DXを推進する目的とは?DXにおける課題と目的達成のための方法を解説する
この記事では、DXの定義や類似用語との違い、DXにおける課題やメリットについて解説しています。今後、自社内でDX化を推進する際の参考にして頂きDX化の成功と業務の効率化を実施していきましょう。
- 01.DXとは
- 02.DXの目的とは
- 03.DXのメリットとは
- 04.業界別|DX推進の事例
- 05.組織全体におけるDXを行う目的
- 06.DXを推進するための5つのステップ
- 07.Schoo for BusinessのDX研修
- 08.まとめ
01DXとは
DX化とは何を意味しているのでしょうか。ここでは、DXの定義と類似用語として混同されるIT化との違いについて解説していきます。DXとIT化は混同されてしまいがちな用語であるため、その違いを理解しておくことは大切です。
DXの定義
「DX」は「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。スウェーデンのウメオ大学教授 Erik Stolterman氏が2004年に発表した著書内で触れた「デジタル技術の変化によってすべての人々の生活に影響を与えること」発端しています。現在では、DXは「IT技術を有効活用して既存の仕組みから脱却し、新たなサービスやビジネスモデルを生み出したりライフスタイルを変容させたりすることで人々の生活を豊かにすること」と定義付けられていることをおさえておきましょう。
参考:Erik Stolterman「Information Technology and the Good Life」
IT化との違い
DXとITは、どちらもデジタル技術を活用していくことを意味しています。IT化は業務の効率化や生産性の向上、コスト削減などを目的としてデジタル技術を導入することに対して、DXは、デジタル技術を手段と用います。ビジネスモデル、組織、さらには新しい事業へと広い範囲での変革を促し、新たな企業の確立を目指すことを目的としている点に違いがあります。デジタル技術を用いる点は同じですが、DX化の方が広義となり、示す内容も企業運営全体を変革する側面をもつため影響力も大きいものとなります。
02DXの目的とは
DXの目的はデジタルトランスフォーメーション(DX)の主な目的は、企業が変化する環境に適応し、競争力を向上させることです。これには、既存システムの老朽化対策として新しいデジタルテクノロジーの導入が含まれ、業務プロセスの効率化が図られます。同時に、DXは消費者ニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応し、顧客中心の価値提供を実現します。これにより、企業は市場競争において優位性を築き、持続的な成長を達成することが期待されています。
企業の競争力強化
企業においては、常に競合他社との比較を行い自社のサービスを展開しています。DX化が行われることで、既存業務や既存システムの見直しや改訂を行うことで新たな顧客開拓や新サービスを展開することが可能となるため、企業の競争力強化を期待できます。競争力の強化により企業の売上拡大などが期待でき企業の成長力も格段に向上することに期待が持てます。企業は常に自社の売上拡大を目指しているため、競争力の向上は自社の売上拡大に繋がる大きな目的となります。
既存システムの老朽化対策
基盤システムを始め業務システムの老朽化の対応についてもDX化の目的になります。システム導入から年数を経過している場合には、システム自体のサポート期間の終了、機能追加などによる複雑化が想定されます。こうしたシステムの老朽化に対応するのもDX化の目的であり得意とする側面です。DX化を行うタイミングで既存システムを始め業務システムの見直しや改修、入替を検討し実施することは業務効率や業務そのものの見直しを行うことになり業務の効率化や簡素化に貢献できる可能性があります。それ以外にも、現在のシステムを構築した際の担当者が既に退職しているなどシステム自体がブラックボックス化している可能性もあり、DX化を行うタイミングで可視化や整理を行うことが可能です。
デジタル化による業務効率化
デジタル化が進むと処理時間の短縮や作業工程の見直しによる業務効率化をはかることが可能です。DX化は基盤システムからの見直しや改訂が行われるため、業務のあり方やプロセスの見直しが促進されます。今までに行っていた業務プロセスを見直し無駄の排除などが進むことで業務効率は格段にあがるという期待を持つことが可能です。注意しておきたいのは、IT化とは異なり単純にデジタル化を進めるということではなく、DX化はデジタル化という手段を用いて企業成長をはかること、企業内の改革をはかることを意味している点を忘れないでおきましょう。
消費者ニーズの変化
DXの目的として、消費者ニーズの変化に適応することが挙げられます。現代のデジタル化の進展により、消費者はより便利で個別化されたサービスを求めるようになりました。DXは、企業が消費者の変化するニーズに敏感に対応し、顧客エクスペリエンスを向上させるための戦略的アプローチです。データとテクノロジーを活用して、消費者の行動や嗜好を把握し、それに基づいて製品やサービスを最適化することが可能です。そのため、DXによって、企業は迅速かつ柔軟に新たなニーズに応え、顧客との関係を強化することができます。このように、消費者の期待に合致した体験を提供することで、企業は競争優位を確保し、成長と成功を実現するのです。
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03DXのメリットとは
DX化を行う目的をもとにDX化を実施するメリットについて解説していきます。DX化を行うことで企業には、どのようなメリットが生まれてくるのでしょうか。DX化において生まれるメリットについて確認し自社におけるメリットとはどこに当たるかを検証してください。
生産性の向上
DX化推進の最大のメリットは、デジタル化による生産性向上や正確性の向上です。デジタル化を行ない業務の最適化を促進できれば作業時間の短縮、人件費削減、ヒューマンエラー率の低下に期待ができます。これらが実現することで、従業員はより重要度の高い業務へ集中することも可能になります。日常の業務に追われ着手できなかった業務にシフトすることは、企業にとっても大きな意味を持ち企業成長には欠かせないものです。
BCPの充実
BCP(事業継続計画)とは、災害やシステム障害などの危機的状況に陥った際に被害を最小限に抑えることやスムーズに業務を継続するための対策などをあらかじめ決めておく計画を指します。DX化が推進され業務効率化が行われていれば、こうした不測の自体への対応も柔軟にできます。また、システムや業務プロセスが簡素化されていることで早期回復にも期待できるため、BCPの充実は企業のリスクヘッジの観点かも重要なメリットといえます。企業は、危機的状況に陥った後にどれだけの短期間で復旧できるかに大きな意味を持つと考えており、復旧までに長時間を要した場合には、時には企業運営ができない結果となる場合もあるため、DX化を推進する際には作成済みのBCPの見直しや改訂についても行うことを心がけておきましょう。
IT化の促進
DX化推進はIT化を手段として実施していきます。従来であれば基盤システムの制限や他システムの関係でIT化できなかった業務工程や仕組みをシステム化することも可能になります。これは、基盤システムを始め業務システムを再検討し再構築するために実現できるメリットです。また、業務プロセスを見直すことで従来の機能を整理し組み直すことにより処理の効率化にも期待できます。
リモートワークの推進
デジタル化の促進により、拠点を選ばずに業務ができる環境を構築することも可能です。自宅での処理も問題なく行えることにより、従業員はどこにいても業務を遂行できます。リモートワークを推進できる環境が構築できれば、どこに居ても業務ができるため従業員の勤務地は広く拡大され時には遠く離れた場所での業務遂行も可能となり、人材確保における有利性が増してくるメリットです。現在では、多様な働き方が存在しており企業においても従業員の働きやすさを追求しなければいけない時代となっています。こうした対応についてもDX化が進むことで実現することができると理解しておきましょう。
市場の変化に適応しやすい
DXのメリットとして、市場の変化に迅速かつ柔軟に適応できるという点が挙げられます。DXは既存のビジネスモデルとプロセスを見直し、デジタル技術を活用して効率化や革新を図るアプローチです。これにより、素早く情報を収集し市場の動向や顧客のニーズを把握することができます。また、DXによって導入されるデジタルツールやプロセスは柔軟性が高く、簡単にカスタマイズできます。そのため、ビジネスはスピーディーに変更や拡張が可能で、市場の変化に素早く対応することができます。さらに、DXはイノベーションを促進します。デジタル技術の活用によって新しいビジネスモデルやサービスを生み出し、競争力を向上させることができます。このように、DXは市場の変化に適応しやすく、迅速な対応やイノベーションを通じてビジネスを成長させることができるのです。
04業界別|DX推進の事例
ここまで、DXの目的や、推進する理由を紹介しました。本章では、業界別に見たDXの推進事例をご紹介します。
物流業|ヤマト運輸
ヤマト運輸は、DXを推進し、物流業界における効率性とサービスの向上を実現しています。その中でも注目すべき事例の一つが、デジタル技術を駆使した「ヤマトのeビジネス」です。このプロジェクトでは、荷物の受け取りや発送などの物流プロセスを効率的かつ顧客中心に再設計しました。 具体的には、スマートフォンアプリ「ヤマトのeビジネス」を導入し、利用者は自宅での荷物の受け取りや発送を手軽に行えるようになりました。アプリを通じて宅配便の受け取り日時の指定や再配達のリクエストが可能で、顧客は柔軟かつ便利な受け取りオプションを享受できます。また、ドライバーもスマートフォンを活用し、効率的な荷物の収集・配送が可能になりました。 このDXプロジェクトにより、ヤマト運輸は物流のデジタル化に成功し、顧客満足度向上と業務効率の向上を達成しています。スマートなサービス提供と柔軟な物流オプションの導入により、ヤマト運輸はデジタル時代の要請に適応し、競争力を強化しています。
製造業|ファナック
ファナックは、製造業向けのDXを推進し、自社の生産プロセスを劇的に変革しました。その中で注目すべき事例は、人工知能(AI)とIoT(Internet of Things)を活用した「FIELD system」の導入です。このシステムは、製造現場全体のモニタリングと効率化を可能にします。 FIELD systemでは、工作機械やロボットなどの製造機器がセンサーや通信機能を搭載し、リアルタイムでデータを収集。これにより、生産ライン全体の稼働状況や製品品質を把握しやすくなりました。また、AI技術を駆使して機器の故障予知やメンテナンス計画を最適化することで、生産ラインの停止を最小限に抑え、生産性を向上させています。 FIELD systemは、データの統合と分析によって生産プロセスを最適化し、生産現場の可視化を実現。これにより、ファナックは製造プロセスの効率向上や機器のトラブル予防に成功し、競争激化する製造業において、高い生産性と柔軟性を確立しています。
自治体|神戸市
神戸市は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、市民サービスの効率向上と生活の利便性向上を図っています。その一環として注目される事例が、「神戸市オープンデータポータル」の構築です。このポータルは、市が保有するデータを市民や企業と共有し、新たな価値の創造を促進するために構築されました。 神戸市オープンデータポータルでは、さまざまな分野のデータがオープンに公開されており、市内の交通、観光、環境、防災などに関する情報が市民や開発者に利用可能です。例えば、交通データを利用して効率的な移動手段を見つけたり、観光データを基に新しい観光アプリを開発したりすることが可能です。 この事例により、神戸市は市民と協力して都市の魅力を最大限に引き出し、新たなイノベーションの発展を促進しています。オープンデータの提供により、市全体が持つ情報を市民や企業と共有し、共に都市の発展に寄与することが可能になり、市民参加型のデジタル社会の構築が進んでいます。
05組織全体におけるDXを行う目的
組織全体としてDXを行う目的にはどのようなものがあるのか、ここで解説します。
顧客データの有効活用
クラウドサービスなどを活用したツールを導入することで、膨大なデータを一元管理することができ、ビジネスへの効果的な活用ができるようになりました。今までは事業部ごとに分かれて管理していた情報も、ツールの導入によってデータベースとして一元管理ができます。豊富な顧客データの分析を活用して、顧客ニーズの的確な把握を助け、ビジネスの促進に繋がります。
既存システムの老朽化対策
基盤システムを始め業務システムの老朽化の対応についてもDX化の目的になります。システム導入から年数が経過している場合には、システム自体のサポート期間の終了、機能追加などによる複雑化が想定されます。こうしたシステムの老朽化に対応するのもDX化の目的であり得意とする側面です。DX化を行うタイミングで既存システムを始め業務システムの見直しや改修、入替を検討し実施することは業務効率や業務そのものの見直しを行うことになり業務の効率化や簡素化に貢献できる可能性があります。それ以外にも、現在のシステムを構築した際の担当者が既に退職しているなどシステム自体がブラックボックス化している可能性もあり、DX化を行うタイミングで可視化や整理を行うことが可能です。
働き方改革への対応
昨今では働き方改革への対応として、残業時間の削減などの必要性が叫ばれています。 DXを進めることで、これまで紙媒体でやり取りなどで時間がかかっていた業務も、DX化によってデータとして保存、活用ができるようになり、業務時間の削減が可能になりました。また、これまでは人の手で作業する必要があった業務も自動化され、業務が効率化されます。業務効率化は結果として、残業時間に加えてコストの削減につながるので、組織としてDXを行う目的として掲げている企業も少なくありません。
06DXを推進するための5つのステップ
組織全体としてDXを行う目的にはどのようなものがあるのか、ここで解説します。
戦略策定
DXの成功のためには、明確な戦略が必要です。戦略策定を実施することで、組織のビジョンや目標を考慮し、DXの方向性を明確にします。たとえば、顧客エクスペリエンスの向上、業務プロセスの効率化、新たなビジネスモデルの探求などが戦略の柱となるでしょう。また、DXのための予算やリソースの配分も検討します。
体制の構築
DXを実現するためには、組織内に適切な体制を整える必要があります。体制の構築では、デジタル専門のチームや担当者を組織内に配置することが重要です。デジタル専門のチームや担当者を配置し、組織全体での関与と責任を明確にしましょう。また、必要な場合には外部のパートナーシップを構築することも考慮してください。
現状分析とツールの選定
組織のデジタル化の準備度や課題を把握するため、現状分析を行い、組織のデジタル化の準備度や課題を分析します。また、必要なツールやテクノロジーを選定し、導入計画を策定します。具体的には、ビッグデータ分析、クラウドサービス、AIなどが挙げられます。これらは、組織のニーズに合わせて選定していきましょう。
デジタル化の推進
選定したツールやテクノロジーを活用し、デジタル化を推進します。たとえば、業務プロセスの自動化やオンラインチャネルの拡充、データの収集と分析、AIや機械学習の導入などが挙げられます。また、デジタル文化の醸成や社員のスキルアップのためのトレーニングも必要不可欠です。これらを通して、社内の変革を進めていきましょう。
継続的なPDCA
DXは継続的な取り組みが必要です。PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を繰り返し、進捗をモニタリングし、必要に応じて戦略やアクションプランを見直します。データの収集と分析を通じて、成果や課題を把握し、改善策を導き出します。また、顧客のフィードバックや市場の変化を捉え、迅速かつ柔軟に対応することも重要です。このプロセスを継続的に繰り返すことで、組織は持続的に成果を上げることができます。
07Schoo for BusinessのDX研修
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08まとめ
本記事では、DXの目的をテーマにDX化の定義や目的、企業でDX化を進めることでのメリットについて解説しています。DXと一言で表すことは簡単ですが、実際にDX化で期待できることを理解しておくことで、自社がDX化を促進すべきかの判断ができます。本記事の内容をもとに自社におけるDX化の目的を整理し企業成長に結び付けていきましょう。
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経済産業省の商務情報政策局 情報技術利用促進課でDXリテラシー標準化の検討会を行っている同課の金杉 祥平氏をお招きし、「経済産業省が取り組むデジタル人材育成プラットフォーム」について語っていただいたウェビナーのアーカイブです。デジタル人材要件の定義や、リスキリングするための構造化された項目、さらに経済産業省で構想している人材育成プラットフォームについてもお話しいただいております。
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登壇者:金杉 祥平様経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐(企画)
2006年に経済産業省に入省。過去には、再生可能エネルギーの推進、家電製品の安全基準の整備、電気事業制度のルール整備、福島第一原子力発電所の廃炉推進に従事し、2021年5月から現職。情報技術利用促進課では、地域企業・産業のDXの実現に向けて、デジタル人材の育成を推進するため、デジタル知識・能力を身につけるための実践的な学びの場を提供する「デジタル人材育成プラットフォーム」の制度設計を担当。