公開日:2021/07/20
更新日:2022/08/24

SL理論とは?定義から育成や指導への活かし方まで詳しく解説

SL理論とは?定義から育成や指導への活かし方まで詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

リーダーシップについての理論は、これまでも時代に合わせてさまざまな変遷を遂げてきました。全ての部下や状況に最適なリーダーシップ論は存在しないため、上司としてはどれを取り入れるか悩ましい所ですが、この記事では比較的活用しやすいSL理論について解説します。

 

01SL理論とは?

SL理論とは「状況に対応したリーダーシップ」のことで、「Situational Leadership」の頭文字を取って名づけられています。 1977年に行動科学者のポール・ハーシー(Paul Hersey)と組織心理学者のケネス・ブランチャード(Kenneth H Blanchard )によって提唱されました。 1964年にF・フィドラーが提唱したコンティンジェンシー理論では、「全ての状況に適応できる、唯一最善の普遍的なリーダーシップ・スタイルは存在しない」という考えが基本となっているため、リーダーはその資質が重要なのではなく、状況に応じて役割を変える必要があるとされました。 SL理論はコンティンジェンシー理論の状況要因をさらに掘り下げ、部下の成熟度に着目し発展させた理論です。

SL理論が有効な組織

SL理論が有効な組織では、次のような課題を抱えている可能性が高いと言えます。

  • ・リーダーがリーダーシップに欠けている
  • ・リーダーにおけるリーダーシップの型が決まっている
  • ・リーダーの部下育成力が低い
  • ・リーダーと部下との関係性が良くないため、組織全体のモチベーションが上がらない

この課題を抱えている組織では、リーダーが自分の慣れていて行いやすいリーダーシップの型で、全ての部下とのコミュニケーションや状況に対応しようとしているのが特徴的と言えるでしょう。 そのため、状況に応じてリーダーシップの型を変えた方が望ましいとするSL理論が有効なのです。

SL理論における4つの「状況」とは

SL理論における「状況」とは、部下の状況を指し、具体的には部下の能力や意欲の高さによる4つの成熟度を表すので、それぞれを表にまとめてみました。 成熟度 内容 成熟度1(成熟度が低い) ・新入社員やその業務が未経験の従業員を指す ・何をすべきかわからずミスが怖いと感じている状況 成熟度2(成熟度が少し高くなっている) ・ある程度の業務を自身で行うことができる従業員を指す ・何をすべきかはわからないが積極的に学びたいと感じている状況 成熟度3(成熟度がさらに高くなっている) ・能力が高くなってきており、最低限の指示で業務ができる従業員を指す ・何をすべきかは理解しているがリーダーの指示なしで全てを1人でこなせるかは不安な状況 成熟度4(熟練されている) ・高い成果を期待でき、その業務の専門家として責任が負える従業員を指す ・何をすべきかをよく理解し、楽しんで業務を遂行できる状況 この成熟度による状況の分類は、部下がどのくらいの知識・経験・スキルを持っているのかや、業務に対して自信やモチベーションがあるかどうかという観点で分類されています。 そのため、SL理論ではこの4つの状況に合わせたリーダーシップが求められるということです。

SL理論における2つの軸とは

SL理論では「状況」を部下の成熟度で分類するだけではなく、リーダーとして部下にどのように接したら良いかを表す2つの軸を設けているのでそれぞれご紹介します。

指示的行動

指示的行動とは、リーダーが業務の手順などを具体的に部下に指示することです。 仕事の仕組み作りをし、コントロールや監督をするといったイメージで捉えるとわかりやすいでしょう。

援助的行動

援助的行動とは、リーダーが部下との信頼関係構築などを目的として行う行動で、「傾聴する」「褒める」「促進する」といったコミュニケーションや承認行為を指します。 具体的な仕事の指示以外で、リーダーが部下との関係深化のためにする行動と捉えると良いでしょう。

 

02SL理論の4つのリーダーシップスタイル

従業員の4つの状況とリーダーの部下への接し方を表す2軸を組み合わせてみると、従業員の状況に合わせて4通りのリーダーシップが必要なことがわかります。 この4つのリーダーシップについてそれぞれ説明します。

S1:教示的リーダーシップ

教示的リーダーシップは成熟度1の部下向けのリーダーシップで、指示的行動を多く求められ、援助的行動はあまり必要とされません。 なぜなら、この段階で部下がリーダーに求めているのは業務のゴールを明確化し、そこに至るまでの道筋を具体的に指示することだからです。 成熟度1の部下は個々の業務の意義や目的が理解できなくても、やり方を理解しタスクをこなすことでチームに貢献したいという意欲が高い段階のため、リーダーは都度詳細な指示を与え、成長のきっかけを逃さないよう観察を怠らないことが重要です。 教示的リーダーシップの姿勢は組織の目標達成に繋がるので、リーダーの上司や経営層にはリーダーとしての業務をこなしているように映りますが、部下には実務的な指導にばかりエネルギーを注ぐ上司と誤解される可能性があることも覚えておきましょう。

S2:説得的リーダーシップ

説得的リーダーシップは成熟度2の部下向けのリーダーシップで、指示的行動と援助的行動の両方を多く求められます。 なぜなら、この段階で部下がリーダーに求めているのは業務に対する姿勢、業務の意義や目的を説明しながら仕事の指示をすることだからです。 成熟度2の部下は業務に対して自分なりのアプローチ方法を取るなどの工夫をするようになるため、そのやる気や興味、チームへの貢献に気づき、小まめにフィードバックを行って成長を促すことが大切です。 SL理論におけるリーダーシップスタイルの中では最も工数や時間がかかりますが、この段階で部下を成長させることができれば、その後のマネジメントがスムーズになるでしょう。

S3:参加的リーダーシップ

参加的リーダーシップは成熟度3の部下向けのリーダーシップで、援助的行動を多く求められ、指示的行動はあまり必要とされません。 なぜなら、この段階で部下がリーダーに求めているのはモチベーションを高め、意思決定に関する責任を分かち合うことだからです。 成熟度3の部下は組織の課題を自分の課題として捉え始めるため、その考えを活かした行動を積極的に取れるように促し、部下の意見にも耳を傾けながら柔軟に導いていくことが重要です。 部下が自分で考えて行動できるよう自立を促す段階なので、部下の意見を取り入れるのは良いのですが、リーダーとしての判断基準が曖昧だと誤解される可能性もあることを覚えておきましょう。

S4:委任的リーダーシップ

委任的リーダーシップは成熟度4の部下向けのリーダーシップで、指示的行動と援助的行動は共にあまり必要とされません。 なぜなら、この段階で部下がリーダーに求めるのは仕事の過程を見守ることだからです。 成熟度4の部下は意思決定も課題解決の責任も任せることができるため、部下の自由を尊重しながら働きやすい環境を整えることが重要です。 部下に意思決定や課題解決の責任を任せたからといって、業務を放置したとの誤解を受けないように注意しましょう。

 

03SL理論におけるリーダーの役割

SL理論において、どのリーダーシップスタイルでも共通してリーダーに求められる役割を3つご紹介します。

部下の変化を把握すること

部下の知識や経験、スキルは日々変化していきます。 この変化を見逃し、成熟度3に成長した部下に成熟度2の部下に対する説得的リーダーシップを引き続き行っていたのでは、モチベーションは低下してしまいます。 そのためリーダーは常に部下の状況を観察し、成長段階に合ったリーダーシップで導いていくことが大切です。

企業文化に影響を与えること

成功している企業は、自社の競争優位性を商品やサービスではなく人にあると捉えていることが多いのです。 そのためSL理論におけるリーダーは、部下が業務を行う上で自分の価値を感じることができるような企業文化を作る必要があると言えるでしょう。 部下と信頼関係を築き、成長を促しながらポジティブな組織文化作りを意識することが大切です。

エンゲージメントと成果両方に注目すること

SL理論に基づいたリーダーシップにおいては、部下を評価する際に業務のプロセスやエンゲージメントと成果、両方に着目しましょう。 両方に着目して評価することで、部下のパフォーマンスはさらに向上するためです。 部下の行動が変化すれば、新たなビジネスチャンスを掴む可能性も生まれるでしょう

 

04SL理論を活用するメリット

企業においてSL理論を活用するメリットを2つご紹介します。

部下の能力が上がる

部下の成長段階に合った指導や援助ができるので、部下の能力やスキルが向上しやすくなります。 チームの目標達成に向けての課題解決力も高まるでしょう。

定着率が向上する

部下が企業における自分の役割や業務の意義や目的を理解して働くことができるため、従業員エンゲージメントが高まります。 その結果定着率が向上し、育成した人材が長く成果を挙げ続けてくれるでしょう。

 

05SL理論を活用する上での注意点

SL理論を活用する上での注意点も2つご紹介します。

不公平感が生まれやすい

SL理論では部下の成長段階に合わせたリーダーシップを用いることを理想としますが、部下への接触に濃淡が出るため、客観的に見ると不公平感が生まれやすいのです。 例えば説得的リーダーシップを必要とする成熟度2の部下と、委任的リーダーシップを必要とする成熟度4の部下が同じチーム内に所属している場合、どうしても成熟度2の部下に接する時間が多くなってしまうでしょう。 このような不公平感を部下に与えないためにも、日頃から部下との信頼関係をしっかりと築いておくことが大切です。

メンバーのフォローでリーダーが手一杯になりやすい

SL理論はある程度リーダー経験がある人向けに作られているため、慣れないうちは実践するだけでリーダーが手一杯になってしまうことがあります。 最初から完璧に実践するのは難しいという前提に立った上で、少しずつ自分に合った形で取り入れていくのが望ましいでしょう。


 

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06まとめ

SL理論は状況に対応したリーダーシップのことで、部下の成長に合わせて柔軟に接し方を変え、成長を促す方法だとわかりました。 チームや企業の目標を達成し、より高い成果を挙げるためにもSL理論をぜひ活用してみてください。

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