公開日:2021/07/13
更新日:2022/10/20

職場環境を改善するには?6つのアイディアと良好事例を紹介

職場環境を改善するには?6つのアイディアと良好事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

快適な職場環境づくりは、すべての事業者が努力しなければならない課題のひとつですが、何から改善すればいいのかわからない場合もあるでしょう。本記事では、職場環境を構成する要素、改善のための6つのアイディアを、企業の事例とともに解説します。

 

01職場環境とは?

職場環境とは、照明や空調などの室内環境や、上司や事業所内の人間関係など、従業員を取り巻く環境を幅広い意味で指す言葉です。快適な職場環境は、従業員の心身の健康にも繋がるため、すべての事業者が注意を払う必要のある重要な項目のひとつです。 労働安全衛生法の第三条には、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」とあり、快適な職場環境の実現を事業者の責務として取り扱っています。

▶︎参考:労働安全労働法

職場環境に対しての配慮義務

職場環境は労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)で、以下のように法的にも配慮するように定められています。

第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

安全への配慮には、心身の健康も含まれます。そのため、健康診断や労働時間管理、ストレスチェックなども法的に必要な措置と言えるでしょう。

▶︎参考文献:厚生労働省|労働契約法のあらまし

事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針

労働契約法だけでなく、労働安全衛生法第3条においても、事業者に対して、快適な職場環境形成のための措置として4つの指針が示されています。

1.作業環境の管理 空気環境、気温、湿度条件などの作業環境が不十分で不適切な場合、社員の疲労やストレスを高めるため、業務に従事する社員に適した状態に維持管理する。 2.作業方法の改善 不自然な姿勢での作業や大きな筋力を必要とする作業は、社員の心身の負担が大きいため、負担が軽減されるよう作業方法の改善を図る。 3.心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備 業務による疲労を速やかに回復できるよう、休憩室といった疲労を回復できる施設の設置や設備を図る。 4.その他の施設・設備の維持管理 洗面所、トイレなど社員の職場生活において必要となる施設・設備については清潔で使いやすい状態となるよう維持管理する。

上記の指針は平成四年七月一日に公表されたものなので、リモートワークなどの現在の働き方に照らし合わせると、解釈が難しい部分も多いです。しかし、根幹にある「社員が快適な環境で働けるように取り組みをすべき」というのは変わらないでしょう。

▶︎参考文献:労働安全衛生法|事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針

ストレスチェック

2015年2月に労働安全衛生法が改正され、従業員数が50名以上の全事業者(法人・個人)に対して、ストレスチェックの実施を義務化しました。50名以下の事業者は努力義務となっています。さらに、厚生労働省は第13次労働災害防止計画(計画期間:2018年度~2022年度)のなかで、「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上にする」ことを目標として掲げています。

▶︎参考文献:厚生労働省|ストレスチェック制度について

▶︎参考文献:厚生労働省|第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)計画が目指す社会、計画期間、計画の目標

 

02職場環境を構成する5つの要素

職場環境は、従業員を取り巻く環境のことで、幅広い意味が含まれています。ここでは、職場環境を構成する5つの要素について解説します。

物理化学的環境

物理化学的環境には、エアコンの温度や湿度設定、照明、騒音対策など、従業員が作業するにあたり快適な室内環境が整っているかが関係します。オフィスや作業場だけでなく、トイレなどの衛生設備や休養設備の改善も含まれます。受動喫煙の防止、有害環境減の隔離、緊急時対応の手順の改善なども、職場環境を構成する要素となります。

人間工学的側面

人間工学的側面とは、作業スペースや作業姿勢などに関することで、従業員が仕事をしやすいようにさまざまな工夫をする必要があります。作業場所における設備や機器が、作業者の体に長時間の負担を与えないようにします。これには、使用する作業台や椅子などの質、パソコンや機器などの使いやすさの整備などが関係します。

人間関係

従業員にとってストレスとなる最大の要因が、職場の人間関係であると言われています。定期的な飲み会や職場内での雑談が頻繁に行われていると、人間関係は良好だと結論するかもしれませんが、実はこれらにストレスを感じている従業員もいるかもしれません。そこで、上司や同僚に相談しやすい環境を整える必要があります。また、従業員が作業しやすいように、情報の共有をしたり、研修の機会を提供したりすることも挙げられます。

仕事の負荷

従業員の経験や能力を考慮した人事配置により、仕事の負荷がかかり過ぎないように調整する必要があります。無理のある内容や量の作業を行わせることは、従業員にとってストレスになります。一方で、単調な作業ばかりを行うことも、従業員のモチベーションを低下させる要因となります。人事評価制度の整備を行い、適材適所の配置ができるようにすることも、職場環境と関係があります。

仕事の自由度や裁量権

作業の日程作成の際に、従業員も参加できる体制を作るようにします。作業手順に関しても、現場の意見を取り入れて、担当従業員が決定できる範囲を定めます。また、単調な作業の繰り返しにならないように、分担できる作業の幅を広くして、達成感が得られるように工夫することも大切です。全従業員が正しい理解で作業を進められるよう、必要な情報の共有を徹底することも挙げられます。

 

03職場環境改善の効果

職場環境の改善は、事業者の責務であるだけでなく、職場にさまざまなメリットをもたらします。厚生労働省が発行している「これからはじめる職場環境改善〜スタートのための手引き〜」でも、以下のように記載されています。

職場環境改善を行うことによって、仕事のストレス要因や健康状態が改善したり、あるいは生産性 が向上したりすることが国内外の多くの研究によって報告されています。

この章では、職場環境改善の効果について解説します。

▶︎参考文献:厚生労働省|これからはじめる職場環境改善〜スタートのための手引き〜

仕事上のストレスを軽減できる

職場環境を改善することで、従業員が仕事上で感じているストレスを軽減させることができます。ストレスを感じた状態で作業を進めると、パフォーマンスが低下したり、ミスが増えたりすることがあります。また、心身の不調により、欠勤の増加や休職に繋がる可能性も考えられます。ストレスの軽減は、生産性向上や企業の業績にも関わるため、職場環境改善により解決するべきだと言えるでしょう。

対人関係の改善に繋がる

仕事上のストレスの主な原因として、職場内の対人関係が挙げられます。職場環境の改善に取り組むことで、上司や同僚とのコミュニケーションを活性化させることができます。上司との個人面談や、相談窓口の導入により、対人関係で問題を抱える従業員同士が距離を置けるような人事配置をすることも求められるでしょう。従業員が好きな席で作業できる「フリーアドレス」を導入して、対人関係の改善に成功した企業も少なくありません。

離職率が低下する

職場環境を原因とするストレスが、従業員の心身に不調をもたらすこともあります。改善を怠ることで、やがて心身の健康を損ない、休職または退職に繋がることもあり得ます。また、ストレスの多い職場での作業に限界を感じ、転職を考える従業員も増えることが考えられます。快適な職場環境を維持することで、従業員のエンゲージメントを向上させると、離職率が低下し、貴重な人材の流出を防止することにもなるでしょう。

生産性の向上

職場環境の改善は生産性の向上にも寄与します。厚生労働省のパンフレットによると、職場環境改善のメリット(費用便益)を検討した研究で、職場環境改善の実施にかかる費用が1人当たり7,660円なのに対し、実施の結果生産性が向上して得られる利益が1人当たり15,200円と、費用便益が約2倍と見積もられているのです。このように、職場環境の改善は社員の精神的な充足度を満たすためだけではなく、経営として取り組むべき利益率向上施策の一環なのです。

▶︎参考文献:厚生労働省|これからはじめる職場環境改善〜スタートのための手引き〜

 

04職場環境改善の進め方

この章では、厚生労働省が発行している「職場環境改善の手引き」を基に、職場環境改善の進め方を紹介します。

▶︎参考文献:厚生労働省|職場環境改善の手引き

手順1:準備・計画(Plan)

まず、職場環境改善の方針、取り組みを進めるための体制や担当者について合意形成し、職場全体に周知しましょう。 この周知は、経営者自身が行うと効果的です。この取り組みを始めることに賛同していることが明確になるため、管理職や社員が積極的に取り組みをする契機になります。 そのためには、職場環境改善を行うことのメリットや注意事項について経営者に説明することが重要です。その際には先述した生産性向上のデータなどを用いると経営者も利益に繋がる行動ということで率先して取り組んでくれる可能性が上がるかもしれません。

手順2:グループディスカション

職場環境の改善は、社員全員で進めていくと効果的です。そのため、どのように職場を改善していくのかを話し合うためのグループディスカッションを行いましょう。時間の目安は60分程度で、社員の約半数以上が参加できるようにすると良いです。 60分と限られた時間の中で効率良くディスカッションをするために、事前にチェックリストを記入してきてもらったり、グループ構成を5〜6人に班わけしたり、司会、書記などの役割も事前に決めておいたりすると、当日の進行がスムーズです。 また、自由な意見が出るような雰囲気作りも欠かせません。「ここが良くない」という問題を指摘する場に終始してしまうと、不満を発散する場になってしまうため、課題をどのように解決するかという前向きな議論ができるように、司会はファシリテーションを心がけましょう。

手順3:改善計画の作成と実施

グループディスカッションの結果を参考にしながら、職場の状況や資源(人的、物的) を考慮してすぐ実施する改善計画を決めます。 計画は「いつ、だれが、何を行うのか」のように具体的に決めると、その後の行動がスムーズに進みます。また、改善計画は3つまでを目標にし、具体的なアクションはすぐに行動に移せるものが良いでしょう。オフィスを改装するなど、費用も工数もかかる施策だと実際に行動に移せずに終わる可能性が高く、ディスカッションが無駄になってしまう可能性があります。 また、改善施策の実施は特定の人に負担が集中しないように、職場全体で協力しながら進めましょう。そのためにも、手順2のグループディスカッションで社員の半数以上を巻き込む必要があるのです。

手順4:成果報告と発表

どのような職場環境改善施策を実施して、どのような成果を得たのかは必ず振り返りましょう。この成果は定量的な数値で出せないことも多いですが、社員へのアンケートなども実施しながら、できるだけ効果を可視化できるようにしましょう。 また、改善の成果発表の場を設けるのも効果的です。組織全体で取り組みをすることが重要なので、計画から実行、振り返りまでも組織全体で行えると、次のアクションに対しても組織全体で取り組める可能性が高まります。

 

05職場環境改善のための6つのアイディア

職場環境の改善にいざ取り組もうとしても、何から始めたらいいかわからない場合があります。ここでは、職場環境改善のための6つのアイディアを紹介します。

作業量の配分を見直す

まず、社員に作業計画を一方的に提示するのではなく、一緒に作業計画を作成する機会を与えることが挙げられるでしょう。作業手順の再調整や配置する人員に関しても、現場の意見を取り入れるなら、快適な職場環境を作ることに繋がります。また、朝に簡易的なミーティングを行い、その日の作業目標や作業手順の確認などをして、全従業員に必要な情報を共有することも効果的です。

勤務時間の調整

長時間労働への対策を行うなど、従業員に仕事の負荷がかからないように工夫することも大切です。「ノー残業デイ」「リフレッシュ休暇」などの導入により、休日、休暇が十分に取れるようにすることも有効です。また、繁忙期には人員体制を整え、業務量の偏りが特定の従業員の負担にならないように調整することも大切です。勤務時間が不規則な場合も、定期的な見直しにより、従業員に負担がかかり過ぎていないか確認する必要があります。

作業の円滑化・効率化

作業が円滑に行えるように工夫することもできるでしょう。例えば、資材や書類の保管場所の整理整頓、運搬の際に台車を使用することなどが挙げられます。また、作業場では作業台の高さや配置を工夫して、従業員の体に負担がかからないようにします。作業手順をマニュアル化して、いつでも確認しやすいように工夫するなら、作業ミスや事故を未然に防ぐことにも繋がります。

職場環境の整備

冷暖房設備を整えて、温度や湿度の設定を最適に保ちましょう。また、有害物質を扱う場合は、適切な防護対策を取る必要があります。トイレや更衣室を衛生的に保つことや、休憩室や食事をする場所の快適性も向上を図れるかもしれません。自動販売機や売店の設置など、福利厚生施設を備えることも有効です。喫煙ルームの設置をするなど、喫煙者、禁煙者双方に対する配慮も大切なポイントです。

心理的安全性を高める

心理的安全性が高く、相談のしやすい職場環境を作るために、上司と部下の定期的な面談を実施することも有用です。チャットツールの導入で、相談や意見交換がしやすい環境を作るのも良いでしょう。また、小グループでのミーティングで、問題点や改善点を話し合える機会を設けたり、メンバー同士の懇親の場や研修の機会を提供したりすることも、職場内の相互支援に寄与します。

研修などでメンタルヘルスの知識を与える

メンタルヘルスに関する相談は、環境が整っていない限りそのまま放置されることが大半です。誰もが気軽に相談できるように、社内に相談窓口を設置し、必要な訓練が施された担当者を配置しましょう。従業員に対しては、セルフケアの方法を学べるように研修を実施するなど、必要な情報を定期的に提供することができます。キャリア相談や資格取得のサポートも、従業員が安心できる職場づくりに繋がります。

 

06職場環境の改善に成功した企業の事例

新オフィスでモチベーションアップに成功した「バリラジャパン株式会社」

イタリアを代表するパスタメーカーであるバリラは、東京の青山エリアを拠点にしていましたが、職場環境改善のためにオフィスの移転を決断しました。移転に際しては、100~150棟をリストアップし、20棟ほどに足を運んで検討した結果、永田町にあるPMO平河町ビルに決定しました。 イタリアの雰囲気を出すために、イタリアの家具を導入し、イタリア人のデザイナーのサポートを得ながらオフィスデザインを決めました。さらに、女性社員の意見を求め、新鮮なフルーツが置かれたカフェスペース、イベント開催に役立つスライディングウォールも採用しました。新オフィスは従業員の感嘆の声を上げさせ、モチベーション向上に繋がっています。

制服の色分けで定時退勤を促す「熊本医療センター」

熊本医療センターでは、働き方改革の取り組みが困難だとされる医療現場において、長時間勤務問題の解決策として、2014年度から制服の色分けを採用しました。日勤スタッフの制服は赤、夜勤スタッフの制服は緑とし、定時退勤を促すのが目的です。 翌年には1人当たり年約110時間あった残業時間が約半分に減り、2018年には5分の1にまで減少させることに成功しました。定時退社により、離職率は半減、スキルアップ研修への参加がしやすくなるなど、スタッフの技術向上にも繋がっています。2019年には、日本看護協会の先進事例表彰で最優秀賞に輝きました。

オープンなレイアウトのオフィスでコミュニケーション活性化を促す「コニカミノルタジャパン株式会社」

コニカミノルタジャパンは、2014年のオフィス移転に伴い、250人を一部屋に収容できるオープンなレイアウトを採用しました。また、好きな席で作業ができるフリーアドレス制により、コミュニケーションの活性化や生産性向上に繋げることができています。 必要に応じてスペースを広げて座ることができるため、ソーシャルディスタンスへの対応も万全です。また、会議室にはスピーカー設備を整え、遠隔ミーティングが行えるようになっています。職場環境改善により従業員の健康度向上にも貢献しており、2018年から4年連続で「健康経営銘柄」に選ばれています。


 

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07まとめ

職場環境の重要性や具体的な改善案についてまとめました。職場環境の改善はすべての事業者の責務でありますが、同時に従業員のモチベーション向上や、生産性向上にも貢献します。健全な企業経営を進めるためにも、職場環境の見直しは優先すべき課題であると言えるでしょう。また、職場環境改善への取り組みが、今現在叫ばれている「働き方改革」の推進へとも繋がるのです。

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