交流分析とは?自我状態とエゴグラムを用いた活用方法を紹介

交流分析とは、自分自身の人間関係やコミュニケーションの傾向を知り、対人関係の問題を解消したり、トラブルを回避したりするための心理療法のことです。 当記事では交流分析について、わかりやすく解説します。
- 01.交流分析とは
- 02.交流分析の基礎理論「ストローク」
- 03.交流分析の構成要素
- 04.まとめ
01交流分析とは
交流分析とは、自分自身の人間関係やコミュニケーションの傾向を知り、対人関係の問題を解消したり、トラブルを回避したりするための心理療法のことです。 人と関わるときの思考や感情、行動のクセや傾向を「自我状態」と定義し、診断することで自身の性格傾向を把握できます。 また、自分自身や他人に対する態度の傾向を「人生態度」と定義し、自身のタイプを知ることでコミュニケーションの改善を図れるようになるというものです。
▶︎参考:交流分析とは
交流分析の提唱者
交流分析は1950年代にアメリカの精神科医である、エリック・バーン氏により提唱されました。エリック氏は「人が抱える悩みの大半は人間関係によるものであり、人間関係が上手くいくことで悩みの多くは解消できる」と考え、交流分析を心理療法として確立しました。 近年では精神医学にとどまらず、さまざまな分野で活用されています。
交流分析の活用分野
昨今ではメンタルヘルスの分野だけでなく学校教育や社会福祉のほか、ビジネスシーンでも活用されています。特にビジネスシーンにおいては、対人スキルを向上させる取り組みの一環として活用され、接客やクレーム対応にも応用されています。 そのほか、社内コミュニケーションの活性化や、リーダースキル向上にも役立つとして、社内研修に多く取り入れられるようになりました。
02交流分析の基礎理論「ストローク」

交流分析には「ストローク」という基本的な概念があります。 ストロークとは「人間が生きていくために必要な心の栄養」とされ、人との関わりはストロークのやりとりが発生している状態であるという考え方です。
ストロークは2種類あるといわれています。相手を喜ばせ温かい気持ちにさせる「プラスのストローク」、反対に不愉快な気持ちにさせる「マイナスのストローク」の2種類です。 マイナスのストロークは避けるべきものと考えがちですが、そうではありません。 交流分析ではストロークの交換が無いことを「無視・無関心」として問題視します。たとえマイナスのストロークであっても、無いよりはあったほうが良いと考えます。
プラスのストローク
プラスのストロークとは、交流分析において他者に対して肯定的な感情や評価を伝える働きかけを指します。具体的には、褒め言葉、感謝の表現、笑顔、励ましの言葉などが該当します。例えば、「ありがとう」「素晴らしいね」といった言葉や、温かい握手や親しみのあるアイコンタクトもプラスのストロークに含まれます。これらのストロークは、受け取る側に安心感や自信を与え、自己肯定感を高める効果があります。
プラスのストロークを積極的に与えることで、信頼関係を築きやすくなり、人間関係が円滑になります。職場や家庭などのコミュニケーションにおいて、このストロークを意識的に増やすことは、周囲との関係性を深め、ポジティブな環境を作り出す鍵となるでしょう。
マイナスのストローク
マイナスのストロークとは、交流分析において他者に否定的な感情や評価を伝える働きかけを指します。たとえば、批判的な言葉、怒りの表現、無視や冷たい態度などがこれに該当します。「何をやっているんだ」「役に立たない」などの言葉は、相手に不安やストレスを与え、自己否定感を強める可能性があります。
しかし、マイナスのストロークは一概に悪いわけではありません。適切な形での指摘やフィードバックであれば、相手が自分の行動を見直し、成長するきっかけを提供する場合もあります。ただし、頻度や方法を誤ると関係が悪化するリスクがあるため、慎重なコミュニケーションが求められます。
03交流分析の構成要素
交流分析は以下の構成要素から成り立ちます。
- 1:自我状態(エゴグラム)
- 2:やりとり分析
- 3:人生態度
- 4:ゲーム分析
- 5:脚本分析
自我状態(エゴグラム)では、親、成人、子どもの3つの自我状態を分析し、自分の思考や行動の特徴を把握します。やりとり分析は、人間関係におけるコミュニケーションのパターンを理解し、円滑なやりとりを目指すものです。
人生態度は、自分と他者への基本的な信念を分析し、健全な関係構築を支えます。ゲーム分析では、無意識に繰り返される非建設的なやりとりを明らかにし、改善を図ります。脚本分析は、幼少期から形成された人生のストーリーを理解し、望ましい未来へと行動を変えるための手助けを行います。
▶︎参考:交流分析の構成要素
自我状態(エゴグラム)
交流分析における自我状態とは、個人の心理状態や行動の特徴を、親(Parent)、成人(Adult)、子ども(Child)の3つに分類して理解するモデルです。これらの状態は、それぞれ肯定的・否定的な側面を持ち、人間のコミュニケーションや行動に影響を与えます。エゴグラムは、これらの自我状態のバランスを可視化するツールで、自分の特性や傾向をグラフ化して分析します。例えば、親状態が強い人は指導的・保護的な行動をとりがちですが、批判的になる場合もあります。成人状態が強い場合は、理性的で客観的な判断が得意です。エゴグラムを用いることで、自己理解を深め、バランスの取れた行動を取るための指針を得ることができます。
やりとり分析
やりとり分析は、会話や行動のやりとりを観察し、それがどの自我状態から発せられたものかを分析する手法です。やりとりには、補完的、交差的、裏面的の3つのパターンがあります。補完的なやりとりは、相手の期待に応じた形でスムーズに進むコミュニケーションを指します。
一方、交差的なやりとりでは、自我状態の不一致により誤解や衝突が生じる場合があります。裏面的なやりとりは、表面的な内容の裏に別の意図が隠れているやりとりを意味します。この分析を通じて、コミュニケーションの質を向上させ、対人関係の問題を解決するヒントを得ることができます。
人生態度
人生態度とは、自分や他者に対する基本的な信念や価値観を指し、「OK牧場」とも呼ばれる4つのタイプに分類されます。「自分も他人もOK」は、健全で積極的な態度で、信頼や協力を重視します。「自分OK、他人NG」は自己中心的で攻撃的な傾向があります。「自分NG、他人OK」は依存的で自己評価が低い態度を示します。「自分も他人もNG」は無気力や悲観的な態度につながります。この人生態度を理解することで、自分の価値観を再確認し、より良い人間関係を築くための手がかりを見つけることができます。
ゲーム分析
ゲーム分析とは、交流分析における無意識のやりとりパターンを解明する手法です。ゲームとは、表面的な目的とは別に、隠れた意図や感情を伴う非建設的なコミュニケーションを指します。たとえば、「はい、でも…」というゲームでは、表面的には助けを求めながらも、実際には解決を拒む態度が見られます。
ゲームの目的は、多くの場合、心理的な満足感や自己正当化にありますが、結果的に対人関係を悪化させることがあります。ゲーム分析を通じて、無意識の行動パターンを認識し、より建設的なコミュニケーションを選択することが可能となります。
脚本分析
脚本分析は、個人が無意識のうちに形成する人生のストーリーや行動のパターンを分析する方法です。これらの脚本は幼少期の経験や親からの影響をもとに形成され、成功や失敗の傾向、自己イメージに大きく影響を与えます。たとえば、「私は失敗する運命だ」という脚本を持つ人は、自分でチャンスを逃したり、失敗を繰り返す可能性があります。
脚本分析により、自分の人生を左右する無意識の信念を明らかにし、それを自分にとって好ましい方向に修正することができます。このプロセスは、自己成長や人生の目標達成に役立ちます。
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04まとめ
交流分析を学ぶことは、自身の思考や行動パターンを理解できるため、コミュニケーションに役立ちます。 多くの従業員が学ぶことで、円滑な人間関係が構築され、生産性も向上するでしょう。 また、管理職やリーダー層の人材にとっては、部下育成のために学ぶべき必須のスキルであるといえます。ぜひ研修を企画してみてください。