組織成長を促すエンパワメントとは?その意味や企業メリットについて解説する
組織の成長を促す概念エンパワメントについての意味や企業におけるメリットについて解説していきます。エンパワメントはどのような意味を持つ用語であるかを理解し、自社における導入について検討していきましょう。
- 01.エンパワメントとは
- 02.エンパワメントが必要とされる背景
- 03.エンパワメントを高めることでの企業メリット
- 04.エンパワメントのアプローチ方法
- 05.エンパワメントの注意点
- 06.エンパワメントを成功させるポイント
- 07.エンパワメント実施による成功事例
- 08.まとめ
01エンパワメントとは
エンパワメントとは、エンパワーメントとも呼ばれる用語です。組織に所属する一人一人に力をつけさせること、権限を与えることを意味するマネジメントスタイルを指します。組織力やパフォーマンスを発揮するには、従業員一人一人の自主性や自立性を促進することは欠かせない要素です。そのためには、一人一人の力量を高めたり、権限を与えることで能力を高めるエンパワメントは必須の考え方となります。
ビジネスにおけるエンパワメントの意味
エンパワメントについては、業界により意味が異なる解釈を持ちます。教育分野においては、子供など教育を受ける人が持つ能力を引き出せるようにサポートをすること。看護や介護の分野においては、患者の自立などの意味を持ちます。ビジネスにおいては、「権限移譲」「自律性の促進」「能力の開花」という意味合いで利用され、それぞれが異なる視点での意味を持つ事に注意が必要です。ビジネスにおけるエンパワメントは、あくまでも従業員のやり気を促進させ企業活動の発展を目的としていることを理解しておきましょう。
02エンパワメントが必要とされる背景
エンパワメントが必要とされる背景として、現在のビジネス環境が大きな要因となっています。どういうことなのか、ここで具体的に解説します。
変化の激しいビジネス環境への対応
昨今のビジネス環境は技術発展やグローバル化が進んだことにより、短期間で変化してしまいます。そのため、経営の意思決定に時間をかけていては、ビジネスチャンスを逃したり、経営が行き詰る可能性もたかまっています。そのため、経営層が事業の細部まで意思決定に関わることは非効率であり、一部の権限を現場に移譲することで意思決定までの時間を短縮することで、時代の変化に対応する経営が必要となっているのです。
早期の人材育成
若手の内から裁量が大きな環境を与えることで、人材の能力開発を促進することができます。これまでは、できるだけ裁量は小さく、長期的な目線で育成することが一般的でした。しかし、時代の変化が早く、人材不足が顕著となっている昨今では、人材育成を早期に進め、戦力として十分な能力を身に着けてもらう必要があります。 そのため、多少は限定的でも権限を移譲して、能力開発の環境を提供することが重要なのです。
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03エンパワメントを高めることでの企業メリット
次にエンパワメントを高めることで、企業にもたらすメリットについて解説していきます。エンパワメントを促進することで、どの様な効果をもたらすかを理解することで、エンパワメントの重要性を理解していきましょう。
生産性の向上
エンパワメントにより人材の成長が図れることは、生産性の向上に直結するメリットです。権限移譲のよる判断スピードの向上や、それぞれの処理脳能力の向上は組織全体の業務改善の促進や生産性を向上させ、企業経営における大きな貢献に期待できます。生産性の向上は簡単に達成することではありませんが、各々の成長により大きな向上に期待できる点は企業にとっても非常に大きな意味を持ちます。
顧客満足度の向上
人材一人一人に力がついていくことで、事業運営にも大きな変化をもたらします。サービス品質の向上や新しいサービスの創出などによる顧客満足度の向上は、企業を継続的に運営するための必須の経営課題です。顧客満足を得ることができることは、企業の収入が増えさらなるサービス充実など、良いスパイラルを構築することもエンパワメントが企業にもたらす大きな意味を持つメリットです。
責任感の向上
権限移譲による責任感の向上も人材育成の側面でのメリットです。責任感に関する研修を受けるだけでは体感できない事柄についても、日常業務において責任を持った判断を迫られることは責任についての理解を深めることにつながります。また、自分自身が判断した事柄については最後までやり遂げるという気持ちも芽生え、人材育成の側面におけるメリットとしても期待できます。
モチベーション力の向上
エンパワメントが進むと従業員のモチベーション向上にも期待がもてます。権限を持つことやスキル向上などの仕組みがあることで、自己成長や満足度の向上につながり結果的にモチベーション力へ影響を与えます。モチベーション力が向上することは、離職率の低下にもつながり優秀な人材の確保にも期待できる効果をもたらします。
マネジメント力の向上
責任感やモチベーション力の向上は、マネジメント力の向上にも影響を与えます。一人一人が自己の業務に対しての責任感を高めると同時に、業務を管理している管理職においても権限を保有し采配を行うことが増えてきます。このサイクルが繰り返されることで、マネジメント力を強化し、より生産性の高い業務を遂行できる組織力を培うことが可能になります。
04エンパワメントのアプローチ方法
エンパワメントを高める方法として、主には「構造的アプローチ」と「心理的アプローチ」の2つが挙げられます。それぞれどういった内容なのか、ここで詳しく解説します。
構造的アプローチ
構造的アプローチとは、経営者やマネージャーといった管理者から現場へ権限を移譲するものです。相対的にパワーを持つ者がパワーを持たない者にパワーを与えることで、エンパワメントを高めます。具体的には、従業員に対して大幅な権限の付与や、従業員が重要な意思決定に参加できるようにするための仕組みを構築する、などが挙げられます。 構造的アプローチは、組織の決まりや構造といった定められているものを整理・再構築し、エンパワメントが高まるような仕組みを整えていくことと言えます。 参考として、下記授業がおすすめなので、興味のある方はぜひ確認してみてください。
自律的組織を目指した組織開発において必要なこと
本授業では、ティール組織の3つの突破口を切り口に、オズビジョンの試行錯誤を実践的に振り返ります。オズビジョンの事例から、何を学び、どう考え、次につなげたのか、成功と失敗の生々しさを共有します。
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株式会社オズビジョン 取締役COO
1977年生まれ。千葉県船橋市出身。中小企業診断士。MBA in Innovation Management 大学卒業後、システムエンジニアからスタートしたキャリアが、上場準備を契機に管理部門へシフト。その後2社で2度のIPOを経験。社会人大学院の修了に合わせて組織開発の実践の場を求め『ティール組織』に日本企業で唯一紹介された株式会社オズビジョンに参画。取締役COOとして事業と組織の統合を推進。
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心理的アプローチ
心理的アプローチとは、人間に内在するエネルギーや意欲を高めることで、仕事に対するモチベーションを高めようと図る事で、心理学的なパワーに焦点を当てたアプローチです。具体的には、仕事に対する自己効力感の醸成や意思決定に対するフィードバックの実施などの施策を整備することなどが挙げられます。 ただし、仕事に対する自己効力感を高めるにしても、権限移譲をされず、やりがいを感じる機会がなければエンパワメントを高めることができません。 そのため、心理的アプローチで重要とされるのは、構造的アプローチと併せて制度として構築することです。
05エンパワメントの注意点
次にエンパワメントの注意点について解説します。メリットが多いエンパワメントにも注意すべき点があります。注意点を理解することは、エンパワメントを成功させる上でも重要な観点です。メリットと注意点の両方を理解して自社の導入を進めていきましょう。
人により効果にばらつきが起きる
エンパワメントの導入には、人により効果にバラツキがあります。人の成長速度は、人それぞれです。そのため、権限移譲を行った場合にも、その権限を上手くコントロールできるまでにも時間を要します。この時間の長短も人により異なる点を理解しておく必要があります。同じように成長するものと考えることは、後々にモチベーション低下に結びつく可能性もある点に注意し余裕ある期間を設けて進捗を追いかける必要があります。
組織の方向性を整理する必要がある
簡単に権限移譲、人材の成長といっても組織が求める方向性と異なる場合には意味がなくなります。まずは、組織としてどういった方向を目指すかを整理しておく必要があり、その方向に合わせたエンパワメントの方向性を定めます。組織の方向性とエンパワメントで目指す方向性を合わせて効果を発揮することが可能になります。
企業リスクが生じる可能性がある
エンパワメントを早期に行うことは、企業リスクを生じる可能性があります。早急にエンパワメントを進めてしまうことで、権限移譲範囲が広すぎたり人材の育成が追いつかない可能性もあります。企業リスクを起こさないためには、計画的に段階を設けた推進を行う必要があります。
06エンパワメントを成功させるポイント
次に、実際にエンパワメントを行う際に、エンパワメントを成功させるポイントについて解説します。デメリットを理解した上で、ポイントをおさえてエンパワメントを進めていくことが必要です。成功させるポイントを正しく理解して自社への展開を進めていきましょう。
役割やビジョンを明確にする
企業、組織が目指す方向性を整理し個々人の役割を定義すること、そして、ビジョンを精査し方向性を明確にすることが必要です。目指すべき方向性を明らかにすることで、何をすべきかを整理して実践に移すことが最初に行うべき事柄です。このポイントを実施しなければ、エンパワメントを成功させることが難しくなるため、しっかりと理解して実施していきましょう。
チャレンジできる環境を構築する
エンパワメントを成功させるためには、チャレンジできる環境が必要です。さまざまな場面に応じて、チャレンジをする機会を準備することが大事です。チャレンジできる環境がなければ、従業員が新たな取り組みを行う機会を創出できません。結果的に、エンパワメントへチャレンジする機会を損なうため、成功にはつながらない結果となります。こうしたことを回避するためには、機会の創出をするだけではなく社内公募などの制度を整備することで対応を行っていきます。
段階を講じた決定権を与える
エンパワメントの特徴である権限移譲においては、いきなり大きな移譲をするのではなく段階をもった決定権を与えることで混乱やトラブルを回避できます。段階に応じた移譲については、社内で作成しているスキルマップに応じた権限整理を行い、明確な基準を設けるなどの工夫も必要です。
07エンパワメント実施による成功事例
次にエンパワメントを実施した成功事例について紹介します。成功事例を認識することはエンパワメントを自社で進める上でも参考となり、そこから学ぶことも多くあります。ここでは、代表的な2社についての成功事例を取り上げています。
星野リゾート
リゾートホテルや旅館の運営を手がける株式会社星野リゾートは、代表的な成功事例の企業です。従来より実施されていたトップダウンによる経営改革により、社員の退職率が増加する課題を抱えていました。その解決策としてエンパワメントの考え方を経営に取り入れることで、情報の公開、自由でフラットな話し合いができる組織文化の構築、仕事の目的や目標などを明確にし仕事を任せるスタイルへの変更などを実施したことで、離職率の低下や経営者の意識を持って仕事に取り組むことができる環境を構築できる効果を得ています。
スターバックスコーヒー
世界各国で1万店以上のチェーンを展開する「スターバックスコーヒー」は、エンパワメントの先進事例として世界で注目されています。業務の80%はマニュアルレスで進められいましたが、マニュアルには「お客様が何をしてほしいかを考えてサービスしよう」という内容のみが記載されています。何が心地よいサービスなのか、正社員やアルバイトなどの雇用形態には関係なく自ら考えて行動することを奨励しています。詳細なマニュアルを設けることではなく現場に店舗運営をゆだねることが、顧客の多様性やビジネス環境の変化に対応する柔軟な組織となりエンパワメントの成功につながっています。
08まとめ
本記事では、エンパワメントをテーマにその特徴や成功事例までを解説しています。組織成長を促すエンパワメントの概念は、今後のビジネスシーンでもより一層重要となるとされ注目を浴びています。本記事を参考に、是非、自社のエンパワメント促進を進めていきましょう。
▼【無料】心理的安全性の作り方〜統率から自走への組織変革法〜|ウェビナー見逃し配信中
組織の根幹を蘇らせ、健全な組織状態を作るための「心理的安全性の作り方」をテーマにしたウェビナーのアーカイブです。人事界隈で、組織の心理的安全性を確立するための方法論は広まっています。しかし、多くの企業が背景の理解もないまま、枠組みをそのまま組織に当てはめるような小手先の施策だけ行い、組織状態が改善されない事例を聞くことが多い現状です。本セミナーでは、同氏の調査・分析内容と、組織の機能不全の原因と組織づくりの方法をお話しいただきます。
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登壇者:斉藤 徹 様ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。