更新日:2025/09/29

組織で抽象的思考を実践するために必要なものとは?

組織で抽象的思考を実践するために必要なものとは? | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

抽象的思考は、様々な背景を持つ従業員が属する企業において大切にするべき思考方法です。何かを決定するための議論はもちろん、アイディアを出すとき、魅力的なプレゼンテーションを行うときなどにも抽象的思考は非常に有効です。 今回はそもそも抽象的思考とは何か、組織で抽象的思考を有効活用するためには、どのような視点が必要なのかを詳しくご紹介します。

 

01抽象的思考とは?

抽象的思考とは

▶︎参考:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング

抽象的思考とは、物事の共通点や本質を見つけ、複数の事象をひとつ上の階層にまとめて考える力を指します。抽象的思考を養うことで個々の具体的な事象から要素を抜き出し、分類やグルーピングを行うことで、全体像や根本的な構造を把握できます。

例えば、異なる事例の背後にある共通法則を見つけたり、一見関係のないテーマを結びつけて新しい発想を得たりすることが可能になります。抽象的思考を鍛えることで、情報を整理しやすくなり、複雑な課題に対して本質的な解決策を導き出せるようになります。

 

02抽象的思考と具体的思考の違い・関係性

具体的思考とは 抽象的思考と具体的思考の関係性

▶︎参考:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング

具体的思考は、物事を分解し詳細に分析して鮮明にイメージする力を指します。一方、抽象的思考は複数の要素から共通点や本質を取り出してまとめる力です。この2つは対立する概念ではなく、行き来しながら活用することで理解が深まります。具体的思考で現象を明確に捉え、抽象的思考で共通する枠組みに整理することで、相手に応じた説明が可能となり、課題解決や新しい発想の基盤となるのです。

 

03抽象的思考がビジネスで求められる理由

ビジネスの現場では、目の前の業務を進めるために具体的思考が不可欠です。しかし、それだけでは「なぜその業務を行うのか」という問いに答えられません。抽象的思考は、複雑な事象を一段上の視点から整理し、本質や目的を見極める力を与えてくれます。

抽象的思考を活用すれば、目的と手段の区別が明確になり、組織の方向性や存在意義も理解しやすくなります。日々の業務に追われても一歩引いて考え、本質を見抜くことで意思決定の質が高まり、組織全体の成果につながるのです。

 

04抽象的思考で得ることができるもの

では、抽象的視点ではどのようなものを得ることができるのでしょうか。代表的なものを幾つかご紹介します。

論理的思考を身に着けることができる

抽象的思考をする上で、論理的思考は併せて必要な力です。そのため従業員がそれぞれ抽象的思考を身に着けることによって論理的思考も磨かれ、常に本質的かつ論理的な会話をすることができるでしょう。

一見すると、抽象的思考と論理的思考は相反するものに見えるかもしれません。しかし、論理的思考には、以下のような要素が非常に重要です。

    • 1.物事の言い換え
    • 2.物事の構造化
    • 3.複数の事象における因果関係の特定

1.物事の言い換え

物事の言い換えは、とある事象に対して、別な言葉で言い換えを行うことができる能力を指します。組織においては、それぞれの従業員が持つ背景や価値観が異なる中で、全員が同じ理解を持つことは至難の業です。

そんな時、同じ事象を誰もが分かる言葉で置き換えて話すことができると、内容を理解してくれる人を増やすことができます。したがって、抽象的思考によって物事を言い換える能力を持つことは非常に大切なのです。

2.物事の構造化

物事の構造化は、起きている事象をそれぞれ1つの部分に見立てることで、体系化して物事を見ることができる能力を指します。

こちらも一見すると抽象的思考とは関係なさそうに見えますが、物事を一歩引いて俯瞰して見ることができなければ、物事を構造化して理解することはできません。物事を構造化するプロセスは論理的思考には欠かせません。

論理的思考のアプローチは「分解」で、物事を深堀りすることで思考していきます。一方で抽象的思考のアプローチは「抽象化」で、物事の本質を抜き出していくことで思考していくのです。

3.複数の事象における因果関係の特定

物事の構造化とも関連しますが、複数の事象における因果関係の特定にも、抽象的思考と論理的思考が重要な役割を果たします。

物事の因果関係を把握しようとすると、いずれの事象も原因、そして結果として見る能力が求められます。「なぜ?」と事象について何が原因で起こっているのかを深く考えていくのが論理的思考法。一方、1つの事象をより上段で解釈・把握するのに必要なのが抽象的思考です。深堀りをしていくだけでは、事象におけるすべての因果関係を明文化することはできません。深堀りしたり、俯瞰したりしながら、網羅的に事象を見ていくことで因果関係を特定できるのです。

直感を鍛えることができる

抽象的思考を鍛えることで、直感を鍛えることができます。

そもそも直感を鍛えることができるのか?という疑問を持つ方がいるかもしれません。直感とは、論理的な段階を踏まなくても複数の概念がひらめき、感覚によってつながることを指します。そしてこのひらめきは、何もないところから生まれているのではなく、これまでの経験や知識、考えてきたことなど蓄積された情報を元に生まれているのです。そのため、抽象的思考を鍛えると、物事の捉え方がよりシャープになり、閃きも生まれやすくなるのです。

応用力が身につく

抽象的思考が身に付くと、必然的に応用力が身に付きます。

応用力とは、物事を多角的な視点で捉え、様々な変化を加えていくことができる能力です。抽象的思考ができると、一つの事象を様々な角度で捉えることができます。その結果、他の事象に活かす可能性を考えることができるようになります。

抽象的思考を活用して応用力を磨くことができれば、一見すると解決困難に見える事象にも柔軟に対応することが可能です。このようにして、日々の問題解決や課題への対処方法の検討にも抽象的思考は十分に役立つのです。

発想力が豊かになる

そして最も大きな点は、発想力が豊かになることです。抽象的思考は深く考える方法ではなく、俯瞰して考える思考法です。そのため、アートをはじめとする芸術など、理解が難しく感じるものについても俯瞰して自分なりの「本質」を考えることができるのです。

また、ユーモアを持って物事に触れることができるようになるため、突拍子もなく見えるような発想を展開することも可能です。物事を偏見なく自由に理解することができれば、多くの知識や文化を受容することができます。抽象的思考を鍛えることによって、発想力の豊かさに留まらず、様々な事象を積極的に受け入れる姿勢なども身に着けることができるでしょう。

 

05抽象的思考を鍛えるために必要なもの

では、抽象的思考を鍛えるためには何が必要なのでしょうか。抽象的思考を鍛える代表的なノウハウを幾つかご紹介します。

物事の共通点を探す

最も手軽な方法は、物事の共通点を探すことです。この時、既に共通点があることを理解している物事ではなく、一見すると共通点が無さそうな物事から考えてみることがポイントです。

具体的にはまず、どちらか一方の物事の特徴を考えます。そして、それらの特徴を想像できる限りたくさんしましょう。そしてそこから、もう一方に共通しそうな内容はないかを考えていきます。少し強引な発想であっても、共通点を見つけようとすると多くの場合は見つかるものです。ぜひ隙間時間などに実践してみてはいかがでしょうか。 ​​

水平思考クイズに取り組む

抽象的思考力を鍛えるには、水平思考クイズがおすすめです。水平思考とは、「どんな前提条件にも捉われず、自由に発想する思考法」を指します。言い換えれば、今見えている条件に左右されず、物事の本質を見抜く思考方法です。

水平思考クイズでは、自身のバイアスを除去する必要があるため、必然的に抽象的思考を活用することが求められます。水平思考クイズ専用の書籍なども多数販売されているため、興味がある方は実際に購入し、解いてみてはいかがでしょうか。

抽象度が高い書籍を読む

抽象度が高いビジネス書籍を読んでみることもおすすめです。

抽象度が高いということは、すなわち広く一般論や概念、意見、哲学などが語られていると言い換えることができます。読み慣れていない方には難しいかもしれませんが、難しいと感じた言葉の意味をしっかりと理解しながら読み進めることで徐々に理解できます。もしくは自分なりに具体的な内容に落とし込みながら読み進めてもよいでしょう。

初心者向けの経営論やマーケティング論などの本は、比較的抽象度が高い内容が多いため、興味がある分野から読んでみるのはいかがでしょうか。

図解する癖を付ける

物事をシンプルに示すために抽象的思考を活用するという例から、図解する癖を付けてみるのはいかがでしょうか。図解した方が具体的思考になってしまうように感じるかもしれませんが、シンプルに、全員に伝わる図をつくろうと思うと、必然的に抽象的思考が必要となります。

何より図解の際には、それぞれの事象の共通点を必然的に求めなくてはならないため、ただ物事の共通点を探すことが苦痛に感じる人にもおすすめの方法です。

 

06抽象的思考のトレーニング

抽象的思考は、複数の出来事から共通点や法則を見抜き、意思決定の基準をつくる力です。本章では、Schooの授業の考え方を用い、短時間で実践できる問題形式のトレーニングを紹介します。日々の振り返りやチーム学習に取り入れて、説明力と課題発見力を高めていきましょう。

▶︎参考講座:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング

問題:言葉の魔法を使えるか

言葉の魔法トレーニング 図

「〇〇」とかけて「△△」と解く。その心は? 一見、関係が薄い2つの対象の共通点を見つける練習です。
例題:「カップラーメン」とかけて「恋愛」と解く。その心は?

回答例と解説

回答例:「熱くて冷めやすい」「放っておくとダメになる」。

考え方の手順:

  • Step1:現象の特徴を箇条書きにする(例:カップラーメン=熱い・待つ・時間管理/恋愛=熱量・維持・時間)
  • Step2:抽象語でくくる(温度・時間・持続性など)
  • Step3:抽象語から共通点を作り、言い換えで表現する(例:「熱くて冷めやすい」「放っておくとダメになる」)

まずカップラーメンは「熱い」「放置すると伸びる」「待ち時間がある」と捉えます。恋愛も「熱量が上がる」「放置すると関係が薄れる」「適切な手入れが必要」と整理します。両者に共通する抽象語を「温度」「時間」「維持」と定め、これらを1文で要約します。その結果として「熱くて冷めやすい」「放っておくとダメになる」という回答に辿り着きます。

問題:物欲を整理できるか

物欲の整理トレーニング 図

毎朝の服選びに悩むあなたは、クローゼットに似たシャツが10枚あることに気づきます。買い物上手になるにはどうすればよいでしょう。

回答例と解説

回答例:所有物を棚卸しして分類し、傾向を把握したうえで用途別の購入・処分ルールを決めます。例えば「仕事用が不足している」と分かったら、必要枚数と色・予算を定め、入れ替え計画を立てます。

思考の手順

  • Step1:現場を把握する(全アイテムを可視化)
  • Step2:分類の軸を決める(用途・季節・色/素材・状態など)
  • Step3:グルーピングして偏りを特定する(例:私服が過多、仕事用が不足)
  • Step4:行動計画を立てる(購入・処分の基準、予算、点検サイクル)

まず全体を見える化して現状を言語化します。次に「用途」「季節」「色」などの軸で並べ替え、数量の偏りや使用頻度の差を見つけます。偏りが課題の仮説になります(例:仕事用が不足)。仮説に基づき、必要枚数・色・価格帯・入れ替え周期を決め、購入と処分の具体策に落とし込みます。こうして回答へとつなげます。

 

07抽象的思考を向上させるSchooのオンライン研修

Schoo for Businessは、国内最大級9,000本以上の講座から自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は4,000社以上にのぼり、新入社員研修や管理職研修に加え、DX研修や自律学習促進まで幅広くご活用いただいています。

Schoo for Businessの資料をもらう

抽象的思考に関するSchooの講座を紹介

地頭力を鍛える「抽象化思考法」特訓

地頭力を鍛える抽象化思考法

本授業では「地頭力」の要素のひとつである抽象化思考力を徹底的に鍛えます。具体的な事象から共通点を導き出し、物事の本質を捉える力を養うことで、経験を新しい課題にも応用できるようになります。人材育成の現場でも活用可能なスキルであり、研修効果の最大化に役立ちます。

  • ビジネスコンサルタント。東京大学工学部卒業後、東芝を経てコンサルティング業界へ。戦略策定や業務改革に携わり、近年は思考力や問題解決力に関する講演・研修を多数実施。著書に『地頭力を鍛える』など。

地頭力を鍛える「抽象化思考法」特訓を無料視聴する

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「考えがまとまらない」をなくすトレーニング

考えがまとまらないをなくすトレーニング

“頭のいい人”に共通するのは、具体と抽象を自在に行き来する力です。本授業では、抽象的な問いを具体的なタスクに落とし込み、効率的に解決するための思考法を学びます。

  • 株式会社キーメッセージ代表取締役。慶應義塾大学卒業後、人事・DX・経営コンサルティングに従事。大手企業の組織改革や人事DX支援を手掛け、デロイトでの豊富な経験を活かして経営・人材開発領域を支援している。

「考えがまとまらない」をなくすトレーニングを無料視聴する

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マーケターのように考える - 広い視野の思考術

マーケターのように考える

マーケター視点を応用した思考術を学ぶことで、多角的に物事を捉え、具体と抽象のバランスを調整する力が身につきます。社員が顧客視点で課題を俯瞰できるようになり、組織全体で正しい努力の方向性を模索できるようになります。

  • F6Design株式会社代表取締役。京都大学大学院修了後、トヨタ・TBS・アクセンチュアを経て独立。コンサルティングやマーケティング戦略に従事し、著書は累計10万部超のベストセラー。幅広い業界で実績を持つ。

マーケターのように考える - 広い視野の思考術を無料視聴する

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08まとめ

抽象的思考は、複雑な事象を整理し本質を捉えるための基盤となる力です。具体的思考と組み合わせることで、課題の解決や新たな発想、応用力の発揮につながります。論理的思考や直感力の向上、発想力の拡張など、個人のスキルだけでなく組織全体の成果にも直結します。

鍛える方法は日常生活の中にも多く存在し、共通点を探す習慣や水平思考クイズなどを活用すれば着実に磨くことができます。組織として取り組むことで、柔軟かつ本質的な判断を下せる人材を育成でき、変化の大きい環境でも成果を上げ続けられる基盤を築けるでしょう。

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