研修費として経費計上できる条件とは|課税・非課税の具体例を紹介

会社に勤めていると業務に必要な免許や資格更新を行う指示をうける場合があります。専門性の高い業種の場合には、この頻度が高いと言われていますが、その際の経費は会社が負担することになるのでしょうか。本記事では、研修費はどこまで企業で負担するべきかをテーマについて解説していきます。正しい会計処理、知識や技術の習得を実現していきましょう。
- 01.研修費とは
- 02.研修費の仕分けに用いる勘定科目
- 03.研修費として経費計上できるもの
- 04.研修費として経費計上できないもの
- 05.オンライン研修|Schoo for Business
- 06.まとめ
01研修費とは
研修費とは、社員が業務に必要な知識やスキルを習得するために受講する研修にかかる費用のことを指します。具体的には、受講料、教材費、交通費、宿泊費などが該当します。
一般的に、業務に直接関係する内容であれば、会社の経費として処理することが可能です。たとえば、業務に必須の資格取得研修や、業務改善を目的とした実務スキル研修がこれに該当します。
また、受講が会社からの命令である場合は、内容が業務と直接関係していなくても、研修費は会社が負担します。一方で、個人的なキャリアアップ目的で申し込んだ研修は、会社負担の対象とならないケースがあるため注意が必要です。
02研修費の仕分けに用いる勘定科目
研修費の仕分けに用いる勘定科目には、以下があります。
- 1:研修費
- 2:福利厚生費
- 3:新聞図書費
- 4:前払費用
研修にかかる費用は、内容や支払いタイミングに応じて、いくつかの勘定科目に仕分けできます。業務関連の講習会費は「研修費」、自己啓発系の支給は「福利厚生費」、テキスト代は「新聞図書費」、事業年度をまたぐ支払いは「前払費用」として扱われます。勘定科目を正しく使い分けることが、正確な会計処理につながります。
1:研修費
業務に必要なスキルや知識を社員に習得させる目的で支出した研修関連費用は、「研修費」として処理します。講習会や外部研修への参加費用、会場費、教材代などが該当し、関連費用を一括で管理したい場合に便利な勘定科目です。
(仕訳例)従業員が業務研修に参加し、受講料5万円を現金で支払った場合:
借方 | 貸方 |
研修費 50,000円 | 現金 50,000円 |
2:福利厚生費
福利厚生費は、給与以外で全従業員に公平に支給される報酬や手当などに適用されます。たとえば、資格取得費用を全従業員対象に補助する場合などが該当します。個別の業務命令ではなく、任意参加であっても会社が支給する場合に利用されます。
(仕訳例)資格取得支援として、従業員に現金1万円を支給した場合:
借方 | 貸方 |
福利厚生費 10,000円 | 現金 10,000円 |
3:新聞図書費
書籍・新聞・雑誌などの購入費用は「新聞図書費」として計上できます。研修用のテキスト代もこれに含まれる場合があり、研修費全体とテキスト代を分けて管理したいときに使われます。ただし、研修費に含めても問題ありません。
(仕訳例)研修用テキスト50冊分として10万円を現金で支払った場合:
借方 | 貸方 |
新聞図書費 100,000円 | 現金 100,000円 |
4:前払費用
研修の実施前に費用を支払った場合、決算時点で未消化の分は「前払費用」として処理します。たとえば、数ヶ月にわたる研修の受講料を一括で支払った際は、当期分だけを研修費に計上し、残りは翌期以降に繰り延べます。
(仕訳例1)5ヶ月間の研修費として現金で50万円を支払い、研修は当期〜翌期に実施される場合:
借方 | 貸方 |
前払費用 500,000円 | 現金 500,000円 |
(仕訳例2)うち3ヶ月分(当期分)30万円を、決算時に研修費へ振替えた場合:
借方 | 貸方 |
研修費 300,000円 | 前払費用 300,000円 |
03研修費として経費計上できるもの
研修にかかる費用は、講師への謝礼や宿泊費、交通費、教材費、飲食代、通信費など、研修の実施や参加に直接関係する支出であれば経費として計上できます。ここでは、代表的な6つの項目について、研修費として扱える内容と注意点を紹介します。
1:外部講師への謝礼
社外の専門家や講師を招いて実施する研修では、講師への謝礼が発生します。これらの支払いは「研修費」として経費計上が可能です。なお、金額は契約内容や講演の規模によって異なりますが、5万円〜10万円前後で設定されるケースが多いです。支払時には講師側が個人事業主か法人かで、源泉徴収の有無が変わるため注意が必要です。事前に契約条件や支払形態を明確にし、研修内容に即した報酬であることを示す書類も保管しておくとよいでしょう。
2:研修で発生した宿泊料金
研修の実施場所が遠方の場合や複数日にわたる内容の場合、宿泊が伴うケースがあります。このような場合に発生した宿泊費は、研修に直接必要な支出と認められ、経費として計上することができます。ビジネスホテルや研修施設内の宿泊費が該当し、社員個人の旅行などとは明確に区別される必要があります。宿泊先の領収書には宿泊者名と日付が明記されていることを確認し、業務目的の記録もあわせて保存しておきましょう。
3:研修会場までの交通費
研修会場までの往復にかかる電車・バス・新幹線などの交通費も、業務上の研修に関する移動であれば経費として認められます。経路や金額が明確に分かるよう、ICカードの利用明細や切符の半券、領収書などを残しておくことが重要です。特急料金や指定席料金も、妥当性があれば含めることが可能です。タクシーを利用した場合は、業務上のやむを得ない理由を記録することで、経費として処理できるケースがあります。
4:研修中に生じた飲食代
研修に付随して発生した昼食代や懇親会などの飲食費も、条件を満たせば経費に計上できます。たとえば、全社員が対象となる昼食の手配や、研修終了後の情報交換を目的とした軽食提供などが該当します。ただし、業務との関連性や参加者の範囲が明確でない場合、交際費とみなされる可能性もあるため、実施内容や目的を記録しておくことが必要です。飲食費の領収書は、日付と店舗名、金額の明記されたものを保存しましょう。
5:研修で用いる教材の費用
研修に使用するテキストや資料、ワークシートの印刷費などは、「教材費」として研修費に含めることができます。外部業者に教材を発注した場合の費用や、社内で自作するための印刷代なども対象です。また、参加者に配布する資料の製本やバインダーの購入費用も含めることが可能です。業務研修に関連していることが明確であれば、教材費の内訳を一括して研修費で処理することも認められます。
6:研修に関連する通信費
オンライン研修を実施する場合には、通信回線の利用料やウェビナーツールの使用料なども必要経費として計上できます。ZoomやMicrosoft Teamsなどの有料ライセンス費用、録画配信に必要なクラウドストレージの契約費などが該当します。これらの費用は、研修の準備・実施・参加に不可欠であれば「研修費」として扱うことが可能です。定額プランの場合は、他の用途と区別して研修用に利用した範囲を明確にしておくことが求められます。
04研修費として経費計上できないもの
研修費のなかには、内容によっては経費に計上できないものもあります。税務上、非課税で処理するには「業務に直接必要であること」「適正な金額であること」「対象者に不公平がないこと」などの要件を満たす必要があります。ここでは、給与課税との関係や判断の具体例について解説します。
1:職務に直接必要であれば給与課税が非課税となる
研修費の経費処理において重要なポイントは、「業務との直接的な関連性」です。たとえ会社が費用を負担していても、業務に直接必要でない研修や資格取得であれば、従業員への給与とみなされ、課税対象となります。たとえば、英会話が不要な職務にある従業員が英会話教室へ通うケースや、経理担当でない社員が簿記資格を取得する場合などが該当します。
一方、業務に密接に関係し、かつ必要性が明確である研修費は、非課税での経費計上が認められます。税務上の判断では「直接必要」であることと、「適正な金額」であることの両方が求められます。判断が難しい場合には、税理士などの専門家へ相談することが望ましいです。
▶︎参考:国税庁|No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき
2:職務に直接必要と判断される具体例
非課税として処理できる代表的な例には、営業担当が営業力向上の研修を受講するケースや、エンジニアが業務で使用するプログラミング言語のセミナーに参加するケースがあります。これらは職務に「直接」必要な知識・技能と判断されやすく、会社負担でも給与とされないケースが一般的です。
一方で、自己啓発系の講座や将来に備えた資格取得など、間接的な関連しかないものは課税対象となります。加えて、業務に必要な資格であっても、研修対象者の選定に偏りがある場合や、費用が著しく高額な場合には、「適正性」や「公平性」が問われ、非課税と認められない可能性があります。
▶︎参考:国税庁|事業主が従業員等の研修に要する費用を負担した場合における課税上の取扱いについて
▶︎参考:国税庁|社員の通信教育費を負担するときの仕入税額控除の可否
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05オンライン研修|Schoo for Business

オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、様々な種類の研修に対応しています。階層別研修からDX研修、部署別の研修まで幅広いコンテンツで全てを支援できるのが強みです。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 9,000本 ※2024年2月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
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大企業から中小企業まで幅広く導入

Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで幅広く導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
Schooのオンライン研修に関する質問
ここからは、Schooのオンライン研修についてのよくある質問を、Q&A形式でご紹介します。
質問:Schooのオンライン研修の内容について教えてください。
回答:Schoo for Businessを使ったオンライン研修では、200種類以上の研修テンプレート、9,000本以上の授業から自社にぴったりの研修設計をすることができます。新入社員研修・管理職研修などの階層別の他、DX研修やコンプライアンス研修などテーマ別のテンプレートも充実しています。
質問:Schoo for Businessの特長はなんですか?
回答:国内最大級となる9,000本以上の動画数でビジネススキルから政治・経済・金融・デザイン、プログラミング、 DX、AIまで全21カテゴリの幅広い領域を網羅しているため、社員研修から自律学習まで幅広くご活用いただけます。各業界やテーマにおけるトップランナーを講師に招き、先端の知識が学べるようになっています。
質問:当社の状況を踏まえたオンライン研修パッケージは作れますか?
回答:授業を組み合わせてオリジナルの研修パッケージを作成することが可能です。 またスクーでは階層や職種に応じて様々な研修テンプレートをご用意しているので、1から研修を作る手間をかけずに社員に合った研修を始めることもできます。まずはお気軽にご相談ください。<お問い合わせフォーム>
06まとめ
研修費を経費として正しく計上するには、「職務に直接必要であるか」「適正な金額であるか」「全従業員を対象としているか」といった観点が重要です。とくにeラーニング研修のように個別受講のケースでは、業務命令かどうか、受講内容が職務と明確に関係するかを確認したうえで判断する必要があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。制度を正しく理解し、適切な会計処理につなげましょう。