このコースでは、古今東西の文学での4つの場面に光を当てます。いずれも傑作の生まれる瞬間、あるいは変化する瞬間を捉えます。文学は生き物のように、誕生と変容を繰り返します。 どのようにして、イタリアの説話がシェイクスピアの手によって、永遠の恋愛神話と化したのでしょうか。どのようにして、今私たちが慣れ親しんでいる「小説」というジャンルがイギリスで生まれたのでしょうか。どのようにして、『源氏物語』の世界が能で演じられているのでしょうか。どのようにして、プルーストは自らの記憶を素材に、壮大な作品を構築したのでしょうか。 こうした問いに答えていくことによって、文学の深い味わいを共有していきたいと思います。
3限目 『源氏物語』から能「葵上」へー文学からの変容
能の演目には、古典文学を題材にしたものがあります。しかし、そこで描かれるのは古典文学“そのまま”ではありません。この授業では源氏物語を題材にした能の「葵上」を取り上げ、能の主題が『源氏物語』のそれとどう違うのか、また、どのように変容しているかを、能の舞台演出を紹介しながら考えていきます。