行動特性とは?定義から人事評価・教育に活用する方法まで詳しく解説
企業が成果を挙げ、事業を継続させるためには人材育成や効率的な人材活用が求められます。いろいろな価値観を持つ多様な人材が組織を構成するのが当たり前となっていく中、人間の行動パターンを分析し、企業における採用や教育の場で活用できる行動特性について詳しく解説します。
- 01.行動特性とは?
- 02.DISK理論による行動特性の4つの分類
- 03.行動特性を活用するメリット
- 04.行動特性を活用するデメリット
- 05.まとめ
01行動特性とは?
行動特性とはアメリカで1970年代に生まれた概念で、個人が持つ行動原理やその背景となる考え方のことを指します。 行動特性は幼少期から現在までの生育環境や教育で培われ、1つ1つの行動の理由や行動における状況などを分析することで可視化できるのです。 日本では1990年~2000年にかけて多くの企業で導入され、適性検査の1つとしてよく用いられています。
行動特性とコンピテンシーとの違い
コンピテンシー(competency)とは、優れたスキルや豊富な経験を持ち高い生産性を挙げることのできるハイパフォーマーに共通して見られる、高い成果につながる行動特性のことです。 日本においては英語のcompetencyが、行動特性に着目した評価手法・制度の核心となる概念として紹介されたため、行動特性と翻訳されることが多いのですが、コンピテンシーはハイパフォーマーの行動特性という意味を指すため、行動特性の1つの種類として捉えるのが望ましいといえるでしょう。
02DISK理論による行動特性の4つの分類
DISK理論とは行動特性を基に人を4つにタイプ分けするための理論で、1928年にアメリカの心理学者ウィリアム・モールトン・マーストン博士の著書「普通の人々の感情」により提唱されました。 その後DISK理論を基に、産業心理学者ウォルター・バーノン・クラーク博士が行動特性分析を行うためのツールを開発しています。 企業においてはDISK理論を用いた行動特性分析を行うことで、組織に所属するメンバーが4つのうちどのタイプかを理解し、コミュニケーションや指導、また人員配置を適切に行うことができるでしょう。 DISK理論における4つのタイプとはどのようなものかそれぞれご紹介します。
Dominanceタイプ(主導型)
日本人の1割がDominanceタイプと言われ、直接的で判断が早い傾向を持ちますが、主な特徴は次の通りです。
- ・早く成果を出そうとする
- ・行動を起こすのが早い
- ・困難な課題に取り組むことができる
- ・プレッシャーに強い
- ・意思決定が速い
- ・現状を改善する意識が高い
- ・権限を求める
人からコントロールされることを好まず伝えたいことをはっきりと言うことができる反面、ルールや全体のチームワークにはあまり関心のないタイプと言えます。
接し方
チャレンジしたくなるような目標を明示し、プロセスにおいては業務に対する工夫を、また成果においてはその高さを褒めてマネジメントすることでより高い目標にまい進するでしょう。
指導方法
「高い目標を掲げること」「本人の意思を尊重し任せること」の2つがポイントです。 高い目標を掲げる際は昇進・昇格以外にもセットで名刺の肩書やデスクの配置換えなどを行うとより効果的と言えるでしょう。 また業務においては本人が自ら考えて行動するようマネジメントし、相談や助言を求めてきた際は親身に対応するのが望ましいと言えます。
向いている業務
意思決定が早くそれを行動に繋げられる力も持っているため、マネジメントを行うのに向いていると言えるでしょう。
Influenceタイプ(感化型)
日本人の2割がInfluenceタイプと言われ、楽観的で社交的な傾向を持ちますが、主な特徴は次の通りです。
- ・積極的に人と関わることを好む
- ・明るくムードメーカー的な存在である
- ・感情表現が豊かである
- ・やる気を起こす環境を作ることができる
- ・人を励ますことができる
- ・楽観的である
- ・粘り強さや緻密性に欠ける
社交的で周囲を明るくすることができる反面、仕事の成果にあまり関心がなく人に厳しく接するのも苦手なタイプと言えます。
接し方
周囲からの見え方や評価を気にしているため人前で褒めたり、定期的にコミュニケーションを取り気にかけている姿勢を見せたりするとより前向きな行動に繋がるでしょう。
指導方法
「褒めること」「関心を持つこと」の2つがポイントです。 褒める際は上司が自分で褒めるのも良いのですが、経営陣や上層部の人が褒めているのを伝えるのがより効果的と言えるでしょう。 また積極的にコミュニケーションを取り、周囲がどのような期待をしているのかを具体的に伝えると高いモチベーションで業務に取り組んでもらえます。
向いている業務
速さで周囲の賞賛を受けやすいタスク作業や、数値で周囲に結果がはっきりと伝わる営業部門の仕事などに向いています。
Steadinessタイプ(安定型)
日本人の4割がSteadinessタイプと言われ、思いやりがあり協力的な傾向を持ちますが、主な特徴は次の通りです。
- ・マニュアルや慣例を大切にし間違いのない方法を実践する
- ・指示されたことを指示通りに忠実に行う
- ・忍耐力がある
- ・協調性がある
- ・聞き上手である
- ・安定した仕事環境で力を発揮し変化を好まない
チームワークを大切にし、チームメンバーにも協力的ですが、積極性はなく新しい物事への対応も苦手なタイプと言えます。
接し方
相談や援助可能な状況を前提とし、心理的安全性を確保してから業務にチャレンジさせると、ストレスを貯めることなくスムーズに業務に取り組んでくれるでしょう。
指導方法
「段階を踏んでチャレンジさせること」「手順や道筋を明示すること」の2つがポイントです。 一気にチャレンジさせるのではなく、安心できる環境で一歩一歩着実に業務をこなせるようサポートし、具体的な方法ややり方を丁寧に説明するようにすると、着実に成果に繋げることができるでしょう。
向いている業務
今までの慣例があり、マニュアルがしっかりと整えられた事務作業などの業務に向いています。
Conscientiousnessタイプ(慎重型)
日本人の3割がConscientiousnessタイプと言われ、緻密で正確な傾向を持ちますが、主な特徴は次の通りです。
- ・業務は細部までこだわって行う
- ・ミスや間違いのないよう確認を怠らない
- ・意見の衝突があった場合柔軟に対応する
- ・状況や活動に対して系統的、一貫性のあるアプローチをする
- ・メリット・デメリットを分析・検討した上で結論を出す
- ・上司に対して質問が多く納得しないと行動しない
人がどう感じているのかより論理やデータを重視して正確に業務を組み立てますが、自分の考えた方法論に批判を加えられると防御的になるタイプと言えます。
接し方
たくさんの質問は反抗ではなく、理解してから行動したいという気持ちの表れなのでそれに寄り添い、適切な根拠を示して指示を出すとスムーズに業務に取り組んでもらえます。
指導方法
「仕事の全体像を示す」「納得するまで質問させる」「リスクや失敗に対する許容範囲を具体的に示す」の3つがポイントです。 仕事の目的や全体像を理解できるよう質問を受けながら丁寧に説明し、リスクや失敗についても許容範囲を数値などで具体的に示すことで、安心して業務を行ってくれるでしょう。
向いている業務
論理的、また合理的に作業を進めるため、正確さを求められる経理や法務などの業務に向いています。
03行動特性を活用するメリット
企業において行動特性を活用するメリットを3つご紹介します。
マネジメントの標準化ができる
行動特性を利用したマネジメントを行うと、組織に所属する従業員の誰に対しても同じアプローチでマネジメントをすることができます。 そのため、マネジメントを受けるチームメンバーとしてはマネジメントにおける不平等感を感じにくくなり、上司としてはマネジメントを標準化できるため、効率よくチームメンバーをマネジメントし成果に結びつけることができるでしょう。
マネジメントの見える化ができる
行動特性を基にしたマネジメントを行うことで、上司と部下の行動特性上の関係性が可視化できるため、上司がマネジメントに行き詰った際は、さらに上層部の人が上司に対してアドバイスを行いやすくなります。 アドバイスを受ける上司の側も、行動特性を根拠にアドバイスしていることがわかるので、納得感を持ってマネジメントに取り組むことができるでしょう。
人材育成の効率化を図ることができる
全ての従業員の行動特性を把握し、それに基づいて人材育成を行うと、適切な接し方や指導方法がそれぞれの上司にとって理解しやすいものとなるため人材育成が効率化します。 また上司と部下の間に信頼関係が構築されるのも早くなるため、組織におけるチームワークの向上も図れるでしょう。
04行動特性を活用するデメリット
企業において行動特性を活用するデメリットも2つご紹介します。
企業文化に合わない
行動特性を用いたマネジメントや人材育成の手法は、全ての組織形態や企業風土に最適であるとは言い切れません。 例えば組織形態では、ピラミッド型の組織の場合上司がマネジメントを行い、部下はそれに従うといった役割分担ができているため、行動特性を用いたマネジメントは有効と言えますが、ホラクラシー組織のように役職や上下関係の存在しない組織の場合、管理やマネジメント業務自体がないため導入する必要がないのです。 企業で行動特性を活用したい場合は、自社の企業文化に合うかどうかを慎重に検討するようにしましょう。
導入しにくい
従業員の多い企業ほど全員の行動特性を事前に把握・分析するのは難しくなるでしょう。 新規や中途での採用、組織変更や人事異動をするたびにデータを更新していくのも管理上なかなか難しいことと言えます。 企業で行動特性を活用したい場合、現実的な運用方法まで考慮してから導入を進めるのが望ましいでしょう。
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05まとめ
行動特性とは個人が持つ行動原理やその背景となる考え方のことを指しますが、組織や企業文化に合う場合に従業員の行動特性を分析してマネジメントに導入すれば、マネジメントの標準化や見える化、人材育成の効率化などに繋げられることがわかりました。 ぜひ行動特性をうまく活用して、組織の活性化を図ってみてください。
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登壇者:坪谷 邦生 様株式会社壺中天 代表取締役
立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。