デジタル人材育成とは?必要なスキルや進め方を詳しく解説

企業が競争力を維持し、市場変化に柔軟に対応するにはDX推進が不可欠です。そしてこれを実現するには、AIやクラウドなどのデジタル技術を活用し、新たな価値創造を推進できる人材の育成が重要です。本記事では、企業にとっての喫緊の課題である「デジタル人材育成」について、その必要性と具体的な育成ステップを解説します。
- 01.デジタル人材とは?
- 02.経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」とは
- 03.デジタル人材が必要とされている理由
- 04.デジタル人材を育成するには?
- 05.デジタル人材育成の進め方
- 06.まとめ
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■資料内容抜粋
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

01デジタル人材とは?
▶︎参考:Schoo|デジタル人材の育成・確保
デジタル人材とは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために不可欠な専門スキルを持つ人材を指します。
Schoo授業「DXレポートから読み解く『組織変革』と『デジタル人材育成・確保』へのアプローチ」に登壇する経済産業省の松本理恵氏によると、DX推進にはビジネス企画からシステム実装まで多様な役割が必要になるため、求められる人材類型にはさまざまな議論が存在します。
そのため国内統一の定義はないものの、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の定義を参考にすると、添付の画像のようにデジタル事業を主導するプロダクトマネージャーや、企画立案を担うビジネスデザイナーなどの職種が該当します。
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経済産業省商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐
2009年、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。同年に経済産業省に入省し、産業技術政策、グローバル産業政策等を担当した。2015~2018年、日本大使館の経済担当アタッシェとしてイスラエル(テルアビブ)に駐在し、日・イスラエル経済関係の深化に尽力。現在は、経済産業省情報技術利用促進課(ITイノベーション課)で、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援や、IT人材の育成などを手がける。
02経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」とは
デジタルスキル標準は、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定・公表した、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に必要な人材育成の指針です。
世界的にDX推進が重要視される中、日本におけるDXの素養や専門性を持った人材の不足が課題となっているとの考えのもとに策定されました。
デジタルスキル標準の中には、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2種類のドキュメントが含まれています。前者ではすべての人がDXを自分ごととして捉えるために必要なスキルや考え方、後者ではDXの専門職種につく人材に求められる役割やスキルが体系的に定義されています。
▶︎参考:経済産業省|デジタルスキル標準
03 デジタル人材に必要なスキル
デジタル人材に必要なスキルは、主にビジネス変革、データ活用、テクノロジー、セキュリティ、パーソナルの5つが挙げられます。
▶︎参考:経済産業省|デジタルスキル標準
ビジネスイノベーション
ビジネスイノベーションは、デジタル技術を活用し、顧客や社会に新しい価値を創造し、ビジネスモデルを変革する能力です。具体的には、ビジネス戦略の策定・実行、プロダクトマネジメント、データ活用戦略の設計、新たなビジネスモデルの設計、業務変革の推進など、DXを主導するスキルが含まれます。
データ活用
データ活用は、データを収集・解析し、その仕組みを設計・運用する能力を指します。具体的には、数理統計や機械学習を用いた高度なデータ分析、データ活用基盤の設計・実装を通じて、事業課題を解決し、新たなビジネス価値を創出するスキルが求められます。
テクノロジー
テクノロジーは、最新のデジタル技術を習得し、システムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う能力を指します。具体的には、ソフトウェア開発(Web、バックエンド、クラウドインフラ活用)、コンピュータサイエンス(データ構造、アルゴリズム)、IoTやAIなどの先端技術に関する知識と実践力が求められます。
セキュリティ
セキュリティは、サイバーセキュリティリスクを適切に管理する能力を指します。具体的には、セキュリティ体制の構築・運用、情報やサイバー空間のセキュリティマネジメント、インシデント発生時の影響抑制と事業継続、プライバシー情報の保護が含まれます。また、セキュアなシステム設計・開発・構築や運用・保守・監視を行う技術力も求められます。
パーソナルスキル
パーソナルスキルとは、専門知識に加え、DX推進を牽引するリーダーシップや協調的なコミュニケーション能力です。また、創造的な問題解決、批判的思考、変化への適応力といった能力も含まれ、DX推進に不可欠と言えます。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

04デジタル人材が必要とされている理由
デジタル人材が注目され育成の必要性が高まっている背景には、市場環境の変化があります。企業はDX推進を通じて市場変化に対応する必要がある一方、専門人材の不足がボトルネックとなっているのです。ここではそれらの理由について、詳細をご説明します。
DXを推進する人材が不足している
デジタル人材育成が必要とされている最大の理由は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する専門人材が不足しているためです。例えばIPAが公表する「DX動向2025」のレポートによると、対象企業のうち85.1%がDX推進人材について不足(やや不足、または大幅に不足)と回答しています。
そして同レポートによると、全体的に不足が指摘されるデジタル人材のなかでも最も不足しているのが、DXの取り組みをコーディネートして全体を指揮する「ビジネスアーキテクト」タイプの人材です。最先端デジタル技術を活用してビジネスモデルを描き、新しい価値を創出し、それを実装する人材がいなければDXは円滑に進みません。このような状況から、企業にとってデジタル人材の育成・確保が喫緊の課題となっています。
▶︎参考:IPA|DX動向2025
市場の急激な変化に柔軟に対応するため
デジタル人材が必要とされている背景には、企業をとりまく市場の急激な変化もあります。企業は変化に柔軟に対応し、競争優位性を確保する必要があるのです。
具体的には、急速に進む少子高齢化、働き方や価値観の多様化、テクノロジーの飛躍的な発展、グローバル化などが挙げられます。大きな環境変化の波の中で企業は、労働力の不足に対する生産性の向上、そのためのテクノロジーの活用、変化する消費者への対応などをスピード感もって対応していくことが求められています。
そのような環境下でデジタル人材は、最先端のデジタル技術を駆使して新たな製品・サービスやビジネスモデルを創出し、変革を推進することで、企業が市場での優位性を維持し続けるために不可欠な存在なのです。
企業におけるDX推進が急務となっている
加えて、DX推進が企業にとって「急務」であることも、人材育成が注目される一つの理由です。DX対応が遅れるほどに、企業にとって不利な状況が積み重なっていきます。具体的にはレガシーシステムの保守費、障害リスクの増大、セキュリティリスクの増大などが挙げられます。また、DX推進には社内フローや業務内容の変化が伴います。企業文化や制度を含む変革には年単位の時間が必要であることからも、早期の着手が必要とされるのです。
05デジタル人材を育成するには?
デジタル人材を育成する方法には、(1)研修・(2)OJT・(3)eラーニングの3つが主にあります。この章では、それぞれの方法について詳しく紹介します。
研修(社内・外部)
社員研修は、社員が体系的にスキルを習得することができる育成方法です。研修の種類には、社内で講師を立てて実施する「社内研修」と、外部企業に依頼する「外部研修」の主に2種類があります。デジタル人材育成の場合は、講師に専門的な知識が求められるので、研修講師を社内からアサインするのが難しいかもしれません。そのため、外部企業も活用しながら、研修の内容ごとに内製と外注を使い分けても良いでしょう。
OJT
OJTは、現場での実践を通じてスキルの習得をする育成手法です。実際の業務課題解決を通じた育成方法なので、実践的なスキルが身につくというメリットがあります。一方で、指導できる先輩社員が不足しているという現場の事情もあるので、研修とOJTを組み合わせた育成を考えると良いでしょう。
eラーニング
eラーニングは、時間や場所に縛られず、デジタルスキルを学習できる育成手法です。デジタルスキルの基礎から専門分野まで、自社の状況に合わせて学習コンテンツを選び、効率的に進めることができるのがメリットと言えます。また、育成コストを抑えつつ社員のスキルアップを図れることも利点です。
具体的には、Schooのような研修も実施できるオンライン学習サービスを活用する方法もあれば、経済産業省の「マナビDX」や「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」といったポータルサイトを活用する方法もあります。
▶︎参考:Schoo
▶︎参考:マナビDX
▶︎参考:巣ごもりDXステップ講座情報ナビ
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経済産業省商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐
2009年、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。同年に経済産業省に入省し、産業技術政策、グローバル産業政策等を担当した。2015~2018年、日本大使館の経済担当アタッシェとしてイスラエル(テルアビブ)に駐在し、日・イスラエル経済関係の深化に尽力。現在は、経済産業省情報技術利用促進課(ITイノベーション課)で、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援や、IT人材の育成などを手がける。
06デジタル人材育成の進め方
デジタル人材育成は、(1)現状分析と目的の明確化、(2)育成対象者の選定、(3)手法・プラン設計、(4)評価・アクションプラン設定の4ステップで進めます。
1:現状分析と目的の明確化
デジタル人材育成の最初のステップは「現状分析と目的の明確化」です。まず、企業の抱える現状課題とビジネス戦略、そして従業員の現在のスキル状態を棚卸しします。その内容を踏まえ、育成のゴールを具体的かつ測定可能な形で設定しましょう。
このステップの目的は、「自社が目指す姿(To-Be)」に対して、現状(As-Is)でどのようなデジタルスキルが不足しているのかを明らかにすることです。これにより、理想の状態まで最短距離で進むことができるようになります。
2:育成対象者の選定
次に、明確化した「求める人物像」や「必要なスキル」に基づき、具体的な育成対象者の選定基準を決めます。育成リソース(時間・コスト)には限りがあります。設定した目的に基づき、育成対象者を戦略的に選定する必要があります。
いきなり全方位で育成を始めるのではなく、例えば「まずは全社のリテラシー向上と、主要部門のDX推進リーダー育成から始める」など、優先順位をつけて着手することが成功の鍵です。
3:育成手法やプランの設計
続いて、育成手法やプランの設計を行います。前のステップで対象となった人材のスキルレベルと育成目的に合わせ、体系的な計画を立てましょう。
手法としては一つの手法に固執せず、複数の手法を組み合わせる「ブレンデッドラーニング」が効果的です。例えば、eラーニングや外部研修で基礎知識を効率的に習得させつつ、OJTを通じて実際の業務でデジタルスキルを実践・定着させるなどです。育成手法の選定は、社員の状況を考慮しつつ、業務を阻害しないような配慮もすると良いでしょう。
4:評価・アクションプランの設定
育成はやりっぱなしでは意味がありません。効果を測定し、その結果を次の施策に活かすPDCAサイクルを回す仕組みが不可欠です。「評価・アクションプランの設定」では、実施した育成の効果を振り返り、個人のスキル習得度を評価します。
具体的にはスキルマップやデジタルスキル標準を活用し、習得スキルを可視化することで、目標とのギャップを明確にするとよいでしょう。また評価の際には、研修などを通じて学んだ内容の理解度だけではなく、育成対象者の実際の行動が変化したか、業績への影響はどうだったのかという点も見るようにします。
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・研修への活用方法
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07まとめ
デジタル人材は、DX推進や市場変化対応に不可欠であり、その育成は企業にとって喫緊の課題です。現状分析から評価まで、4つの体系的なステップを踏み、研修・OJT・eラーニングなどを効果的に組み合わせることで、自社に合ったデジタル人材育成を成功させ、DXを推進しましょう。