コンセプチュアルスキルとは?若手人材を鍛えるメリットについて解説

コンセプチュアルスキルとは、経営層や高い職位の管理職に必要とされるスキルです。物事の本質を見抜き、組織の可能性を高める能力であり、トップマネジメントに携わる人材には不可欠なものです。しかし、若い世代の従業員のなかにも、コンセプチュアルスキルを発揮し成果を上げる人材もいます。当記事では、トップマネジメントの素質がある若手人材を鍛えるメリットについて解説します。
01コンセプチュアルスキルとは

コンセプチュアルスキルとは、目の前にある複雑な事象の本質を捉え、課題の根幹を解決し、組織や個人の可能性を最大限に引き出す能力のことをいいます。正解がない課題に直面したときに、周囲の人々が納得できる「最適解」を導き出し、組織を牽引する役割を担います。こうした役割は、経営層や上級管理職などトップマネジメントを担う人材が務めるものです。しかし若い世代においても、コンセプチュアルスキルを備えた優秀な人材もいます。こうした人材を早期に見極め育成することが、組織を強くし永続的な発展につながる大きな力となるのです。
カッツモデルにおける最上位スキル
コンセプチュアルスキルは、アメリカの経営学者であるロバート・カッツ氏が提唱した、マネジメントに必要なスキルのうち、最上位に位置づけられるものです。カッツ氏はマネジメントに必要なスキルを次の3段階に分類しました。コンセプチュアルスキルは、地頭の良さといった先天的な要素が大部分を占めるといわれます。しかし、時間はかかりますが訓練次第で鍛えることができるスキルでもあります。
テクニカルスキル
業務遂行に必要な知識や技術で、現場に近いマネジメント層に必要なスキル
ヒューマンスキル
人間関係を円滑にし組織の力を最大化する、中間管理職に必要なスキル
コンセプチュアルスキル
物事の本質を見抜き周囲を納得させ組織を導く、トップマネジメント層に必要なスキル
02コンセプチュアルスキルの構成要素
ここからはコンセプチュアルスキルが、どのような能力により構成されているのかを見ていきます。一般的にコンセプチュアルスキルを備えた人材は、ひとつの経験から多くのことを学び、対応力に長けているという特徴があります。それは次に挙げる能力から導かれ、課題解決に力を発揮するものです。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングは、組織の課題を正しく把握するのに必要な能力です。さまざまな要素が絡まりあって発生している組織課題を論理的に整理し、周囲の人々に分かりやすく説明して認識を共有します。説明に説得力をもたせるには矛盾のない論理を構築し、筋道を立てる必要があります。周囲の協力を得て課題解決を推進するために必要な能力であるといえます。
クリティカルシンキング
クリティカルシンキングは批判的思考とも呼ばれ、物事の前提を一度疑って考える思考法です。物事を一度違った視点から見ることで、思い込みなどの思考の偏りを修正し、正しい結論を導き出すことができます。課題解決に向け、違う角度からのアイデアを生み出すために必要な能力です。
ラテラルシンキング
ラテラルシンキングは水平思考とも呼ばれ、既成概念にとらわれない自由な発想で思考する能力です。あらゆる角度から物事を多面的に捉え、既成の論理から飛躍した発想を繰り返します。こうした思考により閉塞感のある現状を打開したり、斬新なアイデアによりヒット商品を開発したりという成果につながる可能性をもつ能力です。
多面的視野
一つの物事に対し複数の視点から検討を加え、課題解決の糸口を探る思考法です。クリティカルシンキングやラテラルシンキングと合わせて用いることで、従来にはない、新たな発想を生み出すために必要な能力です。課題に対し複数のアプローチを考えるので、思考の偏りを防ぎ、課題解決の成功率を高める効果があります。
俯瞰力
細部にとらわれず、課題の全体像を把握するのに必要な能力が俯瞰力です。俯瞰力が不足し視野が狭い状態であれば、判断ミスが頻発する可能性があります。課題を俯瞰して捉えることで、方向性を誤ることなく的確な判断を下せるようになります。
知的好奇心
知的好奇心は、新たな行動を起こす際の原動力となります。知らないものに対して興味を示し掘り下げることで、新たなアイデアや、課題解決につながる根本的な原因の発見につながることもあります。
探究心
探究心は、課題の根本的な原因を掘り下げて考えるために必要な能力です。物事を表面的に捉えず、課題の本質にたどり着くまで粘り強く思考を繰り返します。課題解決において妥協点を探すのではなく、本質的な問題を取り除くために必要な能力です。
受容性
自分とは異なる価値観を受け入れることがきる受容性は、思い込みや偏った考え方を修正し、課題解決に向けた行動を正しく導きます。多様化が進み「正解」が一つではない現代においては、あらゆる価値観をありのまま受け入れる懐の深さが必要となります。
柔軟性
従来のやり方に固執せず、状況に合わせて臨機応変に対応を変える柔軟性は、課題解決に必要な能力です。ビジネスにおいてトラブルやイレギュラーは常に発生する可能性があります。こうした事態に直面したときに思考を停止させず、速やかに行動に移し問題解決を図るためには柔軟な思考が必要となります。
チャレンジ精神
困難な課題に果敢に挑戦するチャレンジ精神は、コンセプチュアルスキルに必要な要素です。初めからあきらめていては何事もなし得ません。未知の分野、困難な課題に意欲をもって挑むことでしか発展は望めません。組織を衰退させないために、もっとも重要な能力なのではないでしょうか。
03コンセプチュアルスキルがある人の特徴
コンセプチュアルスキルを持っている人というのは、どのような特徴を持っている人のことを指すのでしょうか。ここでは、主な特徴について解説します。
複雑な問題を分析し、総合的な解決策を見つけられる
コンセプチュアルスキルを持つ人は、複雑な問題に直面しても冷静な分析ができます。彼らは問題を細部に分解し、異なる要素や関係性を理解します。そして、包括的な視点から総合的な解決策を見つけ出す能力を持っています。それにより、短期的な対処策だけでなく、根本的な問題解決に取り組むことができます。
抽象的な思考と概念化能力
コンセプチュアルスキルがある人は、抽象的な思考や概念化能力に優れています。彼らは具体的な事例やデータにとらわれることなく、概念や原則を理解し、それを組織や業務に適用することができます。彼らの思考は柔軟で創造的であり、新たなアイデアや視点を生み出すことができます。
長期的な視野と戦略的思考ができる
長期的な視野を持ち、将来の展望や組織の成長について考えることができます。彼らは組織の目標や戦略に沿って行動し、現在の状況だけでなく将来の影響や可能性を考慮に入れます。戦略的な思考を持つことで、組織の成果や競争力を向上させるための計画や戦略を立てることができます。
リーダーシップとチームビルディングの能力がある
コンセプチュアルスキルを持つ人は、リーダーシップの能力とチームビルディングのスキルを備えています。彼らはビジョンを共有し、他のメンバーを統率・指導することで、組織全体の理解と協力を促進します。また、他の人々とのコラボレーションを通じて、組織の目標達成に向けた共同の努力を結集させることができます。
04コンセプチュアルスキルを高めるメリット
コンセプチュアルスキルを高めるメリットには主に以下の3つがあります。
- ・柔軟で自由な発想
- ・イノベーション
- ・人材の活性化
企業を持続的に発展させていくためには、リーダーシップを発揮し、時代を先取りするイノベーションを生み出すような人材を排出するために、人材の活性化を行っていく必要があります。これらはコンセプチュアルスキルを高めることで得られるのです。
柔軟で自由な発想
価値観の多様化や変化に対応し、時代に合った製品やサービスを提供しつづけるには、柔軟で自由な発想が必要となります。未知のものに対する好奇心をもち、物事の本質を深く掘り下げて思考を重ねることで新たな課題を発見します。そしてその課題を解決することが発展につながるのだといえます。
イノベーション
企業において革新をもたらすイノベーションは、持続的な発展を目指す上で重要な要素です。革新を生み出すには、これまでの仕事の進め方や既成概念から飛躍した思考と、それを実行に移すチャレンジ精神が必要になります。柔軟な思考をもつ若手人材が活躍し、リーダーシップを発揮することにより、イノベーションが生まれる可能性が高まるのです。
人材の活性化
若手人材を積極的に登用し、権限を与えリーダーシップを発揮してもらうことで、組織は活性化します。若手人材の活躍がさまざまな刺激となり人材を活性化させ、組織に勢いをもたらします。組織の停滞を防ぐには人材の活力が必要となるのです。
05コンセプチュアルスキルを鍛える方法とは
コンセプチュアルスキルは、先天的な要素によるところが大きいとされますが、時間がかかっても、訓練により高められるスキルです。これからはコンセプチュアルスキルを鍛えることが、企業の発展の重要な要素となります。この章ではコンセプチュアルスキルを鍛える方法を紹介します。
コンセプチュアルスキルの理解促進
コンセプチュアルスキルの重要性や、各階層に求められるスキルについての理解を促進することが、コンセプチュアルスキルの向上には欠かせません。コンセプチュアルスキルはこれからの時代に必要不可欠なスキルではあるものの、一方で合理的、発想が自由すぎる、変わり者といった印象を持たれる可能性もあります。そのため、全社でコンセプチュアルスキルに対しての理解を深め、どのような人であっても受け入れる多様性を同時に高めていく必要があるでしょう。
適切な時期に研修を行う
年代や役職に合わせた階層別の研修を、適切な時期に行うと良いでしょう。特に若手人材には、早い段階でまずはコンセプチュアルスキルの存在を知ってもらうことが必要です。さまざまな思考法や心構えを知識として知ってもらい、日々の業務で意識して実践してもらいます。定期的な研修により振り返りの機会を設け、意識づけを継続することも忘れてはなりません。
概念化を習慣づける
コンセプチュアルスキルは「概念化スキル」ともいわれています。概念化スキルとは目の前の課題を抽象化し定義づけ、具体的な解決へ向けた行動に落とし込むスキルのことです。こうしたスキルを身につけるには、日常的な訓練が必要であり、行動レベルでコンセプチュアルスキルを意識した実践を習慣づけることで身につくものです。
権限をもたせ経験を積んでもらう
若手人材には可能な限り権限をもたせ、あらゆる経験を積んでもらうことが育成の近道であるといえます。成功例も失敗例も含め実践のなかから学んだことは、経験値として確実に身につくものです。早い段階で若手人材の経験値を高めるためにも、可能な限り権限をもたせ活躍の場をつくることが必要となるのです。
06若手人材がコンセプチュアルスキルを発揮するためには
若手人材のコンセプチュアルスキルを鍛え、活躍の場を設けることが企業の持続的な発展に必要なことはこれまで述べてきた通りです。 時代に合わせた変化対応を繰り返していくには、若手人材の力は不可欠です。こうした力を存分に活かすためには、企業は若手人材の意見を柔軟に取り入れる機会を設け、アイデアを積極的に採用し、事業活動に活かしていく取り組みが必要です。 若い可能性を潰すことなく、その力を存分に活かせる環境を構築することが、企業の今後を左右するといっても過言ではありません。 大きな権限を若手人材に委ねてしまうことは難しいかもしれません。しかし意見を尊重し柔軟に取り入れていくことは可能です。企業を良い方向に導くには、若手人材の力が必要なのではないでしょうか。
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ビジネス本著者
東京大学経済学部を卒業後、日系メーカーで17年間勤務。経理、営業、マーケティング、経営企画と多様な部門を経験し、半年間のイギリス留学後に外資系企業に転職。在職中より書籍の執筆を開始。2021年に退職し、44歳でFIRE達成。
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外資系コンサルタント
外資系コンサルティングファーム勤務。専門領域における日本支社の実務責任者を務め、IT部門に対するコンサルティングを手がける。「クラウド」×「インフラ」×「サービス管理」を専門分野とし、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。
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戦略的思考とは

課題解決思考と対比しながら戦略的思考の内容やその必要性について解説します。 授業の後半では、戦略的思考を実践している企業の事例を通しながら、得られる効果について紹介します。
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株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長
安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン株式会社)にて法人営業等に携わる。 退社後、HRインスティテュートに参画。経営コンサルティングを中心に、事業戦略立案・実行支援、新規事業開発、人事制度設計・運用、人材育成トレーニング等を中心に活動している。
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「自分」を生きる心を育てるレジリエンスの高め方 -しなやかマインドセットを身につける-

この授業では、レジリエンスの概要や、「しなやかマインドセット」を身につける方法、「最高の自分像」を描くポイントについて学びます。
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(一社)日本ポジティブ心理学協会認定レジリエンス・トレーナー
外資系IT企業、ITベンチャーの創業メンバーとして、システムエンジニア、プロジェクトリーダ/マネージャ、社員育成の企画/運用などに従事。その後、無農薬・無化学肥料で作る野菜農家になる夢を実現させるため、山梨県へ移住して1年間農家修行を行う。しかし、家庭の事情によりIT業界へ戻る。 社員育成の経験、夢の実現を目指した経験から、コーチング、ポジティブ心理学、そしてレジリエンスを学ぶ。現在はレジリエンス・トレーナー、ビジネスコーチとして活動。
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08まとめ
コンセプチュアルスキルは経営層などのトップマネジメントに必要とされますが、若い世代にも素質をもった人材は必ずいるはずです。こうした人材を早期に発掘し育成することが、人材を活性化させ企業に勢いをもたらすのです。若手人材が活躍しリーダーシップを発揮することが企業の発展には不可欠です。組織全体で取り組む課題として検討してみてはいかがでしょうか。
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登壇者:高木 一史 様サイボウズ人事本部 兼 チームワーク総研所属
東京大学教育学部卒業後、2016年トヨタ自動車株式会社に新卒入社。人事部にて労務(国内給与)、全社コミュニケーション促進施策の企画・運用を経験後、2019年サイボウズ株式会社に入社。主に人事制度、研修の企画・運用を担当し、そこで得た知見をチームワーク総研で発信している。