企業における行動規範の重要性とは?その意味やメリットについて解説する
行動規範は企業において経営では重要な意味のある概念です。本記事では、行動規範の重要性や行動規範策定におけるメリットについて解説しています。行動規範が企業にはどのようなメリットを生むかを理解し自社の行動規範策定を実施していきましょう。
- 01.行動規範とは
- 02.行動規範を策定する企業のメリットとは
- 03.行動規範を定着化させる方法
- 04.有名企業における行動規範の実例とは
- 05.まとめ
01行動規範とは
行動規範とは、企業が企業として存続し継続的運営を行うために適用される法律、基準、法的リスクへの対応を行う意味を持ちます。現在では、グローバルに活動をする企業も増え、従来の法律だけではなく国際基準の遵守も行動規範の中に盛り込む必要が出ています。このように企業が守るべき事柄を行動規範に定め、企業、従業員の遵守を促進し活動していると理解しておきましょう。
行動規範の基本原則
行動規範には、基本原則と呼ばれる4つの概念があります。この4つの概念を基本として各社により行動規範を策定しています。そのため企業が作成する行動規範は、この4つと同じではない場合もあります。
- (1)人権(世界人権宣言に基づく):人権の保護、人権侵害への加担の禁止を行う
- (2)労働(ILOの原則に沿った):結社の自由の保護、強制労働・児童労働・差別の廃止
- (3)環境:生態系を守る責任ある行動を行い環境にやさしい技術を推進する活動
- (4)反汚職:恐喝や贈収賄を含めたあらゆる汚職を防止する活動
多くの企業が、上記4点の基本原則をもとにさまざまな行動規範を策定しています。行動規範の策定については、法令で定められている項目があるのではなく、あくまで各社での守るべき行動規範を策定している点も理解しておきましょう。
参考:東京商工会議所 「企業行動規範」
行動規範を定める意義
行動規範を定めることは、企業が企業として存続し継続的運営を行うための基準となります。基準を定めることで、企業が目指す方向性や従業員がどういった行動をしていくべきかが明確になり企業全体が統一化された活動ができます。このように企業運営を行う上で、行動規範を定めることは企業存続のためにも大きな意味と意義を持つことになります。
企業倫理との違い
行動規範の類似用語に企業倫理があります。企業倫理とは、企業活動上で最重要かつ守るべき基準となる考え方を示します。例えば、売上を上げることや利益追求が企業倫理にあたります。それに対して行動規範とは企業が守るべき法令など遵守する企業存続そのものにあたるため、企業倫理よりも広義の意味を持つことになります。
02行動規範を策定する企業のメリットとは
次に行動規範を策定することで起きる企業のメリットについて、より深く解説します。行動規範を策定することで、どのような企業メリットが起きてくるかを理解することは、今後、行動規範を策定するかどうかを決める上でも重要な項目です。
あるべき姿の可視化が進む
行動規範を策定する際には、企業が守るべき法令や目指す姿についての棚卸や整理を行います。この棚卸は、簡単ではありません。企業の今後を見据えた長期的な視点でのあるべき姿を議論し追求することで、今までにはなかったあるべき姿の可視化を実現します。今まではこうであったという概念を捨て、今後は、こうあるべきであるという企業の姿を整理することは企業成長においてなくてはならない要素です。
従業員への組織文化の浸透が促進される
行動規範を策定すると、従業員への周知を行い、企業文化、風土としての定着を促進する必要があります。この一連の活動から、組織のあり方やあるべき姿の理解を促進させ、組織としての姿を周知、定着させ行動に結び付けていきます。この繰り返しを行うことで、組織文化の浸透や定着が促進されて行動規範による組織変革が行われます。
企業ブランド力強化による企業活動の拡大
行動規範策定後には、従業員だけではなく顧客や取引先へも周知を行います。この活動を通じて企業ブランド力の浸透や強化がなされ、企業の信頼度向上に結びつき結果として企業活動の拡大にも期待できます。この関係性は、策定された行動規範が遵守されることで初めて起きることであることを理解しておく必要があります。
従業員のモチベーションアップによる離職率の低下
行動規範の策定は、従業員のモチベーションアップにも大きな影響を与えます。企業のあるべき姿が明確になり、どう行動するべきかを理解することで、従業員による企業理解や信頼の促進がはかられます。その結果、自社で働くことへの誇りを感じ企業の一員であることの満足度が向上することは、意欲的な業務遂行に影響し長期的な視点での離職率低下にも大きな意味を持ちます。
03行動規範を定着化させる方法
次に、行動規範を定着化させる方法について解説します。行動規範の定着化には、時間が必要であるなどの課題もあるため、さまざまな方法をあらかじめ検討し対策や準備を行うことも必要です。解説している項目を単体ではなく、複合的に行える仕組み作りを実施していきましょう。
経営者からのトップメッセ―ジ
行動規範の策定後には、経営者自らが自分の言葉で策定の目的や意義、内容について説明する必要があります。行動規範を定めた最終責任者は経営者です。経営者が、どのような思いを込めて策定しているかを従業員に説明し理解してもらうことが必要です。従業員が理解できる言葉を使い、その思いを率直に伝えることで、意義や意味、背景を従業員が理解することは最も重要です。
繰り返し発信することが大切
一度の説明で行動規範に込められた思いを全て理解することは難しいと考えておきましょう。難しいからこそ、繰り返し発信をし続けることも必要な項目です。全社朝礼や会議の冒頭で、行動規範を取り上げて解釈や要約、注意点などを説明すると同時に、社内に掲示するなど常に意識できる環境を構築することを意識し施策に盛り込んでおきましょう。
推進体制の構築による推進活動の実施
常に経営者が行動規範の説明をし続けることはできません。行動規範の定着化を行うには促進する体制を整え、そのメンバーを中心に促進活動を実施する必要があります。掲示物としての準備、社内メンバーへの説明や解説など、計画的な理解促進などの活動は、推進体制の中で計画書を策定し、その計画書に準じた活動を行うことで実施していきます。
浸透度合いの計測とPDCA実施による見直しの実施
推進体制の役割の1つに浸透度合いの計測があります。アンケートなどを実施し、理解度や定着度合いの計測を行います。この計測結果をもとに、PDCAサイクルを回し定着化の活動を見直ししていきます。時には、策定した行動規範そのものを見直す必要性が出る場合もあります。その場合には、経営層を含んだメンバーで検討し、行動規範そのものを見直すなどの対策も講じていきます。
04有名企業における行動規範の実例とは
次に行動規範を策定した結果、成功した有名企業の行動規範(行動指針)を紹介します。成功事例に学ぶことで、自社の行動規範をどう策定するかの参考にできます。また、インターネット上でも検索が可能です。自社の業種や業態に近しい企業の事例を参考に行動規範を策定していきましょう。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社では、「トヨタウェイ2020」と題した100年に1度の変革期を業界トップとしてリードしていくこと、そして、次の100年、その先の100年も自動車を中心とした業界で幸せを量産していくというコンセプトを設け行動規範(行動指針)を策定しています。
- (1)内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
- (2)各国、各地域の文化・慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
- (3)クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
- (4)様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
- (5)労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
- (6)グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
- (7)開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
東京ディズニーリゾート
夢の国、東京ディズニーリゾートでは、全てのゲストが安全に楽しんでもらえるコンセプトをもとに行動基準を設けています。全従業員が、夢を提供する役割を担うメンバーとして、行動基準をもとにしたサービスを提供しています。
- (1)Safety(安全)
- (2)Courtesy(礼儀正しさ)
- (3)Show(ショー)
- (4)Efficiency(効率)
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■資料内容抜粋
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・自己啓発への活用方法 など
05まとめ
本記事では、行動規範をテーマに行動規範を策定することによる企業メリットを始め、定着化させるための方法について解説しています。行動規範というと、非常に難しいものをイメージすることもありますが、企業のあるべき姿を定義することによる企業メリットは大きく、企業成長や企業ブランド力に大きな期待が持てるものです。定着化までには時間が掛かる行動規範ですが、定着化が行われることで企業の大きな成長につながるメリットに変えられるものではありません。ぜひ、本記事を参考に自社における行動規範策定を実施してください。
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登壇者:小金 蔵人 様株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長 / 組織開発アドバイザー STANDBY 代表
1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。