更新日:2025/01/22

組織風土とは|組織文化との違いや改革に必要なことを紹介

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人材確保の難しさや働き方の多様化など、企業と人材を取り巻く環境は大きく変化しています。こうしたなか、これまで培ってきた組織風土に、改革の必要性を感じはじめる企業も少なくないようです。本記事では、組織風土改革の推進方法と成功させるポイントを解説します。

 

01組織風土とは

組織風土とは、組織内で共有される価値観や信念、行動規範、そしてその結果として形成される職場の雰囲気や文化を指します。これには、リーダーシップのスタイル、意思決定のプロセス、従業員間のコミュニケーションの仕方、目標達成へのアプローチなど、組織のあらゆる側面が含まれます。

組織風土は、組織の歴史や理念、リーダーの影響、従業員の行動や経験を通じて形成され、維持されます。良好な組織風土は、社員のモチベーション向上やチームワークの強化、創造性の発揮に寄与し、結果的に業績の向上をもたらします。

組織風土と組織文化の違い

組織風土と組織文化は、いずれも組織を構成する重要な要素ですが、その性質や形成のプロセスに違いがあります。組織文化は、組織全体で共有される価値観や行動規範、暗黙のルールなどを指し、組織の経験や市場環境の変化に応じて柔軟に変化します。

また、組織文化は意図的に設計し、戦略的に組織運営に活用することが可能です。一方で、組織風土は、組織内に自然に根付いた習慣や独自のルールを指します。これは時間をかけて形成され、時代を超えて受け継がれる傾向があります。風土は、従業員の日々の働き方や職場の雰囲気に大きく影響し、モチベーションやパフォーマンスにも直結します。組織文化が意識的に形成されるのに対し、組織風土は自然発生的であり、その定着度が高い点が大きな違いです。

 

02組織風土の構成要素

組織風土の構成要素は以下の通りです。

  • ・ソフト面
  • ・ハード面
  • ・メンタル面

組織風土は、ソフト面・ハード面・メンタル面の3要素で構成されます。ソフト面は、暗黙的なルールや価値観で組織の日常行動に影響を与え、ハード面は企業理念や就業規則など文書化された基盤で組織の方向性を統一します。メンタル面は従業員の心理的安全性やストレス管理に関わり、職場の創造性や協力性を向上させます。これらを適切に整備・管理することが重要です。

ソフト面

組織風土におけるソフト面は、組織内で暗黙的に共有されているルールや慣習、価値観といった目に見えない要素を指します。これには、職場特有のコミュニケーションの仕方や意思決定のプロセス、暗黙の了解とされる行動規範などが含まれます。たとえば、「こうするのが当たり前」といった非公式の基準や、特定の業務における独自の進め方などが挙げられます。このようなソフト面は、時間をかけて自然に形成されることが多く、組織の日常的な行動や意思決定に大きな影響を与えます。

また、新たなメンバーがこのルールに適応することで、組織への一体感や帰属意識が醸成されることもあります。ただし、過度に保守的なローカルルールは、変化への柔軟な対応を阻害する要因ともなり得ます。

ハード面

ハード面は、企業理念や就業規則、評価制度、組織図など、目に見える要素を指します。これらの要素は従業員全員に共有されることで、組織の方向性や行動基準を統一する役割を果たします。たとえば、企業理念は組織の価値観や目標を示し、就業規則は日々の行動を規定する枠組みを提供します。

ハード面の要素は、組織の安定性や透明性を高める一方、時代や市場の変化に合わせた見直しが必要です。これらが適切に機能すると、組織全体が一貫性を持って活動できるようになります。しかし、規則が厳格すぎると柔軟性を欠き、従業員の主体性を損なうリスクも伴います。

メンタル面

メンタル面は、従業員の精神的・心理的状態に関連する要素を指し、組織風土の中で特に注目されています。メンタル面の要素は、心理的安全性や自発的な言動、職場内でのストレス管理などに大きな影響を与えます。心理的安全性が高い職場では、従業員が自分の意見を自由に表明しやすく、チームとしての創造性や協力性が向上します。

一方で、心理的負担が大きい職場では、ストレスや不安が蓄積し、業務パフォーマンスの低下や離職率の上昇につながる可能性があります。従業員の精神的健康を支えるためには、適切なサポート体制やオープンなコミュニケーション環境の構築が必要です。メンタル面を重視することは、組織の持続的な発展にも寄与します。

 

03良い組織風土がもたらすメリット

良い組織風土がもたらすメリットは以下の通りです。

  • 1:生産性が向上する
  • 2:エンゲージメントが高める
  • 3:社員の定着につながる
  • 4:社員同士の人間関係が向上する

組織風土が良くなると、組織の風通しが良くなるため、生産性やエンゲージメントの向上が期待できます。また、社員同士の人間関係が向上し、社員満足度の向上にもつながるでしょう。

生産性が向上する

良い組織風土は、生産性の向上に直結します。風通しの良い職場環境では、従業員が意見を自由に発信でき、業務の効率化や改善に向けたアイデアが生まれやすくなります。また、明確な目標やルールが共有されている組織では、業務の進行がスムーズになり、無駄な時間や労力を削減できます。

さらに、心理的安全性が確保された環境では、失敗を恐れずにチャレンジする文化が根付くため、イノベーションが促進されます。このように、良い組織風土は従業員のモチベーションと業務効率を向上させ、全体的な生産性を高める要因となります。

エンゲージメントが高まる

良い組織風土は、従業員のエンゲージメントを高める効果があります。共感できる企業理念や価値観が共有され、日常業務を通じて組織との一体感を感じられる職場では、従業員は自分の役割に意義を見出しやすくなります。また、リーダーシップの発揮や適切なフィードバックがある環境では、個々の努力が評価され、仕事への意欲がさらに高まります。エンゲージメントが向上すると、従業員は自発的に成果を追求し、長期的に組織の目標達成に貢献しようとする姿勢を強めるため、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

社員の定着につながる

良い組織風土は、社員の定着率を向上させます。働きやすい環境や明確なキャリアパスが提供される組織では、従業員が安心して働き続けられると感じるため、離職を防ぐ効果があります。また、適切なコミュニケーションが図られ、日々の業務や成果が認められる職場では、従業員の満足度が高まり、他社への転職を考える動機が減少します。さらに、育児や介護など個々の状況に配慮した柔軟な働き方を導入することで、多様な背景を持つ社員のニーズに応えられ、結果的に組織の人材が安定的に確保されます。

社員同士の人間関係が向上する

良い組織風土は、社員同士の人間関係を改善します。オープンなコミュニケーションが推奨される環境では、同僚間での情報共有が活発になり、相互理解が深まります。また、心理的安全性が確保された職場では、互いにサポートし合い、困難な状況でも協力して乗り越える風潮が育ちます。

さらに、チームビルディング活動や社内イベントを通じて信頼関係が強化されることで、職場全体の一体感が生まれます。こうした人間関係の向上は、働きやすい環境を形成し、業務の効率化や社員満足度の向上にも寄与します。

 

04組織風土改革の進め方

組織風土改革は以下の手順で進めます。

  • 1.現状を正確に把握する
  • 2.問題点や課題を明確化する
  • 3.風土改革の必要性を周知する
  • 4.行動計画を策定しアクションを起こす

組織風土改革を進めるには、まず現状を正確に把握し、課題や問題点を明確化することが重要です。その上で、組織風土改革の必要性を組織全体に周知し、理解を得ることが改革成功の鍵となります。次に、具体的な行動計画を策定し、改善に向けた具体的なアクションを起こします。これには、トップダウンでのリーダーシップとボトムアップでの意見反映のバランスが求められます。計画を進める際は進捗状況を適切に管理し、必要に応じて修正を加える柔軟性も必要です。

現状を正確に把握する

まずは、組織の現状を把握することからはじめます。企業の今後の成長戦略に照らして、自社の風土や文化の強み・弱みを把握し、課題はどこにあるのか、風土改革の目的をどこに置くのかを検討します。これらの把握には3C分析などのフレームワークを利用する他、社員にアンケート調査やグループディスカッションを実施するのもよいでしょう。

また、社内調査のみでは客観性を欠く恐れもあります。その場合は、モラールサーベイなどの意識調査を社外に依頼することも検討します。

問題点や課題を明確化する

現状分析が終了したら、理想とする組織風土とのギャップを抽出し、問題点と課題をより明確にします。組織風土は目に見えないものであり、社員それぞれが感じている感覚的なものです。問題点や課題に対する認識にズレがあると、風土改革は失敗する可能性が高まります。社員の不満や、組織成長を妨げている要因は何なのか、わかりやすい形で言語化するとよいでしょう。

風土改革の必要性を周知する

組織風土改革を成功させるには、その必要性をすべての社員が共有することが必要です。風土改革を実行する理由と目的、そして改革することによりどのようなメリットが生じるのかを理解してもらいます。風土改革の必要性を周知するには、経営トップをはじめとした経営陣の強い発信力が欠かせません。経営層の考えや思いを根気強く発信し、社員の意識を変えていくのです。

行動計画を策定しアクションを起こす

風土改革の目標が明確になれば、現状とのギャップを埋めるための具体的な行動計画を策定します。マッキンゼーの「7Sモデル」を参考に、組織のハード面・ソフト面からバランスよく抽出し、具体的な行動に落とし込んでいきます。行動計画はわかりやすく、強い言葉でまとめることで浸透しやすくなるものです。そして、経営層が率先してアクションを起こすことで、社員の納得度が高まり、行動が浸透していくでしょう。

 

05組織風土改革を成功させるポイント

組織風土改革を成功させるポイントは以下の通りです。

  • ・組織風土改革の必要性を段階的に浸透させる
  • ・コミュニケーションの総量を増やす
  • ・経営陣が率先して改革に取り組む
  • ・ハード面の改革から着手する

風土改革は一朝一夕で実現するものではないため、段階的に必要性を浸透させることが重要です。また、1on1を制度化するなど、コミュニケーションの量を増やすことも効果的です。さらに、経営陣が率先して改革に取り組む姿勢を示すことで、組織全体の改革への意識が高まるでしょう。

組織風土改革の必要性を段階的に浸透させる

組織風土改革の必要性を周知するには、経営層の強い発信力が必要であることは前述しました。しかし、社員の意識に浸透させるのは一朝一夕でできることではないため、段階的な施策を講じる必要があります。社内研修を実施したり、社内報などの社内広報を通じて頻繁かつ丁寧な発信を繰り返したりすることが効果的な手法となるでしょう。

コミュニケーションの総量を増やす

職場内のコミュニケーションを増やしていくことも、有効な手段となります。上司と部下のコミュニケーションを深めるために、1on1を制度化するのも一つの方法です。若年社員にメンターを設けることもよいでしょう。日常的な対話のなかで、組織風土改革に通じるコミュニケーションを意識的に増やすことで、改革への意識が浸透するのです。

経営陣が率先して改革に取り組む

組織風土改革を成功させるためには、経営陣が率先して改革に取り組むことが重要です。経営陣が自ら行動で示すことで、従業員に対して、変革の必要性や意義を具体的に伝えられます。また、経営陣がリーダーシップを発揮することで、組織全体の士気が高まり、改革への協力を得やすくなります。このような経営陣の率先した取り組みによって、改革の成功に欠かせない基盤が築かれるでしょう。

ハード面の改革から着手する

組織風土改革を成功させるためには、まずハード面の改革から事前にすることが効果的です。具体的には業務フローや管理システム、組織の構造を見直すことが挙げられます。ハード面の改革を進めることによって、会社の文化にも変化が現れるため、組織風土改革をスムーズに行うことができるでしょう。


 

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06組織風土の改革を実施した企業事例

組織風土の改革を実施した企業事例として以下の6社を紹介します。

  • ・キリンビール株式会社
  • ・日本航空株式会社(JAL)
  • ・トヨタ自動車株式会社
  • ・三井情報株式会社
  • ・ポーラ株式会社
  • ・旭化成株式会社

これらの企業はいずれも組織風土改革を通じて持続的成長を実現することを目指し、自律的な学びやコミュニケーションの強化を課題として取り組んでいる点が共通しています。社員一人ひとりが主体的に学び、意識改革を行うためのプラットフォームやイベントを導入し、組織全体の一体感や競争力を向上させる施策を実施していることが、組織風土改革における重要なポイントといえるでしょう。

キリンビール株式会社

キリンビール株式会社は、ビール市場でトップシェアを誇る企業でした。しかし2001年、市場変化への対応が遅れ、首位の座から陥落してしまいます。これを機に、当時のトップが実施したのが、組織風土改革の一環としての「対話集会」です。この対話集会は、経営層や管理職をはじめ、若手社員や労働組合にまで広がりをみせました。結果として、「お客様のことを第一に考える組織風土」というメッセージを、多くの社員に浸透させることに成功しています。

日本航空株式会社(JAL)

日本航空株式会社は、航空業界でもトップクラスの収益を誇る企業でしたが、2010年には会社更生法を適用し莫大な負債を抱えました。再建に際し政府からの要請もあり、京セラの創業者である稲盛和夫氏が会長に就任します。稲盛氏が実施したのは、リーダー層の意識改革を中心とした組織風土改革です。リーダーとしての心構えや稲盛氏の経営哲学を、まずリーダー層に落とし込み、徐々に多くの社員に浸透させていったのです。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、長年にわたり持続可能な組織風土改革を実施してきた代表的な企業です。トヨタ生産方式(TPS)を基盤にした効率的な生産システムを導入し、組織全体で持続的改善を行う「カイゼン」の文化を浸透させました。さらに、社員一人ひとりが自ら考え行動する風土を醸成し、リーダーシップの育成や多様な人材活用にも注力しています。このような改革により、トヨタはグローバル市場での競争力を高め、持続的成長を実現しています。

三井情報株式会社

ICT総合技術力を駆使し、システムのコンサルティングから開発・構築、運用・保守までトータルで提供する三井情報は、8社が合併して規模を拡大したことから、多様な人材を抱える企業になりましたが、組織としての一体感に課題がありました。そこで、行ったのが社内に一体感を醸成するためのさまざまなイベントです。全従業員が参加して討議するワークショップで普段業務で関わることがない社員とも会話することで、会社としての一体感の情勢を生み出すことができました。

株式会社ポーラ

国内屈指の化粧品メーカーである株式会社ポーラは、化粧品やサービスだけでなく、体験価値を拡大する方向に方針を転換しました。この一環として、独自の人材成長プログラムを導入しましたが、必要とされるスキルを持つ人材が不足していることに課題を感じています。そこで、自律的な学びを促すために「Schoo for Business」を導入し、社内公募の形をとり、希望者が利用できるようにしました。その結果、Schooをきっかけに上司や同僚とのコミュニケーションが増え、会社の雰囲気も徐々に変化しつつあるようです。

旭化成株式会社

旭化成株式会社は、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」というグループミッションのもと、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3領域で事業を展開する総合化学メーカーです。創業100年を迎えた同社は、社会ニーズの変化に応じて事業ポートフォリオを変えながら成長を遂げてきました。しかし、持続的な成長には若手社員を含む多様な価値観を組織内で活かすことが必要であり、自律的にキャリアを考え、学び続ける組織風土の醸成が課題となっていました。その解決策として、自社開発の学びのプラットフォーム「CLAP」にスクーを導入し、社員一人ひとりが自律的にキャリアを形成できる環境を整備しました。これにより、社員が学びを通じて個人の成果を実感する場面が増え、約2万人の社員が積極的に学ぶ習慣を身につけ、次世代の「旭化成らしさ」を築く風土が醸成されています。

 

07まとめ

組織風土は企業の歴史に根差すもので、改革は容易ではありません。しかし、組織風土が時代にそぐわず、社員が不満を抱えているのであれば、早急に改革する必要があります。改革にあたっては、経営層の強い発信力が不可欠です。加えて、研修の実施や社内コミュニケーションへの施策を講じることにより、多くの社員に変革の意識が浸透していきます。ぜひ、取り組みを検討してみてください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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