公開日:2021/09/09
更新日:2022/10/19

人時生産性とは?注目される背景や向上させる方法を解説

人時生産性とは?注目される背景や向上させる方法を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

今後、労働力人口が減少していくことが予想されるなか、企業の人時性に注目が集まっています。また、実際に企業の経営状況を分析する際、その生産性に着目するケースが増加傾向にあります。本記事では、人時生産性の内容や算出計算方法、人時生産性を向上させるための具体的な方法について解説します。

 

01人時生産性とは

「人時生産性」とは、従業員ひとりが1時間働く際の生産性を指します。そもそも「生産性」とは、投入量に対する産出量の割合を意味します。「どの程度インプットを投入し、それに対しどのくらいアウトプットが得られたか」を判断する指標として、生産性の指標が使われています。 人時生産性は、この生産性をさらに絞り込んで算出されたものです。企業が投入した労働量に対し、どの程度の粗利高があるのかを判断する指標として利用されています。つまり、人時生産性の数値が高いほど、従業員一人当たりの1時間の粗利高が高いことになり、生産性の高さを計測できます。

労働生産性との違いとは

経営判断の指標のなかに、人時生産性とは別に「労働生産性」という指標があります。労働生産性は、投入する労働資源に対してどの程度の成果をあげるのかを判断する際に利用され、産出量÷労働投入量で算出されます。 一般的に労働生産性は、労働者数や総労働時間といった全体の労働投入量に対する、付加価値や生産数量といった従業員一人当たりの産出量を表しており、労働量や付加価値はやや広い概念として扱われます。 一方で人時生産性は、従業員ひとりが1時間当たりに稼いだ粗利高を表します。売上高から売上原価を引いた粗利高を使用して算出することで、ひとり当たりの1時間の純粋な付加価値を表せる指標となっています。

人時売上高とは

人時生産性と比較される指標として「人時売上高」があります。人時売上高は、従業員一人当たり1時間にどの程度の売り上げを出したかを表す数値です。人時売上高は、総労働時間に対する売り上げの割合を求めることから、同じ業種間での生産性を比較する際に有効な数値だと考えられています。 人時生産性も人時売上高のいずれも、企業がきちんと付加価値を生み出して経営しているのかを分析する材料として利用されています。そのため、いずれかを優先するのではなく、両者の指標を含め複数の要素をもとに分析し、総合的な判断が求められています。

人時生産性の計算式とは

人時生産性を割り出す際には、「従業員全員での粗利益高÷従業員の総労働時間」という計算式を用いることで、その企業全体における平均的な人時生産性を弾き出せます。 具体例として、粗利益高1,000万円、従業員の総労働時間が1,000時間のケースを考えてみましょう。計算式は以下の通りです。

  • ・粗利益高:1,000万円
  • ・従業員の総労働時間:1,000時間
  • ・計算式:1,000万円÷1,000時間
  • ・人時生産性:1万円
それぞれの項目について、従業員一人当たりの正確な値が算出できるならば、その従業員個別での生産性が高いか否かを数値化できます。 しかし、大規模工場での大人数による製造であったり、まとまったチームでの仕事であったりすると、個人毎の数値に分けることが必ずしも適切ではなくなるため、企業全体での生産性がより注目されます。

 

 

02人事生産性が注目される背景とは

多くの企業から注目が集められる人事生産性ですが、ここまで注目が高まっている背景には、どのような理由があるのでしょうか。「労働力の減少」「働き方改革による生産性の高い働き方への関心」といったふたつの観点から説明します。

労働人口減少が深刻化している

2060年の労働者人口4,793万人という数値は、ピーク時の約半分の数値です。日本では、第2次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が社会人になって働き始めた1995年頃に労働力人口のピークを迎えました。この時期の労働力人口は8,000万人を突破していましたが、その後減少に転じ、以降は減り続けています。 内閣府の試算によると2060年には65歳以上の高齢者が占める割合は38.1%となり、どの国もかつて経験したことがない超高齢社会へ突入します。近い未来に想定される労働力人口の減少に備えて、企業にも早急な対応が求められているのです。

参考:総務省 第1部 特集 データ主導経済と社会変革

 

働き方改革により生産性の高い働き方が求められている

国をあげて働き方改革が推進されていることもあり、生産性の向上がビジネスの現場で、強く意識されるようになりました。 現在、日本の労働生産性は、主要先進国と比べると最下位の状態にあります。不用意な業務をカットする業務効率化と、余分なコストのカットをしたうえで、従業員が付加価値を生む生産性の高い働き方が求められています。

 

03人時生産性を低下させるロスとは

人時生産性の低下には、いくつかのロスが関連してきます。ロスは、いわば時間の損失であるため、減らすのが理想的です。下記で紹介するロスの内容を参考に、自社の運用に無駄がないか、今一度チェックをしてみてください。

生産ロス

生産ロスとは、製造現場で生じる損失のことです。生産ロスが生じる原因はさまざまで、物品の運搬など製品製造以外の活動に時間を奪われたり、不良品の手直しをしたりすることで生じます。 生産ロスを減らすには、まずロスを可視化するところから着手する必要があります。たとえば、「物品の運搬に時間がかかるのは当然だ」と思っていると、必要以上にその作業に時間がかかっていても気づけません。 自社でどのような生産ロスが生じているのか把握するためにも、業務毎の見直し、時間配分の再設定など、改めての見直しを行うことが先決です。

管理ロス

管理ロスとは、管理上生じる待機時間のことです。管理部門が立てた生産計画や修理計画が、受注変動や調整不備、突発故障などによる、材料待ち、指示待ち、故障修理待ちなどの管理上発生する手待ちロスが該当します。 これは現場でのロスというより管理者のロスであると考えられ、相手があり、自分ではどうすることもできない部分もあるため、どのように計画を立て直すか難しい部分といえます。

動作ロス

動作ロスとは、配置されている作業者の動作、作業方法、レイアウトのまずさなどからくる無駄な動作によって生じる時間的ロスのことです。動作そのものにムダがあったり、資材などを置く場所が悪く歩行時に遠回りを強いられたりなど作業に無駄な動作が生じ、余計な時間を費やすことを意味します。

自動化しないことにより発生するロス

自動化しないことにより発生するロスとは、機械などで自動化できるはずの業務を、人力で行っていることにより生じる時間的ロスです。新たなプログラムの導入は、最初こそコストや教育に時間がかかるものの、中長期的な視点で考えると、必要な投資だと考えられます。

編成ロス

編成ロスとは、ライン設計が悪いせいで生じる時間的ロスを意味します。たとえば、ある工程の所要時間が突出して長い場合に、次工程の従業員が強いられる待機時間などが該当します。あらかじめ、無駄の出ない編成を行うなど、ロスを出さないよう工夫しなければなりません。

 

04人時生産性を向上させる方法とは

人時生産性を向上させるには、「粗利益高を増加」させ、「総労働時間を削減」する取り組みが必要です。しかし、ただ闇雲に取り組んでも効果的な結果は得られません。以下で紹介する、具体的な収益向上の方法や、総労働時間を減少する効果的な手段を参考にしてください。

人員を適材適所に配置する

最適な仕事に従事できている人は、そうでない場合よりも生産性が2.5倍になるといわれています。適材適所な人員配置が実現することで、パフォーマンスの質が上がり、結果的に余分に人員を構えなくて良くなるのです。 従業員それぞれの得意分野や適性を把握し、それぞれのポジションにふさわしい人材を的確に配置すれば、業務効率が向上し粗利益高の増加を期待できます。

業務を効率化させ労働時間を短縮する

業務の中にムリ・ムダ・ムラがあれば、人時生産性は向上しません。こなすのに無理があるスケジュールで仕事を割り当てられると、残業などで労働時間が増加し、本来必要のない無駄な作業が工程に含まれていると、その分ムダな時間を要します。 また、特定の部署や従業員だけに大きな負担が強いられているという、仕事の割り当てにムラのある状況も生産性の低下につながります。業務の中にムリ・ムダ・ムラがないかを今一度見直すことで、業務が効率化され人時生産性の向上につながります。

効果的に人件費の削減を図る

当然のことながら、人件費を削減できれば粗利益高が増加します。また、働く人数や時間を削減できれば、人時生産性の計算式の分母の部分、つまり総労働時間も削減できるでしょう。 ただし、従業員の個々の特性や能力を見極めることなくむやみに人件費を削減すれば、会社の待遇に不満を感じ、優秀な人材が辞めてしまうおそれもあります。人件費や労働時間の削減は、RPAツールや業務効率化ツールの導入、人事評価制度や賃金制度の見直しなど、総合的な視点で判断を下すことが要されます。

事務作業や定型業務を効率化するRPAを導入する

「プロセスを自動化するロボット」RPAを導入することで、人間が行っていた定型業務であるキーボードやマウス操作を自動化し、業務の品質向上と作業時間の短縮を実現できます。 コピー&ペーストや、入力作業がひたすら繰り返される単純な事務作業は、人間の手で行うと疲労やストレスから間違えたり、時間がかかったりすることもあります。その点、RPAであれば、ヒューマンエラーを防ぐことができ、人間が作業する何倍もの速度で処理が可能です。

 

05人時生産性の改善事例

前述した通り人時生産性を改善させる方法は、粗利益高を増加させるか、総労働時間を削減する必要があります。では、具体的にどのような方法で改善を図っているのか、ここでは具体的な事例をご紹介します。

物や情報の流れを改善して生産性が向上した事例

多摩地域を中心に14店舗を展開する総合食品スーパーマーケットの「株式会社さえき」は物や情報の流れの改善、ムダな作業の削減、作業の標準化によって生産性を向上させました。もともと、バックヤードに商品が煩雑に置かれており、スペースが有効活用されていませんでした。また、売り場の商品の在庫を確認して、バックヤードから補充する歩行のムダが生じていたことが課題でした。そこで、1.大物商品(飲料、酒等)と小物商品に分けて整理、2.売り場にストック棚を追加、3.バックヤードのカゴ台車の配置ルールを設定する、という3つの施策を実施しました。この結果、ストック棚の追加でカゴ台車数が削減され、ムダな歩行削減とカゴ台車を取り出す作業を軽減し、年間150時間の労働時間を削減することができました。 このように、小さなムダを見つけ、ルールの設定や少額の設備投資で十分に生産性を向上させることができることがわかります。

【出典】【小売業】スーパーマーケットの生産性向上活動報告

社員の意識改革に労働時間を改善した事例

ZOZOTOWN・WEARなどを運営する株式会社ZOZO(旧株式会社スタートトゥデイ)は、社員の時間外労働が多いことが課題となっていました。そこで、チーム単位で生産性を落とさず効率良く効率良く業務を処理することで、6時間勤務で帰宅できる制度(ろくじろう)を導入しました。この施策のポイントはチーム単位で実施することで、皆で助け合って効率的に業務を遂行しようとする意識が醸成されることです。効果としては、年度により異なるものの、最も効果が出た年では、1日平均労働時間が6時間台になった月もあったようです。現在は、時間短縮だけではなく、生産性を確保しつつ時間になったら切り上げるという意識改革にも繋がっているそうです。 このように、社員の意識改革に取り組むことによって、生産性向上が可能であることがわかる事例です。

【出典】効率性向上に資する取組事例

ITの活用により効率性を向上させた事例

医療用関連機器の製造などを手掛ける株式会社三友製作所は、遠隔地にある工場に生産管理者等が電話で現地作業員に状況を確認していましたが、電話確認ではデータでの十分な状況把握ができないことが課題でした。そこで、生産設備をネットワークに接続し、稼働状況を可視化することで、設備稼働の効率化を図りました。各工場の稼働率が管理用のPCで把握しやすくなり、各工場への業務振り分けが容易になった結果、稼働率が60%から80%超に改善したそうです。また、ネットワーク接続により、稼働データの蓄積・分析が可能となり、生産現場の問題把握、改善にも役立っているそうです。 このように、IT活用によって状況を可視化することで、生産性を高めることができます。


 

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06まとめ

少子高齢化が加速し、労働者人口の著しい減少に拍車がかかったことで、企業もより少ない人員で大きな成果を出さなければならない時代がすぐそこまで迫ってきました。国際的にみても、仕事に対する意識が長時間労働の考え方から、効率的な働き方へと転換しつつあります。日本の企業も、徐々に人時生産性の向上に意識を向け始めています。時代の変化を見越して、人時生産性向上への取り組みをはじめましょう。

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