離職票とは?企業が注意すべき手続きや書き方・注意点について解説
離職票は、従業員の退職時に発行する必要がある書類の一つ。離職票を発行しないと退職者は失業手当の申請ができません。しかし、離職票の発行手続きは煩雑で注意点がいくつかあります。また発行が遅れてしまうと、従業員が退職したあとの失業手当受給が遅れてしまいます。退職者にとって重要な離職票はいつ、どうやって発行すれば良いのでしょうか。
- 01.離職票とは
- 02.離職票の発行手続きを解説
- 03.離職率の正しい書き方
- 04.よくあるトラブルの例をご紹介
- 05.離職を防ぐための企業の対応
- 06.メンタルヘルスならSchoo for Business
- 07.まとめ
01離職票とは
離職票とは離職したことを証明する公的な文書で、退職後に失業給付金、失業手当の受給手続きをする際に必要な書類です。また、ハローワークでは、”雇用保険の失業給付(基本手当)を受給するときに必要な書類で、退職後10日前後までに、退職した会社から渡されるもの”とされています。事業主は,離職者が離職票を請求するために離職証明書の交付を求めたときは、交付する義務があります。
離職票には2種類ある
離職票には「雇用保険被保険者離職票-1」と「雇用保険被保険者離職票-2」の2種類があり、それぞれ簡易的に「離職票-1」「離職票-2」と呼ばれます。 それぞれ記載内容が異なるので、詳しい記入については後ほど別の項目で解説します。まずは、「離職票は2種類あること」を覚えておきましょう。 離職票-1も離職票-2も、ハローワークから交付されます。
退職証明書・離職証明書との違いについて
離職票は国から発行される公的な文書であるのに対して、退職証明書は会社から発行されるもので、公的文書ではありません。退職証明書とは従業員が退職したことを証明する書類で、従業員からの要望がなければ発行する必要はありません。 退職証明書は以下の場合に必要になります。
- ・国民健康保険の加入手続き
- ・国民年金の加入手続き
- ・転職先の企業から求められたとき
- ・ハローワークでの失業給付の手続き(なんらかの理由で離職票を発行できない場合のみ)
また離職証明書とは従業員が退職した際に会社側からハローワークに提出する書類です。従業員を雇用保険から脱退させる手続きに必要となります。発行手続きの流れで後述しますが、離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出することで、ハローワークから離職票が交付されます。
02離職票の発行手続きを解説
手続きが遅れてしまうと退職者の失業給付金の受給開始も遅くなります。もし雇用保険被保険者資格喪失届の届け出をしなかった場合、雇用保険法第7条違反です。また離職票の交付を拒否した場合には雇用保険法第76条第2項違反となりますので、離職票が必要な際には速やかに発行しましょう。
離職票の交付までの一通りの手続き
企業の担当者が行う手続きは以下の通りです。
【1】離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を作成
離職証明書は、まずハローワークで専門用紙を受け取り記入しましょう。郵送での取り寄せが可能な場合もあるので、管轄のハローワークに確認してみてください。次に電子申請をします。総務省が運営する電子申請総合窓口「e-Gov」にて、雇用保険関係の手続きの電子申請を行うことが可能です。
申請時には電子署名が必要となり、離職日、離職理由、賃金支払基礎日数、賃金額などの記入が必要です。特に離職日、離職理由は失業手当の支給期間に関わる事項のため注意が必要です。
雇用保険被保険者資格喪失届を提出するためには、ハローワークで直接受け取る、もしくはハローワークホームページからダウンロードして記入するという2つの方法があります。
記入が完了したら、離職証明書と同様に電子申請をします。総務省が運営する電子申請総合窓口「e-Gov」にて離職証明書と同様に申請することができます。 雇用保険被保険者資格喪失届には以下の記入が必要です。
- 被保険者指名
- 生年月日
- マイナンバー(個人番号)
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 資格取得年月日(入社日のこと)
- 離職等年月日
- 喪失原因
- 離職票交付希望
- 1週間の所定労働時間
- 補充採用予定の有無
- 被保険者でなくなったことの原因
この中でも「離職年月日」「喪失原因」「被保険者でなくなったことの原因」には注意が必要です。また、「離職年月日」とは離職した日のことで、資格喪失日は離職日の翌日なので混同しないように注意しましょう。
また、「喪失原因」は以下の選択肢となっています。
- 1.離職以外の理由
- 2.3以外の離職
- 3.事業主の都合による解雇
「被保険者でなくなったことの原因」は退職理由です。解雇や自己都合もしくは新型コロナウィルスの影響なのか、また自己都合だとしても正当な理由があるのか、によって離職者が受け取れる失業手当の期間が異なります。離職理由はトラブルになりやすい項目なので注意して正しく正確に記入する必要があります。
【2】退職予定者に離職証明書の内容を確認
トラブルを避けるためにも退職予定者に内容を確認してもらう必要があります。離職証明書には賃金や退職理由などを記載します。失業手当の金額や期間に大きく関わるため間違いがないか確認してもらいましょう。不備がなければ署名・捺印をもらって回収します。
【3】ハローワークに提出
前述のとおりハローワークに直接届けるか「e-Gov」での申請となります。 提出する際には賃金台帳、退職理由が確認できる書類、出勤簿が必要になりますので忘れずに持っていきましょう。
【4】ハローワークから届いた離職票を退職者に渡す
ハローワークから離職票-1と離職票-2が届きます。この時点では既に退職済みのはずなので、退職者には郵送で送ることが一般的です。また同封の書類に企業用の控えが入っているので忘れずに保管しましょう。このように離職票取得にはいくつかの手順が必要です。退職が決まった時点で用意し始めるのが望ましいでしょう。 企業担当者で行う手続きは以上で終了です。その後、退職者自らが届いた離職票をハローワークに持参することで失業手当の申請が完了します。
離職票の再発行は可能
離職票の再発行は、退職者が自分で行う場合と退職した会社に依頼する場合があります。企業には退職者の離職証明書の保管と、退職者からの希望があった際の対応義務があるため、依頼された場合は対応しなければなりません。 企業の退職証明書の保管義務は退職日から4年間ですので、この期間内であれば対応する必要があります。その際には再度ハローワークに雇用保険被保険者離職証明書を提出します。
03離職率の正しい書き方
ここでは企業担当者ではなく、退職者自身が記入する項目の説明をしていきます。離職票の記入は退職者一人で行う必要はなく、不明な場合はハローワークの窓口で確認しながら記入することが可能です。
離職票-1の書き方
離職票-1は氏名や個人番号などの個人情報に加えて、失業手当の振込先を記載します。個人番号はハローワークにて窓口で申請者本人が記入してください。「求職者急騰払渡希望金融機関指定届」には振込先の詳細を記入します。「金融機関による確認印」は本人名義のキャッシュカードや通帳をハローワーク提出時に持参すれば、空欄のままで大丈夫です。
離職票-2の書き方
離職票-2には離職理由と退職直前の給料が既に記載されているので、内容を確認して署名と捺印をします。右のページにある「離職理由」の該当箇所に〇をつけます。そして下段の具体的事情記載欄(事業主用)に離職理由が書かれているので、間違いなければ「同上」と記入します。最後に事業主が〇をつけた離職理由に意義があるかないかをチェックし、署名・捺印をして完了です。
04よくあるトラブルの例をご紹介
退職理由に関連するトラブル
離職票にまつわるトラブルで多いのが退職理由に関係するものです。退職理由が「自己都合」の場合と「特定受給資格者」「特定理由離職者」の場合では失業保険の受け取り期間が異なるためです。特定受給資格者は以下の場合です。
- ・倒産などにより離職した者
- ・解雇などにより離職した者
特定理由離職者とは以下の場合です。
- ・期間の定めのある労働契約の期間が満了し、当該労働契約の更新がないことにより離職した者
- ・正当な理由のある自己都合により離職した者 ・正当な理由とは体力の不足や妊娠・出産・育児、父・母の死亡により扶養する必要がある
- ・結婚・育児などで通勤不可能または困難となった場合 ・人員整理などで希望退職者の募集に応じて離職した者など
自己都合退職の場合でも扱われ方が異なるという点を覚えておきましょう。
離職票が届かないトラブル
離職票が届かないと、退職者の失業手当受給開始が遅れてしまいます。そもそも離職票の存在を知らずに手続きをしていなかった、ハローワークでの手続きが遅れているなども考えられます。ですが、大きなトラブルとなりやすいのは退職者と企業側の認識の相違によるトラブルです。退職者本人が離職票はわざわざ希望を伝えなくてももらえるものであると認識している可能性もあります。企業担当者ができる対策としては、退職が発生するたびに離職票は必要か確認する、もしくは希望に関わらず全退職者に対して発行するなどです。そうすることでトラブルを防ぐことが可能です。
会社都合退職が多いと助成金に影響がある可能性も
会社都合退職が多いと、キャリアアップ助成金やトライアル雇用奨励金、雇用関係助成金など従業員の雇い入れや教育に関する助成金が受給できなくなることがあります。これらの助成金には以下の受給制限があります。
- ・対象労働者の雇い入れ日の前後6カ月間に事業主の都合による解雇や退職勧奨をしていないこと
- ・特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、対象労働者の雇い入れ日における雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと
退職者のためになるからといって、安易に「会社都合」での退職を認めてしまうことは避けましょう。
05離職を防ぐための企業の対応
企業にとって離職者を出すことは人材不足につながります。そのため、離職を防ぐための対策が重要です。具体的な対応策は以下の通りです。
働きやすい環境の提供
企業は従業員が働きやすい環境を提供することが重要です。これには、適切な労働条件、公正な報酬、健康的な労働環境、柔軟な働き方オプションなどが含まれます。従業員の仕事とプライベートのバランスを考慮し、働きやすさを最優先にすることで、離職率を低下させることができます。
キャリア開発と成長の機会の提供
従業員は自身のスキルや能力を向上させる機会を求めます。企業はキャリア開発プログラムや研修制度を提供し、従業員が成長し続けることができる環境を整えることが重要です。キャリアパスの明確化や内部昇進の機会の提供など、従業員が自身の能力を発揮し、成長できる道を提供することで、離職を防ぐことができます。
コミュニケーションと関与の促進
従業員は組織のビジョンや目標に関与し、自身の仕事が重要であると感じることが求められます。企業は定期的なコミュニケーションチャネルを確立し、従業員との対話を促進することが重要です。透明性やフィードバックの文化を築き、従業員の意見や貢献を尊重することで、彼らの関与度を高めることができます。それによって従業員が組織に忠誠心を持つことにつながり、離職リスクを軽減させることができます。
メンタルヘルスの実施
従業員のメンタルウェルビーングをサポートし、ストレスや心の健康の問題を予防することができます。メンタルヘルスのプログラムやカウンセリングセッションを提供することで、従業員のストレス管理や心理的な負担を軽減することができます。また従業員が適切なサポートを受け、心理的な負担を軽減できる環境が整備されることで、離職や休職のリスクを減らすことができます。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06メンタルヘルスならSchoo for Business
Schoo for Businessでは約8000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
Schoo for Businessは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約8,500本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.メンタルヘルス研修におすすめのSchooの研修
様々な研修に対応できるSchoo for Businessの研修ですが、もちろんメンタルヘルス研修にも対応しています。Schooのメンタルヘルス研修には、基礎レベルから、実践レベルまでがラインナップされており、メンタルヘルスに関する知識をこの研修で網羅できます。
さらに、社員に研修動画を受講してもらった後に、意見の共有会やディスカッションを行うことで、学んだことをより効果的に定着させることができます。
チームを強くするメンタルヘルスマネジメント
新型感染症などによる近年のライフスタイルの変化により、 ビジネスの現場ではチームメンバーのメンタルヘルスケアの重要性がとても高まっています。また、メンタルヘルスケアでは不調者の早期発見とその対策がとても重要です。 そこで、この授業では職場の上司が部下の心の健康づくりのためにケアをしていく「ラインケア」を学び、心身ともに健全なチームづくりの実践ができるようになることを授業のゴールとしています。講師には、企業の早期離職防止や人材育成力アップの為のコンサルタントとして活躍されている井上洋市朗さんを招き、不調の早期発見のポイントや、リモートワーク下でのケアのポイントなどをわかりやすく授業していただきます。
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株式会社カイラボ 代表取締役
大学卒業後、(株)日本能率協会コンサルティングにて企業の業務効率化などに従事。ストレスが原因で入社2年で退職。 2011年に社会人教育のベンチャー企業でマネージャーを務める。 2012年株式会社カイラボを設立。新卒入社後3年以内で辞めた若者100人インタビューをおこない、その内容をまとめた「早期離職白書」を発行。 現在は多くの企業の若手社員定着率向上支援を行うほか、 講演、管理職・OJT担当者向け研修、採用コンサルティングなどを行っている。
メンタルの生活習慣病に気づこう
本コースは知らないうちにメンタルが強くなるために、メンタルとの向き合い方を学んでいく授業です。 日々仕事をしていく中での「不安」や「メンタルの疲れ」を解消し、「今月も頑張ろう」とモチベーションを上げるきっかけにしていきましょう。
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有限会社シンプルタスク 代表取締役
有限会社シンプルタスク代表取締役。習慣形成コンサルタント。喜働会会長。JADA協会SBT1級コーチ。「大人を元気にする」を使命に、自己実現のための習慣形成連続講座『喜働力塾』を全国で延べ84期実施、卒業生は2,500人以上。習慣形成のメソッドを中心に、成果・結果を積み上げていく方々を、今なお多数輩出し続けている。多業種にわたり各企業の顧問として、人間力戦略のコンサルティング、人材育成トレーニングを中心に増収増益のお手伝いを担当する傍ら、習慣形成を軸に人材育成トレーニングや講演、セミナーで全国をまわっている。子供たちの夢を叶えるために、小、中、高等学校の生徒向け、保護者向けの講演も積極的に行っている。脳の機能と習慣形成を活用した能力開発で、ビジネスマンだけでなく、スポーツチーム指導、受験生の能力アップも行っている。著書には「成功する社長が身につけている52の習慣」「習慣が10割」などがある。
ストレスの正体 不調のサイン
コロナ禍を経て、ストレスの感じ方やメンタル不調の要因も変わってきています。 しかし、いつの時代も環境が変わっても、不安や悩みなどの心理的ストレスを感じる根底にあるものは物事のとらえ方、そして人間関係によるものです。 ストレスに強い人と弱い人の違いには何があるのでしょうか。 ストレスの正体とは一体どんなものなのでしょうか。 向き合い方やメンタルヘルスを保つためにできる習慣や考え方を学びます。
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産業医・精神科医/株式会社ウェルプラ/メディカルディレクター
東京女子医科大学病院精神科で助教・非常勤講師を歴任したのち、現在はメンタルクリニックの副院長を務めつつ、産業医としても幅広く活動している。また、ヘルスケア企業やHR領域の事業のメディカルディレクターも務めている。「健康問題を経営問題にしない」をミッションとし企業・ビジネスパーソン双方のサポートを専門としている。
3.管理画面で受講者の学習状況を可視化できる
Schoo for Businessには学習管理機能が備わっているため、研修スケジュールの作成を容易に行うことができます。さらに、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、レポート機能を使って学んだことを振り返る機会を作ることも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。
まず、Schoo for Businessの管理画面を開き、「研修を作成するという」ページで作成した研修の研修期間を設定します。ここで期間を設定するだけで自動的に受講者の研修アカウントにも研修期間が設定されるため、簡単にスケジュールを組むことができます。
この、管理者側の管理ツールでは受講者がスケジュール通りに研修を受けているかを確認することができます。もし決められた研修をスケジュール通りに行っていない受講者がいれば注意したり、話を聞くことができるなど、受講者がしっかりスケジュールを守っているかを確認することができます。
07まとめ
離職票は退職者にとって非常に大切なものです。適切に運用することで退職者の不安を軽減することができます。また、辞めていく人を大切にすることは会社の評判やブランディングにも影響します。最後まで嫌な思いをさせずに円満に退職してもらうことが、将来の会社の評判にもつながるのです。煩雑な手続きですが、確実に行えるように準備をしておくべきでしょう。
▼【無料】若手の離職を止めるには?〜多様な個性を重視するインターネット的な会社の作り方〜|ウェビナー見逃し配信中
Z世代の自律型組織開発法をテーマにしたウェビナーのアーカイブです。将来の会社の成長を担う若手世代。「すぐに離職してしまう」「モチベーションの管理方法がわからない」など、Z世代を含む若手の扱いに対して課題を抱えている人事責任者の悩みに対し、若手社員の成長を促進する組織作りについて深掘ります。
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登壇者:高木 一史 様サイボウズ人事本部 兼 チームワーク総研所属
東京大学教育学部卒業後、2016年トヨタ自動車株式会社に新卒入社。人事部にて労務(国内給与)、全社コミュニケーション促進施策の企画・運用を経験後、2019年サイボウズ株式会社に入社。主に人事制度、研修の企画・運用を担当し、そこで得た知見をチームワーク総研で発信している。