4/26(Fri)
【先生紹介】
弁護士 菅原 稔先生
1987年宮城県生まれ。2012年弁護士登録。2013年AZX Professionals Group入所。AZXではITベンチャーを中心に、各種契約書や利用規約等のレビュー及び作成、ビジネスモデルの適法性審査などに携わる。ベンチャーの役に立つ法務・税務等の情報を配信するAZXブログの管理人。
<学べるポイント>
利用規約を作成する際に、制作者が気を付けたい「権利帰属」に関する3つのポイントと、利用規約を作成する前に会社として考えておくべきことについて学べます。
<以下書き起こし全文>
どういう規約が炎上するのかという話ですが、今までの過去の炎上を見ると、ユーザーが投稿した情報が誰に著作権があるのかという「権利帰属」で炎上する例が多いです。
直近の炎上例を見て行きましょう。「スマートフォン上でオリジナルのTシャツを作れる」というサービスがあって、その利用規約にこういった情報を設けたと。すると、ネット上で炎上してしまった。特に皆さんが気にしたのが、この赤字で書いてある部分です。
「著作権、Tシャツのデータを当社に対して無償で譲渡します」とか、「著作者人格権を行使しないことに同意します」だとか「当社が実施するキャンペーンでデータを自由に使えます」という情報があって、ネットユーザーの中で炎上してしまったということがあります。
そもそもなんで炎上するのか。理由は2つあると思います。
1つ目は「やりすぎた」というパターンですね。取れるものは何でも取ってしまおうと考えていて、がっつり取ってしまったら案の定炎上した、というパターン。
2つ目は「こんなはずではなかった」というパターン。こっちの方が圧倒的に多いと思います。先ほどの事例もこっちだと思います。
本来会社はそのようなことをやろうと思っていなかったのに、文言だけ見るとひどい権利を取っているように見えるので、こんなはずではなかったのに炎上してしまった、というパターンですね。なので炎上しないためには、1つ目にまず欲張りすぎない、ということ。ユーザーの権利を何でも会社で確保しとけというのは、最近のネットの風潮としても合わないですし、そこは危ないかなと思います。
ただ一方で、将来のマネタイズの芽を潰さないということも大事です。権利を全く取っていないと、本来であればこのコンテンツを会社が使えばいろんなことができたのに、権利を取っていないから使えません、ということになってしまいます。なので利用規約を作る時点で何がやりたいのか、というのをはじめから考えておいて、それに必要な範囲で権利を確保しておくということが重要になります。
2つ目は、利用規約を自分がユーザーの時にあまり見ないと思うのですが、実際には見られているということは意識した方がいいと思います。その上で、できれば専門家のチェックを受ければいいと思います。
さっきの炎上例の直後、この利用規約がどう変わったのかというと、著作権はユーザーに帰属することになりました。
もともとこうしようと思っていたのでしょうけれども、利用規約がそうなっていなかったのでユーザーに帰属するようになったと。さらに会社が使える範囲も、サービスの円滑な提供だとか、システム構築、メンテナンスの改良に必要なすごく狭い範囲でしか使わない、ということを明示したと。また、投稿データを使う場合にはシェアボタンを押した人だけの投稿を使いますよ、という形になりました。
こういう感じだと炎上することはなくなりますので、あまり幅広く取り過ぎないという風にした方がいいかな、と思います。