名目賃金(めいもくちんぎん)とは?実質賃金との違い・ここ数年の推移と原因なども解説

「名目賃金」とは「従業員が働いたことの対価として、その国の貨幣(金銭)で支払われたもの」を指します。意味を混同されやすい実質賃金と間違えてしまう方も少なくありません。 この記事では、名目賃金の意味、実質賃金との違い、近年の推移と原因などを1つずつ解説します。社会人として、ビジネスマンとして、ぜひ名目賃金について知識を深めてください。
- 01.各目賃金とは?
- 02.各目賃金と実質賃金の違い
- 03.賃金指数とは?
- 04.各目賃金のここ数年の推移と原因について
- 05.日本の名目賃金と諸外国の名目賃金を比較
- 06.各目賃金アップ以外に社員のモチベーションを高める方法は?
- 07.まとめ
01各目賃金とは?
名目賃金とは、そもそもどような賃金のことなのか、わかりやすく説明します。名目賃金について詳しく知ることができれば、名目賃金の重要性なども理解しやすくなるので、以下の解説を参考にしてください。
各目賃金は労働対価として貨幣で支払われたもの
「名目賃金」とは、「従業員が働いたことの対価として、その国の貨幣(金銭)で支払われたもの」を指します。名目賃金は、企業から従業員に支払われた金額そのものです。 「貨幣」についてより詳しく説明すると、貨幣は「お金」や「金銭」と呼ばれ、人々の間で商品、サービス、財産などの価値を表すもので、機能としては価値尺度、交換、価値貯蔵手段、流通手段などがあります。 しかし、貨幣も物の価値もその時々によって変化しているため、貨幣の額が指す価値は定まっていません。そのため、名目賃金の価値はアップしたりダウンしたりとその時々によって変化します。 名目賃金の一例をあげます。その国の貨幣金額が20万円だったとすると、名目賃金も20万円ということになります。日本では貨幣の単位が円ですが、アメリカではドル、インドではルビー、インドネシアではルピアなどと国によって名目賃金の貨幣単位も異なります。
名目賃金には何が含まれる?
「名目賃金に含まれる金額」についても、理解してください。労働に対する報酬と言えば、一般的には特別休暇の付与などがあげられます。その他にも、無料で利用できる社員食堂の、社員旅行への参加といった様々な福利厚生もあります。このような報酬は貨幣によって従業員に支払われるものではありません。 そのため、特別休暇の付与、社員への様々な福利厚生などの企業によるサービスは、名目賃金には含まれません。当然、これらの福利厚生は名目賃金として計上されることもありません。この点も覚えておきましょう。
各目賃金上昇率とは名目賃金が上がった割合のこと
名目賃金についてわかったところで、「名目賃金上昇率」についても説明します。名目賃金上昇率とは、企業が従業員に支払っている賃金が、どれくらいの割合でアップしたのかを表した数値です。 実質賃金上昇率は、物価がアップしたことによる影響を除けば、賃金が上昇した比率を示しています。
02各目賃金と実質賃金の違い
ここで、名目賃金と実質賃金との違いについても解説します。名目賃金と実質賃金がどのように違うのかがわかれば、物価の動向に注目することも増えるでしょう。
名目賃金は貨幣のため物価の変動が関係
先述したように、名目賃金は貨幣のため物価のアップダウンという変動が関係してきます。 例えば、モノの価値が高まり貨幣の価値がダウンするインフレーション(物価上昇)が起これば、同じ1,000円で買えるモノの量などが減ることになります。 このことからも、名目賃金が以前と同じ額面であっても、インフレーションが起これば貨幣価値はダウンして、反対にデフレーションが起これば貨幣価値がアップするということです。
実質賃金は名目賃金や物価の影響を受けない
一方で、実質賃金とは、労働者が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を引いて計算したもので、物価の影響を受けません。 実質賃金からは、労働者が給与で購入できる物品やサービスの量もわかります。そのため、個人消費の動向にも影響します。 このように、名目賃金は物価のアップダウンの影響を受ける一方で、実質賃金は物価による影響は受けません。
03賃金指数とは?
続いては「指数」についてです。「名目賃金指数」及び「実質賃金指数」は、現金給与総額の指数です。賃金指数を知る目的や、比較、計算方法についても解説します。
賃金指数を知る目的
賃金指数とは労働者に支払われている賃金を、業種、時間、地域間で見て、比べやすい1つの水準を基準として、指数で表したものです。 この指数は、主に各種アンケートやレポートなどで、数値を単純化して比べやすくする目的で使われています。 賃金水準の基準として、西暦の末尾が0または5の年に合わせて作られるのが一般的です。 賃金指数の例をあげると、基準年の賃金に対して翌年に3%アップした場合は103、3%下落した場合は97と表します。
名目賃金指数と実質賃金指数
賃金指数には2種類あり、名目賃金指数と実質賃金指数です。その時点の金額による賃金額を指数化したのが名目賃金指数で、購買力の変化をみる目的で名目賃金指数を消費者物価指数で除き、指数化した実質賃金指数になります。
04各目賃金のここ数年の推移と原因について
ここ数年間の名目賃金の推移と、その原因についても見ていきましょう。名目賃金の推移がわかれば、物価との関係についても知識を深めることができます。
名目賃金は上昇傾向だったが6年ぶりにダウン
名目賃金は2014年頃からアップ傾向でしたが、2019年には6年ぶりにダウンしてしまいました。 厚生労働省が4月に発表した2月の勤労統計調査によると、名目賃金でもある勤労者1人当たりの現金給与総額は0.2%ダウンの26万5,972円でした。名目賃金は11カ月連続でダウンしていることになります。 勤労者1人当たりの現金給与総額の内訳では、基本給中心の所定内給与が0.4%アップ、残業代などの所定外給与は9.3%ダウンで、ダウンした割合は9カ月ぶりに大きくなりました。パートタイム労働者は23.5%とより大きなダウン割合が見られました。 名目賃金がダウンした原因は、正社員ではなくパートタイム労働者の増加、働き方改革関連法の施行による残業時間規制などが考えられています。
参考:厚生労働省
実質賃金はアップ
名目賃金がダウンした一方で、名目賃金から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は、アップの傾向が見られます。なお、実質賃金のアップは1年ぶりのことです。 実質賃金がアップした理由は、原油安などによる物価下落であると見られています。
05日本の名目賃金と諸外国の名目賃金を比較
日本の名目賃金や物価との密接な関係について解説しましたが、次は日本の名目賃金と諸外国のそれとを比較してみます。 なお、ここで参考にしたのはOECD(経済協力開発機構)のデータです。OECDの加盟国は2021年現在38か国で、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域にまで広がっています。OECD地域の2007年の名目賃金は5.8%アップでしたが、2017年末にはその半分ほどでした。
日本は1995年から2000年までは微妙にダウン
アップとダウンを繰り返す日本とは異なり、ユーロ圏の名目賃金は近年アップ傾向が見られます。2012年には180.8ポイントにまでアップしているのです。2008年のリーマンショックの時期でさえ、ユーロ圏の名目賃金に大きな落ち込みは見られませんでした。
ユーロ圏はアップ・特に顕著なのがアメリカ
アップとダウンを繰り返す日本とは異なり、ユーロ圏の名目賃金は近年アップ傾向が見られます。2012年には180.8ポイントにまでアップしているのです。2008年のリーマンショックの時期でさえ、ユーロ圏の名目賃金に大きな落ち込みは見られませんでした。
参考:OECD(経済協力開発機構)
06各目賃金アップ以外に社員のモチベーションを高める方法は?
言うまでもなく、名目賃金がアップすることは労働者のモチベーションもアップすることにつながりますが、企業の業績によってはそうもいきません。そこで、名目賃金アップ以外にも、社員のモチベーションをアップさせる具体的な方法を伝えます。
福利厚生の充実
社員のモチベーションをアップさせるのに、福利厚生の充実は有効です。無料の社員食堂の完備、リラックスできるレストルームの完備、魅力的な旅行の実施などもすすめられます。 他にも、スマイルの多さを基準に付与するスマイル給、体の健康を保つ努力に対して付与するジム通い給、業務の仕事スピードが優れていることに付与するスピード給など、社員の良い点を探して給与に反映させる企業もあります。
風通しの良い職場にする
また、社員のモチベーションをアップさせるのに、風通しの良い職場にすることも大切です。そのためには、社員が直接上司に意見したり相談を持ちかけたりしにくいことも考えられるため、相談窓口を設置することもすすめられます。
各部署やチーム内での積極的な声かけ
各部署やチーム内で、社員一人一人が積極的に声をかけるシステムも、社員のモチベーションをアップには良いアイデアです。一人一人の良かった点を例え小さな点でもほめ合うことで、社員同士の距離が縮まったり、仲が深まったりします。それが現場全体の雰囲気作りにもつながります。これは、積極的な声かけを導入したした企業の多くが実感しているメリットです。
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07まとめ
言葉は知っているけれど実は詳しく説明できない「名目賃金」について、解説しました。名目賃金の意味、実質賃金との違い、近年の推移と原因などに関する知識だけでなく、名目賃金以外に社内の士気を高める方法についても、この機会に学んでください