キャリア教育とは,本来,どういうものなのか,キャリア教育をどう理解し,どのように推進していけばよいのかを考えてみることが,この授業のねらいです。
キャリア教育という言葉が,日本の教育界で一気に脚光を浴びるようになったのは,2003年に政府の若者自立・挑戦戦略会議が「若者自立・挑戦プラン」を策定して以降のことです。文部科学省は,このプランの中で,小学校・中学校・高校を通じた「キャリア教育の推進」を謳いあげ,その後は,キャリア教育の推進施策を精力的に展開してきました。
それから十年あまり。——少なくとも教育現場においては,キャリア教育への取り組みが普及しました。学校でカラスの鳴かない日はあっても,「キャリア教育」という言葉を聞かない日はありません(たぶん)。
そういう意味で,「キャリア教育的なもの」は普及したのですが,人々がこの言葉によって何をイメージするのか,キャリア教育をどう理解し,どのように教育課程や日常の教育実践に落とし込むのかに関しては,教師たちの間でも,いや,教育行政関係者や研究者の間でさえ,かなりの差異があるのが現実です。
バリエーションがあると言えば,格好いいかもしれません。しかし,「キャリア教育」として想定しているものが相互に異なっていると,議論は,当然にもすれ違います。時には,不毛な言い争いになることもあります。そうした“混乱”や“すれ違い”を解きほぐし,これまでの“誤解”や“曲解”にも挑みつつ,キャリア教育のウソとホントに迫っていきます。