ウェルビーイングがビジネスに必要な理由とは?構成要素や高めるメリット・高める方法を解説

ウェルビーイングとは、精神的・社会的・身体的といったすべての条件が満たされている状態のことです。ウェルビーイングは個人の幸福度を向上させるだけでなく、企業全体に大きなメリットをもたらします。当記事では、ウェルビーイングがビジネスに必要とされる理由・高めるメリットや方法などを解説します。
- 01.ウェルビーイングとは
- 02.ウェルビーイングがビジネスに必要な理由
- 03.世界におけるウェルビーイングの取り組み
- 04.ウェルビーイングが注目されている理由
- 05.ウェルビーイングの構成要素
- 06.ウェルビーイングを高めるメリット
- 07.ウェルビーイングを高める方法
- 08.まとめ
01ウェルビーイングとは
ウェルビーイング(well-being)とは、幸福感とも訳され、精神的・社会的・身体的といったすべての状態が良好で満たされている状態のことです。瞬間的なものではなく、持続的な幸せこそがウェルビーイングです。 ウェルビーイングという言葉が初めて用いられたのは、1946年の世界保健機関(WHO)設立の際に考案された憲章です。その後、社会福祉の分野で多く利用される言葉となっていましたが、近年ではビジネスの現場でも用いられるようになりました。
02ウェルビーイングがビジネスに必要な理由
ウェルビーイングがビジネスの現場で必要とされるようになった理由として、社会価値の変化と労働人口の減少が挙げられます。 人生100年時代といわれる現代では、働くことは賃金のために自己を犠牲にすることではなく、人生を豊かにする手段として考えられるようになりました。そのためビジネスにおいては、従業員一人ひとりがより自分らしく働けるような仕組み作りが求められるようになりました。 また、若年層の労働人口がだんだんと減少していることからも、人材の定着化のためにすべてが満たされた状態であるウェルビーイングに注目が集まっています。高収入などの待遇面だけでなく、従業員のウェルビーイングを実現するために他社と差別化を図り、組織運営していくことが必要とされています。
03世界におけるウェルビーイングの取り組み
ウェルビーイングは世界においても注目されている概念です。ここでは、日本がウェルビーイングが低いといわれている理由や、世界の取り組み事例について解説します。
日本のウェルビーイングが低い理由
国際連合が2019年に発表した調査によると、幸福度ランキングにおける日本の順位は先進国の中でワースト2位という結果でした。
日本のウェルビーイングが低い理由の1つとして、日本人の「寛容さ」が低いことが挙げられます。 「空気を読む」という言葉があるように、日本人は個人の自由に関して不寛容で、同調圧力に従うことが美徳であると信じているという特性があります。たとえ自分の考えをもっていても、本音を隠して周囲に合わせてしまう人が日本人には多くいます。 「親や上司といった立場の強い人に反論して意見が言えない」「周囲の人が仕事していたら帰りにくい」こういった自分の意見を言えず周りに流されがちな日本人の国民性が、日本人の幸福度を低下させる一つの要因となっていると考えられるのではないでしょうか。
ウェルビーイングが高い国と取り組み事例
国際連合が発表する幸福度調査において、3年連続1位なのはフィンランドです。 そのため、フィンランドはウェルビーイングの取り組みを検討する上で欠かせない社会モデルとして注目されています。フィンランドでは「誰もが尊重され自分らしく生きられる社会」を作るために、教育や福祉、働き方のすべてにおいて国として取り組んでいます。 働き方について紹介すると、フィンランドでは午後4時頃に仕事を切り上げる人がほとんどです。また、夏休みとして1か月休むことも標準です。このようにフィンランドでは、一人ひとりが労働にあてる時間を減らし、子育てや趣味の時間にあてることでプライベートの充実が実現しています。
<フィンランドの幸福度についてのSchooおすすめ授業>
この授業では、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」の著者、堀内 都喜子先生をゲストにお迎えして著書についてご解説いただく授業です。
「『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか 』著者:堀内 都喜子さん」
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ライター
長野県出身。大学卒業後、日本語教師などを経てフィンランドのユヴァスキュラ大学大学院に留学。コミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳としても活動。2013年よりフィンランド大使館広報部でプロジェクトコーディネーターとして勤務。 著書『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)。『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書) 翻訳作品『チャーム・オブ・アイス~フィギュアスケートの魅力』(サンマーク出版)
04ウェルビーイングが注目されている理由
環境や社会情勢の変化により、従業員の不安やストレスは増えています。したがって、企業としては、ネガティブな要素を解消し、モチベーションが高い状態で前向きに仕事に取り組んでもらう必要があります。このような背景から、ウェルビーイングに関心が寄せられていますが、注目が集まっている理由は具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、それぞれ解説していきます。
社会環境の変化
ウェルビーイングに注目が集まっている理由として、新型コロナウイルスの影響も少なからずあります。 新型コロナウイルスが流行したことで、リモートワークが取り入れられるようになり、対面で集まる機会が減少しました。会社の仲間と親睦を深めるためのイベントや飲み会が制限されるようになっただけでなく、プライベートにおいても旅行や外食に気軽に行くことが難しくなってしまいました。そういった背景もあり、世界中でストレスや不安、さらにはうつを感じる人の数が過去最高に達しているといわれています。そのため、多くの企業が従業員のウェルビーイングを向上させるため、福利厚生や従業員同士のコミュニケーション方法の改善に取り組み始めています。
SDGsの高まり
SDGsは「地球上の誰一人取り残さない」、経済・社会・環境の3つのバランスがとれた社会を目指すSDGsですが、ウェルビーイングと密接な繋がりがあります。前述のように幸福感を表すウェルビーイングは、SDGsにおける「貧困」「健康」「福祉」といった点に該当します。したがって、企業としてSDGsを実現した先にウェルビーイングが存在すると考えられます。
<SDGsについてのSchooおすすめ授業>
SDGsの基礎理解から、自社でこれからSDGsを推進していく方に向けて、SDGsの取り組みをスタートさせるにあたって素地となる考え方について学ぶことができます。
自社でSDGsを推進していくことになった担当の方や基礎知識として、SDGsを押さえていきたいという方におすすめの授業です。担当するのは、株式会社Drop SDGsコンサルタントの玉木 巧さんです。
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株式会社Drop SDGsコンサルタント
新卒より8年間働いた会社でインド、インドネシア、タイなど7カ国の販路開拓し、海外展開に奔走。2019年8月に退職。翌月よりサハラ以南の現状を自分の目で確かめたく、アフリカのセネガルに1ヶ月滞在し、プラごみ問題の解決に奔走。帰国後は社会課題を解決するスタートアップ企業 株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。 これまで企業・青年会議所・教育機関などでSDGs研修を開催し、これまで計40万人のビジネスパーソン向けにSDGs研修を実施。YouTuberとしても、ビジネスパーソン向けにSDGsの基本知識から取り組み方法について発信中。
働き方改革の促進
少子高齢化に伴う生産人口の減少や生産性の低下、長時間労働といった働き方の課題に対して、政府主導で働き方改革が推進されています。これに伴い、雇用形態の見直しや育児・介護などとの両立など、労働環境における満足度を向上させていく必要があります。そのため、働き方改革はウェルビーイングに繋がる重要な手段として注目が集まっているのです。
05ウェルビーイングの構成要素
ウェルビーイングは大きく分けて5つの要素で成り立っています。
- 1:キャリアウェルビーイング(Career well-being)
- 2:ソーシャル ウェルビーイング(Social well-being)
- 3:フィナンシャル ウェルビーイング(Financial well-being)
- 4:フィジカル ウェルビーイング(Physical well-being)
- 5:コミュニティ ウェルビーイング(Community well-being)
ここでは、ウェルビーイングの構成要素について解説します。
キャリアウェルビーイング(Career well-being)
キャリアウェルビーイングとは、仕事だけ、というよりもプライベートも含めた幸福度を表したもので、1日の中で多くの時間を費やしていることに関する幸福度です。ワークライフバランスと近い意味で使われています。 仕事だけでなく、個人の趣味や子育てなど、も含めた幸福を指しています。家庭と仕事との幸福度を両立させることで、より個人のウェルビーイングを高めることができます。
ソーシャル ウェルビーイング(Social well-being)
ソーシャルウェルビーイングとは、対人関係において幸福をもたらす関係であるかどうかを意味しています。 多くの人と関係を築けているかということではなく、一人ひとりと信頼しあえるような愛のある関係を築けているかどうかが重要となります。
フィナンシャル ウェルビーイング(Financial well-being)
フィナンシャルウェルビーイングとは、経済的な幸福度を意味しています。満足のいく報酬を得られるかどうかだけでなく、安心して生活を送れるように資産を管理・運用できるのかということもフィナンシャルウェルビーイングに含まれます。 精神的な余裕は、経済的な余裕と比例しています。経済的な不安を抱えてしまうと、それがストレスとなり仕事や対人関係に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
フィジカル ウェルビーイング(Physical well-being)
フィジカルウェルビーイングとは、身体的・精神的な幸福度のことを意味します。自分がしたいと思ったことに不自由なく取り組める健康状態やエネルギーがあることが望ましいとされています。 健康であっても、対人関係や仕事などでストレスがたまってしまうと精神的なエネルギーが失われてしまうでしょう。日々の生活において、何事にも前向きに取り組める健康状態と精神状態をもっていることが重要です。
コミュニティ ウェルビーイング(Community well-being)
コミュニティウェルビーイングとは、自分の身の回りのコミュニティにおける幸福度のことを意味します。住んでいる地域社会だけでなく、所属する団体や勤める会社もコミュニティウェルビーイングに当てはまります。
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06ウェルビーイングを高めるメリット
ウェルビーイングを向上させることは、個人だけでなく、企業全体に良い影響をもたらします。ここでは、ウェルビーイングを向上させることにより企業にどのようなメリットがあるのかについて解説します。
従業員満足度の向上
ウェルビーイングを高めることで、従業員満足度の向上につながります。従業員満足度とは、職場での人間関係や環境・働きがいや福利厚生における満足度を総合的に示したものです。 従業員満足度が高い企業では、従業員のモチベーションが高く、主体的に業務に取り組みます。また、従業員満足度が高い企業では従業員同士が円滑なコミュニケーションがとれます。そのため、結果的に生産性の向上にもつながるでしょう。
離職率の低下
離職理由の1つに「職場内の人間関係」が挙げられます。人間の悩みの多くが対人関係にあるといわれるほど、人間関係でのトラブルは大きなストレス要因となります。 たとえ離職を考えていたとしても「真剣に向き合ってくれる上司の存在」や「信頼できる同期の存在」によって離職を思いとどまったという例は多くあります。ウェルビーイングを高め、人間関係が良好になるほど離職率は低下するといえるでしょう。
顧客満足度の向上
ウェルビーイングが向上し、従業員満足度が高まると、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。従業員によって対応の仕方や言動が異なると顧客は不信感を抱いてしまうでしょう。 従業員満足度が高い企業では、従業員に会社の方針や理念が浸透しており、全員が共通の目的意識をもって働いています。そのため、どのような顧客に対しても、共通した質の高い対応が可能となります。 また、従業員同士の連携も円滑にとれているため、顧客への対応速度が上がります。スピード感のある対応は、顧客の満足度を向上させることができるでしょう。
07ウェルビーイングを高める方法
ウェルビーイングを高めることは、従業員や顧客満足度を向上させ、人材の定着化につながることを解説しました。では、ウェルビーイングを高めるためには具体的にどのような取り組みをしたら良いのでしょうか。 ここでは、ウェルビーイングを高める方法について詳しく解説します。
コミュニケーション方法の改善
ウェルビーイングを高めるために、組織内におけるコミュニケーション方法を見直しましょう。 社内コミュニケーションが活発に行われ、良好な人間関係が構築されることは、ウェルビーイングの向上に必要不可欠です。上司と部下でコミュニケーションがとれていないと、上司は部下の悩みや些細な体調の変化に気づくことができません。 また、気軽に相談できる関係性ができていなければ、悩みがあっても周りに相談できずストレスを抱えてしまう人が増えてしまうでしょう。コミュニケーション方法を改善する具体的施策は以下の通りです。
- ・1on1を定期的に実施
- ・情報共有を気軽にできるツールの導入
- ・社内イベントを開催する
<コミュニケーションについてのSchooおすすめ授業>
皆さんは、リモートワークでのコミュニケーションの課題における最大の壁は何だと思いますか?
本授業は、株式会社メンバーズで執行役員を務め、総務省のテレワーク先駆者百選に選定された、池田朋弘さんを先生としてお迎えし、チームにおけるコミュニケーションを最大化するための考え方や取り組み方について学んでいきます。
コミュニケーションは信頼構築のための礎です。
「リモートだから…」と諦めるのではなく、考え方や取り組む工夫を知り、チームで楽しくテレワークに取り組んでいきましょう。
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起業家 / 株式会社メンバーズ顧問
2013年、㈱ポップインサイトをCEOとして創業。2015年から全面リモートワーク体制を構築し、全国採用をスタート。日本各地で従業員50人以上を採用。2018年から総務省のテレワーク先駆者百選を受賞。2017年4月に東証一部上場の㈱メンバーズのグループ会社に。 2015年、㈱MIKATAをCEOとして創業。クラウドソーシング事業を立ち上げ、1万人以上の在宅ワーカーを集める。数千人の在宅ワーカーとともに、様々な業務を対応。 2020年4月、㈱ポップインサイト社長を退任し、東証一部上場㈱メンバーズ執行役員に就任(02021年4月から同社顧問)。2020年11月に『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』を上梓
評価方法の改善
評価方法を改善することも、ウェルビーイングの向上につながります。仕事へ取り組む姿勢や結果が正当に評価されなければ、従業員はモチベーションを失ってしまいます。 自分のがんばりを評価してくれる人がいなければ、「会社から必要とされていない」と感じ、次第に頑張る意味を見失っていってしまう恐れもあります。評価方法を改善するための具体的な施策は以下の通りです。
- ・明確な評価基準や項目を設ける
- ・会社に合った評価方法を取り入れる(MBO評価、360℃評価など)
- ・上司が部下に定期的なフィードバックをする
▼評価方法について詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】評価制度の目的とは?主な種類と最新のトレンドを企業事例とともに解説
労働環境・福利厚生の改善
ウェルビーイングを高めるために、職場の労働環境や福利厚生を見直しましょう。従業員が高いモチベーションを維持し、自身の能力を最大限に発揮するためには、体調やプライベートとのバランスがとれていることが重要です。 精神的なストレスなく仕事に集中できる環境作りのためにも、ワークライフバランスは欠かせません。具体的施策は以下の通りです。
- ・従業員の残業管理を徹底する
- ・従業員の日々の体調を把握する
- ・福利厚生を充実させる
▼労働環境について詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】働き方の多様化とは?求められる背景や促進のための取り組みについて解説する
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

08まとめ
ウェルビーイングは近年ビジネスの現場において非常に重要視されています。ウェルビーイングが向上すると、組織全体にも大きなメリットをもたらします。 従業員一人ひとりが自分らしく働き、ウェルビーイングを実現させるためにも、自社にあった取り組みを始めていきましょう。