組織の風土改革とは|推進方法と成功させるポイントを解説
人材確保の難しさや働き方の多様化など、企業と人材を取り巻く環境は大きく変化しています。こうしたなか、これまで培ってきた組織風土に、改革の必要性を感じはじめる企業も少なくないようです。本記事では、組織風土改革の推進方法と成功させるポイントを解説します。
- 01.組織の風土改革とは
- 02.組織風土の4パターン
- 03.組織風土改革が必要な企業の特徴
- 04.組織風土改革の進め方
- 05.組織風土改革を成功させるポイント
- 06.組織風土改革を成功させるポイント
- 07.まとめ
01組織の風土改革とは
組織の風土改革とは、企業の文化や特色を時代に合わせ、変革していく取り組みです。組織風土とは、組織の構成員の間で暗黙知となっている習慣や価値観、独自のルールを指します。長い年月をかけて培われた組織風土を変えることは、容易ではありません。しかし、組織風土が古い慣習による現代にそぐわないものであったり、組織の成長を妨げていたりする場合は改革する必要があります。組織風土の構成要素
組織の問題を分析・解決するフレームワークとして、大手コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「7Sモデル」があります。「7Sモデル」では、企業の構成要素をハード面とソフト面に分類し、7つの単語の頭文字で表現しています。組織風土は様々な企業活動の集積として出来上がっているものなので、改革の方針を定めるにあたってはこのようなフレームワークを用いて分析するとよいでしょう。ハード面の3S
- ・戦略(Strategy):企業が競争力を維持するための計画
- ・組織構造(Structure):企業階層・指揮系統・部門構成など
- ・制度(System):ワークフロー・評価制度
ソフト面の4S
- 価値観(Shared value):組織のコアとなる価値観や労働倫理
- ・人材(Staff):組織で働く従業員・経営者
- ・経営スタイル(Style):社風やリーダーシップスタイル
- ・組織能力(Skill):組織に備わる能力(営業力・開発力など)
ソフト面の4Sは、人間に関わるものであるため、簡単に変革できるものではありません。そのため、組織風土改革を実行する際には、ハード面の3Sから取り組む企業も多いようです。
02組織風土の4パターン
組織風土は、その企業の歴史により醸成される独自のものです。企業の数だけ存在し、まったく同じものはないといっても過言ではないでしょう。しかし、ある程度パターン化することは可能です。成果への意識とチームワーク力の二軸で分けることが多いため、次でそれぞれ解説します。
ブリリアンス型
ブリリアンス型は組織風土のタイプとして最も好ましいもので、成果への意識も高くチームワーク力も高い状態です。特徴は、なにより「風通しのよさ」が挙げられるでしょう。社内コミュニケーションが活発で、良好な意思疎通が可能な組織です。信頼関係が構築されており、人間関係に煩わされることもほとんどありません。チームワークも良好であり、成果を上げやすいようです。ブリリアンス型の組織は人材育成に注力していることも多く、明るい雰囲気で働きやすく、離職率も低い傾向にあるようです。
仲良しクラブ型
仲良しクラブ型は、成果への意識に課題を抱える組織風土のタイプです。チームワークは良いため働きやすく組織内の雰囲気もよいのですが、厳しさが欠けた「ぬるま湯状態」とも呼べるものです。一見コミュニケーションは良好に見えますが、深い関わりを避ける傾向があるため、厳しい指摘をしあうことはありません。人材や組織の成長が鈍化するだけでなく、チェック機能が働かないことが原因で、トラブルや不祥事を起こす可能性が高くなる組織風土です。
ギスギス型
ギスギス型は、逆に成果への意識は高い反面、社内コミュニケーションに課題を抱えるタイプの組織風土です。個人主義で自己の成果に固執するあまり、周囲の社員と協力して仕事を進めることはありません。成果主義を徹底している企業に起こりやすい現象といえるでしょう。情報共有に対する意識も低く、トラブル時の対応が後手に回る恐れもあります。人間関係が希薄であるため、ストレスを抱えやすく離職率も高い傾向にあるようです。
腐敗型
腐敗型は、社内コミュニケーションと、成果への意識の両方に問題を抱える組織風土です。社員同士が無関心で、つながりを求めることがないため、社内の雰囲気はどんよりと暗いものになってしまいます。さらに成果への意識が低く、協力関係がないため業績の向上が見込めず、多くの人材が「あきらめ」を感じている状態です。無関心によりチェック機能が働かないため、内部不正も起こりやすく、離職率も高くなりがちです。
03組織風土改革が必要な企業の特徴
組織風土が良好ではない職場の日常には、「笑顔が少ない」「挨拶をしない」「雑談が少ない」といった傾向があるようです。それ以上に、企業成長を鈍化させる現実的な問題として、以下に挙げる特徴が見受けられる場合、早急に改革に着手しなければなりません。
社員の成長意欲が低い
社員の成長意欲が低いと感じられる場合、組織風土になんらかの問題を生じている可能性があります。社員の成長意欲が低下する現象は、経営が安定した、規模の大きな企業にみられることが多いようです。現状維持で、守りに入っている状態ともいえるでしょう。こうした組織では、新たなチャレンジを敬遠する同調圧力が生じがちです。成長意欲を持った人材が阻害されやすく、結果として企業の成長が鈍化するのです。
コミュニケーションが少ない
社内コミュニケーションに問題を抱えることは、健全ではない組織風土の典型的な現象といえるでしょう。社員どうしの接点が少なく無関心であるため、業務に必要な意思疎通にさえ支障をきたすようになります。当然、社内の雰囲気も暗くチームワークが機能しません。そのため成果が上がらず、意欲的に仕事に取り組む社員が減っていく悪循環に陥るのです。
離職率が高い
健全ではない組織風土がもたらす問題として、もっとも会社にダメージを与えるものが、社員の離職です。暗くギスギスとした雰囲気の職場で仕事をしたいと考える人材は、皆無といっても過言ではないでしょう。コミュニケーションが希薄であれば、困ったときに相談できる相手がおらず疎外感を覚えます。若年層や優秀な人材ほど、成長できない環境には早々に見切りをつけるものです。離職率が高いと感じた場合はサーベイを活用するなど、組織の現状の早急な診断が必要です。
04組織風土改革の進め方
組織風土は長い年月をかけ培われたものであり、改革は容易ではありません。しかし、時間はかかるかもしれませんが、以下のステップに沿って実行することで達成の可能性が高まります。組織風土改革を進める際の、4ステップを解説します。
- 1.現状を正確に把握する
- 2.問題点や課題を明確化する
- 3.風土改革の必要性を周知する
- 4.行動計画を策定しアクションを起こす
詳しくみていきましょう。
現状を正確に把握する
まずは、組織の現状を把握することからはじめます。企業の今後の成長戦略に照らして、自社の風土や文化の強み・弱みを把握し、課題はどこにあるのか、風土改革の目的をどこに置くのかを検討します。これらの把握には3C分析などのフレームワークを利用する他、社員にアンケート調査やグループディスカッションを実施するのもよいでしょう。また、社内調査のみでは客観性を欠く恐れもあります。その場合は、モラールサーベイなどの意識調査を社外に依頼することも検討します。
問題点や課題を明確化する
現状分析が終了したら、理想とする組織風土とのギャップを抽出し、問題点と課題をより明確にします。組織風土は目に見えないものであり、社員それぞれが感じている感覚的なものです。問題点や課題に対する認識にズレがあると、風土改革は失敗する可能性が高まります。社員の不満や、組織成長を妨げている要因は何なのか、わかりやすい形で言語化するとよいでしょう。
風土改革の必要性を周知する
組織風土改革を成功させるには、その必要性をすべての社員が共有することが必要です。風土改革を実行する理由と目的、そして改革することによりどのようなメリットが生じるのかを理解してもらいます。風土改革の必要性を周知するには、経営トップをはじめとした経営陣の強い発信力が欠かせません。経営層の考えや思いを根気強く発信し、社員の意識を変えていくのです。
行動計画を策定しアクションを起こす
風土改革の目標が明確になれば、現状とのギャップを埋めるための具体的な行動計画を策定します。マッキンゼーの「7Sモデル」を参考に、組織のハード面・ソフト面からバランスよく抽出し、具体的な行動に落とし込んでいきます。行動計画はわかりやすく、強い言葉でまとめることで浸透しやすくなるものです。そして、経営層が率先してアクションを起こすことで、社員の納得度が高まり、行動が浸透していくでしょう。
05組織風土改革を成功させるポイント
組織風土改革は容易ではありません。成功させるには、社員の意識を変革する必要があるため、時間をかけた丁寧なアプローチが求められます。具体的には、以下2つのポイントに注意して行います。
- ・風土改革の必要性を段階的に浸透させる
- ・コミュニケーションの総量を増やす
詳しく解説します。
風土改革の必要性を段階的に浸透させる
組織風土改革の必要性を周知するには、経営層の強い発信力が必要であることは前述しました。しかし、社員の意識に浸透させるのは一朝一夕でできることではないため、段階的な施策を講じる必要があります。社内研修を実施したり、社内報などの社内広報を通じて頻繁かつ丁寧な発信を繰り返したりすることが効果的な手法となるでしょう。
コミュニケーションの総量を増やす
職場内のコミュニケーションを増やしていくことも、有効な手段となります。上司と部下のコミュニケーションを深めるために、1on1を制度化するのも一つの方法です。若年社員にメンターを設けることもよいでしょう。日常的な対話のなかで、組織風土改革に通じるコミュニケーションを意識的に増やすことで、改革への意識が浸透するのです。
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06組織風土改革を成功させるポイント
ここでは、組織風土改革に成功した企業事例を紹介します。いずれの企業も経営層の強いメッセージのもと、多くの社員を巻き込み、変革に成功している点が興味深いところです。以下の2社を紹介します。
- ・キリンビール株式会社
- ・日本航空株式会社(JAL)
詳しくみていきましょう。
キリンビール株式会社
キリンビール株式会社は、ビール市場でトップシェアを誇る企業でした。しかし2001年、市場変化への対応が遅れ、首位の座から陥落してしまいます。これを機に、当時のトップが実施したのが、組織風土改革の一環としての「対話集会」です。この対話集会は、経営層や管理職をはじめ、若手社員や労働組合にまで広がりをみせました。結果として、「お客様のことを第一に考える組織風土」というメッセージを、多くの社員に浸透させることに成功しています。
日本航空株式会社(JAL)
日本航空株式会社は、航空業界でもトップクラスの収益を誇る企業でしたが、2010年には会社更生法を適用し莫大な負債を抱えました。再建に際し政府からの要請もあり、京セラの創業者である稲盛和夫氏が会長に就任します。稲盛氏が実施したのは、リーダー層の意識改革を中心とした組織風土改革です。リーダーとしての心構えや稲盛氏の経営哲学を、まずリーダー層に落とし込み、徐々に多くの社員に浸透させていったのです。
07まとめ
組織風土は企業の歴史に根差すもので、改革は容易ではありません。しかし、組織風土が時代にそぐわず、社員が不満を抱えているのであれば、早急に改革する必要があります。改革にあたっては、経営層の強い発信力が不可欠です。加えて、研修の実施や社内コミュニケーションへの施策を講じることにより、多くの社員に変革の意識が浸透していきます。ぜひ、取り組みを検討してみてください。