更新日:2025/10/03

マッキンゼーの7sとは?導入効果や事例を紹介

マッキンゼーの7sとは?導入効果や事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

組織の改革や課題解決に「マッキンゼーの7s」というフレームワークが用いられることがあります。7つの経営要素を全体的に考慮しながら改革を進めることで、効果が期待されます。本記事では、マッキンゼーの7sの7つの項目と導入の流れやポイントを解説します。

 

01マッキンゼーの7sとは何か

“マッキンゼーの7S

マッキンゼーの7sとは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが1980年代に提唱した組織分析のフレームワークです。戦略や構造といったハード面だけでなく、人材や価値観といったソフト面を含めた7つの要素を整理し、相互にどのような関係を持っているかを把握することが目的とされています。7つの要素をバランスよく整えることで、組織全体の変革や改善を効果的に進められるとされています。

このモデルは、単に組織の仕組みを整えるだけでは成果につながらないという気づきから生まれました。ハードとソフトの両面を同時に見直すことで、経営資源の活用度を高め、持続的な成長を実現することが可能になります。今日でも多くの企業に活用されており、組織改革や経営戦略の実行における有効な指針として知られています。

▶︎参考:Enduring Ideas: The 7-S Framework

 

027sの要素

マッキンゼーの7sは、組織を構成する7つの要素を整理し、相互の関係性を分析するためのフレームワークです。戦略や組織構造などの「ハードの3s」と、人材や価値観といった「ソフトの4s」に分類され、両者のバランスを整えることで組織力を最大化できるとされています。

ハードの「3s」

前項で解説したように7sにおける「ハードの3s」は次の要素が挙げられます。

  • ・戦略(Strategy)
  • ・組織構造(Structure)
  • ・システム(System)

これらのハード要素は、組織が明確な方向性を持ち、効率的に運営されるための基盤を提供します。他の4つのソフト要素と整合性を保ちながら、組織のパフォーマンスを最大化することが求められるのです。ここでは、上記の3要素について、解説していきます。

戦略(Strategy)

戦略とは、自社が掲げる企業理念を達成するための目標への取り組みを具体化させたものです。他社と比較した自社の強みや、優先して取り組むべき課題を分析します。また、目標達成のために事業の方向性を定め、人材などの経営資源をどのように配分するかを戦略的に分析します。

組織構造(Structure)

組織構造とは、企業の組織の仕組みの特徴のことです。例えば、機能的である、分権化しているなど、自社の組織の在り方を分析します。また、部門間の地位、役職ごとの職務権限や、指揮命令系統の構造なども分析します。これには、上司と部下の関係や、コミュニケーションがどのように取られているのかも含まれます。

システム(System)

システムとは、社内の情報システムのようなハード系システムに加えて、業績考課制度、予算管理制度、目標管理制度などの仕組みのことです。また、人事評価システムや給与体系、人材採用や育成の仕組みなども含まれます。企業が組織として業務を遂行するのに必要は仕組みは、業務マニュアルのような作業手順、ルールが明文化されたものも含め、さまざまなものがありますが、これらの仕組みを分析します。

ソフトの「4s」

7sにおける「ソフトの4s」は組織の文化や人間関係に関連する要素であり、以下の4つの要素から成り立っています。

  • ・スキル(Skill)
  • ・人材(Staff)
  • ・スタイル(Style)
  • ・共通の価値観(Shared Value)

これらのソフト要素は、組織の内面的な力を高め、ハード要素と調和して組織全体のパフォーマンスを最大化するために不可欠です。ソフト要素が強固であることで、ハード要素の変更や調整がスムーズに進み、組織の適応力と柔軟性が向上します。ここでは、上記の4要素について、解説していきます。

スキル(Skill)

スキルとは、組織として優れているポイント、他社と比較して抜きんでているポイントのことです。これには、販売力、技術力、マーケティング力などが含まれ、戦略を決定しても、これらのスキルが不足していれば、目標の達成はできません。一方、優れた組織を持つ組織は、独自のビジネスを展開して、マーケットをリードすることが可能になります。

人材(Staff)

人材とは、企業に属する人材そのもので、効率的な採用や教育が実施されているかの分析を行います。個々の人材の能力や業務に対するモチベーション、またそれらを改善するために企業が行っている取り組みなども含まれます。そして、人材のタイプを分析した後に、重要な職種や特質別に分類、配置します。

スタイル(Style)

スタイルとは、経営方針や企業風土のことです。経営陣のリーダーシップがどのように取られているか、暗黙の行動規範はあるかなども、企業風土を作り上げる要素です。また、企業によって意思決定の方法が異なり、トップダウンかボトムアップかも分析します。そして、企業が求める人物像も、企業のカラーに影響を与えると言えるでしょう。

共通の価値観(Shared Value)

共通の価値観とは、企業が掲げる理念やビジョン、行動指針など、企業活動の基盤となるものを指します。これらの価値観を共有することで、事業活動を円滑に進めていくことができますが、社員と経営陣の考え方や理解度に差がないかどうかも分析します。

 

037sの導入で得られる効果

マッキンゼーの7Sフレームワークを導入することで、次のような具体的な効果が得られます

  • ・課題とその優先順位を明確化できる
  • ・従業員モチベーションが向上する
  • ・マネジメント力の向上につながる
  • ・人事評価の改善に役立つ

これを導入することで、組織全体のパフォーマンスが向上し、持続的な成長と競争力の強化が期待できます。ここでは、それぞれについて具体的に解説していきます。

課題とその優先順位を明確化できる

7sを用いて現状を分析することで、課題を明確にすることができます。そして、どこから改善すればいいのか、といった優先順位もつけやすくなります。 また、分析する際は、企業全体だけでなく部署単位、チーム単位でも細かく分析すると、さらに課題がより明確になります。

従業員モチベーションが向上する

7sは組織や従業員についてあらゆる角度から分析するため、「目標達成には何をするべきか」「人材育成や評価方法は正しいのか」などにちて見直すきっかけになります。 それぞれに合う能力開発の機会提供や人事評価制度を設置できれば、従業員のモチベーションは向上します。従業員にとって働きやすい環境を提供することは、離職率の低下にもつながるでしょう。

マネジメント力の向上につながる

昨今では、プレイングマネージャーとして、自分の目標を追いながらもマネジメントを行わなければならない状況が多くなっています。しかし、十分なマネジメント力が備わっていなかったり、そもそもマネジメントの経験がないと、組織がうまく機能しません。7Sの導入はマネジメント力の向上につながるのです。

人事評価の改善に役立つ

7Sフレームワークは、人事評価の基準や方法を見直す際にも有効です。「Staff(人材)」の要素では、適材適所の配置を見直し、個々の能力を最大限に引き出す配置を実現します。「Style(スタイル)」の要素では、リーダーシップやコミュニケーションスタイルを改善し、公正で透明性のある評価制度を構築します。また、「Skills(スキル)」の要素では、評価基準を明確化し、従業員がどのスキルを向上させるべきかを具体的に示すことができます。これにより、公平な評価を通じて従業員の成長を支援し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能になります。

 

047sの導入の流れ

“7sの導入の流れ

7s導入の流れとして、4つのステップが存在します。これらの流れは、7sを効果的に導入し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。ここではそれぞれのステップについて具体的に解説していきます。

自社の現状を分析する

まず、7sの7つの要素に照らし合わせて、自社の現状を分析します。例えば、ハード面の3つの要素に照らし合わせ、会社の中心となる戦略は何か、どのようなチームがどのようなシステムで動いているかを分析します。 また、ソフト面の4つの要素として、労働力を構成しているスタッフとスキル、上司はどのようにチームを率いているか、会社としてどのようにコアバリューやビジョンを浸透させようとしているかを分析できます。7sを一つずつ分析する中で、自社の強みや課題となるポイントが見えてくるでしょう。

重要な課題を明確化する

自社の現状を分析したら、その中から重要な課題を明確化します。組織改革において放置することのできない課題点をピックアップして、優先順位を付けるようにします。前述の通り、ハードの3つの要素は取り掛かりやすい一面がありますが、ここで明確化するのは改革を妨げかねない重要な課題であり、手の付けやすさを優先させるためではありません。

改革案を作成する

重要な課題点を明確化し、優先順位を決めたら、改革案を作成します。解決案は、7sの視点で課題となる経営要素をどのように改善するかを考えますが、その際にその他の経営要素との関わりも含めて改善方法を決定します。

現状と比較してブラッシュアップする

改革案の作成が終わったら、それを実施した場合と現状との間にどのような変化が生まれるかを予想します。現状と比較して、期待しているほどの結果が得られないと予想される場合は、再び改革案をブラッシュアップするようにしましょう。

 

057sを導入する際のポイントと注意点

7sを導入する際は、各要素を個別に見るのではなく、全体のつながりを意識することが重要です。特に「共通の価値観」を出発点に据え、ソフト面を軽視せずに段階的な実施計画を立てることで、現場の実態に即した改善が可能になります。また、経営層のリーダーシップと明確なコミットメントを示すことが、組織改革の成否を分ける決定的な要素となります。

1. 7つの要素のバランスを重視する

7sの効果を発揮させるには、7つの要素をバランスよく整えることが欠かせません。例えば、戦略が優れていても、組織構造や人材育成が追いついていなければ成果は限定的です。ハードとソフトのどちらかに偏ると、変革の一貫性が崩れ、持続性を失う可能性があります。全体を俯瞰しながら要素間の整合性を保ち、統合的に施策を進める姿勢が必要です。

2. 「共通の価値観(Shared Value)」から着手する

7sの中心に位置する「共通の価値観」は、組織の方向性を決める土台となります。価値観が明確で共有されていれば、戦略やシステム、人材配置の判断が一貫しやすくなります。まずは理念やビジョンを整理し、全社員が理解・納得できる状態をつくることが改革の第一歩です。ここを出発点とすることで、7s全体の連動性を高めることができます。

3. ソフト面の重要性を理解する

システムや組織構造といったハード面は変更が比較的容易ですが、価値観やスタイルなどのソフト面は定着に時間がかかります。しかし、組織文化や人材のモチベーションが改革の成功を左右するため、ソフト面を軽視することは大きなリスクです。特に大規模な変革では、コミュニケーションの強化やリーダーシップ育成を重視することが効果的です。

4. 段階的な実施計画を立てる

7sの導入は一度に完結できるものではありません。要素間の影響を考慮しながら、短期・中期・長期の段階的な計画を設計することが現実的です。例えば、初期段階では組織構造やシステムの改善を行い、その後に人材育成や価値観の浸透に取り組むといった流れが考えられます。計画を段階的に進めることで、混乱を防ぎながら効果を積み重ねることができます。

5. 現場の声を反映させる

経営層が描く理想だけでなく、現場の意見を取り入れることが7s導入の成功には不可欠です。制度や仕組みが現場の実態に合っていなければ、形骸化してしまいます。現場スタッフからのフィードバックを収集し、改善策に反映するプロセスを取り入れることで、施策への納得感と定着率を高めることができます。双方向の対話が改革を支える基盤となります。

6. 経営者のリーダーシップとコミットメントを示す

7sを効果的に導入するには、経営者が強いリーダーシップを発揮し、自らの言葉と行動で改革への意思を示すことが求められます。経営層の関与が不十分であると、現場が変革を一時的な取り組みと捉え、定着しにくくなります。トップが継続的に関与し、成果や進捗を明確に発信し続けることで、組織全体が一丸となって改革を推進できるのです。

 

067sの導入事例

ここまで解説してきたように、マッキンゼーの7sは、導入を通して、組織の改革や課題解決に役立たせることができます。では、実際に7sを導入した企業は具体的にどのような取り組みを行い、どのような効果があったのでしょうか。ここでは具体的な企業の導入事例を紹介します。

Mipox株式会社

マッキンゼーの7sを導入して組織改革を成功させた企業事例として、Mipox株式会社を挙げることができます。同社は、電子部品に使われる研磨フィルムの製造などを手掛け、世界トップシェアを誇る老舗企業です。 7sのフレームワークを導入する背景に、顧客管理が一元化されておらず、情報を探すことに多大な時間が費やされているという課題がありました。そこで、情報を一元化するためのシステムを導入することにしましたが、7sの視点から、システムを導入するだけでは有効活用されない可能性があることを踏まえ、情報を探すことを当たり前と考えていた社員の意識、仕事スタイルも含めて改革することにしました。 社員が共通の問題意識を持てるよう社内コミュニケーションツールも導入したところ、情報は個人で占有するのではなく、組織で共有するほうにメリットがあることに気づき、意識改革および作業効率化に繋げることができました。

【参考】Mipox株式会社 - 研磨剤・研磨フィルムの加工メーカー

株式会社サンゲツ

株式会社サンゲツは、愛知県名古屋市西区に本社を置く、インテリア商品を扱う専門商社です。同社は、営業担当者の残業時間や休日出勤が多いという課題を抱えていました。 それが社員のモチベーションにも影響していることが発覚し、早急に改善を図ることになります。経営状況を7Sのフレームワークで分析したところ、システムに問題があることが分かりました。営業担当者は外回りで社外で過ごす時間が多いような場合でも、事務所に戻らなければ完了できないような毎日の必須業務があったのです。そこで新たなシステムを導入し、業務をクラウド化しました。遠隔で事務作業ができることになったことで、社員の残業時間と休日出勤は大幅に減少しました。また、営業活動を可視化することで、効果的な営業ができるようになり、業績にも良い影響を与えたようです。

【参考】サンゲツ|カーテン、壁装材、床材、椅子生地、ラグ等のインテリア商品の販売


 

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07まとめ

マッキンゼーの7sについて、7つの項目や導入の流れ、注意すべきポイントを企業事例を含めてまとめました。IT技術の急速な進歩、働き方改革の推進、コロナ渦を中心とする釈迦情勢の変化などの影響を受けて、多くの企業が何らかの改革を迫られています。改革を成功させるには、一つの要素だけでなく、全体を見た取り組みが重要です。そこで、組織改革や課題解決の効果的なフレームワークとして、マッキンゼーの7sが注目されています。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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