公開日:2022/01/21
更新日:2022/07/15

インストラクショナルデザインとは?注目される背景と代表的なモデルを紹介

インストラクショナルデザインとは?注目される背景と代表的なモデルを紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

本記事では、企業研修などにおいて、効率的かつ効果的な学習支援を設計する考え方であるインストラクショナルデザインについて解説します。注目される背景や代表的なモデルについて紹介しますので、最適な研修を模索している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

01インストラクショナルデザインとは

インストラクショナルデザイン(英:Instructional Design)とは、日本語では「教育設計」と訳されます。勘や経験、度胸に頼るだけの従来型の企業研修に比べ、インストラクショナルデザインによる学習アプローチを行うと、効率的かつ効果的な学習方法を設計できます。

 

02インストラクショナルデザインが注目される背景

eラーニングの普及や勘と経験をもとに組み立てた教育方法からの脱却、教育成果のばらつきを是正といった理由から、インストラクショナルデザインが注目されるようになりました。ここからは、それぞれの具体的な内容を解説します。

eラーニングの普及

インストラクショナルデザインが認知されはじめたのは、2000年頃から始まったeラーニングの普及に起因します。集合研修や外部セミナーが一般的だった企業研修では、講師が受講者の反応を確認しながら、教育を進めていました。一方、eラーニングでは、講師や上司が不在でも、受講者が効率的に一定水準の学習効果を得る必要があります。そのため、理論にもとづく効果的な教育方法であるインストラクショナルデザインの活用が重視されはじめたのです。 新型コロナウイルス感染症対策のため、リモートワークが加速度的に普及し、企業の教育研修において、オンライン化が進んだことも理由として挙げられます。短時間で効果的な成果を出せるオンライン研修へのニーズが高まり、インストラクショナルデザインが注目されています。

勘と経験をもとに組み立てた教育方法から脱却する

多くの企業において、教育をする側は長年の勘と経験をもとに教育方法を組み立て、部下を育てていく環境が珍しくありませんでした。しかし、このような教育方法では、教育する側の力量によって、教育の質にばらつきが出るものです。さらに、実践での活かし方など最終目標が定まっていない点が課題として指摘されていました。

教育成果のばらつきを是正

教育を受ける側の能力差によって教育効果に差がでるおそれも避けたいものです。めまぐるしく変化するビジネス環境においては、以前のようなアプローチの人材教育では立ち行かなくなっています。このような懸念を解決する緒として、インストラクショナルデザインに注目が集まるようになったのです。

 

03インストラクショナルデザインを基にした教育訓練のメリット

企業研修に求められるようになったインストラクショナルデザインには、効果的な教育手法を設計できたり、教育の質を保てたりなど、さまざまなメリットがあります。自主的な学習意欲を高められる点も利点といえます。詳しくみていきましょう。

目的に対して効果的な教育手法を設計できる

そもそも企業研修とは、受講後に社員の行動に変化が起きなければ、大きな意味をなしません。研修の目的は「理解すること」ではなく、「〇〇ができるようになること」として設定する必要があります。インストラクショナルデザインでは、このような目的に対して効果的な教育手法の設計をし、研修後の測定までを行います。

体系的な教育アプローチで教育の質を保てる

インストラクショナルデザインには、ADDIEモデルやTOTEモデルといった体系化された教育方法が存在します。適切なモデルを活用した教育アプローチにより、教材作成者や講師の力量による学習者の理解度のばらつきを減らし、教育の質を保てるようになります。

参加者の自主的な学習意欲を高められる

研修参加者が自ら学びたいと思う気持ちや、モチベーションを維持しながら研修にやりがいを感じられます。明確な学習目標を掲げ、ゴールを把握することで、学習意欲が高まり、限られた時間内で成果を出せるようになります。

 

04インストラクショナルデザインの代表的なモデルを紹介

ここからは、インストラクショナルデザインの代表的なモデルである、ADDIEモデル、TOTEモデル、ARCSモデルについて紹介します。また、メリルのID第一原理、ガニェの9教授事象についても解説します。

ADDIEモデル

代表的な理論のひとつ、ADDIEモデルは、Analysis(分析)Design(設計)Development(開発)Implementation(実施)、Evaluation(評価)のプロセスに沿って、教育計画や教材内容を組み立てていくモデルです。 まず、教育ニーズを分析し、分析結果を踏まえて、学習プログラムを設計します。設計完了後、設計されたプロセスに従って、eラーニングなど教材の開発を行います。次に、開発した学習プログラムで研修を実施し、受講者の習熟度などを具体的に測定し、当初設定した目標を達成できたかチェックします。目標不達の場合は問題点を洗い出し、プログラムを改善していきます。

TOTEモデル

TOTE(トート)モデルは、目標に向かって進む最中に、達成具合を確認しつつ進めるモデルです。 あらかじめ自分が目標を達成できているか否かをチェック(TEST)します。目標達成できている場合は、作業をせずに抜け出します(Exit)。目標達成できていなければ、目標に向けて作業を行い(Operation)、目標達成具合のチェック(TEST)を繰り返していくモデルです。

ARCSモデル

ARCSモデルは、Attention、Relevant、Confidence、Satisfactionの頭文字を取ったもので、この4つの側面から、学習者のモチベーションの維持や向上を目指すモデルです。 ・Attention(関心)・・・学習者の興味や知的好奇心、探求心を刺激 ・Relevant(関連性)・・・学習内容に対する親しみや意義を持たせ、自ら学ぶ姿勢を形成 ・Confidence(自信)・・・学習過程で成功体験を重ね、自身の自信につなげる ・Satisfaction(満足)・・・学習過程での努力や身につけた技能の有効性を実感させて、満足感を与え、新たな学習意欲を引き出す ARCSモデルは、Attention、Relevant、Confidence、Satisfactionの頭文字を取ったもので、この4つの側面から、学習者のモチベーションの維持や向上を目指すモデルです。 ・Attention(関心)・・・学習者の興味や知的好奇心、探求心を刺激 ・Relevant(関連性)・・・学習内容に対する親しみや意義を持たせ、自ら学ぶ姿勢を形成 ・Confidence(自信)・・・学習過程で成功体験を重ね、自身の自信につなげる ・Satisfaction(満足)・・・学習過程での努力や身につけた技能の有効性を実感させて、満足感を与え、新たな学習意欲を引き出す

メリルのID第一原理

教育設計・技術が専門の教育研究者、M・デイヴィッド・メリル氏が考案した考え方で、効果的な学習環境の実現には、5つの要件が重要であると述べています。ホテルのランキングになぞらえて、「5つ星インストラクションの要件」と呼ばれることもあります。 ・問題(Problem)・・・現実的に起こりそうな問題に挑戦する ・活性化(Activation)・・・既知の知識を動員する ・デモンストレーション(Demonstration)・・・.新しく学ぶことを情報として伝えるのではなく、例示する ・応用(Let me)・・・応用するチャンスがある ・統合(Integration)・・・現場で活用し、振り返るチャンスがある

ガニェの9教授事象

ガニェの9教授事象は、アメリカの教育心理学者であるロバート・M・ガニェ氏が考案した学習支援モデルです。人が学ぶプロセスをさかのぼり、教材の構成を考えていくための枠組みとして、9つの働きかけを提案しています。 導入 1.学習者の注意を獲得する 2.授業の目標を知らせる 3.前提条件を思い出させる 情報提示 4.新しい事項を提示する 5.学習の指針を与える 学習活動 6.練習の機会をつくる 7.フィードバックを与える まとめ 8.学習の成果を評価する 9.保持と転移を高める

 

05インストラクショナルデザインの企業事例

これまで、インストラクショナルデザインの代表的なモデルについてみてきました。実際にインストラクショナルデザインを活用した事例として、日本ユニシス・ラーニング株式会社とベーリンガーインゲルハイム社の取り組みを紹介します。

日本ユニシス・ラーニング株式会社

IT企業の日本ユニシス・ラーニング株式会社は、インストラクショナルデザインにより設計した高い学習効果を持つeラーニング教材を開発しています。 自社社員に対しては、2002年ころから研修という形ではなく、100台以上のパソコンを並べた自習室で、自主的に学習に取り組める環境を整えています。使用するeラーニング教材には、ARCSモデル・TOTEモデルを取り入れて、受講者のレベルに合わせた学習内容を提供しています。

ベーリンガーインゲルハイム社

ドイツに本拠を置く製薬会社のベーリンガーインゲルハイム社は、2008年以前、企業内研修がうまく機能していませんでした。研修目的が定まらず、ゴールも設定されないままの研修が常態化し、受講者は半ば強制的に参加させられ、自主的な学習からは程遠い状態でした。そこで、インストラクショナルデザインを活用し、実施していた研修業務の見直しを図ることにしたのです。 たとえば新入社員研修においては、協調学習を取り入れて、学習者の自主性に任せた教育方法を取り入れています。さらに、認知科学的な手法を取り入れ、自立した学習者を育成する取り組みを行っています。


 

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06まとめ

インストラクショナルデザインが注目される背景や、メリットについて解説してきました。インストラクショナルデザインを取り入れた学習方法は、短時間で効果的な研修成果を期待できます。ぜひ、自社研修に最適なモデルを取り入れて、実践してみてはいかがでしょうか。

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