休職期間の決定方法は?満了後の対応や注意点について解説
何らかの休職制度を設けている企業は多いですが、休職期間については企業ごとに異なります。休職期間が長くなることもあり、休職満了後の退職や解雇がトラブルになるケースも少なくありません。本記事では、休職期間の決定方法、満了後の対応や注意点について解説します。
- 01.休職期間とは?
- 02.休職期間を決定する判断基準
- 03.休職期間中の取り扱いについて
- 04.休職期間満了後の対応
- 05.休職期間満了後の退職や解雇でトラブルにならないように企業ができること
- 06.まとめ
01休職期間とは?
休職期間とは、病気や怪我などで業務に携わることのできない従業員に対して、年次有給休暇とは別に休みを与える、または命じる期間のことです。ここでは、「欠勤」「休業」との違いや、主な休職事由、一般的な休職期間の上限について解説します。
休職と欠勤、休業の違い
休職とは、従業員の都合により、会社が規定に基づいて業務を免除し長期休暇を与えることです。これに対して欠勤は、業務を免除されていない状態で、従業員の都合で仕事を休むことです。また、欠勤が連続してから休職へと移る場合もあります。 休業とは、企業または従業員の都合により、従業員の業務を停止することです。企業の都合の中には、経営悪化や自然災害などがあり、業務停止期間中に休業手当を申請することが可能です。従業員の都合には、介護や出産などがあり、関係法令の要件を満たす場合に、労働者は請求権を得ることになります。
主な休職事由
主な休職事由には、勤務外での病気や怪我により長期休暇を必要とする「病気休職」や、勤務外での事故で欠勤が続く際に適用される「事故欠勤休職」などがあります。ほかにも、国際貢献活動や大学などの修業のために一時的に職場を離れる「自己啓発休職」、起訴されて身柄を拘束される、または該当従業員の就業が会社のイメージに関わる場合の「起訴休職」などもあります。 これらは法により定められているわけではなく、従業員の自己都合を会社側が承諾することで実施されます。
休職期間の上限は3か月から長くて3年が一般的
休職期間は企業ごとに異なりますが、上限は3か月から長くても3年が一般的であると考えることができます。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、休職期間として最も多い期間は、半年から1年で全体の22.3%でした。全体の75%が2年までとなっており、長くても3年までの企業が大多数を占めています。 休職期間については、休職事由や従業員の勤続年数が考慮されるケースが多く、企業の規模によっても異なります。具体的な期間については、企業の就業規則を確認するようにしましょう。
02休職期間を決定する判断基準
企業が休職期間を決定する際に、何を判断基準とできるでしょうか。ここでは、判断基準となる3つのポイントを解説します。
医師の診断書を確認する
業務外の怪我や病気で、該当従業員が業務に携わることが不可能な場合、医師の診断書を確認してから休職期間を決定することができます。そうすることで、病気や怪我の名称など休職の直接の理由や、必要とされる治療期間についても知ることができます。 昨今では、うつ病のようなメンタルヘルス不調による病気休職も増えています。休職の判断が非常に難しいデリケートなケースですが、従業員の主治医の診断書に加えて、産業医の診断書の提出について規定に含めておくことも良いとされています。産業医の場合、当人が受け持つ業務に関する知識もあるため、就労が不能であるか、どの程度の仕事ならできそうか、復職のタイミングに関しても、現場目線で判断できると考えられます。
休職者の勤続年数を考慮する
休職期間を決定するにあたり、従業員の勤続年数を考慮する場合もあります。休業期間が解雇猶予措置となることもあり、長年企業に貢献してきた貴重な人材に対して、猶予期間を長めに設定することができます。しかし、これは各企業が決めることであり、中には勤続年数にかかわりなく、一定期間の休職期間を設定しているケースもあります。
傷病手当金の支給期間を目安にする
休職期間を決定する判断基準として、傷病手当金の支給期間を目安にする方法もあります。業務外の負傷や病気に関しては、健康保険から傷病手当金を受け取ることが可能です。そして、その支給期間の限度が1年6ヵ月になります。そこで、この支給期間に合わせて、休職期間を1年6ヵ月に設定している企業も多くあります。
03休職期間中の取り扱いについて
休職期間中の給料の支払いや社会保険などの扱いはどうなるのでしょうか。ここでは、休職期間中の取り扱いについて解説します。
休職期間中の給料の支払い義務はない
休職制度は、法律ではなく企業が独自で導入する制度です。従って、休職期間中に企業が従業員に対して給料を支払う義務はありません。業務外の怪我や病気が原因の場合、従業員は健康保険から傷病手当金をもらうことができるので、その件についての情報を提供することができるでしょう。 もちろん、企業が任意で給料の支払いを行うことも可能です。なお、休職中の給料に関しては、就業規則に明記しておく必要があり、給料を支給することが規定されている場合は、支払い義務が発生します。
社会保険料は免除にならない
休職中も、従業員は社会保険の被保険者となるため、保険料の支払いが必要です。休職前は、会社が支払う分と被保険者が支払う分を合算してしましたが、休職中に給料が発生しない場合は、それができなくなります。従って、従業員が支払う分に関しては、別途徴収する必要が生じます。 この点に関しても、就業規則に明記しておくと良いでしょう。徴収方法として、従業員に毎月送金してもらう、会社が立て替える、傷病手当金を一旦会社が受け取り、社会保険料を差し引いてから従業員に支給するなどがあります。
休職者と適度なコミュニケーションを取る
休職期間中は、求職者と適度なコミュニケーションを取ることも大切です。求職者を孤立化させないことや、復職に関する相談ができるようにするためにも、連絡手段を用意する必要があります。ただし、報告義務が休職者の負担になることも考慮し、適度に行えるよう取り決めるようにしましょう。 例えば、月に1回ほど、上司や気心の知れた同僚と連絡を取り合うことができます。報告義務についての就業規則を設けることもできますが、休業事由が人によって異なるため、状況によって判断することが懸命だと言えるでしょう。
04休職期間満了後の対応
休職期間の満了が近づいたら、会社側はその件についての連絡を行います。では、休職期間満了後はどうなるのでしょうか。休職期間満了後の対応について解説します。
仕事ができそうなら復帰の支援に移行する
休職期間が満了したら、従業員の現時点での回復状況を考慮して、復職できるか判断します。従業員は主治医や家族に相談できますし、主治医や産業医の診断書を判断基準にすることも可能です。 従業員の回復具合によって、作業内容を変更したり、勤務時間を調整したりすることもできます。万全の状態で以前の業務に携わるのは困難であると判断した場合、短時間勤務を勧めることも考えられます。
復帰が難しそうなら退職手続きを検討する
休業期間満了までに、病気や怪我が回復しない場合は、復帰が難しいため退職手続きを検討できます。退職に関しては、就業規則に明記しておく必要がありますが、大抵の場合は、「以前の業務を通常通りに行える健康状態に回復していること」を復帰の条件とし、「休職期間満了時期までに復帰できない場合は、自然退職または解雇とする」などと定めています。
休職期間を延長する
休職期間がはじめから上限に設定されているとは限らないため、休職者の回復状況によっては、上限までを目安として延長することも可能です。医師の診断によって「あと1か月で回復する」とされる場合もあり、診断書を判断基準とできるでしょう。ただし、休職期間を延長する際は、復帰の目途が立っていることが大切です。 休職期間を延長すると決めた場合は、延長の期間や復帰条件、復職できなかった場合の対応、延長期間中の給料の有無について、文章として残しておくようにしましょう。
休職期間満了後の退職や解雇はトラブルになりやすい
休職期間満了後に、休職者が復帰できないと判断し、自然退職または解雇にすることがありますが、判断基準などが問題となり、不法解雇であると訴えられるケースも少なくありません。特に、うつ病などの精神疾患が、パワハラや長時間労働など業務上の原因も関係していると、会社側の責任も問われることになる場合があります。 会社側に責任がない場合は、就業規則に明記している通りに、自然退職または解雇が認められることになるでしょう。
05休職期間満了後の退職や解雇でトラブルにならないように企業ができること
企業は、労務に対して報酬を支払うことで成り立っているため、無期限の休職を許すわけにはいきません。そこで、休業期間満了後の退職や解雇でトラブルにならないように企業ができることについて解説します。
不当解雇にならないか確認する
従業員が休職期間満了までに復職できなかった場合の事前退職や解雇は、適法として認められています。しかし、例外もあるので確認する必要があります。セクハラやパワハラ、長時間労働や退職強要などが、休職者の精神疾患の原因と認められるケースでは、休職期間満了後の解雇も不当であるとみなされる場合があります。 また、医師が復帰可能であると診断しているにもかかわらず、企業側がそれを認めないで解雇するケースも、不当解雇として扱われることがあります。不法解雇の場合、後日になってから訴訟が起こることも考えられ、その際の賠償請求額は高額になる傾向にあるので注意が必要です。
就業規則の規定に従い退職または解雇通知を行う
就業規則の規定に従って、退職または解雇通知を行う必要があります。就業規則に、休職満了後は自然退職として扱うことが記載されている場合には、「就業規則〇条〇項により〇月〇日をもって退職扱いとなる」旨を伝えます。 解雇の場合もその旨を通知しますが、解雇の30日前に通知していない場合は、解雇予告手当を支払う必要があります。このように、自然退職と解雇では取り扱いに若干の違いがあるので、就業規則の作成の段階でよく考えておくと良いでしょう。
雇用保険の手続きを迅速に行う
休職満了後の退職や解雇の際に、雇用保険の手続きを迅速に行うことも、トラブル防止に繋がります。この手続きが遅れると、退職者は失業給付金の受け取りがスムーズに行えなくなり、企業との紛争へと発展することも考えられます。 そこで、退職が決まり次第手続きを開始し、退職理由の記載や必要な書類についての確認もしておくようにしましょう。
退職金を規定通りに支払う
退職金についての規定や慣行がある場合、休職満了後の退職の際にも、退職金の支払いが必要になります。この場合も、退職金の支払い期限や、休職期間を勤続年数に数えるかどうか、自己都合か会社都合かなど、就業規則に規定されている通りに取り扱い、支払いを行うようにします。支払い期限の遅れや計算の誤りは、トラブルの原因となる場合があるので注意しましょう。
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06まとめ
休職期間の決定方法や満了後の対応についてまとめました。多くの従業員を抱える企業にとって、休職やそれに伴うトラブルは避けることのできない問題です。しかし、無駄なトラブルによる被害を受けないためにも、就業規則の整備をしっかりと行い、休職期間満了後の扱いについて熟知するようにしましょう。