公開日:2021/05/28
更新日:2022/06/28

変形労働時間制とはどんな制度?概要やメリットを詳しく解説

変形労働時間制とはどんな制度?概要やメリットを詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

変形労働時間制とは、時期によって労働時間を調整できる制度です。この記事では、変形労働時間制について概要やメリット・デメリット、導入時の注意点などを解説します。導入を検討されている企業担当者の方は、ぜひご一読のうえ、参考にしてください。

 

01変形労働時間制とは?

最初に、変形労働時間制とはどのような制度なのかを解説します。特に人事担当者にとって変形労働時間制は知っておくべき制度であるため、今一度確認しておきましょう。

法定労働時間を週・月・年単位で調整できる

変形労働時間制は、法定労働時間を1日単位ではなく、週・月・年単位で調整できる制度をさします。 労働基準法において、労働時間の基準は原則として「1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と定義されています。ただし、労使協定または就業規則などで定められている場合には、特定の日または週に法定労働時間を超えても良いという制度でもあるのです。 この制度を適用するには、一定期間を平均し、1週間あたりの労働時間が、法定労働時間を超えない範囲に収める必要があります。


参照元:厚生労働省「労働時間・休日」

繁忙期・閑散期に合わせた労働時間の調整が可能

変形労働時間制の特長は、業種ごとで季節によって偏りがちな労働時間を調整できる点にあります。繁忙期には労働時間を増やし、その分閑散期には減らすといった調整が可能です。つまり、繁忙期と閑散期をトータルで計算して、総労働時間の算出および調整を行うことをいいます。 労働時間の限度は、対象期間ごとで厚生労働省が定めています。 ・1年で280日 ・1週間で52時間 ・1日で10時間 さらに、連続して働ける日数は6日、1週間に1日の休日を確保することと決められていますので、このルールを遵守したうえでの調整が求められます。


参照元:厚生労働省「1年単位の変形労働時間制」

月・年単位で導入している企業が大半

変形労働時間制は、週・月・年の単位で導入すると先述しましたが、大半の企業では月もしくは年単位で導入しています。月単位では、月の特定時期に忙しくなる職種(医療機関、経理職、運送業、介護職など)での導入が多く見られます。年単位は、1年の業務の流れがはっきりしている職種(人事部、建設業など)が適しています。また、公立小中学校および高校の教員についても、変形労働時間制を導入する条例が整備される方向で調整が進んでいます。 週単位での導入は「非定型的変形労働時間制」と呼ばれており、適用できる業種は決められています。小売業・料理・飲食店、旅館事業のうち、常勤している従業員の規模が30人未満という決まりがあり、これを満たした店舗のみが週単位での変形労働時間制を導入可能です。 変形労働時間制と似たシステムに、フレックスタイム制度があげられます。双方の違いは、労働時間を誰が設定するのかという点にあります。変形労働時間制は、雇用主が勤務時間を決めるのに対して、フレックスタイムは一定の時間内で従業員みずからが勤務時間を決める制度です。

総労働時間が長くなることはない

変形労働時間制の導入によって、労働時間の合計が増えるのではないかと危惧する方もいるかもしれません。しかし、この制度は日によって労働時間に偏りが生じるものの、総労働時間自体に変わりはありません。 たとえば月初の業務に余裕があり労働時間を短くした分、月末の多忙な時期に長く労働するといったように、決められた労働時間の中で調整できるのです。

 

02変形労働時間制を導入するメリット・デメリットとは?

変形労働時間制の仕組みについて解説しましたが、実際に導入するとどのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか。ここでは変形労働時間制を用いる際に知っておきたいポイントを紹介します。

メリット:従業員はワークライフバランスを重視した働き方が目指せる

メリットとして最初にあげられるのは、従業員の「ワークライフバランス」が取れる点です。仕事とプライベートをどちらも充実させる取り組みをさします。 以前から、このワークライフバランスは、多様な働き方を選べる取り組みとして注目されてきました。近年は働き方改革が進められるなかで、さらに重要度が高まっています。勤務時間や日数を柔軟に調整することで、閑散期に長期休暇が取りやすくなるメリットが存在します。

メリット:企業側は残業代の削減・人員の適切なリソースが可能

企業側にとっても、変形労働時間制の導入でメリットを受けられます。決められた期間内の総労働時間が枠に収まっていれば、1日に8時間を超える日があっても、時間外労働とはなりません。これにより、残業代を支払う必要がなくなるのです。 さらに、業務や期間に合わせて人員を適切に配分でき、業務の効率化につなげられます。

デメリット:従業員は急な業務変更が難しくなる

変形労働時間制はメリットがある反面、デメリットも見逃すことはできません。従業員側は、事前に労働時間の配分を設定する必要があり、急な業務変更がしにくくなるデメリットがあげられます。このため、柔軟な対応がしづらくなるという問題点が指摘されています。 また、繁忙期の労働時間が長くなるにもかかわらず、残業手当の支給対象とならないケースも増えるかもしれません。特に部署ごとに制度の対象・対象外が異なる場合には、不公平感が生じることもあります。

デメリット:企業側は勤怠管理が複雑になる

変形労働時間制を導入すると、日や週によって勤務時間が変わってきます。そのため企業側の勤怠管理が複雑化し、作業が増える点がデメリットといわれています。法定労働時間を超えているかどうか、その都度確認しなければならず、残業手当の計算も手間が増えてしまうのです。導入前の届け出も必須であることから、実施にはかなりの時間と労力が必要です。

 

03変形労働時間制を導入する手順とは

変形労働時間制の概要を解説してきました。自社に導入するという流れになった場合に、どのような手順を経て手続きすればいいのでしょうか。ここからは手順をまとめて紹介します。

勤務実態を把握する

最初に、従業員が現状どのような勤務を行っているか、実態の把握から始めましょう。繁忙期と閑散期の区別や、労働時間がどのようになっているかなどを見極め、繁忙期は労働時間を増やし、閑散期は減らすなど適切な労働配分を行うための準備を行います。

対象者・労働時間・期間などを決める

現状を把握したら、次に「いつからいつまで」「誰(もしくは部署など)を対象にするのか」「労働時間をどのように区切るのか」など、細かい部分を決めていきます。 シフト制の職場であれば、労働時間や日数を特定することは困難ですので、基本的な勤務パターンを定めておき、具体的な勤務時間はシフト表などで従業員に周知します。

就業規則の見直しと労使協定の締結を行う

変形労働時間制を導入するには、労使協定の締結が労働基準法によって定められています。ただし、月単位での導入であれば、就業規則への記載でも問題ありません。 就業規則で見直すべき、または労使協定で定めるべき内容としては、始業・終業時刻、変形期間および各期間における労働時間・始業・終業時刻、また対象とする従業員の範囲があります。これらの内容を、企業側と労働者代表の間で合意したうえで、協定を結びます。

労働基準監督署へ届け出る

就業規則の決定もしくは労使協定の締結が完了したら、所轄の労働基準監督署に届け出を行います。労使協定は有効期限がありますので、期限ごとに必ず届け出なくてはいけません。残業や休日出勤が生じる可能性があれば、36協定もあわせて提出しましょう。これらの手続きを経て、社内で従業員に周知し、適正に運用するようにしてください。

 

04変形労働時間制を導入する際の注意点とは

変形労働時間制は、導入までに時間と手間がかかる制度です。運用に困ることのないように、導入の際には以下の点に注意するようにしてください。

所定労働時間をあやふやにしない

変形労働時間制では、日によって労働時間が変動するため、労働時間があやふやになってしまうと残業代の未払いというトラブルに発展するおそれがあります。このようなトラブルを防ぐために、労使協定もしくは就業規則の内容を把握しておくことが大切です。

就業規則に記載した労働時間が、法定労働時間を超えないように気をつける

これはあってはならない事例ですが、就業規則に記載されている所定労働時間が、法定労働時間を超えている場合があります。従業員とのトラブルに発展するおそれが大きい問題ですので、超えていないかどうかをしっかり確認しておく必要があります。

決定後のシフト変更ができないため、徹底した勤怠管理が必要

変形労働時間制は、一度決定したのち企業側の都合によるシフト変更ができません。変更するには、従業員の同意が必要です。 導入したにもかかわらず制度が形骸化してしまうと、労働時間が長引いてしまい、従業員の過重労働につながるおそれがあります。勤怠管理の手間は増えますが、シフトは徹底して管理する必要があるのです。

残業代の算出を忘れないように行う

変形労働時間制においても、残業時間が発生し、その結果残業代を算出するケースが多々見られます。週・月・年単位それぞれの期間において、残業代の算出方法が決められていますので、ルールに従って忘れずに算出しましょう。


 

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05まとめ

変形労働時間制を導入すると、労働基準監督署への届け出やシフト管理など、日々の業務は増加します。しかし、残業代の削減や人員の適切な配置につなげられるなど、大きなメリットを得られるのも事実です。 自社の業務内容や勤務体系が、変形労働時間制に適しているかを見極め、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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