企業における人材育成のポイント|目標や計画の立て方を解説

労働人口が減少している今の時代、優秀な人材を採用だけで確保することは難しく、企業内から人材育成をしていくことの重要度は増しています。人材育成に力を入れたいけれど、どうしたら良いのかわからないとお悩みの経営者、育成担当者の方は多いのではないでしょうか。 この記事では人材育成の目的とポイントをご紹介します。ポイントを押さえて効果的に人材を育成していくことで課題を解決し、企業力の底上げを行っていきましょう。
- <目次>
- 企業における人材育成の目的とは
- 人材育成の計画の立て方
- 1.長期目標や経営戦略から必要な人材像を定義する
- 2.人材像から必要なスキルを洗い出す
- 3.現状を把握する
- 4.人材育成計画を立てる
- 人材育成の目標設定方法
- 目標設定の方法
- 評価制度の整理
- 人材育成のポイント7つ
- 1.適切な育成手法を選ぶ
- 2.仕組みづくりも念頭におく
- 3.管理職と人事が連携して行う
- 4.社員が自発的に学ぶ環境を整える
- 5.成功体験を与えることで人材育成を加速させる
- 6.周知する努力も忘れずに
- 7.PDCAを回していく
- まとめ
企業における人材育成の目的とは
人材育成の目的とは、社内人材のスキルや能力を向上させて、企業の業績を上げていくことです。
人材育成とは、ただビジネススキルを身につければ良いというわけではありません。会社の経営方針や将来的な展望を見据えた上で、必要となる能力開発を行っていく必要があります。
また社会全体で人材不足が問題となっている昨今、企業が求める人材像の押しつけになってしまっては、結果的に人材の流出につながってしまう可能性があります。
効果的な人材育成のためには、社員一人ひとりのキャリアプランとのすり合わせや、働きがいを高めるための仕組みづくりも合わせて行っていく必要があります。
人材育成の計画の立て方
人材育成は企業の目標や経営戦略を見据えた上で、計画を立てる必要があります。以下の順序で考えていくことがおすすめです。
1.長期目標や経営戦略から必要な人材像を定義する
企業によって目指す方向は様々で、それによって必要な人材も変わってきます。
例えば、将来的にマネージャー層を増やしたいという場合と、新規事業の立ち上げをしていける人材を育成したいという場合では、必要なスキルが異なるでしょう。
まずは自社にとって必要な人材を明確にすることから始めましょう。
2.人材像から必要なスキルを洗い出す
必要な人材像を定義したら、そのために必要なスキルや能力を洗い出していきます。
その際、人材像に当てはまるもしくは近い社員をモデルケースとして設定することで考えやすくなります。モデルケースとなる人物のスキルや、どのようにしてそのスキルを身につけたのかということを分析していくと、必要なスキルやそのために何をすべきかが見えてきます。
3.現状を把握する
現在の人材状況と、将来的な人材育成像を比較することで、今後やるべきことが見えてきます。 現状把握のためには、経営層〜現場までヒアリングをしていくことが重要です。立場によって、抱いている課題感は異なってきます。それらのすり合わせをしていくことで、社内全体を巻き込んだ人材育成につながります。
・経営層へのヒアリング
人材育成とは将来的に企業の業績を上げていくことが目的であるため、経営層の考えや課題感から人材育成の軸を定めていくことが重要です。
経営層には会社全体を見通して、長期的な目線での課題感をヒアリングしていきましょう。長い目で見て企業に必要な人材像と、現状のギャップはどこにあるのか明確にしていき、その後の計画の土台づくりを行っていきます。
・管理職へのヒアリング
管理職には中期的な目線で見た課題感をヒアリングしていきましょう。具体的には、1~2年単位での企業目標に対する人材育成の問題点や不足点などです。
部署によっても抱いている人材育成の課題は異なってきます。全体を見てバランス良くヒアリング対象を選んでいきましょう。
・現場へのヒアリング
リーダー層や若手社員には、現場における人材育成の課題をヒアリングしていきます。目の前の目標や今期のチーム目標の達成などが求められるため、課題感も差し迫ったものである可能性が高いです。
経営層や管理職へのヒアリングの結果定めた人材像とは遠いものであることも多々ありますが、現場の声を聞くことは、効果的な人材育成には不可欠です。
例えば、現場課題として長時間労働が挙げられるのであれば、まずはそちらを解決しないとそもそも人材育成に当てられる時間がない、という事態になってしまいます。
その場合は、業務効率化を図ることで労働時間の短縮ができないか、業務配分が適切にできているのか、などを先に考えていく必要があります。
注意すべきポイントとしては、企業の人材育成で解決できる課題と、個々の課題を混同しないようにすることです。
1つ1つの課題がどのような要因で生じているのか、人材育成によって解決していけるのかを明確にすることを念頭においてヒアリングしていきましょう。
4.人材育成計画を立てる
必要な人材像とスキル、そして現状の課題感が明確になったら、計画を立てていきましょう。
目指すべき人材像と現状のギャップを、どのくらいの期間でどのように埋めていくのかを考え、計画づくりをしていきます。その際には、最初に長期での計画を立てて、そこから中期、短期に落とし込んでいくようにしましょう。
ポイントとしては、初めから綿密な計画づくりを目指さないことです。実際に人材育成に取り掛かり始めると、新たな課題が生じたり、計画の修正が必要になったりします。
まずは長期での計画を立て、実行可能な粒度まで落とし込んだら取り組み始めましょう。
その中でPDCAを回しながら、人材育成計画を改善していきましょう。
人材育成の目標設定方法
人材育成計画を実行し浸透させていくためには、社員一人ひとりの目標設定方法と評価をしていくための制度を整理していくことが必要となります。
目標設定において大切なことは、個人の意思と仕事、能力を結びつけて考え、本人が納得する形で設定していくことです。
企業として必要な人材像を押し付けた目標設定となってしまっては、形だけのものとなってしまい、意味のある人材育成につながっていきません。個人の意思や能力を適切に捉えていくことが大切です。
人材育成の担当者は、目標設定方法や評価制度を整理した上で、目標設定シートの作成や、実際に社員個人と目標設定をしていく上司への考え方の共有などの準備をしていきましょう。
目標設定の方法
Schooビジネスプランで人気のオンライン研修動画から、能力開発についての目標設定の考え方をご紹介します。
人事考課とフィードバックの方法
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パーソルキャリア株式会社
パーソルキャリア株式会社(旧:株式会社インテリジェンス)にてキャリアアドバイザーとして約2000名のエンジニアに転職支援サービスを提供。 2010年よりマネジャーとしてキャリアアドバイザー育成、面接力UP講座の講師、各企業の採用イベントでの講演等に従事。 現在は法人営業としてIT・インターネット業界の法人のお客様に向け、採用競争力向上に貢献すべく奮闘中。 所有資格:国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE.Inc認定 GCDF-japanキャリアカウンセラー
・個人の意思の捉え方
ゴールデンサークル理論という考え方をご紹介します。
ゴールデンサークルとは、人間の脳の構造から人の行動、その背景にある考え方や価値観を表現した図です。
人が行動を起こすまでには、前提となる考え方や価値観が存在しています。目標設定の際には、どのような考えで仕事をしているのか、その背景にはどのような価値観があるのかということを織り込んでいくのが大切です。
・個人の能力の捉え方
自社におけるコンピテンシー、つまり高い業績を上げる人材の行動特性を定めましょう。
コンピテンシーは
・専門(職種、分野ごとの専門知識)
・共通(ビジネスパーソンとしての共通項目)
・プライマリー(人間としての成熟度)
からなります。
パーソルキャリアでは、顧客親密段位表という能力開発のシートを作成しています。
業績を上げるということだけではなく、顧客親密と言って、顧客にとって良いとされる仕事をしていこうというパーソルキャリアの考え方があります。それを体現するための行動特性として、顧客親密段位表を作成しています。
これにより、業績を上げるためにただ顧客から頂いたオーダーを簡単か難しいかという尺度で考えるということではなく、経営の知識を身につけたり事業理解力などの能力を高め、顧客にとって良い仕事をしていくという意識づくりになります。
自社がどのような人材を求めているのかを定義し、要素とそのレベルを明確に提示することで、個人の能力開発をしていくことができます。
・社員一人一人の目標設定のプロセス
目標設定の事前準備として、社員一人ひとりに以下3つを準備してきてもらいます。
- ・キャリアビジョンの整理
- ・仕事上の目標/課題整理
- ・能力セルフアセスメント
上司は普段から業務に対するフィードバックをしていくことが大切です。それらを基準に課題を整理して、目標設定をしていくことができます。
次に、上司目線での目標設定プロセスです。
以下4つを事前に準備しておきましょう。
- ・相手の観察結果を整理する
- ・価値観と考え方と行動の思考回路を読む
- ・コミュニケーションによって自己認知を深める
- ・能力開発の機会提供を考える
普段のコミュニケーションにおいて、部下について「この場面でこの行動を取るということは、このような考え方を持っているのでは」ということを読み取っていくことが必要です。
目標設定の前に日頃からの観察結果を整理しておくようにしましょう。
一人一人のタイプに応じて、どのような背景があってどのような考え方をする人なのかを把握しておくことで、行動を客観視して適切なフィードバックをしていくことができます。
本人の納得感のある目標設定をしていくには、コミュニケーションによって問いかけをして内省をしてもらうことが重要です。事前にどのような問いかけをするか準備をしておきましょう。
そして能力開発の機会提供を考えておくことが必要です。能力開発においては、部下が伸ばすべき能力が上司の苦手な分野だということもあるでしょう。
能力を伸ばすためにどのような機会を作っていくのか、ということを事前に考えておきましょう。
この動画では事例を元に、以下についても解説しています。
- ・個人の考え方をどう捉え、目標設定に活かしていくか
- ・目標設定シートの記入方法
より詳しく知りたい方は、以下より無料デモアカウントの発行をお申し込みください。
評価制度の整理
人材育成を効果的に進めるためには、目標までのプロセスと結果を評価していくことが重要です。
そのためには、人材育成と評価制度をセットで考えるようにしましょう。定期的に社員一人一人のスキルアップ目標を設定し、それに対する評価を行っていきます。
また目標を設定し、評価を行うだけでは効果は半減してしまいます。良い評価だった場合はなぜなのか、今後にも活かせるところはどこなのかをフィードバックするようにしましょう。
良い評価ではなかった場合も同様です。どこが足りなかったのか、次回に向けて何を改善していくのかを明確にしておきましょう。
人材育成のポイント7つ
1.適切な育成手法を選ぶ
人材育成を始める際には、どのような育成手法を取り入れるかが重要となります。会社全体の目標に合った育成手法を選ばなければ、思うように効果が得られないこともあるためです。
その際のポイントを3つご紹介します。
・社員に合った育成手法を選ぶ
それぞれの社員に合わせて育成手法を選びましょう。社員一人一人に特性があります。そのため、全ての社員が単一の育成手法で同じように成長するとは限りません。
例えばまずは理論を学んだ上で自らの業務に落とし込んでいくのが合っている社員もいれば、OJTで先輩社員などから学びながらまずはやってみるのが合っている社員もいるでしょう。
それぞれの社員の特性をしっかり見極め、それぞれに合った育成手法を選ぶことが大切です。
・スキル習得に効果的な育成手法を選ぶ
スキルによっても適切な育成手法は異なってきます。例えば、コミュニケーションスキルを磨きたいという場合に、テキスト資料を読み込むことだけで身につけていくことは難しいでしょう。
スキルに応じて育成方法を考えましょう。
・育成手法の組み合わせをイメージする
育成手法をどのように組み合わせるかをイメージして選びましょう。例えばビジネスマナーについてのスキルを身につけたい場合、事前に動画学習などで名刺交換の方法等を見て学んだ上で、実践研修でやってみることで効果的にスキルアップをしていくことができます。
育成プログラムを考えるときには様々な育成手法を組み合わせることを念頭におき、より効果的な育成プログラムを作ることを心がけることが大切です。
以下の研修動画では、人材育成の手法として取り上げられがちなOJTとメンタリングについて解説しています。
- ・人材育成におけるOJTの位置づけ
- ・OJTのメリット・デメリット
- ・OJTとメンタリングの違い
など詳しく知りたい方は無料デモアカウントの発行後、ご覧ください。
新人の力を引き出すOJTとメンタリングの方法
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松本真也中小企業診断士事務所
ICU 国際基督教大学 卒業。中小企業診断士。 芸能プロダクションの株式会社アミューズに新卒入社。アイドルやダンスグループのマネジメントに携わる。 その後、Webインテグレーション国内最大規模のIMJ Groupに転じ、Web広告プランナー、人事、経営企画、新規事業開発など、Webの最前線で幅広く経験を積む。 現在は、テクノロジーの分かる中小企業診断士として、エンタメ業界やクリエイティブ業界での起業や事業成長をサポートしている。
2.仕組みづくりも念頭におく
人材育成の効果を高めるためには、仕組みづくりを行っていくことが効果的です。
社員の能力の幅を広げるだけでなく、働きがいの向上にもつながります。
・社内FA制度で長期的な人材育成をしていく
社内FA制度とは、社員が自分の経歴や能力・実績を希望部署にアピールし、異動や転籍を可能とする人事異動制度のひとつです。希望の部署に移動するためには自らのスキルや実績の棚卸しが必要となり、自身が今後身につけるべきスキルについて考えるきっかけになります。
また、やりたいことがあって入社したのにその道が閉ざされているとなれば、社員の意欲は低下し、スキルアップどころか人材の流出にもつながってしまいかねません。社内人材の流動性を高めることは、働きがいの向上にもなります。
・ジョブローテーション制度を活用する
ジョブローテーション制度とは、人材育成を目的として、計画的に一定期間ごとに様々な職場や職務を経験してもらうことをいいます。多様な経験を積むことができるというメリットがあり、それにより社員一人ひとりが今後身につけていくべきスキルが明確になります。
また会社に対する理解を深められたり、社員のスキルアップや知識の充実にも繋がります。
この他にも人材育成に有効な仕組みは多数あります。自社の風土や育成方針にあった仕組みを選ぶようにしましょう。
3.管理職と人事が連携して行う
社員一人ひとりがどのようなスキルを身につけていくべきかを、社員と一緒になって考えていくのは管理職の役割となります。
そのため人事の役割として、会社としてどのような目的で人材育成に力を入れているのか、将来的にどのような人材が必要で、そのために何をするべきかを理解してもらう必要があります。
実際に人材育成を行っていく中で生じた課題や目標とのズレを管理職から人事に共有し、人事はそれに対する解決策の提示や目標の修正を行っていきましょう。
4.社員が自発的に学ぶ環境を整える
学びに対する社員の自発性をどう高めていくか、ということも人材育成を成功させる上でのポイントとなります。
人事が色々な施策を打たなくても、社員それぞれが自分に不足しているスキルを理解し、自発的にそのスキルを取得しにいく状態はまさに理想だと言えるのではないでしょうか。
しかしそのような社員が出てきたとしても、環境が整っていないと自発的な学習を促進することは難しいでしょう。
例えば、外部セミナーへの参加や書籍購入費用が自費負担だと、意欲は高いが生活を圧迫しかねないので断念するということも考えられます。
そのため、自発的にスキルを伸ばそうとしている社員の歩みを止めないような環境作りも、人材育成を成功させる上で重要となってきます。
5.成功体験を与えることで人材育成を加速させる
成功体験を与えることで、学びへの自発性やスキル取得への意識が高まります。そのためのポイントを2つご紹介します。
・始めに成果が見えやすいスキルを身につける
まずは成功体験に直結するようなスキルを身につけられるように意識しましょう。例えば見やすい資料作成方法などは、身につければすぐに普段の業務に活用できて、効果も見えやすいのではないでしょうか。
業務に活用し、それが効果につながった場合には上司や周囲から積極的に声かけをすることで、さらなる成長にもつながります。
・表彰の制度を作る
企業全体で評価するような仕組みづくりをすることで、さらに意識の向上につながります。
表彰などは気恥ずかしいという社員もいるかもしれませんが、成長した社員に対して企業が評価していることをアピールする場にもなるので、おすすめです。
6.周知する努力も忘れずに
人材育成は長期的な視点で語られることが多いため、仕組みや制度を作ったら終わりになってしまう企業も少なくありません。
せっかく作成した仕組みや制度は利用されてこそ意味があります。
そのため、社内全体に周知させる方法も考えておく必要があります。全体メールなどで一斉送信するだけでは不十分です。1日に何十通というメールが届く社員もいるでしょう。その中で、会社全体のお知らせにしっかりと目を通す社員は少ない可能性があります。
例えば、各部門の管理職レベルから各社員への周知をお願いしてもらうなど、確実に各社員へ届けることができる仕組みを考えましょう。
7.PDCAを回していく
人材育成の計画を立てて実行しただけでは、効果が半減してしまいます。
実行後振り返りを行い、改善をしていくことで、自社にとってより最適で効果的な人材育成制度の作成につながります。
管理職など実際に現場で育成を行っている社員との共有の場をつくり、制度や仕組みについても定期的に見直しを行いましょう。
また、経営層の意向について定期的に確認を行っていくことも重要です。
変化が早く複雑さを増している現代社会において、経営層は特にスピード感のある判断を下していくことが求められています。
経営戦略や目標の変化によって、今後必要となる人材像も変わってくることが予想されます。人材育成の計画について定期的に確認の場をつくっていきましょう。
まとめ
人手不足などによる企業の経営環境で、「限りある人材をいかに磨き育てるか」という考え方が広がりを見せており、どこの企業でも人材育成の重要度が増しています。
目標や経営戦略から必要となる人材像を明確化してスキルに落とし込み、現状の課題を把握した上で計画していくことが大切です。
それだけでなく、どのような育成手法を取り入れるかということも重要となります。育成の効果が出るまでは時間がかかると思いますが、自社に合った効果的な育成ができるように、PDCAを回しながら粘り強く取り組んでいきましょう。
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