アジリティとは?注目される背景やアジリティを高める人事施策を紹介

本記事では、機敏という意味を持つアジリティについて解説します。企業という組織のなかでアジリティがどのような意味を持つのか、注目される背景からアジリティを高める人事施策まで詳しくみていきます。自社に活用する際の参考にしてください。
- 01.アジリティとは
- 02.アジリティを高めるメリット
- 03.アジリティが低いことによるリスク
- 04.アジリティの高い組織の特徴とは
- 05.企業のアジリティを高める人事施策とは
- 06.アジリティのある組織の事例を紹介
- 07.まとめ
01アジリティとは
アジリティ(Agility)とは「機敏、軽快さと」いう意味で、近年ビジネス用語でもアジリティという言葉が広く使われるようになっています。企業を取り巻く状況は絶えず変化しています。経営や組織運営において、状況の変化に即時対応する機敏性であるアジリティは、これからの時代を生き抜く企業に求められているものです。
クイックネスとの違いとは
アジリティと似た速さを表す言葉にスピード(Speed)やクイックネス(Quickness)があります。スピードとは、単純に「速さ」を指し、クイックネスは「ある刺激に対してどれだけ素早く反応できるか」を指しています。 一方で、アジリティとは刺激や障害に対して、ただ早く動くだけではなく、どれほど的確に素早く対応できるかが重要なポイントです。つまり、ビジネスシーンにおいては、ただ仕事を速くこなすだけではなく、的確に判断する能力を兼ねそろえた人材こそ、アジリティが高いといえます。
アジリティが注目される背景とは
自然災害や新型コロナウイルス、先行き不透明な経済状況、デジタル化によるビジネスモデルの変革など企業は数多くの変化に対応していかなくてはなりません。こうした将来の予測が困難な状況を「VUCA(ブーカ)の時代」と呼びます。 VUCAとは、「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字を取った造語です。VUCAの時代において、企業は瞬時に的確な判断をし、行動に移せるかどうかが重要なポイントです。こうした背景から、ビジネスにおけるアジリティが注目されています。
ビジネスにおけるアジリティとは
ビジネスシーンにおけるアジリティの具体例は、意思決定のスピードの速さや、テレワークへの移行など社員のフレキシブルな働き方、状況の変化に即時対応できる機敏性です。日々発生する問題に対して、個々人の裁量で判断できる組織は、アジリティが高い組織といえます。
02アジリティを高めるメリット
アジリティを高めることで組織はどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは主なメリットについて解説します。
環境の変化に対して柔軟に対応できる
アジリティの高い組織は社員一人ひとりの判断能力が優れており、状況の変化に柔軟な対応ができます。 従来は縦割り組織で構成している企業が一般的でしたが、部門ごとの専門性が高い一方で、組織全体として十分なパフォーマンスを発揮できないことが課題として挙げられていました。 アジリティを向上させることで、想定外の事象が発生した場合でもノウハウを活用しながら対処できる点がメリットといえます。
社員のリーダーシップの向上につながる
アジリティを高めることで、社員一人ひとりの指導力・判断力を存分に発揮できる環境構築につながります。 上司やメンバー間でしっかりとコミュニケーションが取れており、情報の共有や社員間の信頼関係が構築されていることは、ビジネスを素早くかつ的確に進める上で有利に働きます。 変化が素早い中でも適切な判断を下し、その判断を受け入れて次のアクションに繋げられる能力が社員それぞれに培われていきます。 そして、先が不明瞭な状況でも的確な判断を行う能力を身に着けることで、リーダーシップとしての能力も高まるのです。
03アジリティが低いことによるリスク
アジリティが低いことは組織に悪影響が生じてしまう可能性があります。それでは、どのようなリスクがあるのかについてここで解説します。
ビジネスチャンスを逃す
意思決定などの組織としての動きが遅いと目の前にある貴重なビジネスチャンスを逃すことになり、企業の成長に悪影響が出るリスクが考えられます。 アジリティが低いと、意思決定に時間をかけてしまい、他の企業に先行されてしまうこととなり、結果的に得られたはずの成果を失ってしまうのです。 十分な検討をしないまま、スピードだけを重視することはするべきではありませんが、変化の早いビジネス環境において、適切かつ素早い意思決定ができるようにアジリティを高めていく必要があります。
人材の流出にもつながる
アジリティが低いということは、時代の変化についていけず、場合によっては業績にも悪影響が及びます。 時代の変化に対応できない企業に対して、社員はどのようなことを考えるでしょうか。今の企業に残ることによる不安やリスクを考慮した結果、さらなる活躍の場を求めたり、時代に合わせた企業運営を行っている組織への転職を考えるでしょう。 アジリティが低いことによるリスクは組織内部にも発生してしまうのです。
04アジリティの高い組織の特徴とは
今後、企業は急激な社会情勢の変化に対して、機敏に対応できるアジリティの高い組織づくりが必要となります。ここからは、アジリティの高い組織がどのような特徴を持っているのか、共通する5つの特徴をひとつずつ解説します。
組織のビジョンが明確である
事業を通じて将来的に成し遂げたいビジョンが明確であり、かつ同じ価値観を共有している組織は、アジリティが高いといえます。VUCAの時代では、変化は起こりうるものであり、想定外の出来事が起きても、組織のビジョンに基づく臨機応変な対応が求められます。 組織のビジョンが明確であれば、何らかの変化が生じた際に対応するための行動指針を保つことができます。
柔軟な発想力と応用力がある
これまでの常識が通用しないVUCA時代にマッチするのは、慣例にとらわれず、互いの多様性を認め合える柔軟な発想力と応用力がある人材です。旧態依然とした考え方の組織では、日々進化する時代の流れについていけません。 あらゆる出来事に組織レベルで適応できる力があれば、不確定な要素にも即座に正しい対応ができます。経営陣だけでなく、個人レベルまでこうした力が浸透している企業は、アジリティの高い企業の特徴です。
リーダーシップが高い社員が集まる
アジリティの高い組織には、ビジネス環境の変化を敏感に感じ、自分で考え迅速に行動できる人材が必要不可欠です。組織自体が、それぞれの従業員が決定力や指導力をもって行動する、リーダーシップの高い人材育成を重視しているのが特徴といえます。その結果、アジリティの高い人材が増えていく好循環が生まれます。
最適な判断をし迅速に行動できる
目まぐるしく変化する時代のなか、自社の置かれている現状を客観的に捉える状況判断が求められます。アジリティの高い企業の多くは、経営層から一般の従業員に至るまで情報共有を徹底し、些細な変化を見逃さずに最適な判断をして迅速に行動できる体制が整っています。
幅広く情報収集をしている
新規ビジネスが生まれては消えるVUCA時代ですが、変わりゆく技術やサービスに関する情報収集を怠ることはできません。まず、自社にとって何がVUCAの要素となっているのかを知り、そうした不安定要素に関する情報を収集します。 例えば、大規模な自然災害による停電が発生した際の体制や、海外進出を目指す企業は、日本と異なる商習慣の理解や価値観、法律に至るまで情報収集する必要があります。 また、多様化する消費者の価値観に対応すべく、消費者のニーズに関する情報をあらゆる方向からキャッチするなど、幅広く情報収集をし、他社との差別化を目指します。
05企業のアジリティを高める人事施策とは
アジリティの高い組織がどのような特徴を持っているのかを見てきましたが、アジリティの高い企業の実現には、社員が正しく判断できる環境を整えることが重要です。ここからは、アジリティの高い企業作りに役立つ人事施策について解説します。
組織内の業務プロセスを改める
古い仕組みのままの業務プロセスが残っている場合、見直しをかける必要があります。歴史があり、規模の大きな企業であるほど、すぐに社内の仕組みや体系を変えるのは難しいかもしれませんが、長期的な視野を持った取り組みを行うようにしてください。 全体的な業務プロセスやシステムを見直し、時代の変化に敏感に対応できようにしておくことが、組織のアジリティ向上につながります。
企業の経営理念を浸透させる
経営環境の変化に応じて、自社の経営理念や行動指針、業務に必要なスキルを全社員に浸透させることが重要です。進むべき指針や必要なスキルを公開することで、社員はそれをもとに自身の行動を決定し、スキルアップに励みます。
情報共有のためのツールを導入する
組織の機敏性を高めるため、情報の一元化と共有するためのツールが必要です。ビジネス向けのチャットツールを導入するなど、IT環境を整備し、社内間での連絡事項の伝達や申請書類の承認が速やかに行われるようにしてください。
社内コミュニケーションの活性化をはかる
日頃から社内コミュニケーションが円滑にとれていると、業務に関する情報共有が徹底でき、状況判断能力の高さにつながります。アジリティが高い組織では、社員が自発的に状況判断や意思決定を行います。特定のメンバーが孤立したり、情報格差の発生が起きたりしないような注意が必要です。
個人の裁量で仕事を進められる範囲を広める
組織として機敏に対応していくには、従業員一人ひとりが高い俊敏性を備える必要があります。方向性だけを社員に示し、個人の裁量で仕事を進められる範囲を広めることで、アジリティが向上し、個々人の成長ややりがいにもつながります。
06アジリティのある組織の事例を紹介
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業を取り巻く環境は急激に変化しました。今後も起こりうるこうした環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる企業こそ、アジリティの高い企業であるといえます。ビジネスの混乱がもたらすマイナスの影響を軽減し、市場の変化に対して、新たなビジネスチャンスとして生かす企業の具体的な事例を紹介します。
ニトリ
家具の小売業大手のニトリは、アジリティのある経営と人事を実践している企業のひとつです。同社は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令の逆風下において、綿密な人事戦略のもと、店舗の継続営業を行いました。 その戦略とは、従業員に対し、定期的にエンゲージメント調査を行い、業務上の課題から個人的な思いに至るすべてを洗い出すことでした。中には、人事や本部に対する不信感というマイナス要素を含んだ内容があったものの、真摯に耳を傾け、解決すべく対策を行いました。その結果、既存店の売上高は、若干減少したものの、状況の変化に柔軟かつ迅速に対応し、コロナ以前と同様のオペーレーションを実現したのです。
日立製作所
世界有数の総合電機メーカー日立製作所は、従業員サーベイを実施し、一人ひとりの強みや課題を見つけ、意識変革を促すフィードバックや、精度の高い人事施策を行ってきました。そのかいあって、コロナ禍によるさまざまな環境の変化にも対応できるアジリティをもたらしています。従業員のエンゲージメントを高め、さらなる生産性向上やイノベーションを実現する組織を目指しています。
米ワークデイ
クラウド上で財務や人事ソリューションを提供する米ワークデイは、緊急事態宣言前に、経営陣や人事部門リーダーが新型コロナウイルスに関する注意喚起を行いました。その内容とは、来社時の体温測定、出張制限、社内外の人と対面で行う会議のルール、衛生管理といったさまざまなガイダンスの通達でした。 また、従業員エンゲージメント調査を行い、リモートワークに必要な経費の支給、臨時ボーナスの支給、特別休暇の設定、家族支援プログラムの提供などさまざまな支援策を決定しました。働き方が変化しても、従業員が引き続き成果を出せる環境の提供ができるよう、わずか数か月の間にアジリティのある判断と実行を行ったのです。
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07まとめ
これからの時代、真に求められる人材とは、スピードと共に的確に判断する能力を兼ね備えたアジリティの高い人材です。結局のところ、企業のアジリティにおいて重要なのは、人材であり、根幹となる重要な要素といえます。またこうした人材を活かせるアジリティの高い組織こそがVUCAの時代に適合した組織であり、アジリティの高い組織となるためには、経営陣はもちろん、それを支える戦略部門や人事部門が一丸となって取り組む必要があります。