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2016年の原油価格、為替、株価トレンドは?


 1. 原油価格の動向予想

原油価格は2つの理由から2016年も下落が続くと予想します。

1つは米国とロシアの対立です。原油価格は2014年後半から半年で一気に半分以下になりました。確かにシェールガスの登場で供給が増え、中国経済のスローダウンで需要が少なくなりましたが、半年で原油価格が半分以下になるほどの需給ギャップはありません。実は過去にも5ヶ月で原油価格が3分の1になった時がありました。1986年にサウジが生産枠の引き上げを行った時ですが、当時はアフガン侵攻で米国とソ連の対立が深刻化しており、結果として財政を原油に頼るソ連は5年後に崩壊しました。

今回も民主化(=欧米資本がロシア国営企業を買収できるようになる)の流れを止めるロシアのプーチン大統領と、米国の対立が原油安の1つのキーポイントであり、プーチン政権が倒れるか、米国とロシアが何らかの形で和解するまで原油安方向に誘導されやすい状況が続くと思います。ちなみに米国の最大級の投資銀行であるゴールドマンサックスは原油価格が20ドル台に突入すると予想しています。

もう1つの理由は需給です。原油安で国家予算に大きな打撃を受けている中東やロシアですが、現在の原油価格でも利益が出るため、少しでも赤字を埋めようフル回転で生産量を拡大しており、大量供給に歯止めが掛かりません。更にイランが制裁解除で世界市場へ大量供給を再開しようとしています。米国シェールガス・オイル産業もさらなる技術革新で、従来より低いコストでも採算合うように進化しており、市場では石油が余りすぎている模様です。

以上、需給面を見ても政治面を見ても2016年も原油安は続くと思います。ちなみに米国金利引き上げによるドル高も、ドルと反相関関係の動きになりやすい原油価格にとってはマイナスです。

日本人の生活にとって、原油価格下落は本来プラスです。ガソリン価格の下落や様々な石油関連製品の価格低下に繋がるからです。しかし、原油価格下落が止まらなければ、日本経済全体にマイナスの影響を与えてくる可能性があります。

まず、原油価格が下落すると、エネルギー輸入国である日本の貿易収支を改善させる動きが強まります。むろん、長期ではプラスなのですが、貿易収支の黒字が定着すると為替は円高に振れやすくなります。円高になると輸出が不利になりますので、企業業績が悪化し、足元の景気が悪くなる可能性があります。

次に、原油安に耐えきれなくなった海外のエネルギー関連企業の破綻が世界的な金融の混乱をもたらし、こちらも景気を悪化させる可能性があります。当然景気が悪化すれば雇用の悪化を招きやすくなります。

このように考えていくと、原油価格は我々の生活にも大きな影響を与えてきます。現在進行している原油安を、ガソリン価格が下がるということで歓迎するだけでなく、景気が悪化しても良いようにきちんとした家計管理や資産形成を行う必要があると思います。


 

 2. 為替の予想

為替は、実需取引による需給金融政策という2つの要素で決まります。

まず実需取引による需給ですが、これは貿易によって実際に必要になる為替によって発生する需給要因のことです。基本的に貿易黒字になると外貨を大量に売却して日本円を買う必要があるので円高に、貿易赤字になると円安に動く傾向があります。日本は東日本大震災まで貿易黒字が続いてきました。ところが東日本大震災をキッカケに原発が止まり、莫大なエネルギーを輸入する必要がでてきました。ここから日本は貿易赤字に転落しました。貿易赤字は長期的には国家にとってマイナスですが、短期的には為替が円安に振れやすくなるので、景気にプラスの効果があります。

一方、金融政策についてですが、これは金利を引き下げたり、紙幣を大量に印刷して市中に供給する量的緩和などの金融緩和政策を取ると円安になりやすくなり、逆に金利を引き上げるなどの金融引き締め政策を採ると円高になりやすくなります。現在日本は異次元の金融緩和という、過去にもないほどの大規模な金融緩和政策をとっているので、基本的には円安傾向が続いています。一方で、米国は金利を引き上げる段階に入っていますので、金融引き締め政策を採っているため、ドル高になりやすくなっており、これも円安の材料となっています。

以上の要因を考えると、日米の金融政策の観点から、しばらくは円安(=ドル高)傾向が続くと思われます。円安は生活必需品の上昇には繋がりやすく、生活にはマイナスですが、日本の企業業績にとってはプラスですから景気が良くなることに繋がります。(ただ、恩恵を受けるのは大企業がメインとなりますので、給料や雇用に好影響を及ぼすようになるかは人によって異なることになりますが)。

そしてさらに注意が必要なのは2016年後半から円高に動く可能性があることです。これにはいくつか理由があります。

1つ目は前述のとおり、原油価格の下落が進むと日本の貿易黒字が定着するようになることです。

2つ目に金融政策ですが、現在、2016年はある程度米国の金利引き上げが予想されていますが、世界経済が基軸通貨である米ドルの利上げに耐えられるほど良くならなければ、金利の引き上げは難しくなるかもしれません。もしも金利が予想ほどに引き上げられなければ、期待感でドルが買われていただけに逆にドルは下がる(=円高となる)可能性があります。

3つ目は日本が行っている異次元の金融緩和ですが、追加金融緩和ができるのは、あと1回程度とも言われています。金融緩和をし続けると、国際的な非難を受ける可能性があることと、将来のバブルを引き起こしたり、通貨の急落を引き起こす弊害が出やすくなるためです。

もちろん、円高になるかどうかは来年の状況をみないとわかりませんが、仮に円安になった後に円高になると、不況で給料が下がった上に、円高になっても企業が不景気で利益を確保しようとするため、生活製品価格が下がらないままというダブルパンチになる可能性があります。このように考えていくと、どのような形でも生活水準を維持できるようにしっかりとした家計管理が重要になってくると思います。


 

 3. 株価推移について

2016年の株価については前半までは比較的堅調な株価推移が続くと予想しています。米国は利上げを行うほど好景気ですし、日本や欧州は金融緩和を行っており、更なる追加緩和が期待されるためです。また、いわゆる「セルインメイ(5月に売れ)」という格言の通り、例年のアノマリーとして世界的に株価は4月までが高くなりやすく、5月~10月にかけて下がりやすい傾向があります。さらに言えば、2016年7月は参院選が予定されており、前半は選挙対策で景気刺激策が出やすいと思いますし、米国も大統領選挙の年ですから、株価は堅調な推移が期待されやすい年であることも見逃せません。

ただし、後半がどうなるかはわかりません。米国は利上げを続けていく見通しですが、基軸通貨である米ドルの利上げに、世界が耐えられるほど景気が良い状態が続くのかどうか。仮に米国の利上げが進んで米ドル高が進み、米ドルとは反相関関係にある原油をはじめとした資源価格が更に下落していくようなことになれば、資源会社の破綻や資源国の財政不安などで金融市場は大荒れとなる可能性があります。また、日本株を見てみると、世界の景気が思ったほどに良くならなかったり、前述のような金融不安が起こって、ドルの利上げが予想以上に進まない形となれば、為替が円高に振れて株価に悪影響が出てくる可能性があります。

そして消費者にとっての注意は2017年の4月に消費税の10%への引き上げが待ちかまえている事です。仮に前述のような株式市場が不安定な状態になる中で消費税が10%に引き上げられれば、生活コストが上昇することはもちろんですが、不景気によって給料にも悪影響が出て、さらに生活は苦しくなるといった事態にもつながりかねません。


以上、景気に振り回されないようにするためにも、来年からは一段と、しっかりとした家計管理や資産形成を行っていく必要が出てくるようになるでしょう。

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