公開日:2022/10/20
更新日:2024/01/12

リスク管理とは?そのプロセスやリスク管理の実効性を高める方法を解説

リスク管理とは?そのプロセスやリスク管理の実効性を高める方法を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

社会環境の激しい変化にともない、不確実性が高まり、企業を取り巻くリスクは確実に多様化しています。そのため、リスクに対する策を講じることで、経営体制を万全にしなければなりません。本記事では、リスク管理の概要や求められる理由から、そのプロセス、実効性を高める方法までを解説します。

 

01リスク管理とは

リスク管理とは、想定される内外的なリスクを適切に管理し、リスクの発生を防ぐ経営管理手法のことです。企業経営において資本の健全性を確保し、事業計画を達成するためには、 企業が被る損失を最小限に抑える必要があります。ゆえに、全役員・社員の能動的なリスク管理が求められるのです。

リスク管理と危機管理の違い

リスク管理と危機管理の違いは、管理する対象とどの段階で対応をするのかという時間軸にあります。リスク管理が「想定されるリスクの事前の予防」であるのに対し、危機管理とは、「企業の自助努力では発生を回避できない危機的状況が発生した直後の対応」を指しています。

つまり、リスクの延長線上に危機があり、想定内の事態はリスク管理で対策し、想定外の事態には危機管理で迅速に対応するということになります。

▶︎参考:リスクマネジメントと危機管理~想定内と想定外:原点に戻って考える~|指田 朝久

リスクアセスメントとの違い

リスク管理は特定されたリスクに対処するための計画や戦略を立て、実行し、定期的に評価するのに対し、リスクアセスメントはリスクの特定と評価に焦点を当て、潜在的な影響や発生確率を評価します。主にリスクの理解と定量的・定性的な評価に従事し、管理はアクションを通じてリスクを最小化または受容可能な範囲に保つことに焦点を当てることがリスクアセスメントです。

リスクヘッジとの違い

リスク管理は組織全体に対する包括的なアプローチで、様々なリスクに対処し安定性を追求します。一方で、リスクヘッジは特定のリスクからの損失を最小化するための戦略であり、主に金融やビジネスにおける価格変動や不確実性に対処します。リスク管理は全体的なビジネス戦略であり、リスクヘッジは特定のリスクに対する保護手段として戦略的に活用されます。

 

02事業継続計画(BCP)について

事業継続計画(BCP)は、組織が災害や緊急事態に備え、業務の中断を最小限に抑え、素早い回復を目指す計画です。昨今の目まぐるしい社会情勢や災害、感染症などの影響から、BCPの必要性は高まっています。BCPを策定することで、緊急時においても適切な対応をすることができ、事業の縮小や会社の倒産といったリスクを防ぐことができます。また、BCPの策定は、社会的信用を高めたり、従業員が安心して働くことのできる環境整備をおこなうことができ、優秀な人材を確保するという側面においても効果的です。
策定した計画は継続的にモニタリングされ、変化するリスクに対応するために改善されます。BCPは事業の耐久性を高め、信頼性を維持して損失を最小限に抑える不可欠な要素です。

▼BCPについて詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】BCPとは?現在の実施状況や策定のステップを解説|業種ごとの取り組みも紹介

 

03リスク管理が求められる理由

社会環境が加速度的に変化する現代において、リスク管理の必要性が高まっています。ここでは、企業にリスク管理が求められる理由について、以下の観点から解説します。

  • ・業務の複雑化によりリスクが増大している
  • ・リスク管理の体制は十分とはいえない
  • ・VUCA時代の到来

業務の複雑化によりリスクが増大している

多くの企業では、自社のリソースだけで事業を拡大させることが困難になり、協業パートナーや業務の一部を委託する業務委託先など、様々な外部委託先との協力関係の構築が欠かせません。こうした中、情報漏えいや業務停止といった継続性のリスク、コンプライアンス違反などのリスクが増大するケースが増えています。そのため、以前よりもリスク管理の重要性が高まっているのです。

リスク管理の体制は十分とはいえない

東京海上ディーアール株式会社が行ったリスクマネジメント動向調査によると、全社的リスクマネジメントの設置について、企業規模別では、従業員1000名以上の企業では89.7%が設置しており、設置していない企業は11.0%に留まりました。

一方で、従業員1000名の企業では74.1%が設置しているものの、設置していない企業は24.7%と従業員1000名以上の企業と比較すると、2倍以上の差があることが示されました。 また、従業員数規模別にリスクマネジメント体制をみると、以下の3項目の整備に大きな差があります。

  • ・リスクマネジメント統括・担当部署の設置
  • →従業員数1000名以上の企業72.0%、1000名未満の企業53.2%
  • ・主要なリスクのリスク主管部署の設置
  • →従業員数1000名以上の企業65.9%、1000名未満の企業44.2%
  • ・事業部門毎のリスクマネジメント責任者の設置
  • →従業員1000名以上の企業39.0%、1000名未満の企業20.8%

以上の結果から、大企業と中小企業の間には、リスク管理の体制に差が生じていることは明らかです。リスクが企業経営を脅かす可能性について、今一度考える必要があるでしょう。

▶︎参考:リスクマネジメント動向調査2021(サマリー)|東京海上ディーアール株式会社

VUCA時代の到来

昨今の時代環境は、VUCA時代と呼ばれ、ビジネス環境が急激に変動し、予測が難しい状態を指します。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったものです。VUCA時代では、組織はリスクに柔軟かつ迅速に対応し、持続的な競争力を確保するための戦略を構築する必要があります。リスク管理を実施することで、変動的で不確実な状況においても組織が持続的な成果を上げられるようになるのです。

 

04リスク管理のプロセス

“リスク管理のプロセス”

リスク管理は、想定されるリスクを洗い出し、順序よく取り組む必要があります。ここでは、リスク管理のプロセスについて解説します。リスク管理のプロセスは、以下の通りです。

  • 1.ステークホルダーとの協議
  • 2.組織の状況把握
  • 3.リスクアセスメントを行う
  • 3-a.リスクを特定する
  • 3-b.リスクを分析する
  • 3-c.リスクを評価する
  • 4.リスクに対応する
  • 5.対応のモニタリングと改善を行う

ここではそれぞれについて詳しく解説していきます。

1.ステークホルダーとの協議

まずは、発生したリスクについてステークホルダーと協議を行いましょう。異なる利害関係者とのコミュニケーションや意見交換を通じてリスクに対する共通の理解を築く必要があります。また、コミュニケーション計画を策定し、適切な手段や頻度を検討しましょう。

2.組織の状況把握

ステークホルダーとの協議を実施したら、組織の内外の環境を分析し、ビジネスコンテキストを理解して、リスクへの適切な対応策を策定します。具体的には、組織の強みや弱み、市場の状況、法的な要件、技術的な進展など、組織を取り巻く要因を調査し、影響を受ける可能性のある領域を明らかにします。

3.リスクアセスメントを行う

組織の状況把握を実施したら、リスクの「特定」「分析」「評価」を行いましょう。

3-a.リスクを特定する

まずは、リスクの特定です。企業が掲げる目的・目標の達成を阻害する可能性のあるリスクを全て洗い出します。1つでも多くのリスクを列挙することが重要です。

この段階では、リスクの発生確率や影響の程度などはあまり考慮せず、企業経営に影響を与えそうなリスクを特定し、一覧表を作成します。リスク管理部門だけではなく、社内各部署へのヒアリングを実施すると良いでしょう。

3-b.リスクを分析する

次に、リスクの分析を行います。各種リスクを「影響の大きさ」と「発生確率」を指標に分析します。リスク分析においては、「影響の大きさ」を重視する傾向がありますが、影響度がそれほど大きくないものの、発生確率が高いリスクについては注意が必要です。また、「影響の大きさ」も、経済的な基準のみで算定すべきではありません。影響には、人命に関わるケースや企業の社会的信用を損なうケースもあるためです。

3-c.リスクを評価する

リスクの分析ができたら、リスクの評価を行い、対応の優先度を決定していきます。リスクの影響の大きさと発生確率の積を求めて、評価することが有用です。 優先度を決定する際には、影響度と発生確率ともに高いリスクを最優先事項とします。その上で、社内外の状況や環境に照らし合わせて、優先順位を判断するようにしましょう。リスクの「影響の大きさレベル」と「発生確率レベル」を「大(高)・中・小(低)」3段階に分類し、リスクマトリックスを作って評価を行うと整理しやすくなるでしょう。

4.リスクに対応する

リスクに対する具体的な対策を検討するプロセスです。リスク対応は、リスクコントロールとリスクファイナンシングに大別できます。リスクコントロールとは、「回避」「損失制御」「結合」「分離」という観点から、損害予防もしくは影響を最小限に抑える手法です。リスクファイナンシングとは、「移転」「保有」という観点から、損害発生後の資金手当てを行う手法です。この2つの手法を組み合わせて、効果的なリスク対応を策定します。

5.対応のモニタリングと改善を行う

リスク対策は実施すれば終わりではなく、対応後にリスクが低減しているか、回復に向かっているかなどをモニタリングします。さらに、発生原因や対応状況などを振り返り、再発防止に向けた改善を図ることも不可欠です。対策が形骸化し、対応の改善がなされなかったために、大きな事故につながった事例は少なくありません。そのため、対応のモニタリングと改善を定期的に行うことが重要になるのです。

 

05社員のリスク管理の実効性を高める方法

リスク管理の実効性を高めるには、適切な手法に基づいて実施する必要があります。さらに、研修を実施し、社員のリスク管理に対する意識づけを行うことも重要です。ここでは、リスク管理の実効性を高める方法を紹介します。

主な方法は以下の3つです。

  • 1.5W1Hを活用してリスク対策の策定を行う
  • 2.PDCAを回してリスク対策の策定から改善までを実施する
  • 3.社内研修を実施する

5W1Hを活用してリスク対策の策定を行う

5W1Hを活用することで、実効性を高めることができます。5W1Hに沿って順序立てて記述することで、リスク対策の策定における見逃しを防ぐことができるためです。

5W1Hに沿って、以下のようにリスク対策の策定を行います。具体的に記述されていなければ、効果を発揮できないため、問いに対して、詳細に答えることがポイントです。

  • ・What(なぜ):なぜリスク管理を行うのか?
  • ・When(いつ):リスク管理をいつ実施するのか?
  • ・Where(どこで):どこでリスク管理を行うのか?
  • ・Which(どちらを):どのリスクを優先的に取り組むか?
  • ・Who(誰が):誰がリスクへの対応をするのか?
  • ・How(どのように):どのようにリスク管理を行うのか?

5W1Hの表に、リスクの大きさ、リスク低減の優先順位の項目を加えるとリスク評価表としても利用可能です。

PDCAを回してリスク対策の策定から改善までを実施する

PDCAを定期的に回すことで、リスク管理の実効性を高めることにつながります。PDCAサイクルは、業務を効率的に行うためのフレームワークのことで、Plan・Do・Check・Actionに基づいて、繰り返し実施します。このことによって、リスク管理の効果を維持できるようになるのです。

PDCAを以下の手順で回します。

  • ・Plan(計画):リスク対策の策定
  • ・Do(実行):リスクに対応する
  • ・Check(モニタリング):対応のモニタリング
  • ・Action(改善):対応の改善

PDCAの実効性を高めるには、上手く回らない時こそ、4つの手順を検証し、その原因を突き止めて修正し、再度実行していきましょう。失敗から学ぶ姿勢が、実効性をより高めていくことにつながるのです。

社内研修を実施する

リスク管理の実効性を高めるには、社内研修の実施が有効です。リスク管理への注目が高まる中、関連する研修が実施されています。そのため、リスク管理に携わる社員だけでなく、全社員を対象とした研修も計画しましょう。リスク管理の必要性を全社員で共有することで、日常的にリスク管理し、リスクを検知する精度が向上するためです。

ただ、リスクへの意識は、どうしても薄れてしまいがちです。定期的に社内研修を実施し、リスクへの意識を高く保つようにすることが重要になります。

 

06リスク管理力を向上させるSchooのオンライン研修

Schoo for Businessは、国内最大級8,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。

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リスク管理力に関するSchooの講座を紹介

Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、リスク管理力に関する授業を紹介いたします。

管理職のためのリスクマネジメント

この授業では、リスクマネジメントを事例を交えながら体系的に学びます。管理者が任された職場でいつ起こるかわからないリスクを特定し、被害を未然に防ぐ、または低減するための知見とスキルが身につきます。

 
  • 有限会社シンプルタスク 代表取締役

    有限会社シンプルタスク代表取締役。習慣形成コンサルタント。喜働会会長。JADA協会SBT1級コーチ。「大人を元気にする」を使命に、自己実現のための習慣形成連続講座『喜働力塾』を全国で延べ84期実施、卒業生は2,500人以上。習慣形成のメソッドを中心に、成果・結果を積み上げていく方々を、今なお多数輩出し続けている。多業種にわたり各企業の顧問として、人間力戦略のコンサルティング、人材育成トレーニングを中心に増収増益のお手伝いを担当する傍ら、習慣形成を軸に人材育成トレーニングや講演、セミナーで全国をまわっている。子供たちの夢を叶えるために、小、中、高等学校の生徒向け、保護者向けの講演も積極的に行っている。脳の機能と習慣形成を活用した能力開発で、ビジネスマンだけでなく、スポーツチーム指導、受験生の能力アップも行っている。著書には「成功する社長が身につけている52の習慣」「習慣が10割」などがある。

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リスクの時代に備える 事業継続計画(BCP)の作り方

「BCP=事業継続計画(Business Continuity Plan)」は、自然災害やテロ・システム障害などの緊急事態が起きた時のために、企業としての対応をしっかりと準備しておく計画書のことで、企業が生き延びるための戦略をまとめたリスク管理方法のひとつです。 近年は地震や水害に加え、新型コロナウイルスの流行、サイバー攻撃など備えるべきリスクは後を立たず、BCPの重要性が改めて注目されています。 この授業では、そもそもBCPの基礎知識から作り方まで、これからのリスクの時代に備えるためのBCPの基本を学びます。

 
  • MS&ADインターリスク総研株式会社

    MS&ADインターリスク総研株式会社 リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第一グループ所属。 2012年慶應義塾大学卒業後、大手建築設備会社を経て、2017年より現職。 BCP/BCM専門コンサルタントとして、東証一部上場企業から中小企業に至るまで幅広い規模・業種のBCP/BCMコンサルティング業務に従事する他、各種執筆活動、内閣府・内閣官房・中小企業庁・商工団体・自治体などの関連事業やセミナー講演などにも多数従事。 【保有資格】 ・ CBCP(国際的な災害復旧啓発団体「DRI」認定事業継続専門家) ・ BCAO(事業継続推進機構)認定事業継続管理者

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07まとめ

本記事では、リスク管理の概要や求められる理由から、そのプロセス、実効性を高める方法までを解説しました。様々なリスクに対応するためには、適切なリスク管理が必要です。しかし、業務が複雑化しリスクが増大している中、多くの企業のリスク管理体制は十分とはいえません。社内研修で全社員がリスク管理の必要性を共有し、適切な手法に基づいて実施することが求められているのです。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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