公開日:2021/07/13
更新日:2023/08/08

就業規則を変更する流れを解説|申請書類のテンプレート付き

就業規則を変更する流れを解説|申請書類のテンプレート付き | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

就業規則変更に伴う手続方法と注意すべきポイントを徹底解説いたします。働き方改革関連法が2019年4月から次々と施行され、それに伴い従来の就業規則を変更する必要が出てきたという企業も増えています。本記事を自社で変更を行う際の手続きにお役立てください。

 

01就業規則の変更が必要になるケース

まず、就業規則の変更が必要になるケースについて紹介します。就業規則の変更が必要になるケースは、主に以下の8つです。

  • ・法改正された場合
  • ・固定残業制を導入する場合
  • ・手当の新設もしくは廃止をする場合
  • ・賃金体系を変更する場合
  • ・始業時間や終業時間の変更をする場合
  • ・新しい勤務形態を導入する場合
  • ・現行の就業規則が機能していない場合
  • ・経営状態が悪化した場合

就業規則は労働条件や職場内の規律やルールなどをまとめた規則のことです。会社の状況や社会の変化に併せて、就業規則も変更していく必要があります。

法改正された場合

国で施行されている法律が変更・改正された場合は、法改正に対応するために、その内容に沿った形で就業規則を変更しなければなりません。労働基準法など労働関連の法令が改正されると、法令よりも従業員に不利な内容の就業規則については、該当部分が無効となるため注意しましょう。

固定残業制を導入する場合

近年、残業代の管理の難しさや、業務効率改善といった課題から「固定残業代制度(みなし残業代)」を導入する会社が増えています。固定残業代制度を新設する場合は、労働者の賃金に関わる重要な規則であることから、就業規則の変更が必要になります。

手当の新設もしくは廃止をする場合

残業手当や休日出勤手当のほか、各企業で用意している家族手当や住宅手当などといった、会社が支給する手当を新しく設けたり、反対に従来の手当を廃止する場合にも、従業員の給与項目を変更することに該当するため、就業規則の変更をしなければなりません。

賃金体系を変更する場合

賃金体系を歩合制にしたり、成果報酬型に変更したりする場合は就業規則の変更が必要になります。賃金に関する問題は社員の生活に直結するので、就業規則の変更を進める前に社員との対話をしっかりと行っておくと良いでしょう。

始業・終業時刻・公休日を変更する場合

始業時刻や終業時刻を変更する場合や公休日を変更する場合も、就業規則の変更が必要となります。

新しい勤務形式を導入する場合

在宅ワークやフレックスタイム制など、新しい勤務形式を導入する場合には就業規則の変更が必要になります。働き方改革で新しい勤務形式を導入しようと考えている企業も多いかと思いますが、制度の導入だけではなく規則の変更も忘れないようにしてください。

現行の就業規則が機能していない場合

人の働き方や仕事に対する価値観は、時代の流れによっても変わります。そのため、就業規則もこれらの変化に併せて必要に応じて変更が必要になるのです。仮に、就業規則を変更せずに機能していない規則を続けた場合、社員と会社間のトラブルに発展することもあり得ます。

経営状態が悪化した場合

経営状態が悪化した場合に、就業規則を変更せざるを得ないこともあります。前述したような賃金体系や手当の廃止など、経営を維持するために必要な措置をとる場合は、就業規則も変更しなければなりません。しかし、就業規則の不利益変更は労働基準法第9条で禁止されているため、その変更が妥当であり合理的である必要があります。

 

02就業規則の変更手続きの流れ

“就業規則変更手続きの流れ”

まず、就業規則を変更するには以下の書類が必要となります。

  • ・従業員代表の意見書
  • ・就業規則変更届
  • ・新しい就業規則

これらの書類に関しては、決まった様式はありません。記載内容や記述方式に迷う方は本記事にテンプレートも載せておりますので、そちらを参考にしてみてください。また、就業規則を変更する流れは以下の流れに沿って行います。

この章では、就業規則を変更する流れや、各書類のテンプレートなどについて詳しく説明します。

1.就業規則変更の方針を決定する

まず、就業規則のどこを変更するのかを担当部署で変更案の草案をまとめます。その後、変更内容に各種労働法規の違反がないかを入念にチェックして法務担当者などによる確認を行います。変更内容に問題がなければ、経営陣に内容を提出し合意を得ます。

変更の目的を明確にする

就業規則の変更は、社員にも大きな影響を与える可能性があります。変更をする際は、その変更内容の影響度合いに関わらず社員に丁寧な説明をした方がトラブルに発展しにくいため、何を目的とした変更なのかをまずは定義するところから始めましょう。就業規則の変更は主に以下の3つが背景となります。

  • ・法改正にあわせた変更
  • ・現行の規則が実態に即していないための変更
  • ・経営状態の悪化によるやむを得ない変更

現行の規則が実態に即していないための社員にとってポジティブな変更なのか、それとも経営状態の悪化による不利益を被る可能性がある変更なのかによっても、この後の変更内容の精査が変わってきます。

変更内容を洗い出す

次に変更したい内容を洗い出します。法改正による就業規則の変更であれば、変更箇所は明確です。しかし、経営状況の悪化による変更の場合は、変更箇所や内容を自社で決める必要があります。

経営状態の悪化による変更は、変更の妥当性と合理性が必要になるので、まずは変更箇所として選択肢になり得るものを洗い出して、精査すると良いでしょう。

変更内容の検討

就業規則の変更内容を洗い出したら、どのような変更をすべきか細かく検討しましょう。

例えば、有給休暇に関する規則の変更で半休を取れるようにしたいという内容であれば、午前休・午後休の定義をどうするのかなどを明確にしておく必要があります。定義を明確に決めておかず解釈の余地を与えてしまうと、その解釈がトラブルの要因になりかねません。

2.意見書を作成する

就業規則を変更する際は、意見の有無にかかわらず意見書も添付して提出する必要があります。意見書の形式は決まっておらず、各企業や事業所の判断に委任されています。しかし、基本的には以下の項目を意見書に記載することとなっています。

  • ・事業所(企業)の名称
  • ・事業所(企業)の代表者氏名
  • ・意見書に記入した日付
  • ・労働者代表の意見
  • ・労働者代表を選出したプロセス
  • ・労働者代表の氏名・役職・捺印

就業規則の意見書は形式が決まっていません。弊社で作成した意見書のテンプレートは以下です。自由に参考にしてください。

“就業規則への意見書”

従業員代表者に意見を聴く

労働基準法 第九十条で、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと決められています。労働者の代表とは、下記のいずれかを指します。

  • 1.労働者の過半数で組織する労働組合
  • 2.(1がない場合)民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者

2のいわゆる従業員代表は、経営層に近い部長や課長などは代表として認められません。そのため、一般社員の中から、選挙や投票などの方法で選出する必要があります。

▶︎参考:労働基準法|e-Gov

3.就業規則変更届を作成する

次に、労働基準監督署に提出する就業規則変更届を作成します。就業規則変更届に関しても意見書同様に明確な規定はありません。そのため、どのような形式で提出しても問題はないですが、以下の内容は記載しておくことが一般的とされています。

  • 1.就業規則変更届を提出する日付
  • 2.提出する労働基準監督署の名称
  • 3.変更内容
  • 4.労働保険番号
  • 5.労働者数(従業員数)
  • 6.事業所(企業)の名称
  • 7.使用者の氏名
  • 8.使用者の役職
  • 9.事業所(企業)の業種
  • 10.事業所(企業)の所在地

作成に迷う方は、以下のテンプレートを参考にしてみてください。

“就業規則変更届のテンプレート”

4.新しい就業規則を作成する

変更後の新しい就業規則の作成も必要です。こちらに関しても、意見書・就業規則変更届と同様に様式は自由です。作成の際は変更部分を朱書きしたり、比較表を添付するなどして、確認者の手間を省くようにしてあげると親切です。

5.必要書類を所轄労働基準監督署に提出する

ここまでのステップを終えて、ようやく就業規則変更手続きの提出を行います。変更した就業規則に新旧対照表と意見書を添えて所轄労働基準監督署へ提出します。現在は、WEB上での申請もできますので、スムーズに提出を行えます。

 

03就業規則の変更を行う際の注意点

就業規則の見直しを行う際には、会社が一方的に、従業員にとって不利益になる労働条件の変更をする、通称「不利益変更」にあたるかどうかは非常に重要なポイントとなります。 代表的な例が、「年間休日日数を減らす」「給与を会社側の一方的な判断で引き下げる」などです。不利益変更は行わないに越したことはありませんが、経営の理由上、仕方なく行わざる得ない場合もあります。 ここからは、一方的な不利益変更や従業員の同意が得られない不利益変更が理由で、大きなトラブルへと発展することのないよう、就業規則の不利益変更を行う場合の注意点と対策方法について、詳しく解説していきます。

給与の減額や手当の廃止の場合

給与の減額や手当の廃止は、従業員の生活へ直接的な影響を及ぼすことが明らかである点から、最もトラブルが起こりやすい問題です。 なるべく、トラブルへと転じないために、まずは給与の削減計画を作成します。この際、削減後の給与が同業同規模の他社と比べて、どの程度であるかを検討し、明らかな差異がないかを確認しましょう。 その後、給与が減額される旨を従業員に説明するために、説明会もしくは個別での時間を設け、就業規則を変更します。 また、給与減額後に、同意した・しないの水掛け論へと発展しないためにも全従業員から同意書を貰いましょう。労働組合がある会社の場合は、労働組合と労働協約を締結します。

労働日数、休日の変更の場合

労働日数や休日日数を変更する場合は、日数が変更となることで、どのように変化するのか、変更案を作成しておくことをおすすめします。給与計算の基礎となる単価へ影響する部分でもありますので、時間単価・休日単価・時間控除単価・固定残業代といった事項などに注意したうえで、変更を行いましょう。

みなし残業代の廃止の場合

みなし残業代を廃止する際には、会社側からの一方的な廃止は労働契約法上の不利益変更に抵触する可能性があるため簡単にはできません。 みなし残業代制度を廃止する際には、以下の点に注意し慎重に進めます。

  • 1:経過措置 みなし残業の廃止で不利益変更が生じる従業員に対し、著しい給与低下を防ぐため、一定期間手当を支給する経過措置を行います。あまりに短いと経過措置とみなされない場合がありますので注意が必要です。
  • 2:合理性を有している 労働契約法では「労働条件の変更について、合意性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更することが出来る」という内容が記されています。

つまり、そもそも残業代は実際の残業時間に基づいて支払われるべきもの、と考えられているのです。 会社がみなし残業代の廃止をする行為は合理性を有していると証明するためにも、設定したみなし残業時間と実態の残業時間について、事前に確認しておくことが大切です。
参考:「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省」

 

04就業規則の変更を社員に受けてもらうためのコツ

就業規則を変更する際には、手順に則って労働基準監督署に届出を行いますが、労使間でのトラブル防止のため、変更時の注意点を把握しておくことが大切です。ここからは、変更届を提出する際の注意点について見ていきましょう。

労働組合や従業員代表との対話をする

就業規則の変更は、社員の生活にも関わる内容になる可能性があります。どのような合理的な理由があろうと一方的な変更の押しつけは社員の反感を買うことになりかねません。

そのため、労働組合または従業員代表と対話する場をもち、丁寧に変更の背景や変更内容の説明を行いましょう。

代償措置や経過措置を検討する

社員にとって不利益な変更となる場合、仮にその変更が経営悪化によるやむを得ない背景だったとしても、社員への影響を出来るだけ軽減できるような、代償措置を設けることも検討すべきでしょう

また、変更までに一定の猶予日数を設けるといった経過措置も検討すると良いでしょう。例えば、10月から成果報酬型に変更する場合は半年前の4月に公示するといった形で、経過措置を講じると社員も準備する時間を得ることができます。


 

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05まとめ

就業規則を変更する理由は、業績以外にもいくつか考えられます。世代交代や社名変更、創業周年などもひとつのきっかけになりますし、社内の合意形成が取りやすいタイミングを狙うこともあるでしょう。 就業規則変更の際は、規定のルールに沿って、変更・提出を行う必要があり、それらがきちんと守られていないと、労使間でのトラブルに発展するおそれがあり、最悪の場合訴訟を起こされるリスクもあります。 スムーズに就業規則変更手続きができるよう、本記事を活用いただけますと幸いです。

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この記事を書いた人
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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