更新日:2026/06/01

業務分掌とは?メリットや作成手順について解説

業務分掌とは?メリットや作成手順について解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

業務分掌は、組織内における各部門や役職が担うべき業務の範囲・権限・責任を定め、文書化した仕組みです。整備することで、責任の所在の明確化や不正・ミスのリスク低減など、組織運営における様々な課題の解消・軽減につながります。本記事では、業務分掌の基礎知識から関連用語との違い、作成手順まで解説します。

 

01業務分掌とは?

業務分掌とは、組織内における各部門や役職が担う業務の範囲・権限・責任を明確に定め、文書化した仕組みのことです。

企業が成長し、組織の規模や業務の複雑さが増すにつれて、「誰が何をすべきか」「この判断は誰が下すべきか」といった問いへの明確な答えが、より重要になります。業務分掌は、こうした問いに答えるための土台であり、各部門・各役職の役割を可視化することで、業務の重複や抜け漏れを防ぎ、組織全体の効率的な運営を支えます。

業務分掌は、多くの場合、「業務分掌規程」などの社内規程として文書化されます。規程には、各部門が担当する業務の種類、意思決定に必要な権限の範囲、および成果に対する責任の所在が記載されます。これにより、日常業務における判断基準が明確になるだけでなく、部門間の連携や引き継ぎもスムーズになるのです。

また、業務分掌は内部統制の観点からも重要な役割を果たします。権限と責任の所在を明文化することで、不正や誤りが発生した際の原因究明や再発防止策の検討がしやすくなります。コーポレートガバナンスが重視される現代において、業務分掌の整備は企業の信頼性を高めるうえでも欠かせない取り組みといえるでしょう。

職務分掌との違い

業務分掌と混同されやすい用語に「職務分掌」があります。両者は実務上、近い意味で使われることもありますが、本稿では、業務分掌を「部門・組織単位の役割分担」、職務分掌を「役職・担当者単位の職務分担」として区別します。

業務分掌は、部門・組織単位での役割と責任の範囲を定めるものです。「営業部は新規顧客の開拓および既存顧客の維持管理を担う」といったように、部やグループといった組織単位を主語として、その業務範囲を規定します。

一方、職務分掌は、役職・担当者単位での職務の分担を定めるものです。「営業部長は営業部の目標設定、予算案の作成、部下の評価・育成を担う」のように、特定の役職者や担当者が担うべき職務内容と責任範囲を明示します。

つまり、両者の関係は「組織レベルで大枠を定めるのが業務分掌、役職・担当者レベルで詳細を定めるのが職務分掌」と整理できます。実際の規程整備においては、業務分掌で部門の役割を定め、それを補完する形で職務分掌を作成するという二段構えで整備する企業もあります。

セグリゲーションとの違い

「セグリゲーション・オブ・デューティーズ(Segregation of Duties:SoD/職務分離)」も、業務分掌と関連して語られることの多い概念ですが、その目的と文脈は異なります。

セグリゲーションとは、一連の業務プロセスにおいて、承認・実行・記録・照合といった各工程を複数の担当者に分散させることで、不正や誤りの発生リスクを低減する内部統制上の考え方です。例えば「発注の承認者」と「支払いの実行者」を同一人物が兼ねることを避けるといった運用がこれにあたります。主に会計・経理・情報システムなど、内部統制やリスク管理の文脈で用いられます。

一方、業務分掌は、不正防止に限らず、業務効率の向上・責任の明確化・組織運営の円滑化など、より広い目的のために業務の範囲と責任を定義するものです。

両者の関係を整理すると、セグリゲーションは業務分掌を設計・運用する際に取り入れるべき内部統制上の原則のひとつと位置づけられます。業務分掌の枠組みの中にセグリゲーションの考え方を組み込むことで、不正や誤りのリスクを抑制しながら、相互牽制の効いた組織運営を実現しやすくなります。

 

02業務分掌を行うメリット

業務分掌を整備することで、組織運営における様々な課題の解消・軽減につながります。ここでは、主なメリットを3つ紹介します。

責任の所在を明確にできる

業務分掌を整備することで、各部門・各役職が担うべき業務の範囲と責任の所在が明確になります。

責任の所在が曖昧な組織では、問題が発生した際に「誰が対応すべきか」が不明確になりがちです。スムーズに対応部門が決まらないと、対応の遅れが生じ、問題の解決が後手に回るリスクがあります。業務分掌によって責任の範囲を文書化しておくことで、このような状況を防ぎやすくなり、問題発生時にも迅速かつ適切に対処しやすくなります。

不正やミスのリスクを低減できる

業務分掌を通じて権限と責任を適切に分散させることで、不正やミスが発生するリスクを低減できます。

金融庁が公表する内部統制の基準では、統制活動に「権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続」が含まれるとされています。また、財務報告の信頼性に関しては、明確な職務の分掌や内部牽制などを整備し、組織内の各レベルで適切に分析・監視していくことが重要とされています。

業務分掌は、こうした内部統制上の要請に応える実践的な手段のひとつです。承認・実行・確認といった工程を異なる担当者に割り当てることで相互牽制の仕組みが生まれ、不正やミスの早期発見にもつながります。

▼参考:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準|金融庁

業務負担の偏りを把握しやすくなる

業務分掌を整備することで、各部門・各担当者の業務量や役割の分配状況を客観的に把握しやすくなります。

業務の割り当てが明文化されていない組織では、特定の部門や個人に業務が集中していても、その実態が見えにくい傾向があります。業務分掌によって担当範囲を可視化することで、負荷の偏りを早期に発見し、人員配置や業務の再分配といった適切な対策を講じやすくなります。

また、業務分掌で明らかになった役割や業務量は、人事評価や採用計画を検討する際の参考情報としても活用できます。各部門の業務量と担当人数のバランスを定期的に見直すことで、持続可能な組織体制の構築にもつながるでしょう。

 

03業務分掌を行う際の注意点

業務分掌は、整備するだけでなく、自社の実態に合わせて設計・運用することで実効性が高まります。導入・運用にあたって押さえておきたい注意点を紹介します。

規程外の業務や例外対応のルールを決めておく

業務分掌を整備する際は、規程に明記された業務だけでなく、想定外の業務や例外対応が発生した場合のルールもあわせて定めておくことが重要です。

実際の業務では、部門間をまたぐ突発的な対応や、既存の規程では担当が定まらない業務が生じることは避けられません。こうした場面でのルールが不明確なままでは、現場の判断に委ねられ、対応の遅れや責任の所在を巡る混乱を招く恐れがあります。

例えば、「規程外の業務が発生した場合は上長に判断を仰ぐ」「複数部門にまたがる案件は主管部門を事前に定める」といったルールを明文化しておくことで、現場が判断しやすい環境を整えることができます。想定外の事態にも組織として一貫した対処ができるよう、例外対応のフローまで含めて設計することを意識しましょう。

自社の業務実態に合った形で設計・運用する

業務分掌は、自社の規模・業種・組織構造といった実態に即した形で設計・運用することが求められます。

金融庁の「内部統制報告制度に関する事例集」では、内部統制の構築・評価・監査にあたって、企業の状況等に応じた工夫を行い、有効性を保ちながら企業の実態に合った効率的な内部統制を整備・運用する考え方が示されています。業務分掌の整備においても、こうした考え方が参考になります。

他社の規程や一般的なひな形をそのまま流用すると、自社の業務フローや組織構造と合わない箇所が生じ、現場での運用に支障をきたすことがあります。そのため、形式的に整った規程を作ることだけを目的にするのではなく、実際の業務に即して機能する規程にすることが重要です。自社の現状を十分に把握したうえで、現場の実態に合った業務分掌を設計するよう心がけましょう。

▼参考:内部統制報告制度に関する事例集 ~中堅・中小上場企業等における効率的な内部統制報告実務に向けて~|金融庁

 

04業務分掌の作成手順

業務分掌は、基本的な手順に沿って作成することで、現場に即した実用的な規程として整備しやすくなります。ここでは、作成から運用までの基本的な4つのステップを紹介します。

現状の業務を洗い出す

現状の業務を洗い出す

業務分掌を作成する第一歩は、自社で行われている業務の全体像を把握することです。どの部門が何を担っているのかが明確になっていなければ、責任と権限を適切に割り当てることはできません。

業務を洗い出す際は、既存の資料や日報、業務マニュアルなどを参考にしつつ、現場の担当者からヒアリングを行いながら進めるのが効果的です。その際、業務の流れ(プロセス)を意識しながら整理することが重要です。業務の一覧を作成するだけでなく、各業務がどのような順序で、誰の手を経て処理されているかまで把握することで、役割分担の抜け漏れや重複を発見しやすくなります。

Schoo for Business授業『業務改善のはじめ方 プロセスの見える化|第1回 なぜ業務プロセスを見える化する必要があるのか 』に登壇する土方雅之先生は、業務プロセスは「本質的に目に見えない」ものだと指摘しています。仕事の進め方は各社固有であり、見える化されていなければ、社内でも十分に共有されていない場合があります。業務分掌の作成においても、まず現状のプロセスを丁寧に可視化することが、その後の責任・権限の整理につながります。

経営陣や各部門・チームの担当者にヒアリングする

業務の洗い出しと並行して、経営陣や各部門・チームの担当者へのヒアリングを行いましょう。

ヒアリングでは、各部門が実際に担っている業務の内容や範囲、他部門との連携が生じる業務、意思決定の権限が曖昧になっている領域などを確認していきます。経営陣へのヒアリングでは、組織全体の方針や各部門への期待役割を把握し、現場担当者へのヒアリングでは、日常業務の実態や課題感を引き出すことが重要です。

文書や規程だけでは見えてこない実態を丁寧に拾い上げることで、現場に即した業務分掌を設計しやすくなります。

部署・チームごとの責任と権限を整理する

ヒアリングで得た情報をもとに、部署・チームごとの担当業務、責任の範囲、意思決定の権限を整理します。

このとき、複数の部門が関与する業務については、主担当となる部門を明確にしておくことが大切です。また、業務の承認権限についても、「誰が何の範囲で判断できるか」を具体的に定めることで、意思決定を円滑にし、現場が判断しやすい環境を整えられます。

整理の過程では、担当が重複している業務や、どの部門にも属していない業務が見つかることがあります。こうした課題を整理の段階で解消しておくことが、実効性のある業務分掌を作るうえで重要なポイントとなります。

業務分掌表にまとめ、周知・見直しを行う

整理した内容を業務分掌表として文書化し、社内への周知と継続的な見直しを行います。

業務分掌表は、部門名・担当業務・権限の範囲・責任者などの項目を一覧で確認できる形式にまとめるのが一般的です。作成後は、全社員が参照できる環境に置くとともに、内容を正確に理解してもらうための説明の機会を設けることが望ましいです。特に管理職や各部門のリーダーに対しては、運用上の注意点もあわせて共有しておきましょう。

また、組織変更や業務プロセスの変化が生じた際は内容を随時更新し、定期的な見直しの機会を設けることで、規程と実態のズレを防ぎやすくなるでしょう。継続的に見直しを行うことで、実態に即した業務分掌を維持しやすくなります。

 

05業務分掌を効率的に作成・管理する方法

業務分掌の整備は、ゼロから作り上げようとすると多くの時間と労力がかかります。既存のサンプルやツールを活用することで、作成・管理の負担を軽減しやすくなります。

規程サンプルを参考にして必要項目を整理する

業務分掌規程を初めて作成する場合は、既存のサンプルや他社事例を参考にしながら必要項目を整理すると効率的です。

業務分掌規程には一般的に、目的・適用範囲・各部門の名称と役割・担当業務の内容・権限の範囲・責任者といった項目が含まれます。サンプルを活用することで、こうした基本的な構成要素を確認しながら、自社の実態に合わせた内容へとカスタマイズしやすくなります。

ただし、サンプルはあくまでも参考として活用するにとどめておきましょう。業種・規模・組織構造によって必要な項目や粒度は異なるため、自社の業務フローや組織構造と照らし合わせながら取捨選択を行う必要があります。

Excelなどで一覧化し、更新しやすい形で管理する

業務分掌の内容は、Excelなどの表計算ソフトやスプレッドシート形式で一覧化しておくと内容を把握・更新しやすいです。

部門名・担当業務・権限の範囲・責任者などの項目を列ごとに整理することで、全体像を俯瞰しやすくなるほか、組織変更や業務の追加・変更が生じた際にも、修正が必要な箇所を特定しやすくなります。また、更新履歴を記録しておくことで、いつ・何が変更されたかを追跡しやすくなり、規程の信頼性を保つうえでも役立ちます。

管理にあたっては、社内の共有ドライブなどに格納し、関係者が最新版を参照できる状態を保つようにしましょう。担当者しかアクセスできない状態では周知や運用に支障が生じるため、閲覧権限の設定にも注意しながらの運用が求められます。


 

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07まとめ

業務分掌は、各部門を中心に、必要に応じて役職ごとの業務範囲や責任の所在を明文化し、組織運営の土台を整える仕組みです。責任の明確化や不正リスクの低減、従業員の役割理解の促進など、幅広いメリットがあります。作成にあたっては、現状の業務を丁寧に洗い出し、ヒアリングを重ねながら自社の実態に即した形で設計することが重要です。

また、一度整備すれば終わりではなく、組織の変化に合わせて定期的に見直すことで、実効性のある規程として維持しやすくなります。自社の組織運営上の課題を整理しながら、業務分掌の整備・活用を進めていきましょう。

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