ダブルメジャーとは?複数の専門知識をもつ人材の重要性を解説
ダブルメジャーは名門大学が多く存在しているアメリカで一般的な制度です。複数の専攻を学び、より優秀な学生を育てる制度です。複雑化している現代のビジネスにおいて、複数の専門分野の掛け合わせによるイノベーションが求められています。当記事ではダブルメジャーについて解説をします。
- 01.ダブルメジャーとは?
- 02.日本の大学におけるダブルメジャー
- 03.ダブルメジャーのメリットとデメリット
- 04.専門知識の掛け合わせ
- 05.今必要な人材のタイプはΠ型人材
- 06.まとめ
01ダブルメジャーとは?
ダブルメジャーとは、大学で複数の異なる専攻分野を同時に主専攻として学ぶことです。日本では二重専攻や複数専攻とも呼ばれます。学生にとって学習時間は多くなるものの複数の学問分野を学ぶことができるため、視野を広げ幅広い知識を得ることができます。 海外の大学では一般的な制度で、多くの場合は一つの学部のなかで二つの分野を専攻できます。
日本でもダブルメジャーは増えている
国際基督教大学、立命館大学、上智大学、桜美林大学など国内の企業でも導入する大学は増えてきています。立命館大学は異なるものの、国際基督教大学、上智大学、桜美林大学などキリスト教系の大学での導入が目立ちます。
ダブルディグリーとの違い
ダブルディグリーとは二つの異なる学校を拠点として二つの異なる学位を取得する専攻を学ぶことです。ダブルメジャーとの違いは、複数の大学で別の学部で異なる専門分野を学ぶ点です。ダブルメジャーは、あくまで一つの大学内で二つの専攻を学ぶことを指し、取得できる学位も一つです。
主専攻と副専攻
日本の大学ではメジャー・マイナー制度を設けている大学が多くあります。メジャー・マイナー制度とは主専攻と副専攻を組み科目を自由に選択することができる制度です。まったく異なる専攻を組み合わせるダブルメジャーとは違い、副専攻では主専攻に関連のある分野から選択するのが一般的です。
02日本の大学におけるダブルメジャー
日本においてダブルメジャーが可能な大学は数少ないのが現状です。またアメリカでは日本と比較して専攻が細分化されています。ビジネススクールでもマーケティング、ファイナンス、アカウンティング、マネジメント、スポーツマネジメントと細かく用意されています。 ダブルメジャー制度が一般的な上、学びたい学問を選ぶ自由度が高いアメリカでは、学生はより興味がある分野について専門的に学べるシステムが整っています。
日本の大学の一般的な専攻システム
上述のように日本の大学の多くではメジャー・マイナー制度があることが一般的です。しかし、副専攻は必ずしも自由に選べるわけではありません。カリキュラムの都合上、同時に受けられない科目も出てきてしまいます。副専攻分野で専門性を高める勉強をするためにはカリキュラムの都合や時間割、単位取得のシステムなどが弊害になります。 またゼミについても同様です。少人数で担当教員と学生が研究活動を行うゼミは、一般的には一つしか入れません。ゼミは授業外で自分で研究する機会を得られる場です。一つのゼミで同じ教授や学生から得られる知識は確かに深いですが、視野が狭くなってしまうこともあるでしょう。
国際基督教大学
国際基督教大学ではリベラルアーツのさらなる展開を目指しています。幅広い知識と専門性を深めることで創造的な発想力を養うことを重視しています。そのため一般的な日本の大学教育制度とは異なり、入学時点で専攻を確定させる必要がないシステムを採用しています。入学時には文系も理系も幅広く学び、在学後半以降で自分の興味と適性を見極め学問を深めていけます。 国際基督教大学ではシングルメジャー、ダブルメジャー、メジャー・マイナーから選択ができます。しかし専攻可能な学部の選択肢は多くありません。上述のとおりアメリカでは多くの学部がありましたが、国際基督教大学においては経済学と経営学の二種類のみです。どちらも範囲が広大なため専門的な知識よりも広く浅く全般的な知識が得られるといっても間違いではないでしょう。
立命館大学
立命館大学においてダブルメジャー制度が設けられているのは産業社会学部のみです。産業社会学部では現代社会、メディア社会、スポーツ社会、子供社会、人間福祉と5つの専攻から選択できます。そ産業社会学部では多様で複雑な現代の社会を学ぶためにクロスオーバー・ラーニングを推奨し、ダブルメジャー制度を設けています。 例えば現代社会専攻と人間福祉専攻を組み合わせれば高齢者の孤立を防ぐ地域社会のあり方について深く学べるでしょう。メディア社会とスポーツ社会を組み合わせることで、二つの専門的な視点からスポーツイベントと報道のあり方について理解が可能になります。 限られた学部のみでの組み合わせですが、専門分野を複数もつことでの相乗効果を期待できる作りになっています。
03ダブルメジャーのメリットとデメリット
ダブルメジャー制度により複数の分野で専門知識を学ぶことは、さまざまな事象が複雑に絡み合う現代社会において有効性が増しています。では知識を得られることのほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。また、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ダブルメジャーのメリットとデメリット
メリットの一つは自分の興味がある分野をより幅広く学べることです。ダブルメジャー制度を設けている大学では複数分野を同時に短期間で学べるようにカリキュラムを整えているため、効率的に学ぶことができます。学費も変わらないため、学べる分量に対する費用的なメリットもあるでしょう。 また、海外の大学では在学後半に専門分野を決定することが一般的です。興味のある分野を幅広く学びながら自分の専門分野を特定していくことが可能です。 日本の大学生は高校在学時に、あまり知識のない状態で大学の専攻を選びます。途中で変えることは困難で、複数興味があっても一つに絞らなければいけません。その点、ダブルメジャー制度であればじっくり専攻分野を考え、かつ複数選ぶことができる点で本当に興味のある分野の学習が可能になります。
ダブルメジャーのデメリット
一番のデメリットは、大学での学びの負荷が大きいことです。多くの授業や課題をこなす必要があり、卒業へのハードルも上がるでしょう。海外大学に進学しダブルメジャー制度を学びたいと考えているのであれば、事前に目標を立てて計画的に勉強する必要があります。 また大学は社会人になる直前の学ぶ場所としているケースが大半でしょう。勉学以外にも留学や旅行など自由な時間を使って経験を得られる期間です。大学卒業後にワーキングホリデーなどを利用して海外での経験を得るケースも多くありますが、大半は就職活動に苦労してしまいます。大学時代の貴重な時間を何に使うのかは非常に大切です。
04専門知識の掛け合わせ
前述のように複雑に絡み合った現代において一つの専門知識だけでは不十分です。現代の社会情勢はVUCAと呼ばれ、変動的で不確実性が高く、さまざまな要素が複雑に絡み合い、絶対的な解決法が無く曖昧です。教育改革実践家であり元公立中学校校長でもある藤原和博氏が提唱するキャリアの第三角形では3つのキャリアを組み合わせて100万人に1人の希少性を獲得することを勧めています。3つの専門分野を持てば誰でも100万人に1人の存在になれます。キャリアの三角形を大きくするためには一つひとつの専門性も高めなければいけません。つまり日本のメジャー・マイナー制度のように副専攻のレベルでは足りないのです。
Π型人材
人材タイプにはいくつか型があります。この人材分類の考え方の基礎は、「I型」と「一型」です。I型人材は一つの分野のスペシャリストのことです。縦棒が下に伸びるように一つの分野を掘り下げた人材のことで、職人などが該当します。一方で一型人材はゼネラリストのことです。横に広くさまざまな分野の知識を浅く広くもっている人材です。 しかし昨今では、「T型」、「Π型」が注目されています。T型人材とは一つの専門分野に精通した上で、横に広い知識ももっている人材のことです。一方でΠ型人材こそがダブルメジャーと呼ばれ、T型人材以上に希少な人材です。2つの専門分野を持つT型人材のことです。 現代では専門知識は代替技術によって廃れることもあります。そして浅く広い知識は模倣されやすく優位性も少なくなります。今求められるのは異なるアイデアを結合してイノベーションを起こせる人材です。そのためにはダブルメジャーの存在は必要不可欠でしょう。
IT×専門分野
AIやITの業界では、知識のかけ合わせによる可能性は無限に広がっています。昨今話題のHRTechは人材とITの組み合わせです。AgriTechは農業とIT、EdTechは教育とITです。そのほかにも飲食業や宿泊業などのサービス業にも多くのITが活用されています。 今後IoTが発達しあらゆるものとITが結びついていきます。そのなかで、新しい発想はITとなにかを掛け合わせたところで生まれていくのではないでしょうか。
デザイン×戦略
戦略としてのデザインが今注目されています。デザインは長らく視覚的に美しいものを作ることでした。しかし、今ではイノベーションを起こすためのツールとして活用されています。企業の経営戦略とデザイナーの思考を融合させることで企業にイノベーションをもたらすことが可能になります。
05今必要な人材のタイプはΠ型人材
前述のとおり異なる分野を掛け合わせることができるΠ型人材は、現代において非常に重要です。例えば、飲食業界にもFoodTechが盛んに増えてきています。全自動の自動販売機型の飲食店や家庭の調理器具まであらゆるところにIT技術が使われています。この技術の開発にはIT業界と飲食業界のどちらの専門性も必要です。食のデジタル化を目指すOPEN MEALSが手がける「超未来寿司屋SUSHI SINGULARITY」はまさに寿司職人の技術とIT技術の融合です。そして寿司職人の繊細な感覚をITで再現するためには、両方の専門性を兼ね備えていることが必要です。
I型人材ばかりでは企業は生き残れない
かつて日本企業を支えてきたのはI型人材でしょう。研究者、開発者、職人などの市場価値が高く、日本の戦後を支えてきました。伝統芸能として生き残る技術はありますが、企業としては一つの専門性だけでは生き残れない時代が来ています。 専門技術はいつか代替技術が生まれてより安価で便利に生まれ変わります。そのためダブルメジャーで複数の専門領域をもち、専門技術をほかの領域に活かせる人材の存在は不可欠です。
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06まとめ
Π型人材が今後の企業成長には不可欠であり、それを生み出すためにダブルメジャーは適しています。日本ではあまり浸透していないものの、少しづつ考え方は広まっています。また必ずしも大学で学ぶ必要はなく、社会に出てから複数の領域の専門性を伸ばしていくことでダブルメジャー人材になることも可能です。採用時や人材育成計画を立てる際、ぜひダブルメジャーという考え方を参考にしてみてください。