就業規則変更に伴う手続方法と注意すべきポイントを徹底解説

就業規則変更に伴う手続方法と注意すべきポイントを徹底解説いたします。働き方改革関連法が2019年4月から次々と施行され、それに伴い従来の就業規則を変更する必要が出てきたという企業も増えています。本記事を自社で変更を行う際の手続きにお役立てください。
- 01.就業規則とは
- 02.就業規則変更手続きが必要になるケースとは
- 03.就業規則の不利益変更を行う場合の注意点と対策方法
- 04.就業規則変更手続きの流れとは
- 05.就業規則変更届を提出する際に注意すべきポイントとは
- 06.まとめ
01就業規則とは
就業規則とは、働く上での労働賃金や労働時間といった労働条件、労働者が遵守すべき職場内の規律やルールなどをまとめた規則のことです。労働基準法により、従業員を常時10人以上雇用している企業には、就業規則の作成・労働基準監督署への届出が義務付けられています。
02就業規則変更手続きが必要になるケースとは
就業規則変更手続きの流れに入る前に、就業規則の変更が必要なのはどういった場合なのか確認しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。以下では、就業規則変更手続きが必要なケースをひとつずつ解説いたします。
固定残業代制度を新設する場合
近年、残業代の管理の難しさや、業務効率改善といった課題から「固定残業代制度(みなし残業代)」を導入する会社が増えています。固定残業代制度を新設する場合は、労働者の賃金に関わる重要な規則であることから、就業規則の変更が必要になります。
手当の新設もしくは廃止をする場合
残業手当や休日出勤手当のほか、各企業で用意している家族手当や住宅手当などといった、会社が支給する手当を新しく設けたり、反対に従来の手当を廃止する場合にも、従業員の給与項目を変更することに該当するため、就業規則の変更をしなければなりません。
賃金体系や始業・終業時刻・公休日を変更する場合
年功序列の賃金体系を成果報酬型に変更するなど、賃金体系を変更する場合も就業規則の変更が必要となります。その他、始業時刻・終業時刻を変更する場合や、公休日を変更する場合も、同じように就業規則の変更が必要となります。
新しい勤務形式を導入する場合
在宅ワークやフレックスタイム制など、新しい勤務形式を導入する場合には就業規則の変更が必要になります。働き方改革で新しい勤務形式を導入しようと考えている企業も多いかと思いますが、制度の導入だけではなく規則の変更も忘れないようにしてください。
法改正に対応する場合
国で施行されている法律が変更・改正された場合は、法改正に対応するために、その最新内容に沿った形で就業規則を変更しなければなりません。労働基準法など労働関連の法令が改正されると、法令よりも従業員に不利な内容の就業規則については、該当部分が無効となるため注意しましょう。
参考:「モデル就業規則について|厚生労働省」
03就業規則の不利益変更を行う場合の注意点と対策方法
就業規則の見直しを行う際には、会社が一方的に、従業員にとって不利益になる労働条件の変更をする、通称「不利益変更」にあたるかどうかは非常に重要なポイントとなります。 代表的な例が、「年間休日日数を減らす」「給与を会社側の一方的な判断で引き下げる」などです。不利益変更は行わないに越したことはありませんが、経営の理由上、仕方なく行わざる得ない場合もあります。 ここからは、一方的な不利益変更や従業員の同意が得られない不利益変更が理由で、大きなトラブルへと発展することのないよう、就業規則の不利益変更を行う場合の注意点と対策方法について、詳しく解説していきます。
給与の減額や手当の廃止の場合
給与の減額や手当の廃止は、従業員の生活へ直接的な影響を及ぼすことが明らかである点から、最もトラブルが起こりやすい問題です。 なるべく、トラブルへと転じないために、まずは給与の削減計画を作成します。この際、削減後の給与が同業同規模の他社と比べて、どの程度であるかを検討し、明らかな差異がないかを確認しましょう。 その後、給与が減額される旨を従業員に説明するために、説明会もしくは個別での時間を設け、就業規則を変更します。 また、給与減額後に、同意した・しないの水掛け論へと発展しないためにも全従業員から同意書を貰いましょう。労働組合がある会社の場合は、労働組合と労働協約を締結します。
労働日数、休日の変更の場合
労働日数や休日日数を変更する場合は、日数が変更となることで、どのように変化するのか、変更案を作成しておくことをおすすめします。給与計算の基礎となる単価へ影響する部分でもありますので、時間単価・休日単価・時間控除単価・固定残業代といった事項などに注意したうえで、変更を行いましょう。
みなし残業代の廃止の場合
みなし残業代を廃止する際には、会社側からの一方的な廃止は労働契約法上の不利益変更に抵触する可能性があるため簡単にはできません。 みなし残業代制度を廃止する際には、以下の点に注意し慎重に進めます。
- 1:経過措置 みなし残業の廃止で不利益変更が生じる従業員に対し、著しい給与低下を防ぐため、一定期間手当を支給する経過措置を行います。あまりに短いと経過措置とみなされない場合がありますので注意が必要です。
- 2:合理性を有している 労働契約法では「労働条件の変更について、合意性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更することが出来る」という内容が記されています。
つまり、そもそも残業代は実際の残業時間に基づいて支払われるべきもの、と考えられているのです。 会社がみなし残業代の廃止をする行為は合理性を有していると証明するためにも、設定したみなし残業時間と実態の残業時間について、事前に確認しておくことが大切です。
参考:「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省」
04就業規則変更手続きの流れとは
労働契約法では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めています。したがって社員と合意をせず、企業が勝手に就業規則を変更することはできません。 ここでは就業規則の変更ステップについて詳しく説明します。
就業規則変更の方針を決定する
ステップ1 まず、就業規則のどこを変更するか人事部などの担当部署で変更案の草案をまとめます。 その後、変更内容に各種労働法規の違反がないかを入念にチェックして法務担当者などによる確認を行います。変更内容に問題がなければ、経営陣に内容を提出し合意を得ます。
就業規則変更案を作成する
ステップ2 次に、労働基準監督署に提出する就業規則変更届を作成します。どこをどのように変更したのかがはっきりわかるよう、新旧対照表を用いて作成するといいでしょう。作成方法にお困りの際は、厚生労働省のウェブサイトに就業規則変更届の様式が掲載されていますので、そちらを活用してみてください。
従業員代表者に意見を聴く
ステップ3 就業規則の変更においては新規作成時と同様、その変更案の内容についての意見聴取が義務付けられています。従業員の過半数で構成されている労働組合があれば労働組合に対し、労働組合がなければ過半数を代表する従業員に対して意見聴取を行います。意見聴取後、その内容を「意見書」にまとめ、合意の証として署名・捺印を得ます。
就業規則変更届の提出をする
ステップ4 ここまでのステップを終えて、ようやく就業規則変更手続きの提出を行います。変更した就業規則に新旧対照表と意見書を添えて所轄労働基準監督署へ提出します。現在は、WEB上での申請もできますので、スムーズに提出を行えます。
変更した就業規則を周知する
ステップ5 変更後の就業規則は従業員への周知が義務付けられています。共有方法はどのような方法でも問題ありませんが、全従業員が必ず確認できるよう、書面で従業員に交付したり、電子的データとして保存し、ドライブ上でいつでもどこでも閲覧できるように整備することをおすすめします。
参考:「【働き方改革】就業規則の変更ポイントと手順を社労士が解説|アデコ」
05就業規則変更届を提出する際に注意すべきポイントとは
就業規則を変更する際には、手順に則って労働基準監督署に届出を行いますが、労使間でのトラブル防止のため、変更時の注意点を把握しておくことが大切です。ここからは、変更届を提出する際の注意点について見ていきましょう。
事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出る
就業規則変更の手続きは、企業全体ではなく、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。本社・各支店で労働条件の差異がない場合を除いて、一括して本社の住所地を管轄する労働基準監督署に提出することはできないためご注意ください。
労働者の代表による意見書を添付する
労働基準法第90条にて、使用者は、就業規則を届け出る際、意見書を記した書面を添付しなくてはならないとされています。届け出を提出する際には、上記、変更時の手続きステップ3で紹介した意見書の添付を忘れないようにしましょう。
変更届は2部提出する
届出の部数については、就業規則変更届け・意見書・就業規則をセットにしたものを2セット用意し、労働基準監督署へ持参します。1セットは労働基準監督署に提出し、もう1セットは労働基準監督署で受付印を押されたものが返却されるので、こちらを会社で保管するようにします。
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06まとめ
就業規則を変更する理由は、業績以外にもいくつか考えられます。世代交代や社名変更、創業周年などもひとつのきっかけになりますし、社内の合意形成が取りやすいタイミングを狙うこともあるでしょう。 就業規則変更の際は、規定のルールに沿って、変更・提出を行う必要があり、それらがきちんと守られていないと、労使間でのトラブルに発展するおそれがあり、最悪の場合訴訟を起こされるリスクもあります。 スムーズに就業規則変更手続きができるよう、本記事を活用いただけますと幸いです。