ヨーロッパ芸術の諸契機

ヨーロッパ芸術の諸契機

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コース概要

西洋における芸術が、社会史・精神史とどのように関わってきたのかを、古代からルネサンスまでの4名の人物とその活動を例に挙げながら考えます。 西洋芸術史において、さまざまな制作活動がそれを生み出した環境とどのような関係を持ってきたのか、具体的な認識を得ることができます。

1限目 古代ギリシアの喜劇詩人アリストパネース vs.哲学者たち

ギリシア演劇の社会的な位置付けについて、喜劇作家のアリストパネースの言葉をもとに考察します。古代ギリシアでは、演劇は単なる芸術作品というだけでなく、きわめて社会的な活動でもありました。古代ギリシアで生まれた芸術作品とそれを受容する社会の関係はどのようなものだったのでしょうか。そのあり方を、アリストパネースの作品にみられる表現や、哲学者プラトーンの演劇を巡る言説を紹介しつつ学びます。

2限目 修道院長シュジェにとっての大聖堂

今回の授業では、サン=ドニ修道院長シュジェと彼の教会装飾についての見解を取り上げます。12世紀末頃からゴシックの壮麗な大聖堂が各地に作られていきます。これはそれまでの教会堂や修道院とは桁違いの規模を持ったものでした。また大聖堂の内部はステンドグラスを通過した輝かしい光で満たされていました。このような新しい建築物は、工法上の革新だけでなく、それを求める社会的な、また宗教的な必要性もあって生み出されました。授業内では、サン=ドニ教会堂やシャルトルのノートル=ダム大聖堂を例に挙げながら、教会の内部空間の構造を説明するとともに、教会装飾を巡る当時の議論を紹介します。

3限目 ルネサンス建築家ブルネッレスキの実験

ルネサンス初期の天才ブルネッレスキを取り上げます。ブルネッレスキはゴティックの建築工法をもとにしつつ、古代の建築物の研究も取り込んだ新しいデザインの建物を作ります。彼の幾何学的で明快なデザインの基本には無駄のない合理性があります。しかしまたそれは15世紀ヨーロッパのひとつの独特な世界観の作ったものでもありました。授業ではフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ教会やサンタ・マリア・ノヴェッラ教会を例に挙げてルネサンス建築の特徴を学ぶとともに、ブルネッレスキが建築や透視図法によってどのような空間を目指していたのかを考えます。

4限目 レオナルド・ダ・ヴィンチの自然観

この授業では、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた絵画を紹介します。レオナルドの作品には不可思議な曖昧さがあります。ブルネッレスキやアルベルティらの規則づけた遠近法で鞏固に構築された世界ではなく、どことなく不気味で何かがうごめいている宇宙です。ルネサンス以降、単純に合理性や科学的思考だけが支配的になっていくのではありません。近代のもうひとつの側面がレオナルドの作品にはあらわれていて、そこでは近代芸術を先取りするかのように個人の主観や想像力がはたらいています。授業ではおなじみの《モナ・リザ》や《聖アンナと聖母子》などを例に挙げながら、彼の手記にみられる自然や絵画についての記述に基づき、レオナルド独特の世界観を探ります。

こんな人にオススメ

西洋の文化芸術に関心を持っている方