるのは良くないなと反省しました。 ほかにも、ある部署で労働問題関連のコンテンツの視聴率が急激に上がって、『何か問題が起きているんじゃないか?』と検討したことがあったり、コミュニケーション系のコンテンツの視聴率が高く、社員自身が抱えている課題が見えてきたりと、社員の関心から人事施策に活かすなどさまざまな成果が見えてきています」
岡田さん:「私はメヌマ工場で火災報知器の電子基板の製造を行なっている部署にいます。専門学校などでプログラミングを学んできたわけではなく、普段の業務でも必須なわけではないのですが、能美防災に入社してから、先輩方に教わりながら独学でプログラミングを勉強してきました。 以前からプログラミングを学ぶための無料の動画、サイトなどはたくさんあります。
それらを見つつ、参考書なども購入して、自分なりに解釈してきたんです。ただ、正しい基礎知識がどのようなものなのか、きちんと理解できていない部分や、自分の解釈に自身が持てない部分もあった。わかっているつもりでも、いざ『こういうことをやりたい』と考えた時に、どう応用すればいいのかわからなかったんです。
そのため、まずはそこの学び直しを活用しました。 加えて、トレンドに関する講座も重点的に見ていました。いまデジタル技術としてどんなトレンドがあるのかを追うことで、業務改善に活かせるものはないか、じゃあそのトレンドに強い言語は何かと思考を発展させて、どんどん必要な動画を見ていった感じです」
「自分たちの部署は夜勤もあるので、平日は仕事に追われてほとんど時間を取ることができません。なので私の場合は、金曜の夜や土日に見ることが多かったですね。 Schooはいい意味で勉強っぽくないんです。一方的に講師の先生がしゃべり続けるという感じではなくて、受講生代表と呼ばれるインタビュアーがいて、講師の先生がいて、トーク番組を見ている感覚です。環境設定等、How to系はしっかりと見ていないとですが、ちょっと興味あるなという内容だったら、休日に子供と遊びながらイヤホンで聴き流しをして、気になったところを後で重点的に勉強する、なんてこともやっていました」
「Office TANAKAこと、田中亨先生の講座は特別な思いがありました。十数年前に初めてエクセルを業務で使い始めた時、関数もわからなくて、エクセルの神とも呼ばれていた田中先生のブログを見て、必死で勉強していたんです。 今回も改めてエクセルを学び直そうと講座を探していたところ、田中先生が教えている動画を発見し、なんだか初心に戻った気分でした。 20代の頃、ものぐさで計算のケアレスミスも多くて、作業を簡単にしたいと思っていた自分にとって、エクセルは救世主だったんです。VBAを覚えればもっと楽になると思って、そこから勉強するようになったんですよ。 そんな懐かしい気持ちで改めてVBAを学び直して、保守点検自体をなくすための電子化にも取り組むようになりました」
「デジタル化で業務改善を行う際に、ツールありきではなく、なぜその課題解決をしなければならないのか、という本質の部分を追求できるようになったと感じます。現在、私は普段の業務とは別に、メヌマ工場で『改善活動』という活動に参加しています。業務の効率化など、より働きやすくするための改善方法を検討するのですが、これまでは『こういうツールがあるから、それを使ってできるこういうことをやろう』と考えていたんだなと気づきました。でも、デジタル化が目的なわけではなくて、この課題を解決するためにこのツールが有効なのではないか、と考えることが重要なんだなと。 Schooの講座は、自分が何をやりたいのかわからないという時、考えを整理するために有効だと感じます。やみくもに独学で学ぼうとしても、『これじゃない』と思ったらそこで終わっちゃいますし、そのために高い参考書代を払うのはもったいない。せっかく会社が導入してくれているので、まずはSchooで学んで、何をやりたいのか整理し、そこから自分でも追求していくというのがとてもいいなと思っています」
篠原さん:「岡田さんは、機械学習の授業を見て、故障の予兆検査プログラムを開発したり、予算の問題で導入が難しかったRPAツールを自分たちで作ろうと、Schooの講座で勉強してくれたりと、積極的に学びを実践に活かしてくださっています。 理想は、岡田さんのように、みんなに基礎をSchooで勉強してもらい、それを実際の現場に活かしていってもらいたい。となれば実践の場が必要ですから、連動教育を増やしていかなければならないなと考えています。教育の可視化はできても、まだまだ受講した社員たちにどのような変化が起きているのか細かく追い切れていないのも事実です。 自律的に学び、その学びが実践につながるサイクルを提供していくことで、いかに学ぶメリット、意義を感じてもらえるようにするか。私たちも努力していかなければならないなと思っています」
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