急速に拡大するDX市場の現状と今後の動向・対策を解説

DXは今やビジネスにおいて必須となっています。ビジネスに直結する業種や事業のデジタル化だけでなく、顧客との関係や組織運営や働き方、デジタルを活用したビジネスモデルの創出にまでDXの市場は拡大しています。そして、DX市場は今後も拡大していくと予測されています。現状の市場規模から将来の予測、将来に備えた対策まで解説します。
- 01.DXとは
- 02.DXの市場規模
- 03.将来のDX市場の動向
- 04.拡大するDX市場に遅れないために必要なこと
- 05.Schoo for BusinessのDX研修
- 06.まとめ
01DXとは
そもそもDXとは、「デジタルトランスフォーメーション」のことです。進化したデジタル技術によって、人々の生活をより良いものに変革することを指します。単なる変革ではなくデジタル技術は破壊的な変革をもたらします。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションがデジタル技術によって可能になるのです。日本でも経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置するなど国家規模で取り組んでいます。
似た用語とDXとの違い
デジタルによる変革は、そのほかにも「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」と呼ばれます。2つの言葉は主に企業のなかでの局所的な意味で使われます。デジタルトランスフォーメーションは、一企業の取り組みを超えて社会全体までに影響を及ぼすものとして、より広義の意味で使われています。経済産業省による定義は以下の通りです。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
02DXの市場規模
DXの正確な市場規模を定義することは非常に困難といわれています。なぜなら、DXは製品やサービスだけではなく、ビジネスモデルや業務プロセスなど多くの部分に関連しているからです。しかし確実にDXの市場規模は拡大しています。そして、DXがもたらす影響も同様に拡大していきます。 CiscoSystemsが実施したアジア太平洋地域の企業を対象とした調査「2020Asia Pacific SMB Digital Maturity Study」 によると、中小企業のデジタル化が進めば日本のGDPは2024年までに4兆円以上拡大すると予測されています。 また、今後日本の労働人口が不足するなか、人手不足などの経営課題の解決策としてのDXの導入が一層増加していくとも予想されています。
日本でのDX市場の規模
株式会社富士キメラ総研が実施した調査によると国内のDX市場は7,912億円でした。調査では業界別市場の投資金額をベースに市場規模を算出しています。この調査によると、2030年度には3兆425億円と約3.8倍の規模に拡大するとされています。 ですが実は、日本のDX市場は世界と比べて遅れているとされています。日本ではシステムの保守やコスト削減など既存のシステムを守るためにDXが導入されてきました。一方アメリカを筆頭とする世界各国では新規サービスの開発や市場調査、新たなビジネスに向けた投資が主体となり、攻めの投資が行われています。
日本のDXはアジアのなかでも遅れている
世界デジタル競争力ランキング で日本は23位です。アメリカが1位、2位はシンガポールとなっており、3位以下は欧州勢が多くランクインしています。しかも、韓国が10位、台湾が13位、中国が22位となっており、日本はアジア勢と比較しても遅れているのがわかります。 実際に日本国内でDXを推進している企業は36.5%とのことです。特に情報・通信サービス、建設・不動産業、金融の分野で活発に導入されています。アメリカ、シンガポールでは約9割の企業がDXを推進していると考えると、やはり日本は遅れていると言わざるを得ないのが現状です。
世界のDX市場の規模
IT専門の調査会社であるIDC JAPAN株式会社による予測 では、2020~2023年の間の直接的なDX投資は7.4兆ドルにまで拡大するとされています。これは年平均増加率17.5%と急激な増加です。特に投資額の多い分野として製造上の根本原因の把握、自立型オペレーションロボスティック製造が挙げられています。そのほかにも教育におけるデジタル技術を活用した視覚化、保険業での請求処理の自動化などの拡張も盛んです。全世界の総支出額の約3分の1を占めているアメリカではGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)がDX市場をけん引しています。またヨーロッパではSkypeやSpotifyなど世界でも多く知れ渡っている企業が牽引しており、バイオテックやITなどの分野でもEUへの事業拡大に伴った事業体制の見直しも進んでいます。
アジアのDX市場の規模
東南アジアでは2025年に3000億ドルにまで拡大すると予測がされています。特にインドネシアやベトナムのEC事業の拡大が与える影響が大きくなっています。また日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の経済担当相がDXの推進を柱とする行動計画をまとめるなど、今後東南アジアの成長は世界的にも欠かせない存在です。
03将来のDX市場の動向
今後はより一層DX市場は拡大していくと考えられています。経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」 内では「2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要がある」と強調されています。前述のとおり、日本はDX分野において世界から遅れを取っています。日本における課題は以下の通りです。 ・既存基幹システムの老朽化 ・高齢化による世代交代の必要性 ・テクノロジーの進化に伴う先端IT人材の不足 もし、これらの課題に対策できなければ日本はデジタル競争で破れてしまうでしょう。そればかりか、システムの維持管理費が高額化し、技術的負債による業務基盤の維持・継承が困難になる危険性も高まります。また、高度化しているDX市場ではサイバーセキュリティやシステムトラブルもより高度になるでしょう。保守運用の担い手が不足すると海外からの攻撃などによるリスクも上昇してしまいます。 では実際に今後世界ではどのような変化が想定されるのかを解説していきます。
2030年の国内市場予測
株式会社富士キメラ総研の調査によると2030年には国内のDX市場は2兆3,687億円にも及びます。特に製造や金融業界の成長が市場拡大を牽引していく予想です。
製造業におけるDX
製造業ではスマートファクトリーやサービタイゼーションへの投資が盛んです。 スマートファクトリーとはデジタルデータ活用によって業務プロセスの改革、品質や生産性の向上を実現する先進的な工場のことです。 サービタイゼーションとは製品を製造して販売するのではなく、製品を活用するためのサービスを含んで提供することで収益を上げていくことです。アフターサービスなどで付加価値を付けていくことを指します。
金融業におけるDX
金融業では業務効率化や省人化が進んでいます。FinTechを活用したロボアドバイザー資産運用や個人資産管理アプリなども増え、個人の投資も増えると考えられています。
情報通信業におけるDX
情報通信業は早くからIT技術に目をつけ、多くの企業が高い技術力を持っていることから、顧客企業のDXをサポートする立場にあります。特に最近では5Gの出現により、5Gを活用したスポーツ観戦など、社会に新しい価値を提供し続けているのです。
交通・運輸業におけるDX
交通・運輸業におけるDXとして、代表的なものがMaaSです。MaaSは、Mobility as a serviceの略称で、目的地までの経路検索から支払いに至るまでの移動に必要な行動を一括して行えるようにするサービスが該当します。代表的なものとしては、カーシェアやシェアサイクルなどが挙げられます。
医療・介護業におけるDX
医療・介護業におけるDXとして挙げられるのが、巡回に係る業務の効率化です。大規模な病院や介護施設では入居者が100人を超えるため、徘徊防止に向けて人感センサーなど、テクノロジーで人を監視したり、ウェアラブル端末を装着し、医療従事者が患者の健康を一括で管理できるような仕組みを作っているのです。
建設業におけるDX
離職率が高い建設業界では、測量データや設計図面などから3次元モデルを作成すると同時に、意匠表現や構造・設備設計、コスト、仕上げ等の情報を管理するなど、扱う情報が多くあるのも特徴です。業務効率化を実現するために、これらを一元で管理するクラウドサービスなどのDXツールの導入が進んでいます。
物流業におけるDX
物流では、人員不足や倉庫の空き不足といった課題が存在します。そのため、労働環境改善に向けたシステムの活用や倉庫内の作業効率化、配送状況の見える化による業務効率化など、さまざまなDXが推進されています。
今後の予想される動き
DXがもたらす影響は市場の拡大だけではありません。既存の産業の変化やビジネスそのものの根本的な取り組み方さえも変化していきます。
リーダーが入れ替わる
DX市場への投資が拡大することにより、企業のイノベーションが加速すると考えられています。投資を怠たりデジタル対応しない企業が脱落していき、新規参入してくるデジタル企業にシェアを奪われる現象があらゆるところで起きるでしょう。またクラウドシステムを活用したデジタル共同イノベーションも進みます。エコシステムのコラボレーションや競合他社との共同イノベーションが促進されることで2024年には顧客生涯価値が20%向上するとも考えられています。
クラウドファーストが実現
DXが浸透した経済では、ユーザーがどこでもデジタルサービスを利用できる環境を整える必要があります。そのために、クラウドによる各拠点でのアプリケーションやデータ管理の連携の向上が必要です。クラウドファーストとはシステムを構築する際に独自のインフラの構築を止め、誰もが利用できるパブリッククラウドサービスを利用することを第一に考えることです。政府が2018年に発表した 「政府情報システムにおけるクラウドサービス利用に係る基本方針」 でもクラウド・バイ・デフォルト原則という言葉が使われています。政府の情報システムでもクラウドサービスを利用することを第一候補にすると決められました。
デジタル投資が伸びる
今後もDXやAIへの巨額の投資は続きます。新しいインテリジェンス技術の活用と、全世界で2,650億ドル以上の投資が予測されています。DXのためのビジネス意思決定分析とAIが今後は投資の中心となり、加速度的に伸びていくことが予測されます。
04拡大するDX市場に遅れないために必要なこと
前述のとおり日本国内でDXを推進している企業は36.5%しかありません。そして、今後DXの導入が遅れれば遅れるほどに時代に取り残されてしまうでしょう。今までデジタルを導入してこなくても生き残って来られた既存産業も、将来いつまで安泰でいられるかわかりません。ですが、DX推進は一朝一夕で行えるものではありません。新しい技術を導入することは今までのやり方を壊す必要があります。そのために必要なポイントを、いくつかご紹介します。
レガシーシステムから抜け出す
レガシーシステムとは、古くなったコンピューターのシステムや技術のことです。導入時から相当な時間が経過し、最新テクノロジーの恩恵を受けられなくなったシステムを使い続けることで、時代の波に乗り遅れてしまいます。しかし多くの国内企業はレガシーシステムを抱えています。過去のビジネス成長のために既存のシステムを改修し複雑化してしまっているため、新しいシステムを導入することが困難となっているのです。 DXの推進には最新のシステムが欠かせません。いつか脱却しなければいけないレガシーシステムを捨てる勇気が必要になります。
DX専門人材の育成
DXを推進するためにはデジタル人材が鍵を握ります。デジタル人材とひとことで言っても「プロデューサー」「DXマネージャー」「ビジネス・サービス担当」「システム・技術担当」と役割はさまざまです。新しいシステムが開発されても、それを活用するのは結局は「人」です。顧客価値を見直して、課題を発見して実行手段を決定できる「人」がいなければ優れたシステムも意味をなしません。 DX推進上の課題で一番大きいのはDX全体工程を管理する人材が不足していることです。55.3%もの企業が専門人材の不足を感じています。また2030年には170万人もの専門技術人材が不足すると予測されています。 しかしながら、各社でDX人材が不足している状況下では、外部から人材を調達することも困難です。国を上げて専門知識をもった人材の育成を行っていますが、もはや自社で新たな人材を育成する以外に解決策はない状況です。
時代に合わせた柔軟な変化
DX市場の成長は早く、日ごとに新しいサービスやシステムが生れていきます。そのため、常日頃から現在の状況をしっかり学び、新しい技術に対してアンテナを張り続けなければなりません。いつどこでイノベーションが起こり、業界地図が再編されてもおかしくない時代において、変化に柔軟であるということは生き残るうえで必須の条件といえるでしょう。
経営層の理解
DX推進はどの企業でも喫緊の課題ですが、DXが進まなくても一定、仕事が進められることも事実です。むしろ、目下対応しなければいけない別の課題があり、社内で足並みが揃っていない企業も多くあります。このような場合に必要なのが、主導できる人物の存在です。海外では、CEOやCIOなど経営層が主導しているケースも多いことから、国内でも経営層によるDXへのコミットの必要性が叫ばれています。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

05Schoo for BusinessのDX研修
Schoo for Businessでは約7000本を超える数の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自律学習推進を両方行うことができる
Schoo for Businessは社員研修にも自律型学習にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自律型学習には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約7000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自律型学習の双方の効果を得ることができるのです。
SchooのDX研修カリキュラム
Schooの数多くの授業の中にはDXが学べる授業も多くあります。ここでは、SchooのDX研修カリキュラムを紹介します。
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DXを推進する上で、ベースとなるビジネススキルの習得を目的とした研修パッケージです。
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DX人材となるために必要な基礎的なスキルや知識を学ぶことができる研修パッケージです。
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インターネットの仕組みから、情報セキュリティに関する知識を習得することを目的としたパッケージです。
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ただ数値を見てボトルネックを発見するのではなく、課題の本質を見抜くという点に焦点を当てた研修パッケージです。
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与えられた課題に対してそのまま実行に移すのではなく、一歩引いた状態で“与えられた課題の目的・背景”=Whyを考えられる能力を養うことを目的としたパッケージです。
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問題解決を目的としたデータ分析の方法や批判的思考法を学び、デジタル技術を組み合わせながら課題解決をどのように実施していくかを導き出す能力を養うことができます。
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DXを推進する上でのデジタル技術の基礎を学ぶことができます。IoT導入の担当者やDX推進プロジェクト担当者におすすめの授業です。
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DXを進める上で欠かすことのできない顧客理解・インサイトの見つけ方を習得することを目的としています。
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DXのプロジェクトを実際に推進していく人におすすめの研修パッケージとなっています。
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DXは1人では実現できず、チームとして着実に前に進めていく必要があります。この研修パッケージでは、チームとして生産性高く、イノベーションを起こしていく方法を学ぶことができます。
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デジタライゼーションに留まらず、本質的なDXを推進したいという方におすすめの研修パッケージです。
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プロジェクトマネジメントに必要なスキル・知識を体系的に学べる授業をまとめました。PMだけでなくチーム全員で研修を受けておくと、それぞれの視座も上がり、さらにコミュニケーションが円滑になるかもしれません。
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「じゃらん」や「ホットペッパー」などの事例を用いて、CRMの基礎からデータ分析の方法まで学ぶことができる研修パッケージです。
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DXを用いた新事業創造や、事業戦略の立案についてを学ぶことができるパッケージ
3.管理画面で受講者の学習状況を可視化できる
Schoo for Businessには学習管理機能が備わっているため、研修スケジュールの作成を容易に行うことができます。さらに、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、レポート機能を使って学んだことを振り返る機会を作ることも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。
まず、Schoo for Businessの管理画面を開き、「研修を作成するという」ページで作成した研修の研修期間を設定します。ここで期間を設定するだけで自動的に受講者の研修アカウントにも研修期間が設定されるため、簡単にスケジュールを組むことができます。
この、管理者側の管理ツールでは受講者がスケジュール通りに研修を受けているかを確認することができます。もし決められた研修をスケジュール通りに行っていない受講者がいれば注意したり、話を聞くことができるなど、受講者がしっかりスケジュールを守っているかを確認することができます。
06まとめ
技術の進歩やDXの浸透により、我々の生活はより良く、便利になっていくでしょう。ですが、そのなかで生き残れる企業は変化に対応した企業だけです。今後加速度的に伸びていく技術革命に遅れを取らぬようにしなければなりません。これを機に自社のDX推進を試み、レガシーシステムを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
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経済産業省の商務情報政策局 情報技術利用促進課でDXリテラシー標準化の検討会を行っている同課の金杉 祥平氏をお招きし、「経済産業省が取り組むデジタル人材育成プラットフォーム」について語っていただいたウェビナーのアーカイブです。デジタル人材要件の定義や、リスキリングするための構造化された項目、さらに経済産業省で構想している人材育成プラットフォームについてもお話しいただいております。
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登壇者:金杉 祥平様経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐(企画)
2006年に経済産業省に入省。過去には、再生可能エネルギーの推進、家電製品の安全基準の整備、電気事業制度のルール整備、福島第一原子力発電所の廃炉推進に従事し、2021年5月から現職。情報技術利用促進課では、地域企業・産業のDXの実現に向けて、デジタル人材の育成を推進するため、デジタル知識・能力を身につけるための実践的な学びの場を提供する「デジタル人材育成プラットフォーム」の制度設計を担当。