公開日:2023/10/06
更新日:2023/10/12

社会構成主義とは?人材育成に取り入れるメリットや活用ポイントを解説

社会構成主義とは?人材育成に取り入れるメリットや活用ポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

社会構成主義とは、物事や社会は相互に影響を与えながら形成されるという考え方です。本記事では、社会構成主義の概要や人材育成に取り入れるメリット、社会構成主義の活用方法について解説します。企業の育成担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

01社会構成主義とは

社会構成主義とは、社会のなかで行われるコミュニケーションが、特定の評価や評判を作っているという概念です。 例えば、組織内で仕事ができないイメージがついている従業員がいるとします。その従業員は、周囲が「あの人は仕事ができない」と思い込んでいるからこそ、仕事ができないイメージがついている可能性があります。 実際に、人事考課表ではそれほど悪い評価がついていないとしても、その人の印象や社内での会話による評判から「あの人は仕事ができない人」と思われているケースは少なくありません。 つまり、周囲と比べて実務能力に遜色がないとしても、他者の作り出した考え方や伝え方によって「この人は組織内で最も仕事ができない人だ」というイメージが根付いている場合があるということです。

心理学者ガーゲン氏が提唱した理論

社会構成主義は、アメリカの心理学者であるガーゲン氏が提唱した理論です。ガーゲン氏は、たとえ同じ言葉であっても、社会背景によってその捉え方は異なると指摘しています。このように言葉を巡る人間の認識を、ガーゲン氏は次の3つにまとめています。

  • ・社会的常識は長い時間をかけた文化的歴史的産物である
  • ・社会的知の構築は、言語的相互作用の中でなされていく
  • ・社会行為に伴う現象は、その行為をどのように意味づけるかによって変わる

本質主義との違い

本質主義とは、人種・民族・性別といった特定のカテゴリーに、不変的な性質があるとする概念です。 本質主義では「日本人は全員、真面目で勤勉だ」というような、国民性でその本質を定義しようとします。社会構成主義は、本質主義の偏った見方を助長しかねない考え方と言われています。

ナラティヴ・アプローチとの関連性

「ナラティヴ・アプローチ」とは、ナラティブ(ストーリーや物語)に着目して、問題を解決に導くアプローチ手法です。社会構成主義をベースとした考え方で、1980年代後半頃から提唱されました。 ナラティブアプローチでは、支援者が専門性を手放し相談者のナラティブに寄り添うことで、相談者にとっての最善案を模索します。 価値観が多様化している現代では、最善は人によって大きく異なります。そのため、多様性が叫ばれる現代にマッチした問題解決手法として注目を集めているのです。

 

02社会構成主義の目的

社会構成主義の目的としては、主に以下の2つが挙げられます。

  • 1.人事評価の透明性を目指す
  • 2.組織風土を見直すきっかけになる

1.人事評価の透明性を目指す

社会構成主義の目的は、思い込みによる人事エラーをなくし、人事評価の透明性を実現することにあります。社会構成主義では、メンバー同士の思い込みによって、人の評価が決まる傾向にあることを指摘しています。 仮に、チーム内で重要なポジションではないと考えられている人がいたとしても、より広い視点で見れば、社会的には重大な役割を担っている可能性もあるでしょう。 他者からの評価により、それほど大きい仕事をしていないメンバーが理由なく良い評価をされてしまうという現象も、人事評価では起こりえます。社会構成主義を認識することで、特定の従業員の評価や処遇などが本当に適当であるかを見直すきっかけになり、このような人事エラーを防止できます。

2.組織風土を見直すきっかけになる

社会構成主義は、組織風土を見直すきっかけにもなり得ます。なぜなら組織風土は、従業員一人ひとりの認識が、作り出すものとも考えられるためです。 従業員が日頃何気なく使っている言葉が、組織風土を醸造していきます。また、従業員の会社に対する評価が、その会社の真の評価となることも珍しくありません。 しかし、社会構成主義を導入することで、認識の考え方を見直すことができ、組織風土を改善する一助になります。

 

03社会構成主義が注目される理由

社会構成主義が重要視される背景としては、以下の2つが挙げられます。

  • 1.目まぐるしく変化するVUCA時代に突入したから
  • 2.働く従業員の価値観が多様化しているから

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

1.目まぐるしく変化するVUCA時代に突入したから

現代は、あらゆる環境が常に変化して複雑さを増し、予測が困難なVUCA(ブーカ)時代に突入しています。このようなVUCA時代に適応するためには、柔軟に組織構造を変化させる必要があるでしょう。その点で「物事は人々の対話により認識される」という社会構成主義は、組織構造の変革において有効に作用します。

2.働く従業員の価値観が多様化しているから

働く従業員の価値観が多様化していることも、社会構成主義が注目される理由のひとつです。 組織の現状は、属する人の状態や活動、共通認識によって刻一刻と変わります。あるべき姿やなりたい将来像に近づくためには、従業員同士の対話を通じて問題点を浮き彫りにし、共有のビジョンや思いを生み出す必要があるのです。

 

04社会構成主義を人材育成に導入する3つのメリット

社会構成主義を人材育成に導入することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

  • 1.従業員の潜在的な能力を引き出すことができる
  • 2.課題の本質を見抜く問題解決能力が育まれる
  • 3.対話の活性化により従業員同士の関係が良好になる

1.従業員の潜在的な能力を引き出すことができる

社会構成主義においては、物事への認識は人間が勝手に思い込んでいるものとされています。そのため、社会構成主義を人材育成、特に1on1ミーティングや多面評価として取り入れることで、従業員自身も気が付かなかったような潜在的な能力を引き出せる可能性があるでしょう。 また、自分では向いていないと思っていた業務も、対話を通じて得た気付きによって、実は適性があると判明する場合もあります。その結果、従業員自身の能力アップや業務範囲の拡大、さらに企業の生産性アップにも大きく寄与します。

2.課題の本質を見抜く問題解決能力が育まれる

社会構成主義の考えが従業員に身に付くと、目の前の課題に対して決まったアプローチを行うのではなく、一度立ち止まって課題の本質を見抜き、本当に必要なアプローチを行う力が育まれます。特に、これからのVUCA時代においては既存のアプローチではうまくいかない可能性が高く、柔軟に問題へ対応していく問題解決能力は非常に重要であると考えられています。

3.対話の活性化により従業員同士の関係が良好になる

社会構成主義の一環として対話を活性化すると、従業員同士の関係性が良好になることが期待できます。その結果、業務において協力し合う雰囲気が醸成し、組織全体の生産性が向上するでしょう。 また、社会構成主義を意識した対話が浸透していくことで、部署・チーム間の接点が増加することも期待ができます。それぞれの立場や置かれた状況を相互に理解したうえで力を合わせて課題に向き合えば、以前とは違う視点のアイデアが生まれる可能性があります。

 

05社会構成主義を活用する方法

社会構成主義を活用する代表的な方法には、以下の3つが挙げられます。

  • 1.多面評価を導入して従業員の思い込みを取り払う
  • 2.1on1ミーティングで対話の機会を設ける
  • 3.本質主義をバランス良く取り入れる

それぞれの方法について詳しく紹介します。

1.多面評価を導入して従業員の思い込みを取り払う

まずは、多面評価を導入して従業員の思い込みを取り払います。多面評価とは、直属の上司のほか、同僚や部下などあらゆる立場の人から評価をする方法です。 多面評価は、異なる立場の人間がそれぞれの視点で評価を行うため、評価に客観性や透明性が高まります。評価を受ける従業員が、自分の現状をさまざまな面から自覚することができ、思い込みを取り払えます。

2.1on1ミーティングで対話の機会を設ける

1on1ミーティングによって、対話の機会を設けることも社会構成主義を活用する方法として有効といえます。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で対話を交わす人材育成手法のひとつです。 通常、上司と部下という関係は、部下は上司に対して距離を持って接してしまいがちです。一方、1on1ミーティングを定期的に行い、対話の機会を設けることで、上司・部下間のコミュニケーションが円滑なものとなります。 これにより、普段から気軽に話しやすい良好な関係が構築され、社内のコミュニケーションも活性化することが期待されます。

3.本質主義をバランス良く取り入れる

本質質主義とは、人種・民族・性別などのカテゴリーに応じた普遍的な性質が存在するといった概念で、社会構成主義とは正反対の関係にあります。しかし、本質主義を全否定し、社会構成主義に偏りすぎることは得策ではありません。 なぜなら、社会構成主義よりも狭義かつ社会的な意味合いを強くした社会構築主義においては、本質化したカテゴリーを打ち壊してしまうおそれがあるためです。 例えば、ハンディキャップを抱える人材に配慮した労働方法を否定し、働き方改革を進めてしまうようなことです。 社会には、本質化したカテゴリーでの連帯が不可欠な集団も存在します。このような理由から、社会構成主義を正しく理解するためには、こうした連帯をすべて否定するのではなく、バランス良く取り入れることも重要です。


 

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06まとめ

本記事では、社会構成主義の概要や人材育成に取り入れるメリットについてお伝えしました。 社会構成主義を人材育成に導入することで、従業員の潜在的な能力を引き出したり、対話の活性化により従業員同士の関係が良好になったりなどのメリットを得られます。ぜひ当記事を参考に、社会構成主義の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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