公開日:2021/05/28
更新日:2023/01/18

カスタマーハラスメントとは? 従業員を守る企業の対策について解説

カスタマーハラスメントとは? 従業員を守る企業の対策について解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年、カスタマーハラスメントが深刻な問題となっています。顧客からの、不当で過度な要求やクレームに対応することで、従業員が心身の健康を害するケースも発生しています。当記事では、カスタマーハラスメントから従業員を守る企業の対策について解説していきます。

 

01カスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメントとは顧客・取引先から受ける、常識の範囲を超えた過度な要求や、悪質クレームのことを指します。カスタマー(顧客)がサービス提供側よりも優位な立場にある点を利用し、不当で過度な要求を押し通そうとする行為のことです。また些細なミスを理由に、従業員の人格を攻撃するケースも見受けられます。そのことで従業員が心身の健康を害するといった見過ごせない被害も発生しています。

カスタマーハラスメントと正当なクレームとの違い

正当なクレームは、真摯に受け止め対応すべきです。しかし、カスタマーハラスメントは断固として対抗しなければならないものです。ではその両者の違いは、どういった点にあるのでしょうか。 通常、正当なクレームの場合は謝罪したうえで、顧客が被った実害を回復させれば終了します。カスタマーハラスメントは、それではおさまらず、さらに不当な要求を突きつけてくるものです。正当なクレームとカスタマーハラスメントの境界線、判断基準は「何度も繰り返す」「長時間にわたる」「目的や意図が分からない」といった点に置くと良いでしょう。

 

02カスタマーハラスメントの具体例

カスタマーハラスメントの具体例としては、以下の4つが挙げられます。いずれも企業の正常な業務を妨げ、対応する従業員の心身を疲弊させる悪質なものです。

長時間の拘束

具体的な例としてまず、長時間の拘束が挙げられます。自宅に担当者を呼び、長時間にわたりクレームを言い続ける、あるいは店舗などの事業所に長時間居座るなど、監禁や不退去に該当する可能性のある行為です。このようなクレームを、一度ではなく何度も行う顧客もいます。そのたびに、担当者は対応に多くの時間をさかねばならず、疲弊し通常の業務に支障をきたすようになります。

不当な金銭要求

不当な金銭要求も、カスタマーハラスメントに該当します。通常のクレームであれば顧客が被った実害を回復すれば終了しますが、慰謝料や迷惑料といった名目で、それ以上の金銭を要求してくる場合はカスタマーハラスメントとなります。また、商品やサービスに満足できなかったことを理由に、代金の支払いを拒否したり、値引きを要求する行為も不当な金銭要求に当たります。

脅迫や威嚇

「誠意を見せろ」「ネットにさらすぞ」「家まで来い」といった脅迫的な言動や、「大声で怒鳴る」といった恫喝や威嚇もカスタマーハラスメントといえます。店頭でこうした態度をとられた場合、ほかの利用者の迷惑となるため、従業員は穏便に事を収めようとします。そうした従業員の心理を利用して、エスカレートしていくケースも多々あります。いずれも脅迫罪や強要罪に該当する可能性がある行為です。

暴言や土下座の強要

対応した従業員に対し、人格を傷つけるような暴言を吐いたり、土下座を強要するといった行為もカスタマーハラスメントに該当します。近年、店員を土下座させ、その姿をスマートフォンで撮影しSNSにアップする事例が多発しました。こうした行為は対応した従業員のプライバシーを侵害する行為であり、なかには強要罪で逮捕に発展したケースもありました。

 

03カスタマーハラスメントが増加した背景

国民生活に関連した、さまざまな産業の労働組合である「UAゼンセン」が、2020年10月に発表した「悪質クレーム対策アンケート調査」によると、サービス業従事者の56.7%が過去2年以内に「職場における迷惑クレーム(迷惑行為)に遭遇したことがある」と回答しています。近年カスタマーハラスメントが増加した背景には次の4点が考えられます。

参照:UAゼンセン「悪質クレーム対策アンケート調査」

顧客心理の変化

カスタマーハラスメントが増加した背景には、権利意識の高まりといった顧客心理の変化が挙げられます。「お客様は神様」という言葉が曲解され、いき過ぎた顧客至上主義が定着しました。企業は可能な限りサービスを向上させ、顧客満足を追求すべきという価値観が一般化しています。そうしたサービスを受けるうちに「顧客は店員よりも立場が上」といった感覚が生まれており、こうした心理から「下の立場」である店員には、理不尽な態度をとっても良いといった考えを持つ人が増えているようです。

過剰なサービスの一般化

競争の激化により、過剰なサービスが一般化していることも背景にあります。現代では、提供する商品で明確な差別化がしにくくなっているため、接客など、付随するサービスにおいて差別化が求められています。顧客満足のために、対価以上のサービスを提供することが恒常化し、それに慣れた顧客の要求水準が高くなっています。すなわち本来は「プラスアルファのサービス」であったものが「当たり前のサービス」になり、それを満足に受けられないことでクレームとなるケースが多くなっています。

インターネット・SNSの普及

インターネットやSNSの普及により、一個人が、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。ちょっとしたサービスの不手際を発信され、炎上するかもしれないといったリスクを企業が抱えることで、顧客の立場がさらに強くなりました。一部では「クレームをつけたら金銭を受け取れた」といった情報を目にし、「それなら自分も」と行為に及ぶ悪質なクレーマーもいるようです。

シニア世代の増加

シニア世代の増加も、カスタマーハラスメントの背景にあるといえます。それまで、仕事中心に生活していたシニアは、定年を期に生活環境が大きく変わります。時間とパワーを持て余し、そのエネルギーを企業にクレームをつけるといった行為に発展させているケースも、少なからずあるといわれています。 またスマートフォンなど、IT機器の普及により操作方法について問い合わせをする過程において、気分を害しカスタマーハラスメントに発展しているケースもあるようです。

 

04カスタマーハラスメントが引き起こす問題点

カスタマーハラスメントは、対応に大きな労力を必要とするため、業務の停滞を招きます。また、対応する従業員の心の負担は非常に大きいため、企業は安全配慮の観点からも、カスタマーハラスメントが引き起こす問題点を正しく認識する必要があります。

従業員のストレス増加

カスタマーハラスメントに対応する従業員が受けるストレスは、看過できないものです。顧客満足のため「いかなる顧客の要望にも応えなければならない」という意識のもと、過剰な要求に対しても誠実に応えようとすることがストレス増大の原因となります。

心身の健康への影響

カスタマーハラスメントの対応によりストレスを蓄積し、精神疾患を発症する恐れもあります。UAゼンセンの「悪質クレーム対策アンケート調査」によると「迷惑行為を経験された方は、迷惑行為から受けた個人への影響を教えてください」という設問に対し、程度の差こそあれ「ストレスを感じた」と回答した人は、実に90%を超えています。そのなかで、「精神疾患を発症した」という回答は1%未満ですが、深刻な精神疾患を患った従業員は、すでに退職している可能性も考慮しなければなりません。よって、この調査結果における精神疾患の発症者は、実態よりも過少であると考察されています。

参照:UAゼンセン「悪質クレーム対策アンケート調査」

休職や離職の原因となる

前述のように、カスタマーハラスメントへの対応は、従業員のメンタルに悪影響をおよぼします。対策をおろそかにすると、休職や離職のリスクが高まり、正常な事業運営に支障をきたす事態が想定されます。

 

05カスタマーハラスメントから従業員を守る企業としての対策

企業は安全配慮義務といって、すべての従業員が心身の健康を害することなく、安全な環境で働けるよう、配慮する義務があります。カスタマーハラスメントに対応する従業員のケアを怠ると、従業員から安全配慮義務違反による訴訟を起こされるリスクも考えられます。これをふまえ、企業にはカスタマーハラスメントの現状を正しく認識し、従業員を守る対策が求められます。

通常クレームと悪質クレームの線引きを明確にする

まず、通常クレームと悪質クレームの境界、判断基準を明確にすることが重要です。悪質クレームであると判断された場合は、現場に任せず、組織的に対応しなくてはなりません。パワーハラスメントの判断基準を流用し「顧客という優位な立場を利用し、業務の正常な範囲を超えて不当な要求をしている」と判断した際は、企業として毅然とした対応をとるべきです。

対応のガイドラインを設ける

対応についてもガイドラインを設けておきます。

  • ・2人以上で対応する
  • ・1回の対応は30分以内とする
  • ・会話の内容は録音する
  • ・警察や弁護士に対応を依頼する

例えば上記のように、ガイドラインを定めておけば、企業としての対応が明確になります。そうすれば、従業員は自身で判断することが少なくなり、心の負担は軽くなります。

警察・弁護士に相談する/h3>

従業員が脅迫された、企業イメージを損なう行為を受けたといった過度なカスタマーハラスメントは、警察や弁護士へ相談することも対策の一つです。また、警察や弁護士以外でも、厚生労働省が企業や働く人の相談を受け付ける窓口を設置しています。

証拠を残しておく/h3>

カスタマーハラスメント行為を受けたときの証拠を残しておくと、行為者に法的措置をとるために警察や弁護士に相談するときに役立ちます。顧客とのやりとりの音声を、スマートフォンやボイスレコーダーで録音したり、映像を録画するといった方法があります。また、やりとりを始める前に、内容を記録する旨をあらかじめ伝えることで、カスタマーハラスメントの抑止につながる可能性があります。

従業員のストレスケア

定期的なストレスチェックにより、従業員のストレスレベルなど、現状を把握することも必要です。加えて、対応した従業員に産業医の面談を実施するといった、ダメージをケアする対策も考慮すべきでしょう。

 

06厚生労働省におけるカスタマーハラスメントの指針について

厚生労働省は、カスタマーハラスメントの防止対策の一環として、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を示しています。ここでは、その内容について解説します。

カスタマーハラスメントの判断基準

カスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、カスタマーハラスメントの判断基準を以下のように示しています。

  • ①顧客などの要求内容に妥当性はあるか
  • ②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

自社の過失や商品の瑕疵などがなく顧客の要求には正当な理由がないと考えらる場合や、暴力的・威圧的・継続的・拘束的・差別的、性的であるなどの、社会通念上不相当であると考えられる場合はカスタマーハラスメントに該当するとしています。 一方、顧客の要求内容に妥当性がないと考えられる場合であっても、企業が顧客等の要求を拒否した際にすぐに顧客等が要求を取り下げた場合などは、カスタマーハラスメントには該当しない可能性があるとしています。

企業が取り組むべきカスタマーハラスメント対策

マニュアルでは、カスタマーハラスメントが起こる前の準備について以下のように記載しています。

  • ①事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知啓発:トップからカスタマーハラスメント対策への取り組みの基本方針などを示す
  • ②従業員のための相談対応体制の整備:カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるように相談対応者を選定、相談窓口の設置と従業員への周知
  • ③対応方法、手順の策定:カスタマーハラスメント行為への対応体制、方針などを決める
  • ④社内対応ルールの従業員等への教育・研修:顧客などからの迷惑行為、悪質なクレームへの対応について従業員を教育する

また、起こった際の対応についても以下のように記載しています。

  • ⑤事実関係の正確な確認と事案への対応:カスタマーハラスメントであるかの判断を事実に基づいて行う
  • ⑥従業員への配慮の措置:被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適切に行う
  • ⑦再発防止のための取組:同様の問題が発生することを防ぐため、定期的な取組の見直しや改善を行う
  • ①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置:相談者のプライバシー保護。相談したことを理由に不利益が扱いを行ってはならない旨の定めを従業員に周知する。

これからカスタマーハラスメント対策を行っていく企業は、ぜひ参考にしてみてください。

 

07カスタマーハラスメントのストレスから従業員を守る教育とは

カスタマーハラスメントから従業員を守るには、まず企業としての対応を明確にし、発生した場合は組織的に対応することを周知し安心感をもたせましょう。そのうえで「悪質クレームの対応術」といった専門的な研修を受講させるなど、法律まで含めた正しい知識が身につく社員教育の実施も効果的です。そうすることで、実際の対応においても自信をもって対処できるため、対応者のストレスが軽減されるでしょう。

ストレスへの対処法を身につけてもらう

それでも、カスタマーハラスメントの対応により、心身に不調をきたす従業員が生じてしまう可能性はゼロではありません。メンタル不全を未然に防ぐ、予防の意味でストレス対処法の研修を定期的に実施することも有効です。困難やトラブルに遭遇した際、心が折れることなく、柔軟にストレスからの回復を図る、レジリエンス力を高める研修を実施すると良いでしょう。Schooでもストレスへの対処法に関する授業を提供しているので、興味のある方は以下を確認してみてください。

ストレスに悩まない3つの習慣

 

日常会話でも出て来ることの多い「ストレス」 産業医として年間1,000人以上の健康相談、メンタルヘルスの相談を行ってきた武神先生をお招きして、「ストレスに悩まない方法」を講義していただきます。

 

 
  • 医師、医学博士、日本医師会認定産業医

    産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある。

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ストレスモデルと行動コーピングを理解する

第1回目の授業では、認知行動療法とは何なのか、ストレスにはどのようなタイプがあるのかなどの概論に加え、認知行動療法の中で用いられる「コーピング」というストレスへの過剰反応を減らすための手法の中から、「行動のコーピング」について詳しく学んでいきます。

 
  • マイコーピング株式会社 代表取締役社長

    コニカミノルタにて新規事業の海外営業・マーケティング。IBMビジネスコンサルティングサービスでのCRMコンサルタントを経て、日本IBMにてグローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業のリソース管理部長として、事業変革を支える経営管理モデルの構築をリード。上海のオフショア拠点での駐在も経験。アドビにてエクスペリエンス・クラウド事業の経営企画本部長として、コンサルティングなどサービス部門の成長を牽引。2020年マイコーピング株式会社を創業し、「働く人」の心の問題を予防的に解決するサービスを提供。

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07まとめ

昨今では、顧客の権利意識の高まりから、悪質なカスタマーハラスメントに遭遇する可能性が高まっています。悪質クレームから従業員を守るため、企業としての対応・対策を明確に定めておくことが必要です。あわせて、ストレスから従業員のメンタルを守る教育も含め、検討していく必要があるでしょう。

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