公開日:2021/07/07
更新日:2023/07/24

ジョブディスクリプションとは?導入が加速する背景や期待できる効果を解説

ジョブディスクリプションとは?導入が加速する背景や期待できる効果を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

ジョブディスクリプションの定義や導入が加速する背景、導入で期待できる効果を、本記事では紹介しています。また、ジョブディスクリプションの作成におけるステップ、導入時のポイント、導入事例も紹介していますので、ジョブディスクリプションの計画策定にぜひお役立てください。

 

01ジョブディスクリプションとは

ジョブディスクリプションとは、職務内容を詳細にまとめた文書のことであり、日本では職務記述書とも呼ばれます。ジョブディスクリプションの主な記載項目は「職務名、目的、責任、内容と範囲、求められるスキルや技能、資格」などです。この中でも、職務内容と範囲については「どのような業務を、どのような範囲まで、どのように行うか」まで詳細に記述されることが多いです。

欧米企業ではジョブディスクリプションがあることが一般的で、求職時や人事評価の際に頻繁に使用されています。一方で、日本企業ではあまり一般的ではありませんでした。欧米企業が基本的に職務給を採用しているのに対して、日本では職能給が一般的であったことが大きな理由です。しかし、最近では日本でも少子高齢化やDX人材不足を背景として、グローバルに人材獲得をしていく必要が出てきており、ジョブ型雇用や外国人雇用を進めていく上でジョブディスクリプションを整備する企業が増えてきています。

 

02ジョブ型雇用の現状

ジョブディスクリプションは、ジョブ型雇用を行う欧米を中心に採用されてきました。しかし、昨今では日本においてもジョブ型雇用を導入する企業が増えるにつれて、ジョブディスクリプションを策定する企業が増えてきています。この章では、ジョブディスクリプションが普及し始めている最大の要因であるジョブ型雇用の現状について経団連の資料をもとに紹介します。

▶︎参考:2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果|一般社団法人 日本経済団体連合会

ジョブ型雇用の導入状況

ジョブ型雇用の導入状況

経団連が2020年に調査したデータによると、正社員における雇用区分として、25.2%の企業がジョブ型雇用を導入済、あるいは導入を予定・検討しているとのことです。 

また、その25.5%の企業内で、ジョブ型雇用をすでに導入している、または導入予定の企業は合計で50%を超えており、今後もさらに増えていくことが予想されます。

新卒におけるジョブ型採用の実施状況

新卒におけるジョブ型採用の実施状況

新卒をジョブ型で採用している企業は16.2%。検討中まで含めると、今後4割程度の企業が新卒者を対象としたジョブ型採用を実施するようです。メンバーシップ型で採用してから部署を振り分ける企業が大半ですが、DXの重要性が増してきたことからエンジニアなど特殊スキルを保有した学生においてはジョブ型で採用するということなのかもしれません。

ジョブ型雇用を導入する理由・しない理由

ジョブ型雇用の導入事由

ジョブ型雇用を導入する理由は、「専門性を持つ社員の重要性が高まったため」が最も多く、次いで「仕事・役割・貢献を適正に処遇へ反映させるため」が多いという結果でした。VUCAと呼ばれる時代となり、これまでのような終身雇用を前提としたキャリア構築が難しくなっていることが、この結果の背景に思えます。

ジョブ型雇用を導入しない理由

一方でジョブ型雇用を導入しない理由は、「職務を明確化しにくい」が最も多く、次いで「自社の職務・業態に馴染まない」が多いという結果でした。職務の多様性や組織の特性に合わせることに懸念点となっているように思えます。

 

03ジョブディスクリプションのメリット

ジョブディスクリプションを用いて職務内諭を明確化する理由はいくつかあります。たとえば、ジョブディスクリプションを人事評価や人材活用の場面で活用することで、優秀な人材の採用や適材適所の人材配置、専門性の強化などの効果を期待できます。ここから詳しく解説します。

適材適所の人材活用と生産性向上の両立が見込める

ジョブディスクリプションを活用した人材配置においては、職務内容に適したスキルや適性を持つ従業員を配置します。したがって、従来のジョブローテーション制度とは異なり、人材のスキル育成にかかる時間や労力を省力化できるといえます。また、適性を考えた人材配置によって、従業員は潜在的な能力を職務に十分に発揮できると考えられるため、企業全体の生産性向上に寄与します。

客観的な評価基準で人事評価の公平性が保てる

人事評価における「評価制度」「等級制度」「報酬制度」の要素を連動させる役割を持つのが、ジョブディスクリプションです。ジョブディスクリプションによって職務内容や目指すべき成果など客観的な評価基準を明らかにし、人事評価の公平性が保たれます。

優秀な専門人材の採用ができる

ジョブディスクリプションを活用したジョブ型雇用によって、スキルや能力が備わっており、自己研鑽の意識が高い優秀な人材の採用が見込まれます。また、働き方改革や価値観の変化に伴い、勤務地や職務内容が限定された専門職を希望する人が増えています。ジョブ型雇用を取り入れることで、採用人数の増加につながると考えられます。

人事マネジメントの効率化につながる

ジョブディスクリプションにおいて、職務内容や責任範囲、評価方法を明らかにすることにより、人事側と従業員側とでこれらに関する認識のズレが生じにくくなります。結果として、人事マネジメントの効率が上がると考えられます。

専門分野やスキルに特化した人材の育成ができる

ジョブディスクリプションに基づく雇用では、職務内容に求められるスキルを有した人材の採用や、職務内容に沿ったスキル育成を前提としています。したがって、専門分野やスキルに特化したスペシャリストの育成が可能になります。

 

04ジョブディスクリプションの作成におけるステップとは

人事の観点から考えると、ジョブディスクリプションの作成は、従業員とのミスコミュニケーションを防ぎ、離職防止やパフォーマンスアップに繋がる重要な書類です。ここからは、ジョブディスクリプション作成時の3つのステップを紹介しますので、ジョブディスクリプション計画策定時にお役立てください。

対象となる職務の情報収集と従業員へのヒアリングを行う

ジョブディスクリプションに関する職務について、対象職務に関する情報収集と職務を担当している従業員へのヒアリングを行います。職務内容や職務等級、必要とされるスキルなど詳細な情報を集め、さらに現場の声を取り入れることで人事側と現場側とで意見の相違がないようにします。

調査に基づき具体的な業務内容を決定する

人事や部門のリーダーを中心に、収集した情報を精査しながら、職務の具体的な内容を決定します。職務に必要な作業を「なぜ」「何を」「どのように」という観点で定義づけし、作業に重要度や優先順位をつけていきます。そして、重要度順に作業を並べていくことで、職務の具体的な内容が把握できるようになります。

精査した職務情報をもとにジョブディスクリプションを作成する

精査した職務情報を基に、1枚の紙に職務内容をまとめます。インターネットなどで公開されているフォーマットを参考に、自社で必要と考えられる項目を盛り込むと良いでしょう。また、ジョブディスクリプション作成後は、現場の担当者に確認してもらうことで、現場の認識とのズレを解消できます。

 

05ジョブディスクリプションの記載例・テンプレート

この章では、ジョブディスクリプションの代表的な記載項目や、記載例やテンプレートをご紹介します。

ジョブディスクリプションの記載項目

ジョブデジスクリプションには主に以下の3項目を記載します。

  • 1.職務内容(携わる事業や職務詳細など)
  • 2.応募資格(必須条件や人物像など)
  • 3.待遇(想定ポジションや給与など)

特に1の職務内容では、従業員の勤怠管理や労働組合対応といった細かい業務まで記載しておくことが重要です。ジョブ型は提示されたジョブに対しての雇用なので、記載がないことは業務範囲外になる可能性があることを気をつけなければなりません。

ジョブディスクリプションのテンプレート

弊社で作成したジョブディスクリプションのテンプレートです。参考までにご覧くださいませ。

ジョブディスクリプションのテンプレート>

<h3>ジョブディスクリプションの記載例</h3>

<p>上記のテンプレートを用いたジョブディスクリプションの記載例を紹介します。</p>

<h4>職務内容の記載例</h4>
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06ジョブディスクリプションの導入における注意点

ジョブディスクリプションを導入する際には、いくつかのポイントに注意して運用することが必要です。ジョブディスクリプションに基づく人材活用を円滑に行うために、気をつけるべきポイント3つを紹介します。

自分の担当業務しか取り組まなくなる

ジョブディスクリプションに記載されている職務内容のみが評価対象になると考える従業員にとっては、記載されていない雑用は行う必要がないものと判断されるおそれがあります。誰かがやらなければならない雑用があったとしても、特定の従業員のみが行うことによって、不公平性が出てきてしまうのです。 人事評価の方法やルール作りなどの方法によって、ジョブディスクリプションに記載されていない業務を全従業員が公平に行うようにすることが大切です。

実際の業務内容と隔たりがないか定期的に見直す

業界を取り巻く環境や経済全体の状況、企業の経営状態が変化することによって、職務内容や責任の範囲が変わるものです。したがって、一度策定したジョブディスクリプションは、定期的に見直し、実際の業務内容と隔たりがないか確認する必要があります。

業務全体の効率化を図るためさまざまな人の意見を取り入れる

ジョブディスクリプションを作成する担当者は、人事部門の従業員であることがほとんどですが、ジョブディスクリプションに記載する内容には、現場の多くの従業員の意見を取り入れることが大切です。特定の従業員のみからヒアリングするだけでは偏った内容になってしまうため、多角的な意見を盛り込み、業務全体の効率化を図っていくことが欠かせません。

 

07ジョブディスクリプションを導入している企業を紹介

経団連が以前から導入を呼びかけていたジョブディスクリプションに基づくジョブ型雇用ですが、新型コロナウイルスの蔓延を機に雇用形態を見直し、多くの企業がジョブディスクリプションを導入しています。ここでは、ジョブディスクリプションを導入した企業を3つ紹介します。

株式会社日立製作所

日立は10年程前から、世界情勢に合わせて雇用形態を変化させてきましたが、2020年4月からジョブ型雇用を一層強化しました。採用者の学歴別の一律初任給額ではなく、一部のジョブを対象に採用者のスキルや経験、職務内容に合わせた個別の処遇設定を行います。また、事務系職種でも職種別採用コースを設定し、企業全体としてジョブ型雇用を強化しています。

富士通株式会社

富士通では、2020年度から管理職を対象にジョブ型雇用を導入しています。2021年4月には富士通社内の600件の新任課長枠に簡易的なジョブディスクリプションを用意し、希望者が立候補する形で登用を行っています。今後は、管理職だけではなく、徐々に一般社員にもジョブ型雇用を拡大する予定です。

株式会社資生堂

資生堂は昨今の社会情勢を鑑みて、企業に変革を起こさなければならないと危機感を抱いており、そのための多様な人材の確保に向けてジョブ型雇用を採用しています。2021年1月から一般社員3800人を対象に、ジョブ型雇用を採用しており、従業員の多様なバックグラウンドを個性として経営に活かしたいと考えています。


 

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08まとめ

グローバル化や価値観の変化などダイバーシティが進む現代社会、また新型コロナウイルス拡大によって既存の概念が覆された昨今の情勢においては、従来の一括新卒採用ではなく、ジョブディスクリプションを活用した採用および人材配置が求められています。 本記事で紹介した、ジョブディスクリプションの作成ステップや注意点を参考に、自社でもジョブディスクリプションの策定を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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