更新日:2026/01/12

2025年の崖とは?「経済産業省DXレポート」からわかりやすく解説

2025年の崖とは?「経済産業省DXレポート」からわかりやすく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

2018年に経済産業省は、日本におけるDX推進を目的とした文書、「DXレポート」を発表しました。レポートには「2025年の崖」という言葉が出てきます。 「2025年の崖」は、同レポートでは、国内のデジタル化の遅れに警鐘を鳴らす目的で用いられています。2025年に何が起きるのでしょうか。 本記事では、「2025年の崖」の概要を「DXレポート」をもとに解説します。

 

012025年の崖とは

2025年の崖とは、「日本企業がレガシーシステムの刷新を推進できず、DXの実現が遅れることによる2025年から2030年の間に最大毎年12兆円発生する経済損失」のことです。この言葉は、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で使われ、世の中に浸透しました。

レガシーシステムを20年以上使い続けている日本企業は6割を超えていると言われており、2025年の崖は日本経済を揺るがす大きな課題と言えるでしょう。

▶︎参考:経済産業省|DXレポート

 

02なぜ『2025年』の崖なのか

この崖が『2025年』から始まるとされた理由は以下の3つがあります。

  • 1:基幹系システムを21年以上利用している企業が6割に増加
  • 2:SAP社のERPのサポートが2025年に終了
  • 3:IT人材が約43万人不足

このように、2025年という理由は複合的な要因が絡み合っているのです。以下でに、それぞれの理由について詳しく紹介します。

1:基幹系システムを21年以上利用している企業が6割に増加

2025年に、基幹系システムを21年以上利用している日本企業が全体の約6割を超えるとされています。基幹系システムとは、企業経営と直結するシステムのことです。基幹系システムの代表例としては、生産管理や販売管理、在庫管理システムなどが該当します。

また、過去の技術や仕組みで構築されているシステムのことを、レガシーシステムと呼びます。まさに、21年以上も使用されている基幹系システムはレガシーシステムそのものなのです。仮に、このレガシーシステムが急に機能停止をした場合には企業の経営活動も止まることになりかねず、その結果として莫大な利益損失を起こすことになるのです。

そのような機能停止を起こさないように、保守点検やメンテナンスをするにも費用がかかります。今ではあまり利用されていない技術で作成されているために、それを扱える技術者を探すことも難しいという課題もあれば、古いシステムゆえに保守点検の回数も増加し、人件費も圧迫するという課題もあるのです。経済産業省のDXレポートでは、これらのレガシーシステムを使い続けることになれば、将来的にIT予算の9割以上を保守点検やメンテナンスに割かなければならなくなると提言しています。

2:SAP社のERPのサポートが終了

2025年という理由には、SAP社のERPのサポートが2025年に終了することも関係しています。SAP社(エス・エー・ピー社)はドイツに本社を置く世界有数のソフトウェア企業です。また、ERPとは統合基幹業務システムの総称です。

経済産業省が最初のDXレポートを発表した2018年の段階では、2025年にサポートを終了するとアナウンスされていました。しかし、2020年2月に「SAP ERP」のサポートを2027年まで2年間延長すると発表。追加料金を払えば、最長30年末まで延長して保守を受けられると追加でアナウンスを出しています。そのため、2027年〜2030年までは猶予が伸びたとも言えます。

しかし、SAP社のERPを利用している日本企業は2,000社以上あると言われており、これらの企業にとっては2027年までにSAP社の最新システム「SAP S4/HANA」へと移行するか、新たなシステムを導入するかの対応をしなければなりません。

3:IT人材が約43万人不足

2025年に、約43万人のIT人材が不足すると経済産業省のDXレポートでは言及されています。AIやビッグデータ、IoTなどの最先端の知見を持つIT人材の需要は高まり続けており、この需要に対しての供給が追いつかないため、高度な専門知識を有する外国人の積極的な採用を推進する動きが加速しています。しかし、優秀なIT人材の獲得競争は世界的な規模で行われおり、ダイバーシティ推進が遅く、働き方にも多くの縛りがある日本企業の求心度は高くないのが現状です。

一方で、レガシーシステムを扱える人材の減少も課題です。基幹系システムを扱える人材は、退職・高齢化によって減少していきます。一方で、これからエンジニアになろうとする人は、わざわざ旧時代のシステムや言語を学びません。そのため、ますますレガシーシステムを早く刷新する必要性が高まっているのです。

 

032025年の崖を乗り越える際の障壁

「DXレポート」によると、多くの企業はDX推進の必要性を認識しているといいます。しかし、多くの企業では実現にいたっていないようです。DXレポートでは、DX推進が実現しない原因として以下の5つの課題を指摘しています。

  • ・経営層がDX戦略を描けていない
  • ・各関係者の役割分担が明確になっていない
  • ・時間と費用のリスクがある
  • ・ベンダー企業への過度な負担
  • ・DX人材の不足

この章では、これらの課題について詳しく解説します。

▶︎参考:経済産業省|DXレポート

経営層がDX戦略を描けていない

2025年の崖を回避するには、まず既存システムの問題点を把握し、何を刷新すべきか、それらの優先度はどう付けるのかを経営層が主導して、トップダウンで押し進める必要があります。また、既存システムを刷新した先には、どのようなDX戦略があり、その未来に向けてどのような状態にすることが理想なのかも描く必要があります。

しかし、多くの経営者はDXという言葉の定義や必要性は理解しているものの、実際に自社がDXを実現して成長するイメージを持っている企業は少ないのが現状です。また、レガシーシステムが引き起こすセキュリティリスクやシステム障害などの課題に対しての見識も弱く、本腰を入れてDX戦略を描く必要性に関してはあまり感じていない可能性があるのです。

各関係者の役割分担が明確になっていない

レガシーシステムの刷新は、DX推進に欠かせません。しかし、組織全体でレガシーシステムの問題点を理解し、一枚岩となって対策を打てている企業は少ないでしょう。また、このようなシステムは現在は問題なく稼働していることが多く、現場のプロフィットセンターにとっては無関係のこと考えている怖れすらあります。

また、関係者が自身の役割を明確に理解していないことが課題であると、DXレポートでは言及しています。例えば、経営者はこの課題に対してトップダウンで力強く推進していく必要があるという役割を理解していなかったり、情報システム部門はベンダーと対等な関係を築けず、ベンダーからの提案を鵜呑みにしてしまっていたりと言った課題があると想定しています。

時間と費用のリスクがある

既存システムの刷新は、長期間にわたり多額の費用もかかります。そのため、前述したように経営層の理解が乏しい場合、そもそも刷新に踏み切れないという課題もあるでしょう。既存システムを刷新した先まで見据えたDX戦略を描いていない場合、単なる「老朽化したシステムの刷新費用」くらいにしか思えない可能性もあります。

また、情報システム部門がベンダーの提案を鵜呑みにしている場合は、本当に優先度を上げて対応すべきところ以外も見積もりに入れられている可能性があり、それもあって経営層の意思決定を鈍らせているのかもしれません。

ベンダー企業への過度な負担

ベンダー企業に丸投げとなっており、責任はベンダー企業が負うという体制になっていることも散見されます。このような体制では要件定義が曖昧になり、契約上のトラブルを引き起こしやすくなります。

また、発注者・受託者という関係性ではアジャイル開発を進めることが難しく、意思決定や報告に無駄なコミュニケーションコストが発生してしまうことも課題と言えるでしょう。

DX人材の不足

AI・ビッグデータ・IT・IoTによって何ができるのかを理解している人材がそもそも不足しているという課題もあります。これには複数の理由があり、1つは既存システムの保守・維持に人員や予算が大きく割かれていること、もう1つはDX人材育成への投資不足です。

特に、後者のDX人材育成は大きな課題と言えるでしょう。これまで日本企業は終身雇用かつ新卒一括採用を続けてきていたため、OJTが人材育成の根幹を担っていました。OJTは現在の業務を通じて人を育成する人材開発の手法であるため、DXのような現在の業務外のことはOJTでは学べないのです。さらに、人材開発を主に担う人事部が研修(Off-JT)という手段でDX人材を育成しようにも、人事がDXやIT技術のことを全く理解していないため、何を研修で学ばせればよいかわからないという課題もあります。それに加えて、課題感がないままでの研修や実務に直結しない研修は、社員からすると「意味のないもの」と思われてしまうため、研修を行なっても知識だけが積み重なり、DXを推進する人材の育成には繋がらないというジレンマもあります。


 

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042025年の崖への対策

経済産業省は、2024年度にデジタル社会の実現に向けた重点計画の一環として、「レガシーシステムモダン化委員会」を設置しました。この委員会は、日本企業が直面するDX推進の障害となるレガシーシステムの現状を把握し、レガシーシステムに纏わる問題の明確化およびこれを解消するための対策を検討することを目的としています。

この章では、委員会が企業の経営層や情報システム部門の責任者、ベンダー企業、業界団体等に向けた提言として整理し、国の政策の取組方針と合わせたレポートを基に、2025年の崖への対策として企業は何をすべきなのか、詳しく紹介します。

▶︎参考:経済産業省|DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて

システムの可視化と内製化

「システムの可視化」とは、企業が保有するすべてのIT資産(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等)とそれらの相互関係を明確に把握・管理することです。ブラックボックス化した仕様をドキュメント化して、属人性を排除し、老朽化や保守期限切れによるリスクを特定します。これにより、経営層がモダン化の投資対効果をデータに基づいて正確に判断できる状態を整えます。

「システムの内製化」は、ベンダー企業への過度な依存(丸投げ)から脱却し、ITに対する自律性を確保することを指します。可視化によってシステムの仕様や課題が明らかになることで、内製化を行うための環境が整います。自社で開発・運用の主導権を持つことで、ビジネス環境の激しい変化にシステムをスピーディーに追従させることが可能となります。

これらは、ITガバナンスを強化し、戦略的なIT資産活用を実現するための不可欠な下地となります。

標準化対応

標準化対応とは、DXの阻害要因となる「現行業務の踏襲」や「現行機能の保証」への強い拘りを捨て、自社の業務プロセスをシステム側の標準的な仕様に合わせて見直す取り組みを指します。

具体的には、独自のスクラッチ開発を避け、パッケージやSaaS、あるいは業界共通の標準システムへの移行を最優先で検討します。これにより、肥大化・複雑化したシステムを整理し、IT投資を抑えつつ、将来の変化に対応できる保守性と柔軟性を確保することが可能になります。

実施にあたっては、現場の抵抗を避けるために経営層が主体的に関与し、トップダウンで業務改革を断行することが不可欠です。Fit&Gap分析を通じて、標準仕様に寄せる部分と、自社の強みとして付加価値を作り込む部分を明確に分けることが推奨されています。特にリソースの限られる地方企業や中小企業にとって、他社とのシステム共同利用を含む標準化は、コスト低減とレガシー脱却を両立させるための極めて有効な戦略となります。

人材需給ギャップの課題への対応

IT需要は今後も増えていくでしょう。そのため、IT人手不足は企業にとって大きな課題となります。経済産業省の「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」という資料では、この人材需給ギャップを低減させるために、需要の平準化と供給力の強化の 両方の対策が必要であると述べています。以下でそれぞれについて詳しく説明します。

1.需要の平準化

ユーザー企業は、可視化された情報を基にシステムの仕分けと優先度付けを行い、真にモダン化が必要な範囲を見極めることが求められます。すべてのシステムを一度に刷新しようとすると人的需要が特定時期に集中し、リソース不足を招くため、ベンダーと協力して計画を策定し、人的リソースを最適化・平準化することが重要です。

このように需要のピークを均すことで、限られた人材を効率的に活用し、プロジェクトの停滞を防ぐことが可能となります。また、システムの「断捨離」を通じて不要な開発を削減することも、全体的な需要を抑制しギャップを埋めるための有効な手段となります。

2.供給力の強化(人材強化・確保)

システムのモダン化を主導できるアーキテクトやデータサイエンティスト等の上流人材を育成・確保することは急務です。ユーザー企業はベンダーへの「丸投げ」から脱却し、自社内での内製化能力を強化する必要があります。そのためには、情報システム部門等に魅力的なジョブやキャリアパスを設け、市場価値に見合った適切な処遇で優秀な人材を獲得していくことが不可欠です。

3.供給力の強化(代替技術の開発)

IT人材が減少する中で、人海戦術に頼る従来手法は限界を迎えており、開発生産性を高める代替技術の開発と導入が必須です。具体的には、生成AIを活用したレガシーコードの解析やコード自動生成、デジタル技術を用いた可視化手法などの開発が期待されています。特に、移行の大きな障壁となるデータ移行において、散逸したデータの所在を明らかにし、構造を扱いやすい形式へ自動変換・加工する技術は非常に有用です。

経営層の意識改革

ユーザー企業・ベンダー企業それぞれの経営層が意識改革しなければ、2025年の崖を乗り越えることは難しいでしょう。この章では、ユーザー企業・ベンダー企業それぞれの経営者が具体的にどのような意識を変革し、どのような行動を取るべきなのか解説します。

1.ユーザー企業

ユーザー企業の経営層は、レガシーシステムの刷新を一過性のITプロジェクトではなく、経営課題として「自分事」化し、継続的に取り組む姿勢を持つ必要があります。ITを単なるコストと見なす意識を改め、IT/デジタル戦略とビジネス戦略を統合した枠組み(エンタープライズアーキテクチャ)を策定すべきです。

また、現場の抵抗を押し切って現行踏襲の業務プロセスを見直し、標準化を断行するには、経営トップの強力なコミットメントと覚悟が不可欠です。DX推進部門と情シス部門を融合させ、投資判断に責任を持つ人材(CxO等)を配置するなど、トップダウンで意思決定を下せる組織体制の構築が求められます。

2.ベンダー企業

ベンダー企業の経営層は、ユーザー企業との「低位安定」な共依存関係が瓦解しつつある現状を強く認識し、従来の受託型SIビジネスから脱却する覚悟が必要です。これまでの人月単位の労働力提供ではなく、「価値提供型」のビジネスモデルへの転換が求められています。

具体的には、ユーザー企業の自律性を奪うのではなく「内製化」を支援・伴走するパートナーへと立ち位置を変え、高度な技術領域やコンサルティング分野へ人材を先鋭化させる必要があります。このような既存モデルの破壊を伴う改革を断行するには、経営層による強力なトップダウンの方針が不可欠であり、産業全体のデジタル競争力を支えるために自社の役割を再定義しなければなりません。

 

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06まとめ

本記事では、経済産業省の「DXレポート」をもとに、「2025年の崖」について解説してきました。 このままDXが推進されなければ、企業は競争力を失うだけでなく、重大なシステム障害により、根幹を揺るがす事態に見舞われるかもしれません。 企業事例からも分かる通り、DXの推進には、自社におけるDX人材の育成が欠かせないようです。早急に取り組むべき課題といえるでしょう。

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  • 登壇者:金杉 祥平様
    経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐(企画)

    2006年に経済産業省に入省。過去には、再生可能エネルギーの推進、家電製品の安全基準の整備、電気事業制度のルール整備、福島第一原子力発電所の廃炉推進に従事し、2021年5月から現職。情報技術利用促進課では、地域企業・産業のDXの実現に向けて、デジタル人材の育成を推進するため、デジタル知識・能力を身につけるための実践的な学びの場を提供する「デジタル人材育成プラットフォーム」の制度設計を担当。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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