公開日:2021/08/26
更新日:2023/04/21

確証バイアスとは?人事で起こり得る事例や対処法について解説

確証バイアスとは?人事で起こり得る事例や対処法について解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

確証バイアスとは、人間が誰しも持っていて避けられない考えの偏りです。誰しもが持っているものですが、気を付けなければ差別や不公平につながってしまいます。特に人事業務において公平性を欠くことは従業員のモチベーションに大きく影響をします。当記事では、確証バイアスの概要やその例、対処法について解説します。

 

01確証バイアスとは?

確証バイアスは認知バイアスの一種です。自分が既に持っている先入観や仮説を肯定するために、都合の良い情報ばかりを集める傾向性のことを指します。これは誰しもが持っている心理的傾向です。そもそもバイアスとは思い込みや思想などにより意見が偏っていることです。

認知バイアスとは

認知バイアスとは、自分の思い込みや周囲の環境などの要因により非合理的な判断をしてしまう心理現象です。確証バイアスのほかにも、自分に都合の悪い情報を無視する「正常性バイアス」、物事が起きた後に「予測が可能だった」と錯覚してしまう「後知恵バイアス」などがあります。 認知バイアスは、人間なら誰しもが持っています。そのため、認知バイアスは企業のマーケティング活動などに上手く利用されているケースも少なくありません。例えば5,000円と書かれた値札に二重線が引かれ、3,000円となっていたら「お得だ」と考えるでしょう。それは「アンカリング」という認知バイアスです。最初に得た情報によって選択が変わってしまう現象で、本来の値段とは関係なく購買意欲が高まってしまいます。

 

02確証バイアスの具体例

この章では、確証バイアスの具体例を4つ紹介します。日常の中で自然とやってしまっている事例や、実際に確証バイアスがどのように政治運動などに使われているのかも併せて紹介します。

政治的信条に対する確証バイアス

自分が支持する政治的信条に基づいて、同じような意見を持つメディアや個人をフォローすることで、自分の信念や正当性を確認しようとします。米国での大統領選挙戦における報道・選挙活動は、この確証バイアスを利用したものと言えるでしょう。

オンラインレビューに対する確証バイアス

自分が購入を検討している商品に対する肯定的なレビューばかりを読んで、購入決定を支持する情報を集めることも確証バイアスの1つです。例えば、「〇〇の家電はドライヤーの性能が良かったから、電動歯ブラシも性能が良いはず」という思い込みが頭の中にあり、無意識的に肯定的なレビューを探してしまうことが具体例としてあります。

宗教的確証バイアス

入信している宗教の教えや考えに沿わない情報を無視することも、確証バイアスの1つと言えます。また、その宗教が説いている予言に対して、それをあたかも肯定するような事象を探してしまうことも宗教的な確証バイアスと言えるでしょう。

人事評価に対する確証バイアス

アデコグループが行った「人事評価制度に関する意識調査」では「あなたは勤め先の人事評価制度に満足していますか。」という質問に対して、「どちらかというと不満」「不満」と回答した人が62.3%いました。しかし、評価する側に「自分が適切に評価を行えていると思いますか。」という質問では「そう思う」「どちらかというとそう思う」の合計が77.8%です。このように、自分が正しいと思っている行動が他人からはそうは思われていないという認識の差も確証バイアスの影響です。

▶︎参考:アデコ株式会社「人事評価制度に関する意識調査」

 

03確証バイアスがもたらす影響

確証バイアスは、認知バイアスのなかでも最も普遍的で誰しもが陥る可能性の高いバイアスです。そして人事業務においても確証バイアスに陥りやすいことが考えられるため、注意が必要です。確証バイアスは誰しもが無意識に持っているため、どのような場合に発生しやすいのかを理解し、都度自分の考えを振り返ることが大切です。人事業務における確証バイアスの事例を紹介します。

人事評価で公平性を阻害する

人事担当者は、従業員を評価する際に確証バイアスに陥らないように意識しなければいけません。先入観や思い込み無しに物事を見ることは、非常に困難で誰しもが陥る可能性があります。例えば、体育会系出身の従業員に対して「打たれ強い」「根性がある」などのイメージを持つこともあるでしょう。しかし、実際に業務を行いギャップを感じてしまうと必要以上に評価を下げてしまいます。また、元々高い実績を出していた従業員が成果を出せなくなった時にも「今回はたまたま調子が悪いだけ」と都合良く解釈してしまい、公正な評価を妨げることもあります。

採用面接での弊害

採用面接においても、確証バイアスに陥りやすいとされています。まず第一印象で感じたことを無意識に引きずり、その印象を追従する情報のみを集めてしまう傾向があるためです。例えば、転職理由を答える際に「キャリアアップをしたい」という回答に対して異なる評価を下してしまいます。印象の良い求職者であれば「向上意欲がある」という評価になりますが、印象の悪い求職者には「とって付けたようなありがちな回答だな」などと違う評価をして自分の第一印象を正当化使用とする傾向があります。

ステレオタイプによる誤った評価や対応を導く

日常生活において、ステレオタイプによる誤った評価や対応をしてしまうことは少なくありません。採用活動では、性別や学歴などでステレオタイプに陥ってしまうことはよくあるケースだといえます。「〇〇大学だから優秀だろう」など、採用担当者によってはしっかり適性を加味せず判断してしまうことが懸念されます。

 

04確証バイアスを回避する方法

確証バイアスは誰しもが持っており、無意識のうちに陥ってしまっています。そのため、回避することは用意ではありません。しかし、確証バイアスによる影響を少なくすることは可能です。常に確証バイアスに陥っていないかを意識することにより、誤った評価や決断を避けることができます。その方法をご紹介します。

クリティカルシンキングで常に考える

クリティカルシンキングとは批判的思考のことです。自分の感覚に誤りがあることを認めて批判的な反論や疑問を考えます。「自分の意見は本当に正しいのか?」「第三者の視点から考えるとどうなのか?」など客観的に吟味することが大切です。 しかし、確証バイアスにとらわれているとクリティカルシンキングをするという考えにすらたどり着かないこともあります。自分が当たり前だと考えていることや、自分の中での常識を疑うことは困難です。そのため、重要な決断以外でも考える際に疑問を持つ癖を付けておくことが重要です。

第三者の意見を聞く

確証バイアスに陥っている時に自分の考えを変えることは簡単ではありません。そのため、第三者の意見を参照することは非常に重要です。どのような第三者に頼るかは、その状況とは関係無くバイアスを持っていない人を選任するのが良いでしょう。また信頼できる人の意見であれば耳を傾けやすく、自分の考えを見直すきっかけになります。

相手の確証バイアスを認知する

確証バイアスは、自分だけではなく誰しもが持っています。しかし、自分のバイアスにはなかなか気づけません。そのため、相手の確証バイアスを探すことで自分を見つめ直すことは有効です。例えば、採用面接に面接官をもう一名追加して、二対一で面接を行うことなどは有効な方法といえるでしょう。同じ状況で同じ言葉を聞いていたとしても評価は完全には一致しないでしょう。面接のフィードバックを行い、もう一人の面接官の評価とその評価をした理由を聞くことで相手の確証バイアスを認知することができます。その際には自分の考えていることとの差異が明確になるでしょう。相手と比べて初めて確証バイアスに気づくこともあります。

 

05人事評価で起こり得るバイアス

人事評価で起こり得るのは確証バイアスだけではありません。様々なバイアスが起こっているといえます。代表的なバイアスをそれぞれご紹介します。

ハロー効果

ハロー効果とは、ある対象を評価するときに目立ちやすい特徴に目を引きつけられ、他の特徴についての評価がゆがめられる現象です。例えば、一流大学の学生に対して、学力だけでなく人格的にも優れていると思い込んでしまうことなどが挙げられます。ハロー効果は採用面接だけでなく、取引や社内でも起きうることでもあるため、客観的な視点を保つには常に意識しておかなければいけません。

寛大化傾向

寛大化傾向は、評価を行う際に全体的に結果が高くになってしまうことを指します。評価者が批評家者の業務内容に精通していない場合や、批評家者から良く思われたいという意識から生まれるものです。反対に全体の評価が低くなってしまうことを「厳格化傾向」と言います。評価者がその業務内容に精通しており、評価者自身を基準にしてしまうことから現れます。寛大化傾向と厳格化傾向は、いずれもビジネスにおける客観的な判断を阻害してしまうケースがあるため、未知の分野で業務を行う際、また専門家として従事する場合のいずれでも意識しなければならないでしょう。

中心化傾向

中心化傾向は、評価結果が両極端を避け標準に集まる傾向です。評価に自信がない場合や部下の能力を的確に把握していない場合などに起こります。また、評価基準が曖昧であることも原因の1つです。批評価者からすると、成果を挙げたのに差がつかないためモチベーションの阻害要因になります。

逆算化傾向

逆算化傾向は、目標達成の結果に基づいて、過程や行動を評価する傾向を指します。人事評価において、過去の成績や実績に基づいて評価を行う場合に、逆算化傾向が生じる可能性があります。例えば、ある従業員が目標を達成したために高い評価を受けた場合、その従業員が達成するために行った具体的な取り組みや努力が見過ごされることがあります。

論理誤差

論理誤差は、評価者が一貫した論理や思考プロセスに基づいて評価を行わず、感情的な判断を行う傾向を指します。人事評価において、論理誤差が生じる場合、評価者が感情や主観的な印象に基づいて評価を行うことがあります。例えば、ある従業員が評価者と意見が合わなかったため、評価者がその従業員を低く評価する場合があります。

対比誤差

対比誤差は、他の評価対象との比較によって、評価対象の評価が変わる傾向を指します。人事評価において、対比誤差が生じる場合、評価者が他の従業員との比較によって、ある従業員を高くまたは低く評価することがあります。例えば、ある部署の従業員全員が優秀な成績を残している場合、その中で最も優秀でない従業員が低く評価される可能性があります。

期末誤差(近接誤差)

期末誤差は、直近の出来事に基づいて評価を行う傾向を指します。人事評価において、期末誤差が生じる場合、評価者が最近の成績に基づいて評価を行うことがあります。例えば、ある従業員が最近の成績が悪かったため、その従業員を低く評価する場合、過去の優秀な成績や努力が見過ごされることがあります。また、期末誤差は、長期的な成績を評価する場合にも影響を与えることがあり、評価者が最近の成績に過度に重きを置いて、過去の成績や将来の成績を見誤ることがあります。

極端化傾向

極端化傾向は、評価者が中間の評価を避けて、極端な評価を与える傾向を指します。人事評価において、極端化傾向が生じる場合、評価者が極端に高い評価または極端に低い評価を与えることがあります。例えば、ある従業員が部署で最も優秀であったため、評価者がその従業員に最高評価を与えることがあります。

厳格化傾向

厳格化傾向は、評価者が厳しい評価を与える傾向を指します。人事評価において、厳格化傾向が生じる場合、評価者が他の評価者よりも低い評価を与えることがあります。また、厳格化傾向は、評価者の性格やバックグラウンドによっても影響を受けるため、複数の評価者がいる場合にも生じることがあります。

親近効果

親近効果は、ある特定の特徴が良いと評価された場合、その評価が他の全ての特徴にも影響を与える傾向を指します。人事評価において、親近効果が生じる場合、ある従業員が特定の特徴が優れているために、全体的に高い評価を受けることがあります。例えば、ある従業員が外向的でコミュニケーション能力が高いため、その従業員の他の能力や成績も高く評価される可能性があります。

アンカリング

アンカリングは、最初に提示された情報に基づいて評価する傾向を指します。人事評価において、アンカリングが生じる場合、最初に提示された評価基準や過去の評価などに強く影響されることがあります。例えば、ある従業員の前回の評価が高かった場合、今回の評価も前回と同じように高く評価される傾向があります。

 

06人事評価からバイアスを取り除くための方法

上記の通り人事評価にはバイアスがつきものです。確証バイアス以外にもさまざまな考えの偏りがあります。しかし、人事評価では公正であるべきです。どのように対処すべきかその方法をご紹介します。

評価基準を数値化して明確にする

人事評価からバイアスを取り除くためには、組織で「評価基準」を明確にすることが重要です。特に定量評価と定性評価の評価軸をそれぞれ明確にしておく必要があります。事業に直接関わる目標は定量でおこない、それ以外のプロセスや行動面などをどのように定性的に評価するかを明確にしておかなくてはいけません。また、職位や職種によって、定量・定性評価の基準をそれぞれ明確に設ける必要があります。

1人だけで評価を決定しない

人事評価や面接において、1人だけでおこなってしまうと考えが偏ってしまい、バイアスが生じてしまいます。そこで、評価医者を複数人設けるとバイアスを取り除くことが可能です。また、評価者同士で意見を交わして決定することが良いでしょう。評価者が上司と部下の関係であると、どうしても上司の意見が優遇されてしまいます。同じ立場で議論ができる評価者2人以上で議論を交わし決定するといいでしょう。

360度評価を利用する

360度評価とは、複数の様々な立場の関係者が1人の従業員の評価を行います。上司だけでなく同僚や部下、他部署の社員などからも評価される仕組みです。中には、取引先や顧客の声も評価として抽出されることもあります。実際に同じ現場で業務をする人だからこそ気づく点や部下だからこそ気づく点があるでしょう。 しかし、360度評価には評価者の選定や集計など多くの工数が必要になります。また、評価者同士が話あって評価すると結局バイアスがかかってしまう恐れもあります。日ごろから評価者からのデータを集め、かつ評価を共有しないことを約束して取り組むなどのルール設定をすることが必要となるでしょう。


 

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07まとめ

バイアスは人間誰にでもあるものです。そのなかでも確証バイアスは人の思い込みから発生します。それは根強くその人のなかに根付いておりなかなか取り除けるものではありません。取り除くのではなく、そのバイアスに惑わされないようにバイアスを認識していることが大切です。これを機にご自身の行動や考えを一度見直してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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