公開日:2021/07/13
更新日:2022/08/24

コーピングとは?定義から企業での活用方法まで詳しく解説

コーピングとは?定義から企業での活用方法まで詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人間は周囲との関係から、何らかのストレスを感じてしまうことがあります。自分のストレスを理解し対処する方法を身に着ければ、ストレスとうまく付き合っていくことができるでしょう。この記事ではストレス対策の1つ、コーピングとは何かについて詳しく解説します。

 

01コーピングとは?

コーピングとは英語で「処理する」「対処する」といった意味を持つ「cope」を語源とし、アメリカの心理学者リチャード・S・ラザルスによって提唱された、ストレス対応に関するメンタルヘルス用語です。 本来は、物体に圧力を加えることで生じるゆがみを指す物理学用語だったストレスを、カナダの生理学者ハンス・セリエが発表した「ストレス学説」では、生理的な意味で捉えるようになり、そのストレス理論をさらにラザルスが深めて「ストレスコーピング理論」を構築しました。 このことからコーピングは、ストレスコーピングとも呼ばれます。

コーピングとはストレスへの対処行動を取ること

コーピングとは、ストレスを感じていることを自覚し、それに何らかの対処行動を取るストレスマネジメント手法の1つで、1980年代に世界に広まったのですが、特にアメリカの学校や企業では早くから採用されていたため、効果が実証されるのも早かったと言えるでしょう。 誰にでも通用する一般的なノウハウではなく、個人のストレスの原因や受け止め方に応じて、どのように自覚し向き合うかを自分自身で考えることを指します。

ストレスコーピング理論におけるストレス発生のプロセスについて

ラザルスの「ストレスコーピング理論」では、ストレスの発生するプロセスは「ストレッサー」「認知」「ストレス反応」の3つに分けられるので、それぞれご紹介します。

ストレッサー

ストレッサーとはストレスを発生させる原因や環境のことで、4種類に分類され、主な内容は下表の通りです。 分類 内容 物理的ストレッサー 気温・労働環境・労働時間 化学的ストレッサー 公害・薬物・一酸化炭素 生物的ストレッサー 病気・飲酒・睡眠不足・アレルゲン・ウィルス 心理・社会的ストレッサー 対人関係・社会的評価・ノルマ・転職・退職・昇格・降格・恋愛・結婚・離婚・出産 普段ストレスの原因となっていることの多くは、「心理・社会的ストレッサー」に分類されることがわかります。

認知

認知とは、人間がそれまでの経験や身に着けた思考により、ストレスをどのように捉えるかということを指します。 例えば「納期は1週間以内」と伝えられた時、今まで納品するまで1週間以上かかり、そのことに不満を伝えられてきた経験を持つ人であればそれをストレッサーとして認知しますが、いつも1週間で納品してきた人は特に普段と変わらないと認知するということです。 このようにストレッサーをどのように認知するのかを「評価」と呼びます。

ストレス反応

ストレスを認知した人がそれを軽減できず、ストレッサーにさらされ続けることで心身に現れる症状をストレス反応と呼びます。 ストレス反応は心理的な反応、身体的な反応、行動面の反応の3つに分類されます。それぞれの内容は、下表の通りです。 ストレス反応の種類 内容 心理的な反応 活気の低下・イライラ・不安・抑うつ 身体的な反応 体の節々の痛み・頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠 行動面の反応 飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加 普段の生活を振り返り、ストレッサーや認知に働きかけを行ってストレス反応を事前に防止するのがコーピングの目的だと言えるでしょう。

コーピングが求められる背景

なぜ今の時代、コーピングが求められるのでしょうか。 ストレス反応の種類として、心理的・身体的な反応があることでわかるように、ストレスは脳梗塞・心筋梗塞・うつ病・適応障害など、さまざまな疾患の原因となります。 病気の人が増加すれば医療費の問題、労働人口の低下、自殺率の増加など、さまざまな社会問題を引き起こしかねません。 また強いストレスは、仕事におけるパフォーマンスやモチベーションの低下にもつながるため、企業は、コーピングやアンガーマネジメントなどのストレスマネジメントの手法を取り入れ、社内の労働環境の向上に取り組むようになったのです。

 

02コーピングの種類について

コーピングとは具体的にどのような分類ができるのでしょうか。 まずアプローチ方法によって、「問題焦点型」「情動焦点型」「ストレス解消型」の3種類に分類でき、その対処法でさらに細分化するためそれぞれの内容をご紹介します。

問題焦点型コーピング

ストレッサーに直接働きかけて変化を促し、問題を解決しようとする考え方です。 自分の置かれている環境によっては難しい対処方法となりますが、根本的な解決が見込めるのがメリットと言えるでしょう。

問題焦点型コーピング

ストレッサーとなっている問題を根本から解決し、ストレスそのものをなくす対処法です。 例えばストレッサーがパワハラ加害者の場合、その人に働きかけて問題を解決するので得られる効果が高い一方で、この方法を使用できる場面は少ないかもしれません。

社会支援探求型コーピング

ストレッサーに働きかける際に周囲の人たちに相談し、協力を仰ぐことで問題を解決する対処法です。 自分1人では解決が難しい場合に効果的で、問題を共有することでストレスも分散されます。

情動焦点型コーピング

ストレッサーに対する感じ方を変えることで問題を解決しようとする考え方です。 ストレッサー自体を変化させたり、すぐにストレッサーから離れられなかったりする場合でも対処が取れるのがメリットと言えるでしょう。

情動焦点型コーピング

ストレッサーに向き合う自分の発想を変えることで問題を解決するという対処法です。 カウンセラーや親しい友人などに話をして、感情を整理したり発散したりした後、ストレッサーの良くない面だけでなく良い面に着目し、その価値について考えます。

認知的再評価型コーピング

ストレッサーに向き合う自分の発想をポジティブに変えることで、問題を解決するという対処法です。 しかし納得感のないまま無理に発想をポジティブに転換しようとすると、逆効果となることに注意が必要だと言えます。

ストレス解消型コーピング

既に感じたストレスを発散することで、他の手法より簡単で自分に合った対処が取れますが、根本的な解決にはつながりません。

気晴らし型コーピング

自分の趣味や好きなことを取り入れて、気分転換を図る対処法です。 最も一般的に行われている手法だと言えるでしょう。

リラクゼーション型コーピング

心身の緊張を緩め、くつろぐことで感情を穏やかにする対処法です。 具体的にはマッサージ、体操、腹式呼吸、瞑想などの手法が挙げられます。

 

03企業におけるコーピングの活用方法

さまざまなアプローチ方法や対処法で分類することのできるコーピングですが、企業においてはどのように活用するのが望ましいのでしょうか。 コーピングについて1人1人が学ぶのは大切ですが、すぐに実践できるものではありません。 そのため、個人に任せるだけではうまくいかないことを企業がサポートする形を取ると、コーピングがうまく活用できるでしょう。 具体的な方法をご紹介します。

コーピングについての研修やe-ラーニングを行う

企業におけるストレス対策の重要性を従業員に認識してもらうため、コーピング、パワハラ、セクハラ、メンタルヘルスなどについての研修を定期的に開催したり、e-ラーニングを導入したりすることが重要です。 定期的に行うことで、従業員がコーピングを少しずつ実践に繋げられるようになったり、マネジメント層に労働環境について意識を高めてもらったりすることが可能となるでしょう。 厚生労働省の「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳」ではストレスのセルフケアについてのe-ラーニングコンテンツが提供されています。 積極的に活用して、従業員がコーピングを実践できるようサポートしましょう。 参考:厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳 15分でわかるセルフケア」

コーピングに関連する制度を整える

従業員のストレスを早期に発見し、対処するための制度を整えるのも効果的と言えるでしょう。 具体的な制度を3つご紹介します。

メンター制度の導入

企業におけるメンターは、新入社員や後輩の日々の業務や精神的なサポートをする人と位置づけられていますが、相談できる相手を明確化できる制度なので、他の従業員にも適用を広げるだけでコーピングを自然に行うことのできる環境が整います。 所属部署を超えて相談できるメンターを定めておくというのも、相談者が話しやすくなるので効果的と言えるでしょう。

ストレスチェックを行う

2015年12月より、労働者のメンタルヘルス不調防止を目的としてストレスチェック制度が施行されています。 これに伴い厚生労働省ではストレスチェック制度が企業で円滑に導入できるよう、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で配布しているのです。 実施に関する相談窓口や資料も配布されているので、詳細はホームページで確認してみましょう。 参考:厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳 ストレスチェック制度について」

カウンセリングが受けられる体制を作る

社外の、人事評価に直結しないカウンセリングの専門機関を利用できる制度を作るというのも良い方法です。 このことで従業員は評価を気にせず相談でき、専門家による適切な対処をしてもらえるので、問題が早期に解決する可能性が高まります。


 

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04まとめ

コーピングとはストレスコーピングとも呼ばれ、ストレスを感じていることを自覚し、それに何らかの対処行動を取るストレスマネジメント手法の1つだとわかりました。 企業では従業員にストレスマネジメントについての認識を高めてもらうよう努力し、コーピングにおいて個人では解決しにくい問題をサポートできる制度を導入するのが望ましいでしょう。 仕事におけるパフォーマンスを最大限に発揮してもらうためにも、従業員の心身の健康に留意していきましょう。

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