公開日:2022/01/26
更新日:2023/03/19

BCPとは?現在の実施状況や策定のステップを解説|業種ごとの取り組みも紹介

BCPとは?現在の実施状況や策定のステップを解説|業種ごとの取り組みも紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

BCP(Business Continuity Plan)は、事業継続計画のことで、自然災害などの緊急事態の際に役立つ仕組みとして注目されています。本記事では、BCP対策の基本的な考え方や現在の実施状況、策定のステップについて解説し、業種ごとの取り組みもご紹介します。

 

01BCP(事業継続計画)とは

昨今、社会情勢が目まぐるしく変化していることをうけ、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の重要性が増しています。では、具体的にBCPはなぜ必要なのでしょうか。ここでは、関連する用語との違いなどを交えて、そもそもBCPとは何かについて、解説していきます。

そもそもBCP(事業継続計画)とは

BCPとは、企業が緊急事態時の損害を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を図るための計画を指します。中小企業庁が公表しているBCPの定義は以下のとおりです。

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

▶︎参考:BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁

2001年9月に起きた米国の同時多発テロにより、日本でBCPが大きな注目を集めました。それ以降、2005年に事業継続計画策定ガイドラインが公表され、鳥インフルエンザの流行や東日本大震災など、有事のたびにガイドラインが改訂されています。さらに、新型コロナウイルスの影響を受けて、事業継続計画の重要性は今まで以上に高まっているのです。 このように緊急事態には、テロ攻撃や感染症のほかに、自然災害や火災、風評被害、システム障害など、企業を取り巻くさまざまなリスクが該当します。これらのリスクに備えて、あらかじめBCPの基本方針を策定しておくことが重要です。

BCPの関連用語

BCPは企業が緊急事態時の被害を最小限におさえるための計画を指しますが、関連用語もいくつか存在します。ここでは、関連用語について解説していくのでぜひ参考にしてみてくださいね。

BCM(事業継続マネジメント)

BCMとは、事業継続マネジメントの略です。英語では、「Business Continuity Management」と表記します。緊急事態に備えて、BCPを策定しますが、策定した計画をマネジメントするのがBCMです。

BCS(事業継続戦略)

BCMとは、事業継続戦略の略で、英語では、「Business Continuity Strategy」と表記します。策定したBCPをどのように実行していくか、具体的な戦略を指します。

企業防災

企業防災とは、地震や台風など、自然災害の発生時に企業が取り組むべき対策を指します。日本の企業では、労働契約法第5条で「労働者の安全への配慮」が義務付けられています。BCPの一部として位置付けられており、人命の安全確保を最優先に、二次被害を食い止め、事業への影響を最小限にするためのものが望ましいとされています。

 

02BCP策定の実施状況

ここでは、株式会社帝国データバンクの「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)」に基づき、現在のBCP策定率や実施状況について解説します。

過去最高ながらも低水準の策定率

株式会社帝国データバンクが行った「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」によると、2021年のBCPの策定状況は、「策定している」とした企業は前年比1.0ポイント増となる17.6%です。策定率は、年々上昇し過去最高となったものの、未だ低水準にとどまる結果となっています。 また、74.6%の企業が未策定という状況です。内訳は、「策定を検討している」が前年比2.5ポイント減の24.1%となり、調査開始以降で最も高かった2020年より減少しています。「策定していない」前年比3.1ポイント増の42.5%、「分からない」前年比0.3%ポイント増の8.0%となっています。

大企業・ 中小企業ともに緩やかな増加傾向

企業の規模別でみると、大企業は32.0%、中小企業は14.7%となり、それぞれの規模で増加傾向にあり、企業規模が大きいほど策定が進んでいることが分かります。中小企業からは、BCP導入の資金調達や情報不足などの声が上がっており、これらの課題を解消するような取り組みが、推進に向けて重要になるといえます。

想定リスクは「自然災害」がトップ

BCPを「策定意向あり」とする企業のうち、事業継続が困難になると想定するリスクは、「自然災害」が5年連続でトップとなり、全体の72.4%です。次いで、新型コロナウイルスなどの「感染症」が60.4%と高水準となっています。新型コロナウイルス感染に対する危機感が高まっている結果でしょう。 また、「情報セキュリティ上のリスク」が前年比5.1%増と急伸しています。2020年のサイバー犯罪検挙数が最高となるといった背景から、情報系のリスクに対する意識が高まっているようです。

BCPの策定をしていない理由

策定に必要なスキル・ノウハウがないこと(41.9%)が5年連続でトップとなり、次いで人材の確保ができない(29.3%)などが、BCPを策定しない理由の上位を占める状況です。 また、中小企業では「必要性を感じない」「自社のみ策定しても効果が期待できない」の割合が高く、BCPの必要性に対して、懐疑的に考えている様子がうかがえます。費用面に対する懸念も、大企業より高水準となり、人材や費用の確保を支援する取り組みができるかどうかがBCP推進のカギになるでしょう。

 

03BCP策定のメリット

昨今の目まぐるしい社会情勢や災害、感染症などの影響から、BCPの必要性が高まっています。ですが、策定率は低く、企業としても優先度が低くなってしまっているのが現状です。懐疑的な意見の多いBCPですが、策定することによるメリットも存在します。ここでは、具体的なメリットについて解説していくのでぜひ参考にしてみてくださいね。

事業の縮小や会社の倒産といったリスクを防げる

有事の際に、事業が停止すれば、損失が増えたり、最悪の場合は倒産してしまう恐れもあります。したがって、BCPをあらかじめ策定しておくことで、何かあった時に事業を継続することができたり、一時的に事業を停止していた場合でも早期に再開できる可能性は高まります。実際に新型コロナウイルスで廃業や倒産に追い込まれてしまった企業も少なくはありません。事業の特性上難しいものもあるかもしれませんが、BCPにより被害を最小限に押さえられる可能性もあったはずです。したがって、BCPの策定は会社の存続にも影響する重要なものなのです。

社会的信用の獲得

BCPを策定し、対外的に発信していくことで投資家や取引先などからの信頼を得られるといったメリットも存在します。また、緊急事態が発生した時でもBCPをもとに迅速に対処できれば、ブランドイメージ向上や市場の中での評価も高まるでしょう。したがって、BCPを策定することで、企業としての社会的信用度を向上させていくことができるのです。

従業員が安心して働くことができる環境整備

BCPの策定は、従業員が安心して働くことができる環境の整備という側面もあります。事業の存続が危ぶまれた場合、従業員は働く場所や収入を失ってしまうかもしれません。したがって、BCP対策は従業員の不安や不信感を払拭することができ、社内の満足度向上につながります。また、対外的に発信していくことで求職者が安心して入社できるといったメリットもあり、優秀な人材を確保していく上でもBCPの策定は重要なものです。

 

04BCP策定のステップ

自社でBCPを策定する際には、以下のような4つのステップがあります。

  • ・優先する中核事業を特定する
  • ・事業の被害を想定し損失を分析する
  • ・計画を策定する
  • ・社員教育を行い運用・改善を図る

ここでは、4つのステップについて分かりやすく解説します。

①優先する中核事業を特定する

自社が展開している事業のうち、優先的に復旧させる必要がある中核事業を決めましょう。優先度の判断基準としては、利益や顧客などが挙げられます。長期的な視点での検討が必要です。さらに、その事業の継続に必要な社員、設備、資金、データなどの経営資源の優先度を検討します。事業が完全に停滞するものへの対策から優先しましょう。

②事業の被害を想定する

さまざまなリスクを、外的要因と内的要因に分けて、中核事業がどの程度の被害を受けるのかを想定しましょう。建物や設備の復旧にかかる費用と時間、事業が停止している期間と損失などの分析も行います。これらの想定される被害が、BCP策定の軸になります。有効な対策を導き出すためには、リスクをできるだけ多くあげる作業が重要になります。

③計画を策定する

ここまでに検討してきた要件に対して、実現可能なBCP対策を具体的に決め、計画の策定を行います。また、BCPを策定するためには、BCPの発動基準や発動時の体制を明確にして、計画の決定事項に加える必要があります。

BCPの発動基準を明確にする

適切なBCP発動において、どのような事態が発生したらBCPを発動させるのか、明確な基準が必要です。基本的には、中核事業への影響、緊急事態のレベルや規模を条件として、自社に適した発動基準を詳細に設定しましょう。

発動時の体制を整える

BCPが発動されると、24時間以内に緊急事態対策本部を設置します。チーム体制と、それぞれの役割を決めておくことが必要です。 役割の一例を、以下に挙げます。

  • ・意思決定者・責任者:最終的な意思決定
  • ・事務局:緊急対策本部の庶務作業
  • ・情報収集:情報収集と連絡
  • ・広報:定時報告や取材対応、その資料作成
  • ・取引先対応:取引先との連絡と情報共有
  • ・顧客対応:顧客からの問い合わせや苦情などの対応
  • ・社員対応:安否確認、参集管理、生活支援

④社員教育を行い改善を図る

BCPを策定したら、全社員で情報共有することが重要です。文書化して、いつでも閲覧できる状態にしましょう。また、リストアップされた緊急事態を想定した定期的な避難訓練を行い、対策漏れがないかを確認し、その都度改善を図るようにします。

 

05業種ごとのBCP対策の取り組み

緊急事態における事業継続や早期復旧を目指すためには、それぞれの企業に合ったBCP策定が必要です。ここでは、業種ごとのBCP対策の取り組みをご紹介します。これから対策を検討する方は、ぜひ参考にしてみてください。

医療機関

被災地域病院における、BCP対策の取り組みをご紹介します。

役割分担

患者の重症度ごとに「災害拠点病院」「災害拠点連携病院」「災害医療支援病院」に分けて治療を行います。災害拠点病院は主に重症者、災害拠点連携病院は主に中等症者や安定した重症者、災害医療支援病院は主に慢性疾患や専門医療を必要とする患者が対象です。

スピーディな意思決定

災害時にはスピーディーな意思決定が求められます。そのため、災害対策本部を設置し、本部長が意思決定に関わる一切の権限をもちます。

職員の招集

病院としての機能を果たすには、看護師などの職員を集めることも必須です。その一環として、看護師寮や職員寮、通勤用もしくは医療機関との連携のために、電動アシスト自転車を用意します。

3日分の備蓄

3日分の医薬品、医療材料、水と食糧が必要とされているため、補助金の活用や災害時のみ井戸水を使えるよう行政あるいは自治体との交渉が必要です。 被災地での病院が、どのような役割を果たすのか、それぞれのポジションに合わせて、BCPが策定されています。

介護事業所

介護事業所に対しては、2021年4月からBCPの策定が義務化(3年の経過措置)されました。業務継続に向けた取り組みの強化として、感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築することが求められています。そのため、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画の策定、研修の実施、訓練の実施などが義務づけられました。

優先業務

複数の事業を運営する場合、入所・通所・訪問などから、何を優先するのか本部法人と連携することが必要です。緊急事態時は、入所施設のように24時間365日サービスを休止できない事業を優先することになります。

停電対策

電気の確保や代替案として、乾電池や手動で稼働するもの、電動自転車や電気自動車の電源を活用、自家用発電機の設置などを検討します。

職員の招集

災害時の移動は、原則徒歩のため、迂回ルートを取る必要性を考慮して、移動速度2.5km/hが目安です。入所施設の場合は、緊急事態発生が日中と夜間に分けて、自動招集の基準を設ける必要があります。長期帰宅できない場合の、宿泊・休憩場所の確保も必要です。 BCP作成後は、定期的な避難訓練を実施し、職員や利用者へ周知させ、見直しと修正を繰り返すことで、介護事業所に適した、より良いBCPが作られています。

<事業継続計画(BCP)の作り方に関するのSchooおすすめ授業>

企業のリスクマネジメントについてよく知らない方向けにBCPの基礎知識から作り方まで、これからのリスクの時代に備えるためのBCPの基本を学ぶことができます。
BCPやリスクマネジメントの必要性を認識し、取り入れるためにすべきことを理解した状態を目指します。担当するのは、MS&ADインターリスク総研株式会社の矢野 喬士さんです。

「リスクの時代に備える 事業継続計画(BCP)の作り方」

リスクの時代に備える 事業継続計画(BCP)の作り方

  • MS&ADインターリスク総研株式会社

    MS&ADインターリスク総研株式会社 リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第一グループ所属。
    2012年慶應義塾大学卒業後、大手建築設備会社を経て、2017年より現職。 BCP/BCM専門コンサルタントとして、東証一部上場企業から中小企業に至るまで幅広い規模・業種のBCP/BCMコンサルティング業務に従事する他、各種執筆活動、内閣府・内閣官房・中小企業庁・商工団体・自治体などの関連事業やセミナー講演などにも多数従事。
    【保有資格】 ・ CBCP(国際的な災害復旧啓発団体「DRI」認定事業継続専門家) ・ BCAO(事業継続推進機構)認定事業継続管理者

 

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06まとめ

本記事では、BCP対策の基本的な考え方や現在の実施状況、策定のステップについて解説し、業種ごとの取り組みもご紹介しました。自然災害だけではなく、テロやサイバー攻撃など、事業の存続を脅かす重大な危機となり得ます。被害を最小限に抑える対策をするためには、あらゆるリスクを想定し、平時からシミュレーションしておくことが重要です。改めて自社のBCP対策の内容を、再検討してみてください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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