SECIモデルとは|4つのプロセスや課題・解決策をわかりやすく解説
SECIモデルとは、個人が蓄積している知識や経験といった「暗黙知」を、文章や図表など自分以外の人にも理解できる形「形式知」に転換し、組織内で共有するためのプロセスのことです。 この記事では、SECIモデルの4つのプロセスやSECIモデルに必要な「場」について解説し、SECIモデルを活用した企業事例などを紹介していきます。
- 01.SECIモデルとは
- 02.SECIモデルの4つのプロセス
- 03.SECIモデルの4つの「場」と身近な例
- 04.SECIモデルの課題と解決策
- 05.SECIモデルの企業事例
- 06.まとめ
01SECIモデルとは
個人が蓄積していて言語化されていない状態の知識や経験など「暗黙知」を、文章や図表など誰でも理解できる形「形式知」に転換して、組織全体で共有し活用するためのプロセスサイクルのことをいいます。
- ・共同化(Socializaiton)
- ・表出化(Externalization)
- ・連結化(Combination)
- ・内面化(Internalization)
これら4つのプロセスの頭文字を取ってSECIモデルと名付けられています。
暗黙知との違い
暗黙知とは、個々が経験していく中で培った知識や技術のことを指し、コツや勘なども含まれています。主観的な部分も多いため明確に言語化するのが難しく、共有されにくいという特徴があります。
形式知との違い
形式知とは、文章や図表に表現して誰にでもわかりやすい形にした知識のことです。暗黙知は、マニュアルや解説書といった形式に転換すれば、他の人も技術を習得しやすくなります。暗黙知を形式知に変えていくことが進めば、組織全体で知識の活用ができるようになります。
ナレッジマネジメントとの違い
「ナレッジマネジメント」とは、組織内に蓄積された知識(knowledge:ナレッジ)を管理して、組織全体に共有と活用を進める手法のことです。 ナレッジが有効に活用されることで、業務が属人化されなくなり、組織の生産性向上や効率化などにつながるといったメリットがあります。
02SECIモデルの4つのプロセス
SECIモデルは、暗黙知を形式知に転換するための4つのプロセスのフレームワークです。この4つのプロセスのサイクルを繰り返すことで、組織内のナレッジを発展させていきます。
- 1.共同化(Socializaiton)
- 2.表出化(Externalization)
- 3.連結化(Combination)
- 4.内面化(Internalization)
それぞれのプロセスの内容を以下に詳しく解説します。
1. 共同化プロセス(Socialization)
共同化プロセスとは、暗黙知を共同することで他者に伝えることです。この段階ではまだ暗黙知は言語化されていないため、知識を保有する人と一緒に体験することで習得していきます。いわば、師匠が持つ技(ナレッジ)を弟子が目で見て学ぶプロセスということです。
2. 表出化プロセス(Externalization)
表出化プロセスでは、体験を通じて伝えられた暗黙知を、文章や図などに表し、誰にでも共有できる形に変換していきます。 業務のマニュアル化や解説書の作成が、このプロセスで行われることです。主観的であった暗黙知を、表出化プロセスで客観的で論理的な形にしていくため、関係者で議論を重ねることもあります。 表出化のプロセスを経ることで、暗黙知が多くの人に共有されるようになります。
3. 連結化プロセス(Combination)
連結化プロセスでは、表出された形式知と他の形式知を組み合わせて、新たな知を生み出していきます。 マニュアルにまとめられたノウハウを、現場に合わせて改良したり、システム化してさらに効率的に転化したりすることで、さらに新しい知識が生まれてきます。
4. 内面化プロセス(Internalization)
内面化プロセスでは、新たな形式知を繰り返し行うことで内部に浸透させていきます。実践を何度も行っていくうちにコツや勘をつかみ、形式知として習得した知識が暗黙知に変化していく段階です。
03SECIモデルの4つの「場」と身近な例
SECIモデルでは、4つのプロセスを実行していくためにはプロセスに適した「場」を用意すべきとしています。
- ・共同化するための創発場
- ・表出化するための対話場
- ・連結化するためのシステム場
- ・内面化するための実践場
4つのプロセスに対応した、次の4つの場について詳しくみていきましょう。
共同化するための創発場
共同化するための場が「創発場」です。共同化のプロセスでは、知識の保有者と一緒の体験をする以外にもランチの席や休憩ルームでの会話など、あらゆる場所でのコミュニケーションが共同化の場となります。創発場はいつどこで「場」が発生するかわからないという特徴があります。
表出化するための対話場
表出化プロセスで求められるのが「対話場」です。暗黙知を形式知に転換する作業は、客観的で論理的なものにしていくため対話を重ねることが有効です。 膨大な暗黙知をわかりやすい形式知に変換するために、効率的に対話を進める必要があります。
連結化するためのシステム場
連結化プロセスに使う場が「システム場」です。形式知を組み合わせるためには、複数の社員が資料を共有しながら話し合いをするのが有効です。オンライン上にシステム場を設けるとスムーズに進みます。社内Wikiや社内SNS、ナレッジマネジメントツールを活用するケースが多く見られます。
内面化するための実践場
新たに得た知識を自分の中に落とし込む内面化プロセスで用いられる場が「実践場」といわれています。それぞれの現場で何度も繰り返していくプロセスなので、特定の場が必要ということはありません。 習得した知識は内面化のプロセスを経て新たな暗黙知となり、それをまた共同化するというサイクルを繰り返し行います。
04SECIモデルの課題と解決策
ナレッジマネジメントを社内で推進していくためには、SECIモデルを導入することが重要ですが、取り組みが難しいという側面もあります。運用には以下のような課題が挙げられています。
- ・ナレッジの習得に時間がかかる
- ・ベテラン社員がノウハウや技術を共有するメリットが少ない
- ・ゴールが明確でない
それぞれ詳しく解説していきましょう。
ナレッジの習得に時間がかかる
組織としてナレッジを習得し有効に活用していくには、共同化から内面化までのプロセスを何度も繰り返す必要がありますが、これには多くの時間がかかります。 しかし、こうしたプロセスの循環を継続することで、企業の知識資産を増大化できます。この重要性がしっかり浸透するように社内で働きかけ、継続的に循環できる仕組みを作っていく必要があります。
ベテラン社員がノウハウや技術を共有するメリットが少ない
社内で非常に価値のある暗黙知を保有するベテラン社員が、進んでノウハウや技術を公開するかどうかは、SECIモデルを成功させるための大きなポイントとなります。 長年苦労して積み上げてきた知識を、簡単に人に渡したくないと考えるのは自然なことですが、企業側はこうしたベテラン社員への対応を考えておく必要があります。 ナレッジマネジメントの取り組みを始める際には、事前に暗黙知が表出しやすい体制を整え、自分の知識を他者へ共有しやすくするように、インセンティブなどを用意しておくといいでしょう。
ゴールが明確でない
SECIモデルは4つのプロセスを継続して回していきながら知識を高度化していくため、明確なゴールを設定できません。 導入前と比較するため、マイルストーンによる中間地点を設けて振り返りを行い、評価する仕組みをつくるといいでしょう。 以前の状態と比較してどこまで進展し、どのような成果が現れているのかを振り返り検証します。
05SECIモデルの企業事例
ナレッジマネジメントに取り組む企業は多く、そのほとんどでSECIモデルを取り入れています。ここでは2社の事例を紹介します。
NTT東日本
NTT東日本の法人営業本部では、SECIモデルを導入し、オフラインとオンラインの両方で場づくりに取り組みました。 オフラインの場づくりとして、オフィスの中に「ベースゾーン」「クリエイティブゾーン」「コンセントレーションゾーン」「リフレッシュゾーン」の4つのスペースを設けています。フリーアドレスの作業スペース「ベースゾーン」では、異なる部署どうしの会話の機会を増やし創発場として機能させ、開放的な会議スペースの「クリエイティブゾーン」ではチームの対話の深める場所としました。「コンセントレーションゾーン」は、集中して作業しやすい環境とし、「リフレッシュゾーン」では気楽な会話がしやすい雰囲気となっています。 また、バーチャルな場として、各社員がそれぞれ個人のホームページを持つようにし、日報やレポートを通じて暗黙知を形式知にして社内に共有する仕組みを作りました。 さらに部署ごとにホームページを持つように設定して、そこに業務から得られる知識やノウハウを集約し、他部署でも活用できるようにしています。
富士フイルムビジネスイノベーション
「全員設計」というコンセプトで、設計にかかわる担当者全員が設計の初期段階から進捗情報を確認できるような仕組みを作りました。 社内に「知識共有システム」と「全員設計ルーム」が導入されたことで、各レベルの設計者が持っていた暗黙知が共有されるようになり、違うプロセスを担当する設計者が応用して活用できるようになりました。 その結果、開発のスピードが格段に上がり、設計変更があった場合にも素早く対応できるようになりました。
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06まとめ
社内で蓄積された暗黙知は、活用されなければ一人にとどまってしまいます。SECIモデルを導入し、形式知に転換して知の価値を高めていくことで、企業の生産性や効率向上に大いに役立つものとなります。 自社でナレッジマネジメントへの取り組みを考えているのであれば、SECIモデルに対する理解が必須になります。 SECIモデルをしっかりと学んでナレッジマネジメントを成功させてください。