公開日:2021/07/20
更新日:2024/06/04

行動指針が企業にもたらすメリットや作り方を有名企業の事例とともに解説

行動指針が企業にもたらすメリットや作り方を有名企業の事例とともに解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

行動指針を策定することで、従業員に企業の方向性を指し示し、強い組織づくりが可能になります。しかし行動指針の他に、企業理念や行動理念など、混同されやすい言葉もあります。この記事では、行動指針の定義やメリット、策定方法や作り方を有名企業の事例とともに解説します。

 

01行動指針とは?関連する用語との違い

「行動指針」とは、特定の目標や目的を達成するために、組織や個人が守るべき方針やルールのことを指し、近年では、多くの企業で定義づけられているものになります。行動指針と混同されやすい言葉として、企業理念や行動理念などが挙げられます。ここでは、行動指針の定義、企業理念や行動理念など関連する用語との違いについて解説します。

行動指針は企業理念を達成するための規範となる「行動」

行動指針とは、企業理念を達成するための規範となる「行動」を明文化したもので、行動規範とも呼ぶことができます。企業活動は組織的に行うものですが、従業員一人ひとりの行動が企業を代表するものと捉えられる場合もあります。そこで、何かを行う際に、進むべき道や取るべき態度を決定するための基準として、行動指針が役立ちます。

行動指針とその他の類義語との違い

行動指針と似た言葉として、「企業理念」「行動理念」「行動規範」「クレド」といったものが挙げられます。ここでは、これらと「行動指針」との違いについて、解説していきます。

企業理念は企業が目指す社会での「在り方」

企業理念とは、企業が目指す社会での「在り方」を社内外に示すものです。創業者の思いや普遍の価値観など、企業が大切にしているものを明文化します。企業理念を「存在意義」「スローガン」「モットー」などと表現する企業もあります。企業理念は、企業が目指す目標を指し示したものであるのに対し、行動指針は具体的な行動まで落とし込んだものであると言えます。

行動理念は行動や判断の拠り所となる「考え方」

行動理念とは、行動や判断の拠り所となる基本的な「考え方」のことです。行動理念は、行動の理由付けとなり、何をすればいいかわからない場合に方向を指し示すことができます。また、従業員が間違った方向へ進み、チームがバラバラにならないための働きもします。行動理念と行動指針を、同じ意味で用いる場合もあります。

行動規範は方向性を示す「考え方」

「行動規範」とは、組織や個人が遵守すべき行動の基準やルールのことを指し、「倫理的な行動」や「コンプライアンス」「利害関係者への配慮」など、法律や社会的な期待に従って行動するための指針と言えます。組織内外での適切な振る舞いや判断基準を明確にし、一貫性のある行動を促進する役割を果たします。具体的な行動に関する指針を示す行動指針とは異なり、「行動規範」は広範な行動の基準や原則を示すものであると言えます。

▼行動規範について詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】企業における行動規範の重要性とは?その意味やメリットについて解説する

クレドは価値観や信念を示すための「表現」

“クレド

「クレド」とは、行動指針よりも広い観点から組織や個人の信念や価値観を表すもので、ラテン語で「信念」や「信条」を意味する言葉です。組織の文化やアイデンティティを反映し、その組織が重要視する価値観や信念を表現するものです。クレドは抽象的な概念や目標を捉えており、具体的な行動指針よりも高いレベルでの方向性を示す役割があります。どちらも似たようなコンセプトを持つものですが、行動指針は具体的な行動のルールを示し、クレドはより広範な価値観や信念を表現するものと言えます。

▼クレドについて詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】クレドとは?導入する目的からメリットまで詳しく解説

 

02行動指針が企業にもたらすメリット

行動指針を策定することで企業にもたらすメリットとして、大きく次の3つが挙げられます。

  • ・企業としてあるべき姿の基準ができる
  • ・従業員のモチベーション維持に繋がる
  • ・企業文化が醸成される

ここではそれぞれについて具体的に解説していきます。

企業としてあるべき姿の基準ができる

行動指針が企業にもたらすメリットとして、企業としてあるべき姿の基準を設けられることが挙げられます。企業理念や経営理念は、目指すべきゴールを指し示しますが、それだけでは従業員ごとに捉え方が異なる場合があります。これらを具体的な行動まで落とし込むことで、企業が理想とする行動をすべての従業員に理解させることができます。 また、行動指針は行動の有無で採点ができるため、従業員の評価や行動修正に繋げることができます。行動指針により従業員を具体的な行動へ導くことになり、企業としてあるべき姿へと近づくことになります。

従業員のモチベーション維持に繋がる

行動指針を定めておくことで、従業員のモチベーション維持に繋げることが可能です。行動指針は、従業員が何をすべきかを具体的に示しており、迷いが生じるような状況でも、企業が望ましいとする行動がとれるようになります。 行動指針に則った行動により企業から高い評価を受けると、従業員は高いモチベーションで業務に取り組むようになることが期待できます。また、周囲の従業員と同じ価値観を持つことで、絆を深めることにも繋がります。

企業文化が醸成される

すべての従業員が行動指針に則って行動するようになると、企業文化が醸成されるメリットもあります。企業ごとに雰囲気や印象が異なりますが、これは企業理念や行動指針に依存していると言われています。企業で定められた行動指針が、社内外のコミュニケーションの取り方や行動の基準となり、企業らしさに繋がると考えられます。

 

03行動指針の策定方法

行動指針の策定方法に特別な決まりはありませんが、企業規模によって大きく、次の3つの策定方法に分けることができます。

  • ・経営陣と人事部が主体となるトップダウン型
  • ・行動指針作成チームによるプロジェクト型
  • ・全従業員が参加するワークショップ型

経営陣と人事部が主体となるトップダウン型

経営陣と人事部が主体となり行動指針を決定し、すべての従業員に浸透させていく策定方法です。規模の大きな企業の場合、この方法を取らざるを得ない場合が多いと言えるでしょう。ただし、経営陣から一方的に押し付けられる印象を受けることも考えれれるため、アンケートやインタビューなどで従業員からの意見を取り入れるなど、工夫することも大切です。

行動指針作成チームによるプロジェクト型

経営陣と従業員で行動指針作成チームを作り、行動指針の策定を行う方法です。経営陣と従業員では意見が異なる場合もあるため、批判をせずに建設的な意見を出し合うことが重要なポイントとなります。プロジェクト型は、企業の規模を問わずに実施しやすい策定方法であると言えます。

全従業員が参加するワークショップ型

全従業員を巻き込んで行動指針を作成する方法で、比較的規模の小さい企業に適しています。すべての従業員の意見に耳を傾けることができ、納得感の高い行動指針を作成できると言えます。ただし、少数意見の取り扱いに注意を払い、不公平にならないようにする必要があります。

 

04行動指針を作る流れとポイント

ここでは、行動指針を作る際は、6つの段階に分けられます。

  • 1:企業のミッション・ビジョンを整理する
  • 2:業務を通して実現したいことをリストアップする
  • 3:企業としてやりたくないことをリストアップする
  • 4:企業として残すべきことをリストアップする
  • 5:リストアップされた項目を絞り込む
  • 6:行動指針となる言葉に書き換える

上記のステップを通じて、組織の特有の価値観や文化を反映した、具体的で効果的な行動指針を作成することができます。ここではそれぞれについて具体的に解説していきます。

1:企業のミッション・ビジョンを整理する

行動指針の基盤となるのは企業のミッション(使命)とビジョン(将来像)です。ミッションは企業が存在する意義や目的を表し、ビジョンは企業が将来達成したい姿を描写します。これらを整理することで、行動指針の方向性を明確にします。

2:業務を通して実現したいことをリストアップする

まず、業務を通して実現したいことを企業が理想とすることに合わせて明確にします。すでに決まっていることも、ここでリストアップすることで強固にすることができます。意見を集約する段階ではないため、できるだけ多くのアイディアをリストアップすると良いでしょう。企業が誕生した理由でもある、創業者の思いを盛り込むこともできます。

3:企業としてやりたくないことをリストアップする

次に、企業としてやりたくないこともリストアップできます。「これだけは避けたい」「自社の美意識に反する」ことをリストアップすることで、不祥事の防止に繋げることができるでしょう。また、実現したいことのリストアップで行き詰まった際に、発想の転換を行うことができます。

4:企業として残すべきことをリストアップする

組織の文化やアイデンティティを支える価値観や信念のリストアップも必ず行いましょう。組織が大切にするべき原則や基本的な行動基準を示すことで、組織内の一貫性を確保することができます。

5:リストアップされた項目を絞り込む

リストアップされた項目を絞り込みます。似たような内容や関連のあるものをグループにまとめて、数を調整するようにしましょう。行動指針が多すぎると、従業員にとって覚えるのが大変になり、浸透するのが困難になることが考えられます。

6:行動指針となる言葉に書き換える

行動指針の内容がまとまったら、行動指針となる言葉に書き換えます。シンプルで覚えやすい言葉に書き換えると、従業員に浸透しやすくなります。シンプルな言葉の下に、具体的な行動を書くことで、わかりやすくまとめることができるでしょう。詳細な決まりはないため、企業イメージに合ったデザインに仕上げることができます。

 

05行動指針を浸透させるためにできること

行動指針を「社長が勝手に作ったもの」とならないように、すべての従業員に浸透させる必要があります。ここでは、行動指針を従業員に浸透させるためのポイントについて解説します。

行動指針と実際の業務を照らし合わせる

行動指針が浸透するために、行動指針と実際の業務を照らし合わせることが大切です。行動指針が浸透しない理由として、理想が高過ぎていたり抽象的でいまいちピンと来なかったりすることが挙げられます。実際の業務を通して行動指針が実感できるようにするのが理想的です。

行動指針と人事評価を直結させる

行動指針を浸透させるために、行動指針に則った行動を人事評価に直結させることもできます。評価項目に行動指針に関するものを取り入れ、昇進や昇給に繋げることができるでしょう。また、表彰制度を設けて従業員の間で大々的に取り上げることもできます。こうして、従業員のモチベーションを向上させると同時に、行動指針について自ら考える機会を与えることになります。

表彰制度の導入

組織内で行動指針に従った優れた行動や実績を示すメンバーを称える仕組みとして、表彰制度の導入が挙げられます。表彰制度は、行動指針に従った行動が評価されることを示し、他のメンバーにポジティブな行動の模範を示す刺激となります。また、表彰制度は組織文化を育て、望ましい行動が評価される文化を醸成することが可能です。これにより、行動指針に従った行動が当たり前の行動となる傾向が高まります。

クレドカードの導入

クレドカードは、行動指針をコンパクトにまとめたカードのことです。メンバーが毎日確認することで、行動指針やクレドを簡潔に確認できる手段を提供します。これにより、常に指針を意識することが可能となります。また、新卒入社の社員や中途社員にとって、クレドカードは、組織の価値観を素早く理解する手助けとなります。

いつでも閲覧・確認できるようにする

行動指針を組織の文書やウェブサイトなど、従業員が容易にアクセスできる場所に掲示することも社内で浸透させるために効果的な方法の1つです。また、内部コミュニケーションツールや社内ポータルを活用して、行動指針を定期的にリマインドすることで社内浸透させることができます。

 

06有名企業が定める行動指針の例を紹介

最後に、有名企業が定める行動指針の例を2つ紹介します。

「楽天グループ株式会社」の行動指針

楽天グループ株式会社は、すべての従業員が実行する価値観、行動指針として「楽天主義」を定めています。

  • ブランドコンセプト
  • ・大義名分 -Empowerment-
  • ・品性高潔 -気高く誇りを持つ-
  • ・用意周到 -プロフェッショナル-
  • ・信念不抜 -GET THINGS DONE-
  • ・一致団結 -チームとして成功を掴む-
  • 成功のコンセプト
  • ・常に改善、常に前進
  • ・Professionalismの徹底
  • ・仮説→実行→検証→仕組化
  • ・顧客満足の最大化
  • ・スピード‼スピード‼スピード‼

「ブランドコンセプト」として、5つの価値観を四文字熟語を使って定めています。そして、ブランドコンセプトを実現するための「成功のコンセプト」が、行動指針に当たります。行動指針がすべての従業員の判断軸となり、強い組織を生み出すことに成功しています。

 
参考:楽天主義 | 楽天グループ株式会社

「サッポロビール株式会社」の行動指針

サッポロビール株式会社は、「カイタク」をキーワードとして行動指針をまとめています。

  • カイタクしよう
  • ・カイタクしよう、心を動かすアイデアを
  • ・カイタクしよう、お酒の次の未来を
  • ・カイタクしよう、深く愛されるブランドを
  • ・カイタクしよう、社会との共鳴を

かつてはお店で味わうものだった生ビールを、家庭でも楽しめるようにしたサッポロビール。時代の変化とともに人々の時間の使い方が大きく変わる中、新しいお酒のカタチを「カイタク」し続ける姿勢を、全従業員に指し示す行動指針となっています。

参考:企業理念体系・ビジョン | サッポロビール株式会社

「株式会社ローソン」の行動指針

大手コンビニエンスストアチェーンのローソンでは、行動指針として、「ローソンWAY」を定めています。

  • ローソンWAY
  • ・マチ一番の笑顔あふれるお店をつくろう。
  • ・アイデアを声に出して、行動しよう。
  • ・チャレンジを、楽しもう。
  • ・仲間を想い、ひとつになろう。
  • ・誠実でいよう。

ローソンでは。グループ理念として「私たちは”みんなと暮らすマチ”を幸せにします」、ビジョンとして「目指すは、マチの”ほっと”ステーション」を定めています。その上で行動指針として「ローソンWAY」が存在していますが、社内外に対して、一貫性のある行動指針となっていることがわかります。

参考:グループ理念・ビジョン・ローソンWAT | 株式会社ローソン 企業情報

「ザ・リッツ・カールトン」の行動指針

マリオット・インターナショナルが世界でチェーン展開するホテルブランド「ザ・リッツ・カールトン」では、全従業員の行動指針として、以下を定めています。

  • サービスの3ステップ
  • 1.あたたかい、心からのあいさつを。お客様をお名前でお呼びするよう心がけます。
  • 2.お客様のニーズを先読みしおこたえします。
  • 3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。
  • ”We Are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen”
  • リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

    私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだそして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

    リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

従業員に対しては、これらの行動指針が記載されたクレドカードが配られています。従業員はこれらに該当することであれば、どんなサービスを提供しても良く、1日「2000ドルの決裁権」が渡され、2000ドルの範囲内であれば、自分の判断で行動することができます。


 

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07まとめ

行動指針を策定するメリットや策定方法、浸透させるためのポイントなどを有名企業の事例を含めてまとめました。行動指針を単に提示するのではなく、従業員に浸透させる工夫をすることで、企業にとっての原動力にすることができます。有名企業の事例を参考にしながら、自社にとって最適な行動指針を策定しましょう。

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    株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長 / 組織開発アドバイザー STANDBY 代表

    1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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