パレートの法則とは?人事領域におけるパレートの法則を分かりやすく解説
「パレートの法則」とは別名「2:8の法則」とも呼ばれ、マーケティング分野における購買行動分析や、人事領域では組織開発の分野で良く聞かれます。「成果の8割は上位2割によりもたらされる」という法則です。当記事では、人事領域におけるパレートの法則について分かりやすく解説します。
- 01.パレートの法則とは
- 02.パレートの法則の活用例
- 03.人材育成・組織開発にパレートの法則を活用
- 04.パレートの法則における人材の分類
- 05.8割へのアプローチが組織を強くする
- 06.まとめ
01パレートの法則とは
パレートの法則とは、一部の要素20%が全体の 80%の成果を生み出していると考える経験則のことです。 これは社会現象などのさまざまな事象にあてはまる傾向だと考えられています。昨今では「売上の8割は上位2割の優良顧客によりもたらされている」「売上の8割は上位2割の売れ筋商品によりもたらされている」「売上の8割は上位2割の優秀な従業員により生み出されている」といった法則として、マーケティング分野や人事領域で活用されるようになりました。
パレートの法則の歴史
パレートの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱した法則です。もともとは経済学の分野で「社会全体の富の8割は上位2割の高額所得者に集中し、残り2割の富が8割の低所得者に分配される」という所得分布の不均衡について論じる際に提唱されました。似た内容として、どの社会においても優れた少数者が支配している傾向がある、というエリート理論があります。この理論は、パレート氏が唱えた「統治エリート」の理論が派生したもので、パレートの法則とも合致していると言えます。
パレートの法則への批判
一見確からしいパレートの法則ですが、経済学者の間でも批判的な声も上がっています。都市部や人口密集地においては、所得格差は一定ではなく拡大する、ということが起こっています。つまり、一部の高額所得者がますます富を蓄積する一方で、低所得者はますます困窮するということです。そのため、パレートの法則が妥当でないとし、所得分布の集中を計測するには人数と所得総額のデータが必要であると言われています。そのため、パレートの法則は一部にしか当てはまらないとされています。
02パレートの法則の活用例
パレートの法則の概要について解説しましたが、実際にビジネスにおいてはどのように活用されているのでしょうか。ここでは具体的な例を交えながら解説します。
企業経営におけるパレートの法則の活用例
企業経営では選択と集中が必要とされます。経営資源は限られているため、もっとも効果が期待できる領域を選択して資源を集中的に投下し、成果を最大化しようとします。 例えば、店舗において「売上の8割は、上位2割の売れ筋商品によりもたらされている」のであれば、上位2割の売れ筋商品に販売促進費を集中させるといった具合です。 誤解があってはならないのは、残りの8割の商品は不要であるかという点です。決してそうではなく、店舗においては豊富な品揃えを楽しみに来店する顧客もいます。そうした顧客に楽しんでもらう役割を、上位2割以外の商品が担っているのです。
マーケティングにおけるパレートの法則の活用例
マーケティング施策を検討するケースを考えてみます。パレートの法則に基づくと、売上の8割は、購入金額上位20%の顧客が生み出していると考えることができます。この高い購買力を持つ顧客を分析し、適切なマーケティング施策を実施することで、大きな成果につなげることができます。 それぞれの顧客にあったプロモーションを行うことは理想的ですが、膨大なコストがかかるため、効率的ではありません。より効果的に成果を出すためには、売上の柱となっている顧客を分析することが大切です。パレートの法則はそういったマーケティング施策の検討にも活用されているのです。
03人材育成・組織開発にパレートの法則を活用
人事領域におけるパレートの法則は、独自の解釈から発展し「2:6:2の法則」として定着しています。これは、別名「働きアリの法則」とも呼ばれます。「2割のアリは良く働き、6割のアリは普通に働く、残りの2割は怠ける」といった説で、ある程度成熟した集団であればどのような組織にもあてはまるとされています。
2:6:2の法則
組織における「2:6:2の法則」によると、組織が上げる成果の100%のうち80%が優秀な2割のハイパフォーマーによりもたらされ、残り20%の成果の大半を6割のミドルパフォーマーが担い、残り2割のローパフォーマーは成果に貢献しないといったことになります。では成果を最大化するために、2割のローパフォーマーを切り捨てれば良いかというと、それほど単純ではないようです。
8割の人材は必要ないのか?
組織において、ハイパフォーマー以外の8割の人材が不要であるかというと、決してそうではありません。上位2割のハイパフォーマーが成果の大部分を生み出しているとしても、その活躍は、残り8割の従業員のサポートがあってこその成果であるといえます。 また、成果に貢献しないローパフォーマーを切り捨てれば、全体の成果が上がるというわけでもありません。2割のローパフォーマーがいなくなったとしても、残された人材で「2:6:2」の比率を構成し組織の総合力を低下させるといわれています。
04パレートの法則における人材の分類
パレートの法則に従って人材を分類すると、ハイパフォーマー、ミドルパフォーマー、ローパフォーマーに分けられ、それぞれ特徴や対応方法が異なります。ここではそれぞれ詳しく解説します。
上位2割:ハイパーフォーマー
高いパフォーマンスを上げている従業員には、「エース従業員」として組織を牽引する役割を担ってもらうと良いでしょう。常にトップクラスの成果を上げている「ロールモデル」になってもらいます。成果につながっている業務行動や考え方を、ほかの従業員に共有し、組織力の底上げに貢献してもらうと良いでしょう。
力を発揮できる環境を整える
ハイパフォーマーの従業員は優秀であることが多く、あまり細かい指導を必要としません。こうした従業員は、能力を存分に発揮できる環境を整えることで、組織の成果に多大な貢献をしてくれます。
モチベーションを下げない
ハイパフォーマーの従業員は、モチベーションを高く保ってもらうことが組織全体の成果に直結するため、そのための工夫を考える必要があります。昇給や昇格といった金銭的な報酬だけでなく、より成長できる難易度の高い業務を担当してもらったり、社内表彰の対象にしたりと金銭以外の報酬により報いることで、モチベーション維持につながります。
中位6割:ミドルパフォーマーへのアプローチ
多数派であるミドルパフォーマーへの関わり方が、組織力強化にはもっとも重要であるといえます。組織の土台を支えている層であり、この層は、アプローチ次第ではハイパフォーマーに負けないほどの活躍をする人材が出てくる可能性を秘めています。
長期的な視点で役割を考える
大きなミスもなく一定の成果を上げつづけ、会社に対してロイヤリティをもって仕事をしている、大多数の従業員がいることで企業活動が成り立ちます。この層の従業員は現在の担当業務で目覚ましい成果を上げていないだけでなく、異なる業務を担当すれば社内随一の活躍をする可能性もあるのです。例えば、突出した営業成績は残せないが、後輩の指導が上手なのであれば、マネージャーに昇格した際に目覚ましい成果を上げるということも考えられます。本人が希望する今後のキャリアについてヒアリングし、可能性を探ると良いでしょう。
適材適所の人員配置
ミドルパフォーマーに対しては、現在の業務だけで能力を見極めず、長期的な視点でポテンシャルを発揮できないかを考える必要があります。 本人の得意分野や興味の方向性を知り、今よりも力を発揮できる業務がないか、常に適材適所の人員配置を模索する必要があるでしょう。
下位2割:ローパフォーマーへのアプローチ
成果を出せていないローパフォーマーを切り捨てることは、組織全体の力を下げることにつながるため得策ではありません。成果を出せていない原因を見極め、修正する取り組みを行う必要があります。
力が発揮できない原因を見つける
成果を出せていない原因を考えるときに、それが本人の能力・やる気の問題なのか、周囲の環境によるものかを見極める必要があります。本人の能力・やる気の問題であれば、面談を繰り返し、根気強く修正していかなくてはなりません。周囲の環境、例えばハラスメントの被害にあっているといったようなことがあれば、早急に対処し環境を改善しなくてはなりません。
問題社員の場合は対処が必要
ローパフォーマーの従業員が、周囲に悪影響を与えている状態であれば対処が必要です。成果を出せない自身の評価に対する不満から、会社批判を周囲の従業員に話しているようであれば要注意です。ほかの従業員のモチベーションに関わるため、しかるべき対処をしなくてはなりません。
058割へのアプローチが組織を強くする
人材活用においてパレートの法則を用いる際には、どうしても上位と下位の2割の存在に対してのみアプローチを考えてしまいがちです。上位2割だけの待遇を手厚くしたり、下位2割を切り捨てたりすることは、短絡的であり長期的には組織を弱体化させます。 「2:6:2」のそれぞれの層に適したアプローチを行い、一人ひとりの能力が発揮できる環境整備に注力することが重要です。調和のとれた人材活用が本質的な組織強化につながるのではないでしょうか。
貢献を実感してもらうことが重要
「2:6:2」いずれの層の従業員に対しても等しく取り組むべき施策があるとすれば、それはモチベーションを保ちつづけてもらうための工夫であるといえます。 そのために必要なのは、自分の仕事や存在が「会社に貢献している」と実感してもらうことではないでしょうか。それは金銭的な報酬ではなく、日々の業務における周囲との関わりによってもたらされることが理想であるといえます。
個人の専門性を伸ばすことが重要視されている
昨今の変化が早い社会において、問題も複雑化しています。そうした中では、組織において、一部の人材の偏った考え方だけを取り入れるのではなく、多様な意見や考えを取り入れて解決に導いていくことが求められています。そうした意味で、8割に該当する個人の多様性に重きを置き、その専門性を伸ばしていくことが重要視されているのです。
Schooを活用して個人の専門性を伸ばす
Schoo for Businessでは約7,500本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、個人の専門性を伸ばすことができます。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
Schoo for Businessは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約7,500本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.個人の専門性を伸ばすことができる
上記でも説明したように、Schooでは約7,500本もの動画を用意している上に、毎日新しいトピックに関する動画が配信されるため、自分が伸ばしたいと思う分野をより深く学ぶことができます。また、近年の社会のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、企業を取り巻く環境が刻々と変化しています。それに伴い、社員の業務内容や求められるスキルも早いスパンで変化しています。このような予測のつかない時代の中で会社の競争力を維持するためには、社員一人一人が自発的に学び、成長させ続けることができる環境、いわば「学び続ける組織」になることが必要です。
Schoo for Businessでは、体系的な社員研修だけでなく、自己啓発を通じて自発的に学び、成長できる人材を育成することが可能です。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
パレートの法則を用いて人材活用を考える場合、すべての層に対し適切なアプローチをする必要があるようです。組織は、一部のエース従業員だけで成り立つのではありません。さまざまな人材が、それぞれの立場で力を発揮することが重要です。調和のとれた人材活用が長期的な組織強化につながるのだといえます。