研修の勘定科目は研修費として扱うのか?仕訳での注意点を解説する

社内では、いくつもの研修を計画的に実施しています。研修に掛かる経費はどのように経理処理をしたらいいんでしょうか。本記事は、研修に伴う経費処理の方法について解説していきます。
- 01.研修費とは
- 02.研修費で使われる勘定科目の事例
- 03.経費にならない研修費についての注意点
- 04.研修に伴うその他の勘定科目
- 05.研修費に関する税務上の規定とは
- 06.研修費の扱いに関する注意点
- 07.まとめ
01研修費とは
研修費とは、従業員の育成の一環として参加する研修やセミナーに関して発生する費用のことです。人材育成の一環として実施されるため「教育訓練費」「採用教育費」などの名称で呼ばれることもあります。研修費の扱いは、どのように決めていけばいいのでしょうか。研修費の勘定科目について、勘定科目の種類について解説していきます。
研修費の勘定科目は各社で決める
修費の勘定科目については、税務上の定めはなく企業独自で決めていきます。業務に直接関係のある研修に掛かった費用は「損金」として扱いことも可能で、損益計算書上も「販売費及び一般管理費」として計上できるため細かい勘定科目の違いは問題になることはありません。ただし、企業によっては細かな内容を把握する意味で、勘定科目を細かくし後々の追いかけが可能にしておく場合もあります。
研修費で主に使われる勘定科目の種類
研修費として扱われる勘定科目には、代表的なものがあります。研修費の主な勘定科目をご紹介します。
- ・研修費:業務に必要な知識を習得を目的とした研修やセミナー代
- ・福利厚生費:自己啓発を目的としたセミナー代の一部補助費
- ・新聞図書費:業務に関係する参考書籍の購入費や新聞代
- ・前払費用:数回に渡り継続して受講するプログラムがある研修やセミナー代を前払いした際の科目
- ・雑費:研修費の科目を利用する頻度が少ない場合に利用する科目
上記5つの科目が研修費として利用する代表的な勘定科目です。研修費に伴う勘定科目は税務上の取り決めはないため、上記以外を利用することでの問題はありません。自社の科目と比較して確認をしていきましょう。
02研修費で使われる勘定科目の事例
前述でご紹介している5つの勘定科目について、事例を交えながらご紹介します。事例を確認することで、自社で発生する費用の振り分けがしやすくなるため、内容を確認して自社の経理処理に活用していきましょう。
研修
業務に関する一般的な費用は研修費として計上することで問題ありません。講義代、セミナー代などの名称で請求書が届くことがほとんどですが、全て研修費として計上することで経理処理上の扱いには問題ありません。
- 【研修費の例】
- ・新入社員が外部で受けたビジネスマナー研修費
- ・社員の資格取得のため費用
- ・安全研修のための機器の購入費
- ・安全研修のための機器の購入費
- ・外部講師を招いて社内で行った研修
- ・業務に必要なWeb研修参加の費用
研修費には、講習やセミナーに参加した費用以外に、機材購入を含めることが可能です。機材購入については、研修で利用することを目的とした場合のみである点を注意しておきましょう。
福利厚生費
業務には関係ない自己啓発でのセミナー参加費などを補助する場合には、福利厚生費を使用します。
- 【福利厚生の例】
- ・スキルアップを目的とした資格取得費用の補助
- ・研修旅行中に発生するレクリエーション費用
福利厚生費については、「全従業員が利用できること」「常識内での金額を適用すること」等のルールがあります。福利厚生費は、役員や選ばれた管理職のみが利用するなどの規定を定めることはできないため、適用についてはあらかじめ規定などにより定めておくことがよいでしょう。
新聞図書費
業務に利用できる書籍などの購入については、新聞図書費で処理します。研修で利用するテキストや書籍などの購入は、研修費で計上することでも問題ありません。用途により科目を使い分けていきましょう。あらかじめ用途に応じた勘定科目ルールを作成しておくことで判断が統一され処理もスムーズに行うことができます。
前払費
数回に分けて回刺させるセミナーなどへの費用については、セミナー開始前に全額支払うことになります。決算時点では、セミナーが完了していない場合には前払費用で計上を行います。
- 【前払費の例】
- ・毎月ある研修に1年間参加する場合の研修費用
- ・研修後のフォローアップが研修から3か月経過して実施される際の費用
雑費
研修に参加する頻度が少なく、科目を新たに作る必要がない場合には雑費に計上します。雑費については、科目を作らなくて良い突発的な事案での経費や今回限り発生する必要を計上することがあります。雑費については、金額が大きくなることで内容を把握できなくなる場合があるため注意して使用していきましょう。
03経費にならない研修費についての注意点
研修費の中には、経費として扱えない場合があります。次に経費として扱えない研修費について解説していきます。経費となると考えて研修やセミナーに参加した結果、従業員が費用を負担することになったという事例は多くあるため、あらかじめ注意を促しておく必要があることを理解しておきましょう。
経費になるケースの見分け方
研修費が経費となるかどうかの判断基準は「業務に関係があるのかどうか」で判断を行います。この判断は国税庁からも指針が出ているため、確認が必要です。ただし、福利厚生としての適用を認めるなどの方針があり、金額の上限や対象となる内容について取り決めがされている場合の経費計上は問題ありません。福利厚生に関しては、企業が従業員に対して行うことを決める裁量権があるためです。
- 【国税庁 No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき】
役員や使用人に、仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用を支給する場合があります。この場合には、役員又は使用人としての職務に直接必要な技術や知識を習得させ、又は免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等の聴講費用に充てるための費用として適正なものに限り、給与として課税しなくてもよいことになっています。
04研修に伴うその他の勘定科目
研修に伴い発生する費用には、研修費以外の勘定科目で処理を行うものがあります。次に、研修費以外で発生する費用について、経理処理上ではどう仕訳するかをご紹介します。研修参加においては、講義やセミナー代以外にも費用は発生するため、理解しておく必要があります。
研修会場までの交通費
研修会場まで移動する必要がある場合には交通費が発生します。通常、宿泊や交通費については「旅費交通費」「交通費」などで仕訳を行いますが、研修に伴う交通費については研修費に含めて処理をして問題ありません。経費を社内で管理する上で確認等が行いやすい科目で処理を行いましょう。
講師に出したお弁当代は会議費
自社内に講師を呼び研修を開催する場合には、昼食に弁当やお茶を出すことがあります。この弁当代については、研修費として含むことに問題はありません。しかし、昼食時間中に、研修の様子や評価を聞くために役員と別室で食べる場合や、今後の研修テーマについての意見交換を行うなど打合せ目的での昼食となる場合には会議費として扱うことが良い場合があります。費用計上することには代わりはありませんが、費用の用途という側面で判断をする必要がある点を理解しておきましょう。
05研修費に関する税務上の規定とは
研修費の取り扱いについては、税務上の規定がります。経費処理を行う中で理解しておきたい規定をご紹介していきますので、経理処理を正しく行う上でも理解しておきましょう。法令に準じて、社内ルールの明確化やマニュアル化を行っておくと判断を誤ることを減らすこともできます。
所得税基本通達36-29の2
研修費についての取り扱いは、国税庁にて定められています。所得税基本通達36-29の2では、以下の通りに定めているため、社内ルールを決める上で確認しておきましょう。
- 【所得税基本通達36-29の2】
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。
源泉所得税
業務に遂行上必要がある場合を除き研修費用は、従業員の給与と同等の扱いになります。このことから、源泉所得税に該当し処理を行う必要があります。福利厚生などで処理を行う規定がある場合には、これに該当しません。経費として認められる原則は、業務との関連性の有無により変るということを常に意識しておく必要があることを理解しておきましょう。
06研修費の扱いに関する注意点
研修費の扱いに関する注意点について、解説していきます。研修費として処理を行う上で、覚えておきたい注意点です。企業において、従業員を成長させ業務に役立てるために参加してもらうものです。その経費についても正しく処理することは税務上でも必要なことです。
他の勘定科目の場合もある
研修やセミナーに参加する必要を計上する科目が、研修費でない場合もあります。各社により科目の名称やつけかたは変ります。「研修費」という科目がない場合にも、必ず作る必要はありません。自社の中で管理ができること、科目の使用頻度を勘案し決めていくことが必要です。
事業で使用する割合
新規事業を行う、事業を行う上で研修費はどの程度まで使っていいかというと、正確なさだめや目安はありません。事業を行う上で、研修や資格取得費を使えるかは企業判断となります。例えば、1回のみ受託する10万円の業務に、30万円かけての研修には参加すると赤字となります。しかし、この研修にいくことで他の業務を受託できる可能性が広がるということであれば投資できます。このように事業で使用する割合を決めるのではなく、研修費を使った効果がどこまで期待できるかで判断する必要があります。
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・自己啓発への活用方法 など

07まとめ
本記事は「研修費」「勘定科目」をキーワードに研修費をどう振ればよいのか、務上の注意点とはどんなものがあるのかを解説しています。従業員を育成する方法として必要な研修への参加について、経理処理でのトラブルが生じないための参考にしてください。