インバスケット思考とは?役立つフレームワークや実施する際のポイントについて解説する
業務の生産性向上に有効なインバスケット思考法とは、どのような思考法でしょうか。本記事では、インバスケット思考における特徴とビジネスにおける必要性について解説しています。インバスケット思考について理解しビジネスに役立ててください。
01インバスケット思考とは
インバスケット思考とは、「タスクを与えられた時間内に的確に、かつ、高い精度でこなすための思考法」を指します。元来、インバスケットは、1950年代にアメリカ空軍によって開発されたシミュレーションゲームです。よく起こる不測の事態を主人公の立場になり、与えられた時間内に的確に、高い精度でこなすことが求めらます。この訓練を行うことで人命救助や敵の襲撃など、非常事態などの際に、自分の頭で迅速に的確に行動する力を身に付けることができます。
インバスケット思考の必要性
現在は、労働人口の減少により労働力の確保が必須の時代となっています。その中で注目されているのが「労働生産性」です。社員を大きく増やせない中では、社員一人一人の労働生産性を高める方法が必須となりました。インバスケット思考を身に付けることで、誰かからの指示待ちではなく、自らが業務の優先順位付けを行い、業務を遂行することができます。これは、労働生産性向上そのものです。この一連の流れで主体性や自主性を育て、生産性を向上させることができるため、インバスケット思考はビジネスにおいて重要な位置づけを示しています。
02インバスケット思考で身につく能力とは
次にインバスケット思考を習得することで身につく能力について解説していきます。インバスケット思考を活用することで、どのような能力を向上させることができるのか、どう活かしていくことができるかについて理解していきましょう。
インバスケット思考で身につく能力には、以下の5つがあります。
- 1:問題解決力の向上
- 2:判断力と決断力の向上
- 3:主体性と自主性の醸成
- 4:業務に対する視点と観点の多角化
- 5:優先順位を設けるスキルの習得
1.問題解決力の向上
問題を解決するには、おきている問題の本質を見抜く力や、事象に対して仮説を立てて検証する力が必要となります。特定した本質的な問題を解決するためには、施策の計画性、効果性を検討することが必要です。インバスケット思考では、この問題発見から解決までのプロセスを自分で行う能力を向上させます。
2.判断力と決断力の向上
制限時間の中で発生している課題を解決するためには、入手できる情報から最適と思われる情報の整理と対策を判断し、決断することが必要です。制限時間のある中で行う判断と決断は誰かに委ねることはできません。上司や同僚に判断や決断を任せる傾向がある人には、インバスケット思考は、自分で判断を下す能力を身に付けることができます。インバスケットの特徴である「架空の人物になりきる」という概念は、失敗に対する不安や恐れが強い人でも対応できるという意図が込められていると考えておきましょう。
3.主体性と自主性の醸成
インバスケット思考では、ある程度の責任を負っている人物がその能力を発揮するのが一般的です。周りから判断を仰がれる立場の人にとっては必須なスキルと言われています。判断を仰がれる立場にあるということは、原則的に問題の解決や判断を自身で対応する必要があります。会社方針や状況に合わせて、どのように問題に対応するのか、案件を進めていくか考えるため指示を待ち、判断を仰ぐのではなく、自分で考えて行動する必要があると理解しておきましょう。
4.業務に対する視点と観点の多角化
インバスケット思考では、自主的な思考力は育成されることで今まで判断をしていた他部署・上司・部下の理解が進み、普段の業務でも他者視点で物事を考えることができる思考力を身に付けることができます。また、他者の動きを予測・理解できることは、組織のより良い連携を生み出すことも期待できます。このように、従来は自分で行わなかった自主的な行動により他者理解が深まることは、組織全体のコミュニケーション力向上にもつながります。
5.優先順位を設けるスキルの習得
日常の業務では、常に優先順位を付けることが必要となります。インバスケット思考を身に付けることで、時間意識の重要性や優先順位を付けていくことの重要性を理解することが可能になります。実感することができます。また、そのスキルを習得することで、普段の業務でも優先順位を意識した高い働き方が身に付きます。
03インバスケット思考に役立つフレームワーク
ビジネスに役立つフレームワークは複数ありますが、ここでは、インバスケット思考に役立つフレームワークについてご紹介します。そもそも、フレームワーク(framework)とは、戦略の立案や問題を解決する時に役立つ枠組みのことです。フレームワークの多くは、考えを整理しやすいように図式化されているので、それに沿って情報・考えを整理することで、新しい発想や状況分析を効率よく実施できます。インバスケット思考においても、こうしたフレームワークを活用するこで、効率よく物事の整理を行うことができるでしょう。
インバスケット思考に役立つフレームワークは、主に以下の3つです。
- 1:アイゼンハワーマトリクス(重要度×緊急度)
- 2:リスク評価ヒートマップ(影響度×発生確率)
- 3:ペイオフマトリクス(効果×実現性)
1.アイゼンハワーマトリクス(重要度×緊急度)
アメリカ大統領、ドワイト・D・アイゼンハワー氏が実践していたタスク管理術で、重要と緊急で4象限に物事を分類します。ビジネスシーンでは多用されているマトリックス分析で、幅広くビジネスシーンで活用されています。重要だけど緊急ではない項目は、後回しにしがちです。しかし、ここがいずれ第一象限に繰り越されるため、迅速に処理することが重要なことを理解しておく必要があります。
2.リスク評価ヒートマップ(影響度×発生確率)
リスク管理の現場で多用されているフレームワークです。「影響度」と「発生確率」に従い4象限に分類します。1つの重大事故の裏側には、29件の小さな事故、異常が300潜んでいるといわれるハインリッヒの法則ように、全てのリスクは関連し合っており関係性を意識する必要があります。影響度が小さいものから潰していき、大きなリスクを軽減します。
3.ペイオフマトリクス(効果×実現性)
「効果」と「実現性」で4象限に分けるフレームワークです。大切なことは細分化を行うことです。実現性が低いものも細分化することで、実行可能なものになったり、費用をかけずに実行可能な業務を見極めることができます。いかに詳細に細分化できるかが、このフレームワークの重要なポイントです。
04インバスケット思考を実施する際のポイント
次にインバスケット思考を実施する際のポイントについて解説していきます。インバスケット思考を実施する際には、どのようなポイントをおさえて実施すると有効なのでしょうか。効果的にインバスケット思考を利用する為には、単体ではなく複合的に意識してポイントをおさえておきましょう。
インバスケット思考を実施する際のポイントは以下の3つです。
- 1:時間軸を意識した対応が多いことを理解する
- 2:絶対的な正解は存在していないことを理解する
- 3:慣れるまでには時間を有する
1.時間軸を意識した対応が多いことを理解する
インバスケット思考は、処理しなければいけない案件に時間軸を設けて対応することが一般的です。インバスケット思考を実施するには、案件を手当たり次第に処理するのではなく、どの案件から処理していくべきかを判断し、優先順位の高いものから処理していきます。この考え方には、時間軸を常に意識する必要があります。インバスケット思考については、時間軸を意識した対応が多い点を理解しておきましょう。
2.絶対的な正解は存在していないことを理解する
インバスケット思考を用いても、その他のフレームワークや思考法を多用しても絶対的な正解は存在していません。これは、問題解決の方法が1つしか存在しないという訳ではないということと同じです。インバスケット思考を利用することで、物事の優先順位付けを行うことが可能ですが、視点や条件が異なれば優先順位にも変化が起きる可能性があります。このようにインバスケット思考を用いても、全体的な正解が1つしか存在しないということはありません。
3.慣れるまでには時間を有する
インバスケット思考だけではなく、その他の思考法についても慣れるまでには一定の時間が必要です。時間の長短には、人それぞれですが、ある程度の時間が必要であることを理解しておきましょう。その上で、何度も訓練を行うことでインバスケット思考の理解と手法の定着化を行う必要があり、繰り返し訓練を重ねていくことも重要です。
05インバスケット思考の訓練方法
最後にインバスケット思考を身につけるための訓練方法について解説します。
インバスケット思考の訓練方法は以下の2つです。
- 1:架空の人物として物事を整理する訓練
- 2:優先順位を二軸で考える訓練
1.架空の人物として物事を整理する訓練
インバスケット思考を身につけるためには架空の人物になりきり、当事者意識を持って意思決定を行う必要があります。実際のビジネスの場面を想像しながら、制限時間内に多くの課題を自由回答で解くことと、絶対的な正解は存在しないことも意識して訓練を行います。架空の人物になりきることで、自分以外の人物の視点を持ち多角的な視点で課題を捉えることが重要です。
2.優先順位を二軸で考える訓練
インバスケット思考では緊急度、重要度の二軸でタスクを管理して、それぞれに優先順位を行います。緊急度が高く重要度が高い案件は最優先で処理する必要があると判断します。緊急度が低く重要度も低い案件は後回しにすることも可能です。このように、優先順位付けを自主的な視点で二軸で考える訓練は有効です。
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インバスケット思考に関するSchooの講座を紹介
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インバスケット思考で仕事を効率化
ビジネス書大賞2012書店賞受賞『究極の判断力を身につける インバスケット思考』の著者である鳥原隆志が、限られた時間の中で結果を出す仕事の優先順位のつけ方をご紹介します。 基本的なインバスケット思考についての解説はもちろん、時間をかけるべき仕事とそうでない仕事の分け方、優先順位をつけるための基準やマトリクスの使い方についてもお話します。 最後には受講者の皆さまのお悩みにもお答えします。 インバスケット思考をご存知でない方も、ぜひこの機会にご参加いただき、もっとラクに仕事をするための考え方を身につけていただければと思います。
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株式会社インバスケット研究所 代表取締役
大学卒業後、株式会社ダイエーに入社。販売部門や企画部門を経験し、10店舗を統括する食品担当責任者(スーパーバイザー)として店長の指導や問題解決業務に努める。 管理職昇進試験時にインバスケットに出合い、自己啓発としてインバスケット・トレーニングを開始。 日本で唯一のインバスケット教材開発会社として、株式会社インバスケット研究所を設立し代表取締役に就任。 日本のインバスケット・コンサルタントの第一人者としてテレビやラジオに出演し、ビジネスマンの行動分析をするなど活動中。 これまでに執筆した著書は40冊以上累計70万部を超え、国内外での講演や、研修実績も多数。延べ受講者数は15,000人以上を数える。
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07まとめ
本記事では、インバスケット思考をテーマに、その特徴や訓練方法について解説しています。インバスケット思考はビジネスでも活用できる思考方法ですので、本記事を参考に習得し日常で活用していきましょう。