副業禁止は法律的に問題となる?NGとなる事例を紹介
企業側が副業を禁止する背景や法律的に問題があるかどうかについて解説します。また、副業を認める場合には、就業規則に明示しなければならないなど講じるべき措置についても解説します。企業担当者の方は、ぜひ一読のうえ、参考にしてください。
- 01.企業が副業禁止する理由とは
- 02.副業禁止に関する法律
- 03.副業で懲戒処分となるケース
- 04.副業禁止に抵触した事例とは
- 05.従業員の副業が発覚するタイミング
- 06.副業禁止を就業規則で定める場合に考慮すべきポイントとは?
- 07.まとめ
01企業が副業禁止する理由とは
政府は副業の有効性を認め、推進していますが、いまだ多くの企業は副業を認めていません。 リクルートキャリアが2019年に行った兼業・副業に対する企業の意識調査によると、兼業・副業を容認・推進している企業は30.9%となっており、7割近い企業が副業に積極的ではないといえます。 企業が副業を禁止するのは、次のような理由があげられます。
長時間労働を助長する
副業を禁止する理由として、最も多くあげられるのは「従業員の長時間労働・過重労働を助長するため」という理由です。副業をすると、必然的に仕事をする時間が長くなります。休む時間が少なくなると、心身に過剰な負担を与えるおそれがあり、身体を壊してしまうことに繋がりかねません。 企業は、従業員の健康を守る義務があります。本業だけなら長時間労働にならないよう、就業時間の管理はできますが、副業にかける時間まで把握することは難しくなります。従業員の健康を守りきれないといった観点から、副業を禁止している企業は多く存在します。
本業に集中できなくなる
従業員や副業の種類によっては、副業を始めたせいで本業への集中力が下がってしまうおそれがあります。長時間労働は、疲労や睡眠不足といった症状が起こりやすく、その結果、本業に対するパフォーマンスが下がってしまいがちです。そのため、業務効率の悪化や、生産性の低下といったリスクを防ぐため、副業を禁止している企業が多くなっています。
副業を禁止している企業の中には、「優秀な人材の流出を防ぐため」といった狙いもあります。従業員が本業以外に仕事を持つと、本業に比べ副業の収入が上回り、やりがいを感じるケースは少なくありません。そのような場合、より副業に力を入れたい、専念したいと思うようになり、本業を辞めてしまうことになりかねません。せっかく採用した優秀な人材が流出してしまうのは、企業にとってかなり大きな痛手となるため、副業を禁止しています。
02副業禁止に関する法律
法律上、従業員は副業を禁止されていません。企業側は、就業規則などにより、独自のルールを作れるため、副業禁止あるいは副業を許可制にする企業もあります。ここでは、副業禁止に関する法律について、ひとつずつ詳しく解説します。
就業規則で副業禁止して懲戒処分を課すことは可能
企業は、就業規則で従業員の副業禁止を定められます。規則に、会社の許可なく、他人に雇われることを禁止し、違反した場合は懲戒処分であることを明示すると、副業を行っていた従業員が発覚した際に懲戒処分を課すことが可能になります。
法律で処分される可能性は低い
労働関連の法律では、副業に関する規定は設けられていません。従業員は、会社に対して、就業時間の間は労働に従事する義務がありますが、就業時間外の時間については、法律上、自由に利用できます。また、憲法でも職業選択の自由が保証されていることから、法律で処分される可能性は低いといえます。
公務員の副業は法律で禁止されている
憲法や法律では職業選択の自由が保障されていると前述しましたが、公務員の場合は国家公務員法や地方公務員法で副業が禁止されています。 その理由は、本業である公務に専念してもらうため、また公務によって得た情報が不正に利用されることを防ぐためです。
03副業で懲戒処分となるケース
憲法では職業選択の自由が保障されていますが、どのような場合に副業が懲戒処分の対象となるのか例をあげて紹介します。
本業に支障をきたした場合
副業が原因で本業に専念できず、「業務時間中にも副業をしている」「疲労や睡眠不足により業務に集中できない」「遅刻や欠勤が目立つ」 など、本業に支障が出た場合です。
同業他社で働いた場合
同業他社で副業を行うことや、副業で競合する可能性のある会社の設立は、主たる会社の利益を侵害することになります。
対外的な信用をなくした場合
副業が原因で、会社のブランドや信用が損なわれ、会社にとってマイナスとなるトラブルを引き起こす行為をした場合は、懲戒処分の対象となります。
04副業禁止に抵触した事例とは
近年は、インターネット文化の発展によりさまざまな副業が生まれています。そのため、一口に副業といってもその内容は多岐にわたり、決まった定義はありません。ここで4つの具体的事例をあげて、副業に該当するかどうかをみていきます。
転売
最近ではフリマアプリをはじめ、誰でも簡単に転売を行えるようになりました。転売活動が本業に影響を及ぼすとは通常考えにくいため、これを副業として禁止できる可能性は低いといえます。
アフィリエイト
副収入を得る手段として、アフィリエイトも身近なものになっています。アフィリエイトの場合には、放置していても収入を得ることができるため、やはり本業に影響がなく禁止するには難しいといえます。 しかし、アフェリエイト収入が得られるようになるまでの仕組み作りに、時間と労力を要する場合があり、その過程で本業である会社の業務に支障をきたすおそれがあります。そのため、副業禁止規定には、本業に支障をきたさないことが前提条件であると特筆しておいてください。
アンケートへの回答
近年は、隙間時間を有効活用する手段として、アンケートモニターによる副収入も話題となっています。こちらも、時間や場所を選ばず、回答に要する労力もさほどかからないことから、規定として禁止することは難しいといえます。
05従業員の副業が発覚するタイミング
では実際に、許可なく副業を行っていた従業員がいた場合に、企業はどのような形でその事実を認識できるか、発覚の原因となることが多い2パターンを以下で紹介します。
住民税が徴収される6月
従業員の多くは、毎月の給料から住民税が天引きされます。住民税とは、都道府県や市町村の地方自治体が行政サービスを提供するために、住民から徴収する税金のことです。住民税の納税額は前年度の所得によって決まります。このため、副業で収入が増えると住民税も増え、経理担当者からの報告により副業が発覚するケースが多いといえます。
従業員がリークすることも
自分が副業をしていることを同僚にうっかり話してしまい、それがきっかけで副業をしていることが上司の耳に入る、もしくは、話を聞いた従業員が会社へ報告する、といった事例も少なくありません。
06副業禁止を就業規則で定める場合に考慮すべきポイントとは?
就業規則で副業のルールを定めておくことは、従業員の理解と納得を得るとともに、万が一従業員がルールに違反した場合に、懲戒処分をはじめとしたペナルティをくだす助けになります。ここからは、副業禁止を就業規則で定める場合に考慮すべきポイントについて解説します。
副業の範囲を定める
副業は法律用語でも、特段法令で規制されているものでもなく、定義は曖昧です。そのため、従業員側も数多くある副業の中で、どのような内容であれば行っても良いのか、把握ができず混乱を招いてしまいがちです。そのため、会社側で副業の範囲をあらかじめ設定することをおすすめします。
就業規則の見直し・追記
前述した通り、副業を禁止する際には、就業規則にその旨を明示し、全従業員に周知しなければなりません。副業を許可できない根拠をあらかじめ明確にしておくことで、従業員の納得を得られます。
懲戒解雇も視野に入れて検討する
上記のような取り交わしをしたのにも関わらず、無断で副業を行った場合には、他従業員の不公平感やそれに伴う会社への不満を防ぐためにも、懲戒解雇などを視野に入れて対処を検討した方が望ましいといえます。
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07まとめ
従業員の副業は政府が推進していることもあり、社内での対応を検討している、制度をどのように設けるべきかお悩みの担当者も多いかと思います。一方で、従業員の副業は時として、会社にとってのデメリットや弊害について考慮する必要があります。本記事で紹介した内容を参考に、従業員の副業に関する知識をしっかり備え、予期せぬトラブルに備えるようにしてください。