プランドハップンスタンス理論とは?企業がうまく活用するための方法
近年、プランドハップンスタンスというキャリア理論が注目を集めています。新しい理論であり耳にしたことがない、という方も多いのではないかと思います。本記事ではプランドハップンスタンスとはどういったキャリア理論なのか、5つの行動指針と具体的な事例をご紹介します。
01プランドハップンスタンスとは
プランドハップンスタンスとは
プランドハップンスタンス(Planned Happenstance)とは、「計画された偶然」や「計画的偶発性理論」などと訳されることが多いです。 1999年にスタンフォード大学の教育学と心理学の教授であるクランボルツ教授によって提唱されました。 「キャリアというものは偶然の要素によって左右されるものが多く、偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながる」という考え方のことです。 また、プランドハップンスタンスセオリーと表現することもあります。
クランボルツ教授が提唱する3つのポイント
プランドハップンスタンスは、3つのポイントから提唱されています。
- ・個人のキャリアの8割が、予想できない偶然の出来事によって左右されている。
- ・偶然の出来事を本人が主体的に活用することで、キャリアアップにつながる。
- ・ただ偶然が発生するのを待つのではなく、意図的に生み出せるよう積極的に行動することが大切である。
偶然起きる出来事がキャリア形成に繋がるからといって受け身になるのではなく、主体的かつ積極的に行動することが大切であるということが、プランドハップンスタンスによって提唱されています。
プランドハップンスタンスが重要視されている背景
プランドハップンスタンスが、近年のキャリア理論の中でも特に重要視されている背景には、目まぐるしく変化していくビジネスの環境が原因にあります。 従来は終身雇用制度の元、個人のキャリアは先が見通せるものであり、キャリアプランを設計したらその通りにキャリアを積み上げていくことが大切にされていました。 しかし、近年のビジネス環境においては変化が激しく、一つの会社に生涯を通して働くケースは少なくなってきています。自身のキャリアを先まで見通すことが難しく、キャリア設計がしづらくなってきているのです。 そのような背景から、偶然の要素を味方につけキャリアアップに繋げていくという、プランドハップンスタンスが重要視されるようになっています。
02プランドハップンスタンスに必要な5つの行動指針
プランドハップンスタンスに則って積極的に行動をする際、5つの行動指針に基づくことでより、偶然を味方につけることができるようになります。
好奇心
まず第一に挙げられるのがは、何事においても好奇心を持つようにすることです。 自分の仕事だけに専念しその他の物事を蔑ろにすることのないよう、常に広い視野で物事への好奇心を持つことで、新しい発見に繋げていきましょう。
持続性
持続性を持って物事に取り組むこともキャリア形成においては大切です。始めたばかりであれば上手くいかないことも多いですが、続けることで成果が出て自分の身になっていきます。 粘り強く持続することで、ある日突然成果が出ることもあるため、諦めずに物事に取り組んでいきましょう。
柔軟性
持続性は大切ですが、こだわり持ち続け頑固になることはよくありません。柔軟性をもって物事に接するようにしましょう。 環境が変わる機会があれば柔軟に自分を変化させ、その環境に対応させていく必要があります。どのようなういった環境においても自分を見失わない柔軟性を身につけることが必要になります。
楽観性
世の中には自分の力の及ばない範囲で生じる問題も多くあるため、時には楽観性を持つことも重要になります。 悲観的になっていては挑戦する意欲が失われてしまうため、楽観的に捉えるようにし、何事にも積極的にチャレンジしていきましょう。
冒険心
未知の事柄にも積極的にチャレンジしていく冒険心もとても大切です。 先が見えないことはリスクも伴うため、躊躇してしまいがちですが飛び込んでみないと何も始まりません。 一定のリスクヘッジはしながらで、冒険心を持ってチャレンジを続けていきましょう。
03プランドハップンスタンスを企業が上手に活用するには
プランドハップンスタンスを企業がうまく活用するためには、4つのポイントがあります。 ポイントをしっかりと押さえ、プランドハップンスタンスを業務においても活用していきましょう。
ジョブローテーションを導入する
会社の制度としてジョブローテーションを導入することは、プランドハップンスタンスに効果的なことが多いです。 偶然の要素がキャリアに影響を与えるケースは、環境の変化によって引き起こされることが多いです。しかし、通常の業務が延々と続いていてはそういった機会はなかなか巡ってきません。 同じ部署で働く以上新しい刺激に触れる機会は少ないため、他部署で働く機会を会社側で用意できるジョブローテーション制度はうってつけと言えます。 ジョブローテーションを導入し、定期的に働く環境を変えてあげることで、従業員にとって予期せぬキャリア形成の機会を提供することにつながるのです。
オープンマインドを大切にする
自社の人材の能力を限定して決めつけず、どんな可能性も秘めている、と常に意識するようにしてください。 新しいプロジェクトを始める際に、普段からよく起用する従業員を起用するのではなく新しい従業員を起用してみるなど、企業側が主体的に従業員に新しい機会を提供することが大切です。 新しく起用した従業員が想像していなかった能力を発揮し、高い成果をあげるといった可能性もあります。 開かれた心を大切にし、何事においても決めつけをせず積極的に新しい起用に挑戦していきましょう。
他部署との交流の機会を積極的に設ける
キャリア形成に影響を与える要因には環境面での変化だけでなく、新しい人との出会いによることも多いです。 日常的に業務を共にする従業員同士だけの出会いでは、偶然が発生するケースは少ないため、他部署との交流の機会を企業側で積極的に設けてください。 また、ランチ会や打ち上げなどの際は可能な限り会社の予算で交流会を開催し、従業員の参加率を高めるようにしましょう。より多くの人と触れ合うことで偶然の出会いの機会が増えていきます。 予期せぬ人物との出会いが、従業員のキャリアに大きく影響するということは往々にしてあり得ます。新しい人との出会いを積極的に設けるようにしましょう。
04プランドハップンスタンスの事例やエピソードをご紹介
実際に、プランドハップンスタンスに基づいて個人のキャリアが形成されていった具体的なエピソードを2つ紹介します。
クランボルツ教授の事例
1つ目の事例は、クランボルツ教授自身の事例です。 プランドハップンスタンス理論の提唱者であるクランボルツ教授が心理学に出会い、教授になるまでに至ったのは全くの偶然によるものだったのです。 大学時代、テニス活動に明け暮れていた当時のクランボルツ教授は進路に悩んでおりテニス部の顧問に相談をしました。この顧問が心理学の教授で、進路に関して心理学の観点からアドバイスをもらったことをきっかけに、心理学の面白さに興味を持つようになり、クランボルツ教授は心理学と出会うことになったのです。 テニスに熱中し真剣に取り組んでいなければ、今のクランボルツ教授の姿はなかったでしょう。持続性持って物事に取り組み、挑戦を続けることがキャリア形成につながった事例だと言えます。
株式会社ゾーエ代表の土屋雅之氏の事例
株式会社ゾーエの代表である土屋雅之氏は、著名なカリスマ美容師です。彼の素晴らしい技術はゴッドハンドとも呼ばれ、東京の銀座にヘアーコンシェルジュサロンを展開する一方で、健康ヘルスケア事業にまで進出しています。 そんな土屋氏は、18歳のとき住み込みで美容院グループに就職し、美容師としての道をスタートしました。最初の2年間は下積み期間で、カットは任せてもらえずひたすらシャンプーをさせられる日々でした。 最初は苦しかったシャンプーですが、お客様に「気持ちいい」と言ってもらえることが楽しくなり、いつしか「お客さんに言われる前に気持ちが良いところに気づかなくてはいけない」と思うに至りました。 それを意識するようになってから彼のシャンプーは評判になり、指名が入るようになりました。「お客様に言われる前に気づくことができたらそれは感動につながる」ということを実感するようになったのです。 苦しい環境の中でも好奇心を持って取り組むことでキャリア形成に大きな影響を与えたという事例であると言えます。
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05まとめ
近年では、様々なキャリア理論が注目されるようになっていますが、その中でもプランドハップンスタンス理論は非常に多くの注目を集めています。 先を十分に見通しキャリアを綿密に設計していくことが難しくなっている現代だからこそ、企業は従業員に対して様々な機会を提供し、キャリア形成に繋がり得る経験を多く積んでもらうことが重要になるのです。