交流分析とは?自我状態とエゴグラムを用いた活用方法を紹介
職場の人間関係が円滑であることは、仕事をスムーズに進めていく上で必要なことです。 そのためには円滑なコミュニケーションが不可欠です。従業員の対人スキル向上は、生産性と密接に関わる重要な要素であるといえます。 そのため、社内の人間関係の改善やコミュニケーションスキル向上のために、交流分析を社内研修に取り入れる企業が増えてきているようです。 当記事では交流分析について、わかりやすく解説します。
- 01.交流分析とは
- 02.ストロークとは
- 03.4つの基本分析
- 04.エゴグラムとは
- 05.人生態度とは
- 06.交流分析を研修で学ぶメリット
- 07.コミュニケーション研修ならSchoo for Business
- 08.まとめ
01交流分析とは
交流分析とは、自分自身の人間関係やコミュニケーションの傾向を知り、対人関係の問題を解消したり、トラブルを回避したりするための心理療法のことです。 人と関わるときの思考や感情、行動のクセや傾向を「自我状態」と定義し、診断することで自身の性格傾向を把握できます。 また、自分自身や他人に対する態度の傾向を「人生態度」と定義し、自身のタイプを知ることでコミュニケーションの改善を図れるようになるというものです。
交流分析の提唱者
交流分析は1950年代にアメリカの精神科医である、エリック・バーン氏により提唱されました。エリック氏は「人が抱える悩みの大半は人間関係によるものであり、人間関係が上手くいくことで悩みの多くは解消できる」と考え、交流分析を心理療法として確立しました。 近年では精神医学にとどまらず、さまざまな分野で活用されています。
交流分析の活用分野
昨今ではメンタルヘルスの分野だけでなく学校教育や社会福祉のほか、ビジネスシーンでも活用されています。特にビジネスシーンにおいては、対人スキルを向上させる取り組みの一環として活用され、接客やクレーム対応にも応用されています。 そのほか、社内コミュニケーションの活性化や、リーダースキル向上にも役立つとして、社内研修に多く取り入れられるようになりました。
02ストロークとは
交流分析には「ストローク」という基本的な概念があります。 ストロークとは「人間が生きていくために必要な心の栄養」とされ、人との関わりはストロークのやりとりが発生している状態であるという考え方です。 ストロークは2種類あるといわれています。相手を喜ばせ温かい気持ちにさせる「プラスのストローク」、反対に不愉快な気持ちにさせる「マイナスのストローク」の2種類です。 マイナスのストロークは避けるべきものと考えがちですが、そうではありません。 交流分析ではストロークの交換が無いことを「無視・無関心」として問題視します。たとえマイナスのストロークであっても、無いよりはあったほうが良いと考えます。
034つの基本分析
交流分析には、4つの基本理論が存在します。
- 1:構造分析
- 2:やりとり分析
- 3:ゲーム分析
- 4:脚本分析
これらの分析方法を通じて、交流分析は個人の内面や対人関係を理解し、より良いコミュニケーションや自己成長を促進する手助けをします。ここでは、それぞれについて具体的に解説していきます。
構造分析
構造分析は、人と関わるときの思考のクセを自我状態とし、P・A・Cの3種類のカテゴリーに分類します。
P(Parent)
親と同じように考え、行動する部分。 自他ともに厳しく律したり、優しく支 援・受容したりする。
A(Adult)
現実に対応し冷静さがある「成人」の思考・感情・行動
C(Child)
思うまま自由にふるまったり、親の顔色を見て 素直になったり反抗したりする「子供」時代のような思考・感情・行動
この3つの自我状態のどの部分が強く出るかで、人の性格が形成されるという考え方です。
やりとり分析
P・A・Cの自我状態モデルを用いて、会話の「やりとり」を分析する手法です。 両者でかわされるメッセージが、相手のP・A・Cのどの自我状態から発せられ、自身の自我状態におけるP・A・Cのどの部分で受け取ったのかを分析します。 分析することで、どのパターンで生じた「やりとり」で問題が発生するのか理解でき、感情の行き違いが発生しやすい「やりとり」を排除できるようになるというものです。やりとりには3つのパターンがあります。
相補的なやりとり
お互いが補完し合いながらコミュニケーションを行うことを指します。お互いが相手の意見をより深く理解し合うことができます。
交差的なやりとり
お互いが交互に話をすることを指します。お互いが公平な機会を持ち、自分の意見を述べることができます。
裏面的なやりとり
言葉だけでなく、表情や身体言語、非言語的な合図などを通じて、お互いが意見を交換することを指します。相手の意見や感情を理解することができます。
ゲーム分析
相手とのこじれた関係、とくに何度も繰り返しては嫌な気分で終わる「やりとり」を「ゲーム」と定義します。 ゲームに発展しやすい交流パターンを理解し、それを避けることで人間関係の改善を図るものです。 人はストロークが不足すると、マイナスのストロークでも無いよりはましであるため、ゲームでストロークを得ようとするので注意が必要です。
脚本分析
幼少期における親のしつけや、経験から無意識にシナリオ(脚本)をつくり、その脚本が自身の思考や行動パターンを決めているという考え方です。 無意識のうちに自身の可能性を狭くしている脚本に気がつき、手放すことで本当の自分の力を発揮できるようになるというものです。
04エゴグラムとは
交流分析における4つの基本理論のうち、構造分析を応用した性格診断に「エゴグラム」というものがあります。ビジネスにおいてもっとも活用されていると考えられるのが、東京大学医学部が開発した「TEG東大式エゴグラム」です。 53の質問に対し「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3択で回答していきます。 構造分析における、自我状態(P・A・C)をさらに細分化し5つの自我状態とします。質問に答えることで、自身の自我状態の高い部分と低い部分が把握でき、性格やコミュニケーションの傾向をつかめるものです。5つの自我状態を以下に挙げます。
CP:批判的な親の心
批判的な親の心(Critical Parent)は、権威やルールに基づいた厳しい態度を持つエゴ状態です。自己や他者に対して批判的で、社会的な期待に応じた行動を求めます。これにより、道徳や倫理観が強く働く一方、過剰な批判は人間関係に悪影響を与えることがあります。低すぎると「怠惰」な性格、高すぎると「批判的で厳しい」性格として表れます。
NP:養育的な親の心
養育的な親の心(Nurturing Parent)は、他者を思いやり、支え、育てようとする姿勢を表します。このエゴ状態は、愛情深さや保護的な態度を持ち、他者の感情やニーズに敏感です。たとえば、友人が困っているときに助けを差し伸べるような行動が該当します。低すぎると「冷淡で冷酷」な性格、高すぎると「お人好し」となります。
A :大人の心
大人の心(Adult)は、論理的で客観的な思考を基盤とし、現実に基づいて判断するエゴ状態です。感情や過去の経験に左右されず、冷静に状況を分析し、適切な行動を選択します。たとえば、問題解決において情報を集めて判断することがこのエゴ状態の特徴です。低すぎると「非合理的」な性格、高すぎる場合は「計算高く、ずる賢い」性格として表れます。
FC:自由な子供の心
自由な子ども心(Free Child)は、創造性や自己表現、楽しみを重視するエゴ状態です。この状態では、感情を自由に表現し、遊び心を持って行動します。たとえば、思いつきで楽しいことをする、喜びや好奇心を大切にする行動が該当します。低すぎる場合は「閉鎖的で暗い」性格として、高すぎる場合は「わがまま」な性格として表れます。
AC:順応した子供の心
順応した子ども心(Adapted Child)は、周囲の期待やルールに応じて自分を調整するエゴ状態です。この状態では、他者の意見に従ったり、期待に応えようとする姿勢が強くなります。たとえば、他人に気を使いすぎて自分の感情を抑えるような行動がこれに当たります。低すぎる場合は「マイペースで空気を読まない」性格として、高すぎる場合は「我慢しすぎて不満を溜め込みやすい」性格として表れます。
エゴグラムの解釈
ここまでは、エゴグラムにおける自我の解釈について解説してきました。 エゴグラムによる診断では、自我状態の値はエネルギーの総量を示します。高い値を示す項目が多いほど、エネルギーであふれている状態といえます。 また、それぞれの自我の状態を単体で判断せず、全体のバランスを見て判断しなくてはなりません。 改善を図る際は高い自我を下げるのではなく、低い自我をどのように上げるかを考えたほうが良いとされています。
05人生態度とは
交流分析では、その人の「人生に対する基本的な姿勢」を以下の4つの「人生態度」として分類しています。 自身がどのタイプかを知り、相手のタイプを知ることで接し方がコントロールできるようになります。
わたしはOK、あなたもOK
理想的な人生態度です。相手も自分も肯定し受容する姿勢です。豊かな人間関係を構築し、幸せな人生を生きていけます。この人生態度をもつ人であれば、建設的なやりとりができ、仕事面でも良い結果をもたらすでしょう。
わたしはOKではない、あなたはOK
劣等感の強い人がとりやすい人生態度です。自分に自信がもてず消極的になりがちです。NOといえない性格で、ストレスを溜め込みやすいでしょう。 自己防衛の傾向も強く、言い訳や弁解が多くなる傾向も見られます。
わたしはOK、あなたはOKではない
支配的な人がとりやすい人生態度です。他責的で、自分に都合が悪いことは相手のせいにしがちです。また自分に合わないものは排除しようとすることが多く、他罰的な考えをもちやすい傾向にあります。
わたしはOKではない、あなたもOKではない
自閉的な人生態度です。人との関わりを拒絶し自身のカラに閉じこもる傾向があります。 人生そのものを無価値なものと捉えており、ストロークのやりとりを嫌います。
07交流分析を研修で学ぶメリット
交流分析を社内研修で従業員に学んでもらうことで、社内コミュニケーションや人間関係が円滑になるメリットが期待できます。 特に管理職やリーダー層においては、交流分析の基礎知識を学ぶことは必須です。 リーダー自身が自分の性格傾向を把握していることはもちろん、部下の性格傾向も客観的に把握できることは、マネジメントにおいて大きな力となるでしょう。
自身のコミュニケーションのタイプを知ってもらう
エゴグラムを実践したり、自身の人生態度について考えてみたりすることで、自身のコミュニケーションのタイプを知ってもらいます。 そうすることでトラブルの原因が把握でき、気をつけるべき点が明確になるでしょう。 また、相手のタイプも意識できれば、接し方をコントロールできるようになり、無用な衝突を回避できます。
プラスのストロークの重要性を知ってもらう
指導的な立場の人には、周囲に常にプラスのストロークを投げかける必要性を認識してもらいます。プラスのストロークは部下のモチベーションを高め、能力を引き出します。 管理職やリーダー層の人材には、こうした部下のやる気を引き出すストロークスキルを身につけてもらいましょう。 部下や育成対象者に対して温かい関心を寄せ、接することが育成の近道であることを知り、日々の業務で実践してもらうことが重要です。
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■資料内容抜粋
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07コミュニケーション研修ならSchoo for Business
Schoo for Businessでは約7500本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。コミュニケーションに関する授業もご用意していますので、ここではおすすめの授業をご紹介します。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級7,500本以上の講座数
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もっと伝わるコミュニケーション術
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日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。 情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。 競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。 2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。 2015年2月、サイバークライムセンター 日本サテライトのセンター長も兼任。 著書:「外資系エリートのシンプルな伝え方」
非言語コミュニケーション術
コミュニケーション能力を磨く上では、「伝えるスキル」「聴くスキル」だけでは不十分です。 有名な「メラビアンの法則」では、各チャンネル間のメッセージが一致していないとき、言語情報が7%、話し方などの聴覚情報が38%、見た目や表情などの視覚情報が55%の影響力を持つとされ、非言語コミュニケーションの重要性が語られています。 本授業では、表情から相手の心理を察し、汲み取ることで、信頼関係を築いていく知識とスキルを学びます。
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株式会社空気を読むを科学する研究所 代表取締役
1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「チコちゃんに叱られる」等)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女」)の監修をしたりと、メディア出演の実績が多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、等々ある。
教える力・教わる力 -コミュニケーション基礎-
多くのコミュニケーションは「教わる側」「教える側」に分けることができます。 例えば、あなたが道に迷ったときに「○○には、どうすれば行けますか?」と見知らぬ人に尋ねれば、あなたは「教わる側」です。また、道を歩いているときに、「○○には、どうやっていけば良いですか?」と聞かれれば、あなたは「教える側」になります。ほとんどの方が、この「教わる側」「「教える側」の両方の立場を経験したことがあるはずです。道順を「教わる側」「教える側」のどちらであっても、目的地への道順が明確になる場合とそうでない場合が起こります。 この原因は何なのでしょうか? 上記の例のような場合の「教わる側」と「教える側」の構造は多くのコミュニケーションに応用することができます。 この授業では、「教える側」「教わる側」構造を明らかにすることで「上手に教わるための技術」「上手に教えるための技術」を習得することを目的としています。 私は、15年以上、受験生に数学を教えています。そして、道を尋ねることと同様に、何かを教わることもあります。どちらの場合も、この授業で紹介する「教わる技術」「教える技術」を用います。多くの方に、この技術を習得してもらい、多くのことを教わり・教えることが可能になって欲しいと思います。
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予備校講師
1979年東京生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒。大手予備校講師。大手予備校以外に、最難関大学志望の受験生を対象とした塾「SPECIAL ONE」にて、数学を担当している。 大学1年生の時より、大学受験生の指導にあたり、教えた生徒は2000名を超える。生徒指導におけるモットーは、「生徒との対話」と「知の享受」。
08まとめ
交流分析を学ぶことは、自身の思考や行動パターンを理解できるため、コミュニケーションに役立ちます。 多くの従業員が学ぶことで、円滑な人間関係が構築され、生産性も向上するでしょう。 また、管理職やリーダー層の人材にとっては、部下育成のために学ぶべき必須のスキルであるといえます。ぜひ研修を企画してみてください。